宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『伊勢物語』(Cf. 在原業平825-880)「第21段 おのが世々」:結局、それぞれ別に愛人を得て暮らすこととなり(「おのが世々」)、男と女は疎遠になった!有為転変だ!

2020-11-08 19:48:12 | Weblog
むかし、男と女が、たいそう深く愛しあっていた。ところが、ある頃から女は二人の愛を疑うようになり、出て行こうと思い歌を詠んだ。

「いでていなば心かるしといひやせむ世のありさまを人はしらねば」If I divorced my husband, people would say that I am foolish. Because they don’t know our real relationship.(私が出て行ったなら[いでていなば]、世間の人々は浅慮な女[心かるし]と言うでしょうか?私たち二人の仲のありさま[世のありさま]を人々はしらないから。)

女は出て行った。だが男には心当たりがない。「どうしてこういうことになったのか」と男は嘆いて泣き、歌を詠んだ。

「思ふかひなき世なりけり年月(トシツキ)をあだに契(チギ)りてわれやすまひし」I have loved her, but in vain. For a long time, I have wastfully lived with her though she hasn’t love me. (彼女を愛していたのに甲斐なく終わった仲[思ふかひなき世]だった。長い年月を無駄に夫婦として[あだに契りて]私は過ごしたのだろうか[われやすまひし]。)

こう詠って男は茫然としていた。
《感想1》女心をわからなかった男の嘆きだ。長く連れ添った夫婦が突然離婚する「熟年離婚」だ。

「ひとはいさ思ひやすらむ玉かづらおもかげにのみいとど見えつつ」Does she think about me? I clealy see her only as a phantom.(あの人は私を思っているだろうか[思ひやすらむ]?逢えないからわからない。ただあの人の幻影のみが[玉かづらおもかげにのみ]ありありと[いとど]、私には見える。)(※「玉かづら」は影の枕詞。)

この女は久しく経ってから、やはり恋しさが募ったのか、男宛てに歌を詠んでよこした。

「いまはとて忘るる草のたねをだに人の心にまかせずもがな」 I am afraid that you already forgot me. I wish you had not forgotten me.(今はもうこれかぎりと私を忘れてしまうそんな草[いまはとて忘るる草]の種だけは、あなたの心に播かせたくないものです[まかせずもがな])
《感想2》女は自分から男のもとを去ったのに、まだ未練があった。別れてから彼女は、男に対する自分の未練に気づいた。恋心は自分の自由にならない。「私を忘れないでほしい」と女は男に歌を贈った。

男が歌を返した。

「忘れ草植うとだに聞くものならば思ひけりとはしりもしなまし」You hear that I tried to forget you. Then, I wish you thought that I loved you. (私があなたを忘れようとして忘れ草を植えている[忘れ草植う]とお聞きになったということは、それだけでも、私があなたを思っていた[思ひけり]と知ってほしかったです[しりもしなまし]。)
《感想2-2》男の返歌は巧みだ。「あなたを愛していたからこそ、苦しい思いをして忘れようとしたのだ」と男は言う。

その後、男と女は、以前にもまして、歌のやり取りをした。男が歌を詠んで女に贈った。

「忘るらむと思う心のうたがひにありしよりけにものぞ悲しき」I doubt whether you forgot me. I am sadder than before.(あなたが私を忘れているだろうと[忘るらむと] 思う私の猜疑心[心のうたがひ]のために、以前より[ありしより]本当に[けに]悲しくなります。)

女が歌を返す。

「中空にたちゐる雲のあともなく身のはかなくもなりにけるかな」A cloud in the sky disappeared. In similar way, I feel that my love disappeared. (中空に浮かぶ雲が跡形もなく消えるように[中空にたちゐる雲のあともなく]、我が身もはかないものになってしまいました。)
《感想3》男は女の心を疑う。女も自分の気持ちを信じられない。恋の残り火が再び燃えそうになったが、互いの心に一度生まれた疑いは、もはや消せない。どちらも悲しい心だ。

結局、それぞれ別に愛人を得て暮らすこととなり(「おのが世々」)、男と女は疎遠になってしまった。
《感想4》男と女の関係の悲しい結末。つまり両者は疎遠になってしまった。だが別に新しい男と女の関係が2組生まれた。彼ら2組はそれぞれ幸せになるかもしれない。有為転変(ウイテンペン)だ。万物は常に変化してやまない。恋or愛も同じだ。

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浮世博史『もう一つ上の日本史』(48)「戦国時代」だけでなく「南北朝の争乱の時代」も注目せよ!百田氏の誤り:①早雲は「関東一円」を支配していない、②早雲は「下克上」していない!

2020-11-08 11:27:57 | Weblog
※浮世博史(ウキヨヒロシ)「もう一つ上の日本史、『日本国紀』読書ノート、古代~近世篇」(2020年)「戦国時代」の章(176-212頁)

(48)「実力次第でのし上がれるという、日本史上に類を見ない」時代は「戦国時代」だけでない!「南北朝の争乱の時代」もそうだ!(179頁)
A 百田尚樹『日本国紀』は、「実力次第でのし上がれるという、日本史上に類を見ない『戦国』の時代となった」(百田134頁)と述べる。だが「実力次第でのし上がれるという、日本史上に類を見ない」時代は「戦国時代」だけでない。「南北朝の争乱の時代」もそうだ。「貴種」身分(Ex. 天皇)の分裂、「司・侍」身分の対立、「バサラ」の登場、近畿一円の「悪党」の登場など、古い価値観が崩れ実力次第でのし上がれる時代だった。
A-2 浮世氏は、百田氏について、《「人気作家による作品の量」によって「歪められた」見方》をそのまま受け入れていると批判する。

(48)-2 百田氏の誤り:①早雲は「関東一円」を支配していない、②早雲は「下克上」していない!(180-182頁)
B 百田氏は「早雲が関東一円を支配する大名となった過程は下克上そのものだ」(百田136頁)と述べる。だが①早雲は「関東一円」を支配していない。早雲は「伊豆と相模」を支配しただけだ。(「関東一円」の支配は早雲の死後だ。)②早雲は「下克上」していない。北条早雲(早雲の死後、北条姓となる、号は早雲庵宗瑞)の本名は伊勢盛時であり、彼は将軍家の「政所」を務める伊勢氏出身だ。彼は将軍家の命令で、今川家の相続争いの解決・調停に派遣される。その後、今川家は伊勢盛時(北条早雲)を家臣とする。伊勢盛時(北条早雲)は、伊豆の国の混乱(足利家の内紛)の解決を幕府から命じられ、今川氏から兵を借り伊豆に侵入する。(「北条早雲の伊豆入り」は幕府中央の権威に基づくものであり、「下克上」ではない!)

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