くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

もったいなさ

2005-06-10 17:34:27 | エッセイ

 一つ前の記事に、みなさんが素晴らしいコメントを寄せてくれました。中でもkiyominaさんのコメントは、柔らかく示唆する部分があって、とても刺激を受けましたよ。
 建築の仕事をしていると、「資材がもったいないなあ」と感じることが多いです。分かりやすい例として、例えばモーターショウなどの展示会。そのときの設計通りに、木材やアルミパイプを使って展示ブースを作っていくのですが、これは会期が終われば殆どを、ゴミ屋さんに処分させてしまうのです。

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 合板や垂木(いずれも安価)を使っているとしても、もう少していねいに解体して、また次の現場で使えばいいのにと思ってしまう。しかし、一度使った材料を再利用するには、解体にも再利用にも、非常に手間が掛かるのですけどね。
 この“もったいなさ”は何も建築に限ったことではなくて、スピードと能率を求められる仕事では、必ず発生していると思います。ケチケチせずにたっぷりと使うからこそ、いい仕事が出来るのも事実なのです。
 しかし、コメントをくれたkiyominaさんは、そういう従来の考え方そのものが何か間違っているんじゃないか、と提案しているのですね。これは環境保全が大事にされ始めた昨今でも、実に奥の深いテーマだと思います。消費文化そのもののアンチテーゼなのです。

 ところで、これは何に見えますか?

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 高級な装飾素材のべっこうと大理石に見えるのだけれど、これは木材に描いたフェイク(にせもの)なのです。

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Photograph of effects from Crown with goodwill.

 元の素材はベニヤでも何でもいい。いずれも、想像力と追求心をもって塗装を施したのです。いずれ解体してしまうものなら、これでいいと思う。
 僕は以前、ドルチェ&ガッバーナの東京本店の工事をやったことがあるのだけれど(そのときのおもしろエピソードは三人のイタリア人参照)、あれだけ手間と時間を掛けて塗り上げた見事なストゥッコ壁が、手入れが大変ということで、二年前に行ったときには上からペンキが塗られていました。

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「それなら初めからそうしろよ」とも思ったのだけど、最初から安い作りには出来ないしなあ(ドルチェ&ガッバーナは高級ブティックです)。そんなときにフェイクを使うのも一つの解決法だと思います。
 そして建築の世界も、少しずつ変わりつつあります。木材を切り出す規格を変えて、無駄のないようにしたり、使い回しの出来る材料を揃えたり。街の再開発でも、むやみに解体、新築をせずに、昔の美しい瓦屋根家屋が目立つように装飾壁を取り外して、電柱を埋設したり。そういうことでも仕事は出来るし、ちゃんとお金も回りますよね。

追:この記事は廃材などから作品を創り上げるTommyさんの『小沼デザインワークス工房日記 』「あうん制作中」にトラックバック♪