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11月8日薬学部6年制

平成16年度から、薬学部に6年制が導入される。併せて経過措置として、既存の4年制学部もそのまま併設されることが決まっている。平成22年度からは薬剤師の資格を得るための薬剤師国家試験の受験資格は、原則6年制の学部を卒業したものに限られることとなる。経過措置の間は、4年制の学部を卒業し更に修士課程2年間を修了すれば、受験資格が得られる。我々日本国民が享受する医療の質を向上させるためには、薬学の専門家である薬剤師の力が今まで以上に必要であり、その為のハイレベルな即戦力を養成することを目的として、6年制学部の導入が始まるとされているのだ。

延長される2年間の主な目的は、臨床実習とされている。既存の4年制学部卒では、病棟業務や職能を生かした調剤業務を行なうことは非常に難しいとの見地から、薬剤師が医療事故ゼロかつ有益な治療を施すための一端を担う、真のスペシャリストであるための教育を行なうことが、本来の趣旨とされる。一見、前向きな話のようだが、実は、まだまだ未知の部分が多く、制度の先行きはあやうい。

併せて4年制学部も存続させる意味は、薬学の研究者を育てることを目的とするとある(経過措置で、平成16年から数えて12年間の間には4年制学部はなくなるとされている)。早く学部を卒業させて、研究過程に進学できるようにという意味らしい。説得力があるようなないような話だ。4年制学部卒のままでは、薬剤師国家試験は受験できないのだから。4年制学部に入学した学生が、途中、研究者への道ではなく、臨床薬剤師の道を選択しようと思っても、6年制学部に編入することは、原則できない。とすれば準薬剤師?

論理に矛盾が多すぎる。一体、何が本当の目的なのか、さっぱりわからない。現在、現場では、薬剤師は不足している。過去数年間の間に、そんな現状に目をつけて薬学部が幾つも新設された。しかし、現存する薬学部の全てが、薬学部6年制の趣旨に合致した薬学教育を施すことが可能であるかは、極めて不透明だ。むしろ、普通に考えれば、それは無理だと思う。ところが、大半の薬学部が、6年制学部を新設することを決定あるいは検討中なのだ。

我が国の医療現場で、薬剤師が益々活躍できる可能性が広がることは、画期的で非常に喜ばしいことだ。そのための制度の現状打破は、大いに歓迎されるべきことだが、理論が体系的に整理されず、薬剤師の職能に対する客観的裏づけを見出せないままの制度改革では、見切り発車としか言いようがなく、現場を知る薬剤師の多くは、6年制学部創設について、すなおに受け入れるということにはならない。

医療現場で働く専門職として、薬剤師が豊富な知識を有することは言うまでもないことだ。しかし、知識さえ豊かであれば、有能な薬剤師かと言えば、必ずしもそうではない。医師もそうだと思うのだが、現場での患者さんとのヒューマンリレーションこそが、医療の本質だと私は思う。患者さんが、うわべだけではなく心底信頼できる医師あるいは薬剤師に出会った時、患者さんにとって最高の医療が施されると私は信じている。薬学教育の年数を増やすだけでは解決できないものもあるということを、肝に銘じなければならないと思う。

医療の分野では、学生時代の知識の詰め込みもさることながら、むしろ生涯教育にこそ重点を置き、医療人としての人間力アップに力を注いでいくべきだと私は思う。人間力は、一朝一夕には培えるものではない。私も現役薬剤師として日々研鑚に務め、真の意味で質の高い医療の提供に寄与していきたい。政治を志す上においても、薬剤師としての心構えをベースに、果敢にそして謙虚に、体制に惑わされることなく取り組んでいきたいと思っている。

既に衆参両院で可決されているにもかかわらず、可決した議員ですらも、薬学部6年制の意義について明確に答弁できる人はおそらくいない。部会や審議会の席に、学識経験者と同等の、現場で働く現役薬剤師をそろえることが必要なのだ。医療事故ゼロかつより有益な治療を国民が享受できるために、国会では、現場の声も届く透明な議論を重ねていくことが何より重要だと、私は思う。今からでも遅くはない。私も議員に働きかけたい。
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