食品偽装表示 11月12日

現代社会には、あまりにも嘘が氾濫している。オレオレ詐欺しかり、温泉表示しかり、ダイエット商品しかり、政治家の学歴しかり、公約しかり。しかも、その殆どが、平気で堂々とまかり通っていて、私たちが直接被害を被ることも少なくないから恐い。私たち1人1人が確固たる洞察力を持ち、その可否を見極める力を持たなくして、難を逃れる術はない。

高級品として、しゃぶしゃぶなどに愛用される黒豚の特産地は、鹿児島県だ。今年3月、カナダ産のバークシャー(黒豚)を、鹿児島産黒豚と偽装して販売していたことが発覚した。しかも、その後の調査で、なんと、㈱組合貿易という100%全農の子会社が共犯(!?)ときたら、驚かないわけにはいかない。この会社は、カナダ産のみならずアメリカ産黒豚も、鹿児島産黒豚と偽装されることを承知の上で供給していたことがわかっている。

本来ならば、日本国内の黒豚畜産農家の利益確保に重点を置かねばならないはずの全農が、事実上、輸入黒豚の販売に力を入れていたということは、犯罪への加担と同時に、我が国の農家を守るどころか、利益のためなら手段を選ばぬ、不誠実で信頼におけない悪質な経営を行なっていたということを物語っている。全国のスーパーの店頭に並んでいた鹿児島産黒豚が、実はカナダ産やアメリカ産だったと聞いて、怒らない消費者はいないだろう。これは紛れもなく、消費者への詐欺行為だ。

そしてもう1つ。香川の観光の目玉として全国にPRしてきた、さぬきうどんだ。JA香川が販売するさぬきうどんの原料は、これまで香川産小麦「さぬきの夢2000」を、100%使用しているとしてきた。ところが先日、原料の小麦の約8割は、オーストラリア産小麦を使用していたことが発覚した。由々しき事態だ。

本来、日本の農業の要であるはずのJAが、産地偽装という消費者をターゲットにした犯罪行為を平然と行なってきたことは、決して許されるべき問題ではない。明らかに、消費者をバカにしている。

遡れば、西宮冷蔵が内部告発した、雪印牛肉偽装事件を思い出す。BSE問題で国産牛を買い取るとした政府に、雪印が、輸入オーストラリア産牛肉を国産牛と偽って買い取らせようとした詐欺事件だ。その後もハンナン事件、フジチク事件と、詐欺事件は拡大し続けている。いつの時代も、産地を偽って、利益を上げようとする性質の悪い業者はいるものだ。特に今回は、JAをはじめ食肉組合や大手企業が確信犯だったところに、事態の深刻さを感じる。私たち消費者は、何を信じて購入すれば良いのだろう?

無添加と表示してあっても、いつまでたっても腐らない果実エキスには、正直、寒気を覚える。松阪牛といっても、松阪から遠く離れて育った牛で、なおかつオスだったとしても、私たちには判断がつかない。消費者を惑わす食物は、山ほどある。産地偽造は明らかに犯罪だが、私たち消費者が、スーパーの表示に対してもっとこだわりを持ち、消費者の力を更に強化しなければ、おそらくいつまでたっても事態は改善されないままだろう。

BSE問題で、日本の牛にはID番号が付けられて、すべての牛のルーツがわかる仕組みになっている(はずだ)。店頭に並ぶ段階で、肉や野菜の産地や生産者を明確に表示するため、表示基準の強化を図る法整備と総点検が必要だ。そうなれば、地産地消も推進され、都市部と農村部との循環も活発化し、真の意味での地域経済の自立・発展にもつながるのではないかと、私は思う。
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