都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「アートと音楽」 東京都現代美術館
東京都現代美術館
「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」
2012/10/27~2013/2/3
東京都現代美術館で開催中の「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」へ行ってきました。
アートと音楽。一見、別物のように思える両者も、昨今においては、むしろ互いに関わり合いながら、新たな表現を志向しているかもしれません。
本展ではそうしたアートと音楽の垣根を超えた地平を、国内外の気鋭のアーティストたちが追求します。
作品の殆どが視覚と聴覚の双方に訴えかけるメディアアート、インスタレーションです。あまり難しく向き合わず、感覚的に楽しむことにしました。
セレスト・ブルシエ=ムジュノ「バリエーション」2009年 *ピナコテカ(サンパウロ)での展示風景
掴みはOKです。冒頭のセレスト・ブルジェ=ムジュノの「クリナメン」に魅了された方は多いのではないでしょうか。
ホワイトキューブにぽっかりと出現した水色のプール。そこには大小様々な白い磁器のボールが浮かび、互いにぶつかり合いながら、カランコロンと音を奏でています。
ボールがぶつかるのは何も凝った仕掛けがあるわけではありません。
種はプールの水。噴き出し口から勢い良く出ることで、ちょうど流水プールのような流れが出来ているのです。
陶器の奏でる心地よい響き。プールの形にモネの描く蓮池を連想しながら、しばし耳を傾けました。
クリスティーネ・エドルンドは植物が攻撃を受けた時に分泌する物質や信号を、音やイメージへ変換します。
クリスティーネ・エドルンド「セイヨウイラクサの緊急信号」 2010年
ドローイングの他、映像が展示されていましたが、何本かの線が並行になって進む様はまるで楽譜。突き詰めれば音も一つの信号ですが、植物との接点は意外性がありました。
音とイメージとの関係をアニメーションで表現したのが大西景太です。
林立する小さな12のフレーム、そこにはモノクロームのアニメーションによって、球体が階段を駆け上がり、また小さな花火が上がるような映像が映されています。
そこに音が加わるわけです。花火はポンポン、震える箱はシャカシャカ。12のフレームから様々な音が発せられます。
どこかコミカルな動きと音。シンプルな装置でしたが、そこから引き出されるイメージはなかなか多様でした。
さて本展の核心に進みましょう。それがクレーにカンディンスキー、そして武満、ゲージ、さらには高松次郎へと進むB2フロアの展示に他なりません。
ワシリー・カンディンスキー「E.R.キャンベルのための壁画No.4の習作(カーニバル・冬)」1914年 宮城県美術館
ここでは音楽的イメージを絵画に起こそうと試みたクレーらの20世紀絵画を筆頭に据え、武満がグラフィックデザイナーでもある杉浦康平と制作した図形楽譜、「ピアニストのためのコロナ」、そしてゲージの「4分33秒」のスコアなどが紹介されています。
中でも特に面白いのが高松次郎がデザインしたという楽器、「パロール・シンガー」です。
一言語一音階。まるでオルガンと巨大なタイプライターと合わせたような姿しているではありませんか。
また1974年には谷川俊太郎や高橋アキと共同し、この楽器を使って演奏会を行ったという記述も。残念ながら展示では演奏会の様子までは分かりませんが、まさか高松次郎がこのような楽器を作っていたとは知りませんでした。
さてゲージの4分33秒を素材に、演奏者と観客、さらには音を通して、作品と我々見る者との立ち位置を巧みに揺さぶってくるマノン・デ・ブールの「二度の4分33秒」が極めて秀逸です。
タイトルの通り、4分33秒の演奏を二度に渡って映した作品、ここで細かには触れませんが、一度目と二度目の音響世界、その変化には目を見張るならぬ耳を疑うような驚きがあります。
聴いていたはずの作品の中の音場が、いつしか今、自分のいる現代美術館への空間へと移り変わるのです。これは実にスリリング。
実は密かに4分33秒好きで、CDまで購入したこともある私にとっては、この映像に出会えただけでも良かったと思いました。
お馴染み「氷のレコード」の八木良太と、同じくレコードを用いながらも、素材に木材を取り込んだバルトロメウス・トラウベックの対比的な展示も目を引きます。
八木良太、バルトロメウス作品のデモ演奏について(MOT STAFFブログ)
アトリウムでの「大友良英リミテッド・アンサンブル」も巨大な吹き抜けを効果的に利用しています。
大友良英+青山泰知「without records」2012年 *ナムジュン・パイク・アートセンターでの展示風景
林立するポータブルレコードプレイヤーの森。機械仕掛けの紐やロープが絡み、ピアノが突如音を奏でる瞬間。しばし時間を忘れて彷徨ってしまいました。
総合アドバイザーの坂本龍一のインスタレーションが今ひとつ伝わってきませんでしたが、アートと音が行き交い、連動する場は、思いの他に魅惑的でした。
2月3日まで開催されています。
「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」 東京都現代美術館(@MOT_art_museum)
会期:2012年10月27日(土) ~2013年2月3日(日)
休館:月曜日。但し12月24日、1月14日は開館。*12月25日、年末年始(12月28日~1月1日)、1月15日は休館。
時間:10:00~18:00
料金:一般1100円 、大学生・65歳以上850円、中高生550円、小学生以下無料。
*20名以上の団体は2割引。
*「MOTアニュアル2012」との共通券:一般1500円、大学生・65歳以上1200円、中高生700円。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」
2012/10/27~2013/2/3
東京都現代美術館で開催中の「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」へ行ってきました。
アートと音楽。一見、別物のように思える両者も、昨今においては、むしろ互いに関わり合いながら、新たな表現を志向しているかもしれません。
本展ではそうしたアートと音楽の垣根を超えた地平を、国内外の気鋭のアーティストたちが追求します。
作品の殆どが視覚と聴覚の双方に訴えかけるメディアアート、インスタレーションです。あまり難しく向き合わず、感覚的に楽しむことにしました。
セレスト・ブルシエ=ムジュノ「バリエーション」2009年 *ピナコテカ(サンパウロ)での展示風景
掴みはOKです。冒頭のセレスト・ブルジェ=ムジュノの「クリナメン」に魅了された方は多いのではないでしょうか。
ホワイトキューブにぽっかりと出現した水色のプール。そこには大小様々な白い磁器のボールが浮かび、互いにぶつかり合いながら、カランコロンと音を奏でています。
ボールがぶつかるのは何も凝った仕掛けがあるわけではありません。
種はプールの水。噴き出し口から勢い良く出ることで、ちょうど流水プールのような流れが出来ているのです。
陶器の奏でる心地よい響き。プールの形にモネの描く蓮池を連想しながら、しばし耳を傾けました。
クリスティーネ・エドルンドは植物が攻撃を受けた時に分泌する物質や信号を、音やイメージへ変換します。
クリスティーネ・エドルンド「セイヨウイラクサの緊急信号」 2010年
ドローイングの他、映像が展示されていましたが、何本かの線が並行になって進む様はまるで楽譜。突き詰めれば音も一つの信号ですが、植物との接点は意外性がありました。
音とイメージとの関係をアニメーションで表現したのが大西景太です。
林立する小さな12のフレーム、そこにはモノクロームのアニメーションによって、球体が階段を駆け上がり、また小さな花火が上がるような映像が映されています。
そこに音が加わるわけです。花火はポンポン、震える箱はシャカシャカ。12のフレームから様々な音が発せられます。
どこかコミカルな動きと音。シンプルな装置でしたが、そこから引き出されるイメージはなかなか多様でした。
さて本展の核心に進みましょう。それがクレーにカンディンスキー、そして武満、ゲージ、さらには高松次郎へと進むB2フロアの展示に他なりません。
ワシリー・カンディンスキー「E.R.キャンベルのための壁画No.4の習作(カーニバル・冬)」1914年 宮城県美術館
ここでは音楽的イメージを絵画に起こそうと試みたクレーらの20世紀絵画を筆頭に据え、武満がグラフィックデザイナーでもある杉浦康平と制作した図形楽譜、「ピアニストのためのコロナ」、そしてゲージの「4分33秒」のスコアなどが紹介されています。
中でも特に面白いのが高松次郎がデザインしたという楽器、「パロール・シンガー」です。
一言語一音階。まるでオルガンと巨大なタイプライターと合わせたような姿しているではありませんか。
また1974年には谷川俊太郎や高橋アキと共同し、この楽器を使って演奏会を行ったという記述も。残念ながら展示では演奏会の様子までは分かりませんが、まさか高松次郎がこのような楽器を作っていたとは知りませんでした。
さてゲージの4分33秒を素材に、演奏者と観客、さらには音を通して、作品と我々見る者との立ち位置を巧みに揺さぶってくるマノン・デ・ブールの「二度の4分33秒」が極めて秀逸です。
タイトルの通り、4分33秒の演奏を二度に渡って映した作品、ここで細かには触れませんが、一度目と二度目の音響世界、その変化には目を見張るならぬ耳を疑うような驚きがあります。
聴いていたはずの作品の中の音場が、いつしか今、自分のいる現代美術館への空間へと移り変わるのです。これは実にスリリング。
実は密かに4分33秒好きで、CDまで購入したこともある私にとっては、この映像に出会えただけでも良かったと思いました。
お馴染み「氷のレコード」の八木良太と、同じくレコードを用いながらも、素材に木材を取り込んだバルトロメウス・トラウベックの対比的な展示も目を引きます。
八木良太、バルトロメウス作品のデモ演奏について(MOT STAFFブログ)
アトリウムでの「大友良英リミテッド・アンサンブル」も巨大な吹き抜けを効果的に利用しています。
大友良英+青山泰知「without records」2012年 *ナムジュン・パイク・アートセンターでの展示風景
林立するポータブルレコードプレイヤーの森。機械仕掛けの紐やロープが絡み、ピアノが突如音を奏でる瞬間。しばし時間を忘れて彷徨ってしまいました。
総合アドバイザーの坂本龍一のインスタレーションが今ひとつ伝わってきませんでしたが、アートと音が行き交い、連動する場は、思いの他に魅惑的でした。
2月3日まで開催されています。
「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」 東京都現代美術館(@MOT_art_museum)
会期:2012年10月27日(土) ~2013年2月3日(日)
休館:月曜日。但し12月24日、1月14日は開館。*12月25日、年末年始(12月28日~1月1日)、1月15日は休館。
時間:10:00~18:00
料金:一般1100円 、大学生・65歳以上850円、中高生550円、小学生以下無料。
*20名以上の団体は2割引。
*「MOTアニュアル2012」との共通券:一般1500円、大学生・65歳以上1200円、中高生700円。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 「MOTアニュア... | 「川俣正 Exp... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません |