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「黄金町バザール2015」 横浜日ノ出町~黄金町界隈

京急線日ノ出町駅から黄金町駅間の高架下スタジオ、周辺のスタジオ、既存の店舗、屋外、他
「黄金町バザール2015ーまちとともにあるアート」
10/1-11/3



「黄金町バザール2015」を見てきました。

2008年より横浜市中心部、主に京急線の日ノ出町から黄金町駅の高架下付近にて行われている黄金町バザール。今年で8回目の開催です。

テーマは「まちとともにあるアート」。11組の現代アーティストの展示のほか、「まちプロジェクト」と題し、クリエーターらが既存の建物をリノベーションして公開。街の歴史や未来を見定める取り組みも行われています。


「黄金町バザール」案内看板

さて黄金町バザール、会場は一カ所ではありません。町名では日ノ出町と黄金町。さらに初音町も加わります。長さからすれば500メートルほどです。展示スペースはほぼ京急線の高架下に沿って点在しています。

観覧の前にパスポートの購入が必要です。一律500円。期間中何度でも有効です。購入可能箇所は3カ所。日の出スタジオと高架下スタジオのSite-AとSite-D。私は最も黄金町駅寄りのスタジオSite-Aで購入しました。

あとはパスポートの地図を片手に展示を見て回るという仕掛けです。特に順路もありません。古い建物も多く残る界隈。黄金町バザールと記された黄色い幟を目印にして各展示会場へと向かいました。


グエン・ホン・ゴック「Women Dance for Desire」 2015年

まずは大平荘スタジオ。ベトナムのグエン・ホン・ゴックです。題して「Women Dance for Desire」。映像です。何やら編み目状のシルエットになって動く人々。踊り子、いずれも和装でした。盆踊りでしょうか。「黄金町のまちの歴史への接触を試みる」(パスポートより)というグエン。ひょっとすると界隈の盆踊りからインスピレーションを受けたのかもしれません。


大平荘 入口

同じく大平荘では一級建築士事務所の中村建築が驚きのリノベーションを展開しています。古い木の玄関戸。何か来る者を阻むかのような構えです。靴を脱いではおそるおそる中へ入ってみました。


一級建築士事務所中村建築「ROOM BATHTUB」 2015年

するとがらんとした真っ白の空間が広がっているではありませんか。何と「バスタブ」です。完全防水加工。部屋全てが浴室と化しています。ゆえに水を流してもOK。水浴びも出来るそうです。とは言え、何も本当に水をためて利用するわけでもありません。アーティストレジデンスです。つまりは防水ゆえに塗料や染色などの液体を利用した創作活動も可能というわけです。今後はアーティストが「バスタブ」に滞在しては作品を制作するのかもしれません。


キム・ウジン「素晴らしく。新しい体操プロジェクト-素晴らしく。新しい。体操広報館」 2015年

八番館では3名のアーティストが作品を公開しています。2階にはキム・ウジン。日本のラジオ体操と韓国の国民体操を題材にした映像インスタレーションを展示しています。


メリノ「戴冠式」 2015年 ほか

そして1階ではメリノ。一転しての瞑想的なテンペラの絵画です。架空のエピソードを組み入れては物語を作り上げるという作家。仮想の村での生活でしょうか。タッチは実に繊細です。煌めく箔も美しい。神秘的な雰囲気が漂っていました。


ヴェレナ・イセル「隠された目的」 2015年

そしてヴェレナ・イセル。ドイツ人のアーティストです。八番館に特徴的な小部屋を用いてのインスタレーションを見せています。既存の照明などの素材が彫刻と化します。ぶら下がる輪に丸椅子。床にもオブジェが置かれています。足の踏み場も躊躇するほどでした。


ザン・ジン 展示風景

初音スタジオではザン・ジンが黄金町の歴史をデジタルで表現しています。赤いライトに照らされた部屋。蜘蛛の巣のようなオブジェもあります。そして壁には様々な色に分けられた映像が投影されていました。一見、幾何学的な紋様です。灯っては消えます。ただよく見ると黄金町、京急線の路線の位置を示すシールが貼られていました。


「黄金町バザール」界隈

かつてはいわゆる売春の町として知られた黄金町。今でこそ通称「バイバイ作戦」により一掃されましたが、独特の町並みしかり、当時の記憶なり歴史を僅かでも伝える場所は少なくありません。入り組んだ路地の奥にある古びて使われなくなった建物。それも黄金町バザールの舞台の一つでもあります。


岩竹理恵 展示風景

そうした言わば目立たない建物を利用したのが岩竹理恵です。意味ありげなカウンターに格子窓。人が一人や二人も入ってしまえばいっぱいになるようなスペース。そこで写真や絵葉書などを用いたコラージュ作品を展開しています。


ジョセフ・ガブリエル 展示風景

日の出スタジオのジョセフ・ガブリエルのインスタレーションに惹かれました。スタジオの2階、上には京急線の高架が迫ります。その狭間を用いた作品です。素材は土にコンクリート。白い石が敷き詰められ、所々に何やら庭石を模したオブジェも見えます。枯山水、あるいは苔の庭のイメージでしょうか。石は水の流れを模してもいます。頭上には電車の走行する場所に突如現れた日本庭園。しばし滞在してしまいました。


KSA / kakita jun + sumitani motoko「日ノ出町アートブックライブラリー」

ほかには小さな本棚を器用に組上げて「日ノ出町アートブックライブラリー」なる図書館を作ったKSA / kakita jun + sumitani motokoも面白い。建築的な提案の作品もなかなか魅せるものがあります。


ヤマグチオサム 壁画

少し離れた平戸桜木道路沿いではヤマグチオサムが壁画を描いていました。何でもかつては落書きがあった場所。そこに「夏色」をベースとした抽象的な色面を落としこんでいます。これも一つの町の再生ということなのでしょうか。


國武美久「インフォメーション」

パスポートにはスタンプラリーもあり、観覧に加えて、界隈の商店を一定度利用すると、オリジナルグッズがプレゼントされるそうです。さながら町歩きを楽しみながら出かけるのも良いかもしれません。

なおアンケートに答えるといただける「黄金町読本2014」(横浜市立大学発行)が良く出来ています。



黄金町界隈の長い歴史とともに、地域の人々のインタビュー、また関係者による座談会などが全130ページにも渡って掲載されています。黄金町バザールへの理解を深めるためにも有用ではないでしょうか。


「黄金町バザール」界隈

途中で触れましたが、狭い展示室が多く、階段での上下移動もたくさんあります。動きやすく、また脱ぎやすい靴での観覧をおすすめします。

11月3日まで開催されています。

「黄金町バザール2015ーまちとともにあるアート」@koganechobazaar) 京急線日ノ出町駅から黄金町駅間の高架下スタジオ、周辺のスタジオ、既存の店舗、屋外、他
会期:10月1日(木)~11月3日(火・祝) 
休館:10月5日(月)、10月13日(火)、10月19日(月)、10月26日(月)。
時間:11:00~18:30
料金:当日500円。パスポート制。会期中有効。
住所:横浜市中区日ノ出町2-158(認定NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター)
交通:京急線日ノ出町駅または黄金町駅より徒歩約3分。JR線・横浜市市営地下鉄桜木町駅より徒歩15分。
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