都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「Kawaii 日本美術」 山種美術館
山種美術館
「Kawaii 日本美術」
1/3-3/2 *前期:1/3~2/2 後期:2/4~3/2

主に日本画表現の「かわいい」に着目。室町期の絵巻から若冲、盧雪らの江戸絵画を経て、近代日本画までを辿る。日本美術における「かわいい」の諸相を俯瞰する展覧会でもあります。
年初より始まっていた展示。うっかり行きそびれていました。既に会期も最終盤、後期での観覧です。「Kawaii 日本美術」展を見て来ました。
さて会場、冒頭に迎えてくれるのが若冲の「伏見人形図」。チラシ表紙にも掲載。図版などでもお馴染み。若冲の移り住んだ伏見の土産物として知られる人形をモチーフにした作品でもあります。
もちろんここで若冲は単に人形を置物として描くわけではなく、命を吹き込んでいる。てくてくと連なって歩く姿。かわいいというよりもユーモラスと言っても良いのでしょうか。思わずにんまりさせられます。

上村松園「折鶴」(部分)1940(昭和15)年頃 絹本・彩色 山種美術館
さて「Kawaii」展、三部構成ですが、初めはこども。人物表現におけるかわいいを眺めます。上村松園の「折鶴」はどうでしょうか。折り紙で遊ぶ母子。子どもは夢中になりながら屈んで取り組む。微笑ましい様子です。しかしながらここは松園。例えば母の気品に溢れた佇まい。折鶴を折る指先の何と美しきことか。見惚れます。
それにしても一括りに子どもとはいえ、表現は様々です。川端龍子の「百子図」を見て驚きました。巨大な画面の中央には大きな象が一体。その周囲を子どもたちが取り囲んでは嬉しそうにしている。象と子どもの渾然一体とした姿。何でも昭和24年にインド象が上野動物園にやって来た際、大変な話題となったことに取材した作品だそうです。大変な迫力でした。
子どもの次は生き物へ。奥村土牛です。他の追従を許さない山種の土牛コレクション。さすがに良品が出ています。まずは「栗鼠」。しっぽをくるっと振り上げたリス。木の枝にちょこんとのっています。

奥村土牛「兎」1947(昭和22)年頃 絹本・彩色 山種美術館
またもう一点、土牛で挙げたいのが「うさぎ」です。会場では隣り合わせに2点、うさぎを描いた作品が出ていましたが、私が惹かれるのは1947年の作。黒く丸まったうさぎ。紅色の芥子の花との取り合わせ。耳をぴんとたてて、何かを待つかのように彼方を見据えている。澄んだ瞳。その美しさ。思わず吸い込まれそうになります。

伊藤若冲「樹花鳥獣図屏風」(部分)18世紀(江戸時代) 紙本・彩色 静岡県立美術館 *後期展示:2/4~3/2
若冲の象さん屏風、「樹花鳥獣図屏風」が山種美術館へやって来ました。本作は言うまでもなくプライスコレクションの「鳥獣花木図屏風」などと並び、若冲のいわゆる枡目描き屏風として知られるもの。専門家の間では両屏風を廻って様々な議論もある。伝来を廻っては謎めいた点もある作品です。
私は2作を比べると、率直にこの「樹花鳥獣図屏風」が好きですが、改めて見てもやはりどこか若冲ならではの『鋭さ』が感じられるもの。大きく羽ばたく鳳凰の躍動感。そして長い鼻をニョロリとのばした象。また大見得を切る鶏。後方への広がりがあるのも「樹花鳥獣図屏風」。見通しが良い。確かに部分を切り取れば、全般に動物が丸みを帯びた「鳥獣花木図屏風」の方がかわいいかもしれません。ただやはり「樹花鳥獣図屏風」にも魅力がある。そして新生山種の効果的な照明に展示ケース、目と鼻の先での観覧です。久々にじっくりと堪能しました。
小さきものを慈しむ気持ち。雀をモチーフにした作品に目が止まりました。牧進の「明り障子」はどうでしょうか。障子越し、水仙の生い茂る庭に雀が何匹もちょこちょこ歩いている。これは作者自らが庭で飼っていた雀、その名もピー太を描いたものとか。雀は写実的。一方で水仙が並ぶ様は意匠的でもある。そして図版ではまるで分かりませんが、土の描写が実に巧みです。細い筆を横に重ねているのでしょうか。まるでさざ波のような紋様が描かれています。

谷内六郎「にっぽんのわらべうた挿絵原画 のうち『ほ、ほ、ほたるこい』」1970(昭和45)年頃 厚紙・水彩 谷内達子氏所蔵
ラストは矢谷六郎から熊谷守一へ。また象牙や木で出来た江戸期の工芸品なども展示されています。主に館蔵の日本画、一部館外品を交えての展示。楽しめました。
それにしても会期は残すところあと一週間。さすがに大賑わいです。ロッカーはいっぱい、入口ではチケット購入待ちの列も出来ています。

竹内栖鳳「みゝづく」1933(昭和8)年頃 絹本・彩色 山種美術館
とは言え、館内は若冲の「樹花鳥獣図屏風」や一部の絵巻を除けば、特に列があるわけでもありません。確かに混雑はしていましたが、思っていたよりはスムーズに見られました。
「関山御鳥(日本画家)についての情報を求めています」(はろるど)
3月2日まで開催されています。
「Kawaii 日本美術」 山種美術館(@yamatanemuseum)
会期:1月3日(金)~3月2日(日) 前期:1/3~2/2 後期:2/4~3/2
休館:月曜日(但し1/13は開館、1/14は休館。)
時間:10:00~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1200(1000)円、大・高生900(800)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。
「Kawaii 日本美術」
1/3-3/2 *前期:1/3~2/2 後期:2/4~3/2

主に日本画表現の「かわいい」に着目。室町期の絵巻から若冲、盧雪らの江戸絵画を経て、近代日本画までを辿る。日本美術における「かわいい」の諸相を俯瞰する展覧会でもあります。
年初より始まっていた展示。うっかり行きそびれていました。既に会期も最終盤、後期での観覧です。「Kawaii 日本美術」展を見て来ました。
さて会場、冒頭に迎えてくれるのが若冲の「伏見人形図」。チラシ表紙にも掲載。図版などでもお馴染み。若冲の移り住んだ伏見の土産物として知られる人形をモチーフにした作品でもあります。
もちろんここで若冲は単に人形を置物として描くわけではなく、命を吹き込んでいる。てくてくと連なって歩く姿。かわいいというよりもユーモラスと言っても良いのでしょうか。思わずにんまりさせられます。

上村松園「折鶴」(部分)1940(昭和15)年頃 絹本・彩色 山種美術館
さて「Kawaii」展、三部構成ですが、初めはこども。人物表現におけるかわいいを眺めます。上村松園の「折鶴」はどうでしょうか。折り紙で遊ぶ母子。子どもは夢中になりながら屈んで取り組む。微笑ましい様子です。しかしながらここは松園。例えば母の気品に溢れた佇まい。折鶴を折る指先の何と美しきことか。見惚れます。
それにしても一括りに子どもとはいえ、表現は様々です。川端龍子の「百子図」を見て驚きました。巨大な画面の中央には大きな象が一体。その周囲を子どもたちが取り囲んでは嬉しそうにしている。象と子どもの渾然一体とした姿。何でも昭和24年にインド象が上野動物園にやって来た際、大変な話題となったことに取材した作品だそうです。大変な迫力でした。
子どもの次は生き物へ。奥村土牛です。他の追従を許さない山種の土牛コレクション。さすがに良品が出ています。まずは「栗鼠」。しっぽをくるっと振り上げたリス。木の枝にちょこんとのっています。

奥村土牛「兎」1947(昭和22)年頃 絹本・彩色 山種美術館
またもう一点、土牛で挙げたいのが「うさぎ」です。会場では隣り合わせに2点、うさぎを描いた作品が出ていましたが、私が惹かれるのは1947年の作。黒く丸まったうさぎ。紅色の芥子の花との取り合わせ。耳をぴんとたてて、何かを待つかのように彼方を見据えている。澄んだ瞳。その美しさ。思わず吸い込まれそうになります。

伊藤若冲「樹花鳥獣図屏風」(部分)18世紀(江戸時代) 紙本・彩色 静岡県立美術館 *後期展示:2/4~3/2
若冲の象さん屏風、「樹花鳥獣図屏風」が山種美術館へやって来ました。本作は言うまでもなくプライスコレクションの「鳥獣花木図屏風」などと並び、若冲のいわゆる枡目描き屏風として知られるもの。専門家の間では両屏風を廻って様々な議論もある。伝来を廻っては謎めいた点もある作品です。
私は2作を比べると、率直にこの「樹花鳥獣図屏風」が好きですが、改めて見てもやはりどこか若冲ならではの『鋭さ』が感じられるもの。大きく羽ばたく鳳凰の躍動感。そして長い鼻をニョロリとのばした象。また大見得を切る鶏。後方への広がりがあるのも「樹花鳥獣図屏風」。見通しが良い。確かに部分を切り取れば、全般に動物が丸みを帯びた「鳥獣花木図屏風」の方がかわいいかもしれません。ただやはり「樹花鳥獣図屏風」にも魅力がある。そして新生山種の効果的な照明に展示ケース、目と鼻の先での観覧です。久々にじっくりと堪能しました。
小さきものを慈しむ気持ち。雀をモチーフにした作品に目が止まりました。牧進の「明り障子」はどうでしょうか。障子越し、水仙の生い茂る庭に雀が何匹もちょこちょこ歩いている。これは作者自らが庭で飼っていた雀、その名もピー太を描いたものとか。雀は写実的。一方で水仙が並ぶ様は意匠的でもある。そして図版ではまるで分かりませんが、土の描写が実に巧みです。細い筆を横に重ねているのでしょうか。まるでさざ波のような紋様が描かれています。

谷内六郎「にっぽんのわらべうた挿絵原画 のうち『ほ、ほ、ほたるこい』」1970(昭和45)年頃 厚紙・水彩 谷内達子氏所蔵
ラストは矢谷六郎から熊谷守一へ。また象牙や木で出来た江戸期の工芸品なども展示されています。主に館蔵の日本画、一部館外品を交えての展示。楽しめました。
それにしても会期は残すところあと一週間。さすがに大賑わいです。ロッカーはいっぱい、入口ではチケット購入待ちの列も出来ています。

竹内栖鳳「みゝづく」1933(昭和8)年頃 絹本・彩色 山種美術館
とは言え、館内は若冲の「樹花鳥獣図屏風」や一部の絵巻を除けば、特に列があるわけでもありません。確かに混雑はしていましたが、思っていたよりはスムーズに見られました。
「関山御鳥(日本画家)についての情報を求めています」(はろるど)
3月2日まで開催されています。
「Kawaii 日本美術」 山種美術館(@yamatanemuseum)
会期:1月3日(金)~3月2日(日) 前期:1/3~2/2 後期:2/4~3/2
休館:月曜日(但し1/13は開館、1/14は休館。)
時間:10:00~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1200(1000)円、大・高生900(800)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:渋谷区広尾3-12-36
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分。恵比寿駅前より都バス学06番「日赤医療センター前」行きに乗車、「広尾高校前」下車。
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