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「雨宮庸介 ムチウチニューロン」 TWS渋谷

トーキョーワンダーサイト渋谷渋谷区神南1-19-8
「TEAM 雨宮庸介 ムチウチニューロン」
6/28-8/31



雨宮庸介と言えば、あのひしゃげたリンゴを思い出しますが、今回はそれを使った奇妙なパフォーマンスを楽しむことが出来ます。渋谷のワンダーサイトで開催中の個展へ行ってきました。

白いカーテンに遮られた入口を抜けた瞬間からして、思わず体が仰け反ってしまうかのような見事な『掴み』が用意されていました。カーテンをくぐった後、直ぐさま展示室への『出口』と変化するのは、何ら変哲のないごく普通の縦長ロッカーです。そしてその先には、同じようなもう一つのロッカーと、おそらくはりんごの木をイメージした植木、または床に脱ぎ捨ててある白いシャツ、さらにはゴロゴロと転がるリンゴと、まるで統一感のない摩訶不思議な空間が待ち構えています。そして唯一、それこそアート的な様相を呈しているのは、スペース右正面にある、あたかもこの部屋を写す鏡のような一枚の巨大スクリーンです。そこではこの空間の言わば鏡面世界として、時に観客風の人物まで登場させながら、限りなく時間の緩やかな物語を映し出しています。しばらく見ていると、スクリーン中の人物がこちらを向いて正座し始めました。何やらこの部屋のどこかに隠しカメラがあって、その様子を時間差で放映しているかのようです。まずは見ているようで見られているとでも言える演出にて、その場に居合わせる者の身体的感覚をゆさゆさと揺さぶってきました。

さて、この先へ進むには、半ば『運』と『出会い』が必要でしょう。これまでの内容であれば、装置としてもそれなりに面白いインスタレーションという印象で終ってしまう面も否めませんが、さらにぼんやりとこの部屋で例のスクリーンを眺めていると突如、奥のロッカーの扉がそろりと開き、頭にはゴーグルをかけた、上半身の裸の妖し気な男性がゆっくりと現れました。そしてその手にはシンボル、リンゴを持っています。ようは、雨宮本人のパフォーマンスが始まったと言うわけでした。

内容についてはネタバレ感があるので触れませんが、パフォーマンス自体は、スクリーン内で展開されている内容とあえて相当に重複しています。雨宮がうろうろと動きながら立ち位置をかえ、さらにはロッカーを出たり入ったりしながら、リンゴと戯れ、またそのリンゴを通して観客とコンタクトをとっていくわけです。その意味について詮索する必要は殆ど不要でしょう。パフォーマンスとこの空間、そして観客とスクリーンの鏡面世界とが、微妙にズレながら、何とも噛み合ない全体を作り出していました。時間のずれ、空間の歪みを、一つのパフォーマンスを通して疑似体験するかのような面白さがあるのです。

もう一つ、奥の小部屋も見逃さないようにご注意下さい。そちらはこのパフォーマンスとは直接関係はありませんが、雨宮の一つの完成された耽美的な世界が広がっています。



今月末日までの開催です。ちなみに雨宮は土日の如何を問わず、ほぼ毎日在廊しているとのことですが、その『出現』時間は全くをもってランダム、ようは気の向くままであるのだそうです。これからご観覧の方の強運をお祈ります。
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