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「青山裕企 - ソラリーマン/undercover - 」 TWS本郷/和田画廊

トーキョーワンダーサイト本郷文京区本郷2-4-16
「青山裕企 ソラリーマン・オリンピック東京 2008」
8/2-24(会期終了)

和田画廊中央区八重洲2-9-8 近和ビル3階)
「undercover」
8/12-24(会期終了)

先日の日曜日まで、都内二カ所で開催されていた写真家、青山裕企(1978-)の個展です。半ば記号化された感のあるサラリーマンと女子高生を素材にしながらも、その先には対照的な世界観が広がっていました。



TWSの「ソラリーマン」はさながらアクション性の高い、パフォーマンスアート的な様相も感じられる展示と言えるでしょう。空飛ぶサラリーマン、言い換えて「ソラリーマン」と呼ばれるスーツ姿の男性が、どこでもありそうな道ばたにて、大げさにジャンプしたり、また壁を斜めに走って行くかような姿をとって写し出されています。スーツ、ビジネスバック、そして革靴と、ようはサラリーマンとしてのあるべきアイテムを完全なまでに身につけた彼らは、その飛び跳ねるという動き一つによって見事に別種の生き物、「ソラリーマン」へと変身してしまうわけです。ネクタイを締めた身なりと、真剣な表情そのものが、どう見てもジャンプという動きと似合いません。もちろんそのギャップに面白さがあるわけですが、上司にジャンプをせよと命ぜられれば、おそらくは力尽き果てるまで跳ね続けるのではないかと思えるほど、一心不乱になって宙を駆けていました。そしてその度合いが真に迫るほど、どこか悲哀を感じてしまうのは、まさに彼らが立ち止まることを許されない企業戦士の化身であるからなのかもしれません。



一方の和田画廊では、サラリーマンと同じく記号化された女子高生という素材を用いながら、「ソラリーマン」とは全く異なった、一つのシュールな絵画を見るような世界が展開されています。サラリーマンのスーツに対応する女子高生の完全必須アイテム、つまりは制服というものに身を包んだ彼女らは、スカートの裾をたくし上げたり、また足をさらけ出したりするなどして、どこか卑猥ともとれるポーズをとっていました。ただし今度はその動きがジャンプのように単純ではありません。突如、教室のロッカーの中へと頭から突っ込んだかと思うと、今度はいきなり足だけがミニスカートとともに出現するかのような様子が写し出されています。またもう一つ重要な点はその高い匿名性です。彼女らは「ソラリーマン」と異なり、顔を伺うことが出来ません。その切り取られた静謐な構図感、ようは素足やミニスカートなどが静物画のように組み合わされた様相は、相応にアーティステックと言えるのではないでしょうか。「ソラリーマン」にあった動きの面白さよりも、一つの図像としての独特な美学さえ感じられます。

「ソラリーマン」を募集した公開制作(TWSにて。)はなかなか盛況だったそうです。両展示とも既に会期を終えています。
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