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「カルロ・ザウリ展」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館千代田区北の丸公園3-1
「イタリア現代陶芸の巨匠 - カルロ・ザウリ展」
6/17-8/3



恥ずかしながら、本展覧会にて初めてザウリの名を知りました。イタリアの現代陶芸の巨匠(パンフレットより。)、カルロ・ザウリ(1926-2002)の業績を振り返ります。没後初の回顧展です。

 

展示は基本的にザウリの作陶を時系列に見ていくものでしたが、まず印象深いのは彼の生地でもあり、また制作の原点ともなったファエンツァとの関係です。ザウリは実際、いわゆる『ザウリの白』を纏った、例えばちらし表紙に見るような独創的な陶を生み出して名を馳せましたが、制作初期の頃に手がけていたのは、かの地の名産でもあるマジョリカ焼でした。例えば江戸絵画におけるシャープな鳥のような造形をした口の長い「壷」(1952)や、また緑色の鮮やかな釉薬も眩しい、独特の太線による斑紋も印象的なそれらは、確かに関係が云々されるプリミティブ的な要素を感じる作品と言えるかもしれません。とりわけ、古代の神器を連想させるような「陶彫」(1952)には見入るものがありました。またこの幾何学的でありながら、どこか無骨な様相をとっている点は、後のザウリの作品へと繋がっていく面が多分にありそうです。彼の代表作におけるかの『ゆがみ』は、受け継がれたマジョリカの記憶がそのまま別の形をとって表されているのかもしれません。

 

彼だけしか会得しなかったという白を手にしたザウリは、徐々に形に遊びのある、歪んだ陶の世界へとまっしぐらに進んでいきます。とは言え、ザウリの作陶を、『白』や『うねり』などという特徴だけで説明するのはいささか危険です。マジョリカを経た頃の彼は、たとえて言えば茶の釜のような端正な壺なども手がけ、白以外にも薄いブルーやグリーンの釉薬を用いた作品をいくつも作っていました。一般的にザウリが『ゆがみ』と『うねり』、それに『破れ』の境地へと入るのは、1970年代になってからのことです。率直に申し上げて、それらの一連の作品を、「海の波や砂丘、あるいは女性の身体を連想させるような柔らかな表現」(公式HPより。)ととるのは相当に無理(特に後者。)があるように思えますが、形よりも『ゆがみ』が優先される、言い換えれば形態の維持を破壊するかのように動く、半ばそれ自身が生き物であるような運動へと転化していました。あたかも形であることすら放棄しているかのようです。

私の感性とザウリのそれをあわせるのは叶いませんでしたが、作陶に生きた一人の芸術家の足取りを見るには十分な内容でした。静まり返った近美の空間との相性も悪くありません。

次の日曜、3日までの開催です。
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