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フローレスの美声に酔う ドン・パスクワーレ

メトロポリタン歌劇場インターネットライブ 4/16

曲 ドニゼッティ 歌劇「ドン・パスクワーレ」

指揮 マウリツィオ・ベニーニ
演奏 メトロポリタン歌劇場管弦楽団
キャスト
 ノリーナ アンナ・ネトレプコ
 エルネスト ホアン・ディエゴ・フローレス
 マラテスタ マリウス・キーチェン
 ドン・パスクワーレ シモーネ・アライモ

つい先日行われたメトロポリタン歌劇場の公演を、インターネットラジオの「BartokRadio」で聴くことが出来ます。曲は、ドニゼッティのブッファの中でもこの上なく愉快な「ドン・パスクワーレ」。私の好きなドニゼッティの中でも、通称「女王三部作」や「連隊の娘」、それに「ファヴォリータ」に並んでオススメしたいほどの素晴らしい作品です。

まずは何と言っても、エルネストのフローレスが一番の聴き所でしょう。絶好調とまではいかないのか、やや弱い部分もあるように感じましたが、やはり他とは隔絶した貫禄の歌唱です。口の中で極上のチョコレートが溶け出していくような、思わず頬が落ちてしまうのではないかと思うほど、甘く切なく、そして美しい歌声。大凡尋常ではない艶やかさも持ち合わせています。まるで綿飴をふくらませるかのように声をまとめあげ、柔らかに歌へのせていく。もちろんリズムも軽快です。このオペラで唯一のエルネストのアリア(第二幕冒頭)では、身を嘆く物悲しい様子からノリーナへの愛が示されるその変化をいとも簡単に表現しています。(アリアの途中で録音が切れてしまうのが残念です…。)凄まじい「ブラヴォ!」にも頷ける歌唱です。



大混乱の第二幕フィナーレも実に楽しい音楽が付いていますが、この作品で最も強烈な印象を残す個所は、想像を絶するほどに猛烈なスピードで歌われる第三幕のマラテスタとパスクワーレの二重唱です。ここで指揮のベニーニは、音楽を殊更煽り立てることなく、やや腰を落として丁寧に進めていきます。そこへ挑戦するかのように逞しく歌うキーチェンとアライモ。次第にオーケストラの響きを打つ破るかのようにして突っ走ります。まさに息を付くひまもありません。最後にはファルスタッフばりに陽気となる二人。劇も最高潮に達します。

長丁場を楽々乗り切るノリーナのネトレプコや、愉悦感を損なうことなく作品をまとめあげた指揮のベニーニも見事でした。特にベニーニは、レヴァインの降板による穴を埋めるどころか、この曲に関してはそれを上回る出来かと思うほどです。旋律を丁寧になぞりながら、絶妙な間を置き、笑いどころをしっかりと示すのはまさに職人芸。この辺りのオペラでは欠かせない指揮者です。

さて、このエントリをアップするのが遅くなってしまいましたが、この録音は放送日から一週間オンデマンドにてダウンロード出来ます。(今日、明日までは可能でしょうか。)場所は「BartokRadio」オンデマンドのszombat(土曜日)の19時から22時まで。その間にドン・パスクワーレのライブ放送が挟まっているわけです。興味のある方は、ワインでも片手に、ドニゼッティに愉快な音楽に浸かりながらフローレスの美声に酔ってみてはいかがでしょう。

*ネットラジオ全般については「オペラキャスト」様のブログをご参照下さい。(オペラキャストのsakag510様が、コメント欄に音楽ファイルの結合方法をご教示してくださいました。そちらもご覧下さい。)


(上にアップしたリンク画像は、フローレス出演のロッシーニのオペラ、「オリー伯爵」です。「ランスへの旅」から美味しいところばかりを集めたような作品で、ロペス=コボスの指揮が若干硬めですが、ボローニャのオーケストラの浮き立つリズム感とフローレスが快調です。)
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