都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「第25回損保ジャパン美術財団 選抜奨励展」 損保ジャパン東郷青児美術館 4/9
損保ジャパン東郷青児美術館(新宿区西新宿1-26-1 42階)
「第25回損保ジャパン美術財団 選抜奨励展 -選ばれた新進画家たち- 」
3/16-4/13

東京都美術館などで頻繁に開催されている公募展を見ることはまずありませんが、そこから選ばれた作家が一堂に会する展覧会となると少し気になります。と言うことで、全国36の公募展、もしくは推薦委員の推挙によって選ばれた作家たちの集う「損保ジャパン美術財団選抜奨励展」へ行ってきました。第25回を数える歴史ある展覧会とのことですが、出向いたのは今回が初めてです。

展示作品は平面が62点と、隔年で集められる立体作品が18点の計80点。さすがにどれも力の入った作品ばかりという印象を受けましたが、ズバリ、私の一推し作品は安冨洋貴の「僕に至る隔たり」(2005)です。どこか古びた団地かアパートの前で、仲良く対になって並んでいる二つのビニール傘。縦に並ぶ大小二つのガラス窓からは、一日を終えた後のくたびれた生活感が漂う電灯の明かりがもれている。地面はコンクリートによって塗り固められているのでしょうか。雨が染み込んで所々に溜まっています。そしてそれが窓の明かりを反射させて、傘自身をも映り込ませている。光と闇、または硬質の壁面や地面と、柔らかく透明なビニール傘の対比。それがモノトーンの美しい味わいによって巧みに表現されています。地味な構図であるのに、遠目から見ても非常に映える作品。そして何よりも驚かされるのが、この作品が油彩画ではなく鉛筆画だということです。恋人同士のように寄り添う傘の存在感がジワジワと伝わってくる。絵の前からなかなか離れられませんでした。
もう一点、画面の質感で非常に興味深かったのは、中山智介の「寡黙と饒舌の間から」(2005)です。このタイトルはあまり好きになれないのですが、ともかく油彩と岩絵具を織り交ぜた画面上の質感が面白い。闇に包まれた廃屋か神社。それが煌煌と輝く真っ赤な絵具に包まれている。木が激しく燃える音が聞こえてきます。そして黒い闇と、全体を覆う白い絵具の飛沫。パネルの表面には和紙が張られています。ゴワゴワとした、まるで石画のような質感も印象的です。
あまり惹かれた作品があったのも事実ですが、今挙げた二点のような美しい作品に出会えたのは大きな喜びでした。今後は毎年チェックしたいと思います。明日までの開催です。
「第25回損保ジャパン美術財団 選抜奨励展 -選ばれた新進画家たち- 」
3/16-4/13

東京都美術館などで頻繁に開催されている公募展を見ることはまずありませんが、そこから選ばれた作家が一堂に会する展覧会となると少し気になります。と言うことで、全国36の公募展、もしくは推薦委員の推挙によって選ばれた作家たちの集う「損保ジャパン美術財団選抜奨励展」へ行ってきました。第25回を数える歴史ある展覧会とのことですが、出向いたのは今回が初めてです。

展示作品は平面が62点と、隔年で集められる立体作品が18点の計80点。さすがにどれも力の入った作品ばかりという印象を受けましたが、ズバリ、私の一推し作品は安冨洋貴の「僕に至る隔たり」(2005)です。どこか古びた団地かアパートの前で、仲良く対になって並んでいる二つのビニール傘。縦に並ぶ大小二つのガラス窓からは、一日を終えた後のくたびれた生活感が漂う電灯の明かりがもれている。地面はコンクリートによって塗り固められているのでしょうか。雨が染み込んで所々に溜まっています。そしてそれが窓の明かりを反射させて、傘自身をも映り込ませている。光と闇、または硬質の壁面や地面と、柔らかく透明なビニール傘の対比。それがモノトーンの美しい味わいによって巧みに表現されています。地味な構図であるのに、遠目から見ても非常に映える作品。そして何よりも驚かされるのが、この作品が油彩画ではなく鉛筆画だということです。恋人同士のように寄り添う傘の存在感がジワジワと伝わってくる。絵の前からなかなか離れられませんでした。
もう一点、画面の質感で非常に興味深かったのは、中山智介の「寡黙と饒舌の間から」(2005)です。このタイトルはあまり好きになれないのですが、ともかく油彩と岩絵具を織り交ぜた画面上の質感が面白い。闇に包まれた廃屋か神社。それが煌煌と輝く真っ赤な絵具に包まれている。木が激しく燃える音が聞こえてきます。そして黒い闇と、全体を覆う白い絵具の飛沫。パネルの表面には和紙が張られています。ゴワゴワとした、まるで石画のような質感も印象的です。
あまり惹かれた作品があったのも事実ですが、今挙げた二点のような美しい作品に出会えたのは大きな喜びでした。今後は毎年チェックしたいと思います。明日までの開催です。
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