法律の周辺

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定款による剰余金配当請求権の行使期間の制限について

2006-07-19 21:16:50 | Weblog
 株主の剰余金配当請求権について,通説は,これを民事債権とし,10年の消滅時効にかかるとする。
しかし,株式会社の定款には,剰余金配当請求権の行使期間を3年あるいは5年に制限するような条項が盛り込まれている場合が少なくない。この種の条項を有効とする大審院判例もある(S2.8.3)。
上記の3年,5年という期間は一般に除斥期間と解されている。除斥期間については,通常,「法律関係の速やかな確定を目的に設定された純然たる権利行使期間」(内田)といった説明がされる。
公益性に重点を置いて除斥期間の制度趣旨を考える立場からすれば,私人間のこの種の条項の設定には問題もないわけではない。
この点,件の大審院判例は,概略,次のような理由で上記のような定款規定を有効とする。

 当事者は,権利の本質に反せずまた公序良俗に背かない限り,特約をもって権利の行使期間を制限し,一定の期間内に請求しないときはその権利は初めから成立しなかったものとなると定めたり,期間経過とともに当然に消滅すると定めることができる。
その場合には当該権利は特約によりそのような特質を帯びるようになったものと解することができるのであり,必ずしも時効期間の短縮と解する必要はない。
このことは,利益配当請求権の行使期間を定款をもって制限した場合も同様である。


 一方,学説(龍田ほか)は,理論上の理由として剰余金配当請求権が株式から流出する際に受ける社団的制約,実際上の理由として集団的事務処理上の便宜,等をあげる。


民法の関連条文

(消滅時効の進行等)
第百六十六条  消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する。
2  前項の規定は,始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために,その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし,権利者は,その時効を中断するため,いつでも占有者の承認を求めることができる。

(債権等の消滅時効)
第百六十七条  債権は,十年間行使しないときは,消滅する。
2  債権又は所有権以外の財産権は,二十年間行使しないときは,消滅する。

商法の関連条文

(商事消滅時効)
第五百二十二条  商行為によって生じた債権は,この法律に別段の定めがある場合を除き,五年間行使しないときは,時効によって消滅する。ただし,他の法令に五年間より短い時効期間の定めがあるときは,その定めるところによる。

会社法の関連条文

(株主に対する剰余金の配当)
第四百五十三条 株式会社は,その株主(当該株式会社を除く。)に対し,剰余金の配当をすることができる。

(剰余金の配当に関する事項の決定)
第四百五十四条 株式会社は,前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは,その都度,株主総会の決議によって,次に掲げる事項を定めなければならない。
一 配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額
二 株主に対する配当財産の割当てに関する事項
三 当該剰余金の配当がその効力を生ずる日
2 前項に規定する場合において,剰余金の配当について内容の異なる二以上の種類の株式を発行しているときは,株式会社は,当該種類の株式の内容に応じ,同項第二号に掲げる事項として,次に掲げる事項を定めることができる。
一 ある種類の株式の株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは,その旨及び当該株式の種類
二 前号に掲げる事項のほか,配当財産の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは,その旨及び当該異なる取扱いの内容
3 第一項第二号に掲げる事項についての定めは,株主(当該株式会社及び前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては,各種類の株式の数)に応じて配当財産を割り当てることを内容とするものでなければならない。
4 配当財産が金銭以外の財産であるときは,株式会社は,株主総会の決議によって,次に掲げる事項を定めることができる。ただし,第一号の期間の末日は,第一項第三号の日以前の日でなければならない。
一 株主に対して金銭分配請求権(当該配当財産に代えて金銭を交付することを株式会社に対して請求する権利をいう。以下この章において同じ。)を与えるときは,その旨及び金銭分配請求権を行使することができる期間
二 一定の数未満の数の株式を有する株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは,その旨及びその数
5 取締役会設置会社は,一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る。以下この項において「中間配当」という。)をすることができる旨を定款で定めることができる。この場合における中間配当についての第一項の規定の適用については,同項中「株主総会」とあるのは,「取締役会」とする。

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