法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

所在不明株の買い受け加速の動きについて

2008-03-31 22:12:54 | Weblog
株主不明の株,買い入れ加速・来年1月の株券電子化に備え NIKKEI NET

 所在不明株主の株式売却制度は,株式会社の株主管理コスト軽減のため,平成14年の商法改正で創設されたもの。この制度,会社法にも引き継がれている。
記事には,3カ月間公告した後云々,とあるが,株主及び登録株式質権者に対しては,異議がある場合は申し出るべき旨,各別の催告が必要である(会社法第198条第1項参照)。
会社による買い受けも可能だが(同第197条第3項),財源規制がある(同第461条第1項第6号)。

金融庁 株券電子化について


会社法の関連条文

(株主に対する通知の省略)
第百九十六条  株式会社が株主に対してする通知又は催告が五年以上継続して到達しない場合には,株式会社は,当該株主に対する通知又は催告をすることを要しない。
2  前項の場合には,同項の株主に対する株式会社の義務の履行を行う場所は,株式会社の住所地とする。
3  前二項の規定は,登録株式質権者について準用する。

(株式の競売)
第百九十七条  株式会社は,次のいずれにも該当する株式を競売し,かつ,その代金をその株式の株主に交付することができる。
一  その株式の株主に対して前条第一項又は第二百九十四条第二項の規定により通知及び催告をすることを要しないもの
二  その株式の株主が継続して五年間剰余金の配当を受領しなかったもの
2  株式会社は,前項の規定による競売に代えて,市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって,市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により,これを売却することができる。この場合において,当該許可の申立ては,取締役が二人以上あるときは,その全員の同意によってしなければならない。
3  株式会社は,前項の規定により売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては,次に掲げる事項を定めなければならない。
一  買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては,株式の種類及び種類ごとの数)
二  前号の株式の買取りをするのと引換えに交付する金銭の総額
4  取締役会設置会社においては,前項各号に掲げる事項の決定は,取締役会の決議によらなければならない。
5  第一項及び第二項の規定にかかわらず,登録株式質権者がある場合には,当該登録株式質権者が次のいずれにも該当する者であるときに限り,株式会社は,第一項の規定による競売又は第二項の規定による売却をすることができる。
一  前条第三項において準用する同条第一項の規定により通知又は催告をすることを要しない者
二  継続して五年間第百五十四条第一項の規定により受領することができる剰余金の配当を受領しなかった者

(利害関係人の異議)
第百九十八条  前条第一項の規定による競売又は同条第二項の規定による売却をする場合には,株式会社は,同条第一項の株式の株主その他の利害関係人が一定の期間内に異議を述べることができる旨その他法務省令で定める事項を公告し,かつ,当該株式の株主及びその登録株式質権者には,各別にこれを催告しなければならない。ただし,当該期間は,三箇月を下ることができない。
2  第百二十六条第一項及び第百五十条第一項の規定にかかわらず,前項の規定による催告は,株主名簿に記載し,又は記録した当該株主及び登録株式質権者の住所(当該株主又は登録株式質権者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては,その場所又は連絡先を含む。)にあてて発しなければならない。
3  第百二十六条第三項及び第四項の規定にかかわらず,株式が二以上の者の共有に属するときは,第一項の規定による催告は,共有者に対し,株主名簿に記載し,又は記録した住所(当該共有者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては,その場所又は連絡先を含む。)にあてて発しなければならない。
4  第百九十六条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定は,第一項の規定による催告については,適用しない。
5  第一項の規定による公告をした場合(前条第一項の株式に係る株券が発行されている場合に限る。)において,第一項の期間内に利害関係人が異議を述べなかったときは,当該株式に係る株券は,当該期間の末日に無効となる。

(配当等の制限)
第四百六十一条  次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は,当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。
一  第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取り
二  第百五十六条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得(第百六十三条に規定する場合又は第百六十五条第一項に規定する場合における当該株式会社による株式の取得に限る。)
三  第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得
四  第百七十三条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得
五  第百七十六条第一項の規定による請求に基づく当該株式会社の株式の買取り
六  第百九十七条第三項の規定による当該株式会社の株式の買取り
七  第二百三十四条第四項(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による当該株式会社の株式の買取り
八  剰余金の配当
2  前項に規定する「分配可能額」とは,第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号から第六号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(以下この節において同じ。)。
一  剰余金の額
二  臨時計算書類につき第四百四十一条第四項の承認(同項ただし書に規定する場合にあっては,同条第三項の承認)を受けた場合における次に掲げる額
イ 第四百四十一条第一項第二号の期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
ロ 第四百四十一条第一項第二号の期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
三  自己株式の帳簿価額
四  最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
五  第二号に規定する場合における第四百四十一条第一項第二号の期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
六  前三号に掲げるもののほか,法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

会社法施行規則の関連条文

(市場価格のある株式の売却価格)
第三十八条  法第百九十七条第二項 に規定する法務省令で定める方法は,次の各号に掲げる場合の区分に応じ,当該各号に定める額をもって同項 に規定する株式の価格とする方法とする。
一  当該株式を市場において行う取引によって売却する場合 当該取引によって売却する価格
二  前号に掲げる場合以外の場合 次に掲げる額のうちいずれか高い額
イ 法第百九十七条第二項 の規定により売却する日(以下この条において「売却日」という。)における当該株式を取引する市場における最終の価格(当該売却日に売買取引がない場合又は当該売却日が当該市場の休業日に当たる場合にあっては,その後最初になされた売買取引の成立価格)
ロ 売却日において当該株式が公開買付け等の対象であるときは,当該売却日における当該公開買付け等に係る契約における当該株式の価格

(公告事項)
第三十九条  法第百九十八条第一項 に規定する法務省令で定める事項は,次に掲げるものとする。
一  法第百九十七条第一項 の株式(以下この条において「競売対象株式」という。)の競売又は売却をする旨
二  競売対象株式の株主として株主名簿に記載又は記録がされた者の氏名又は名称及び住所
三  競売対象株式の数(種類株式発行会社にあっては,競売対象株式の種類及び種類ごとの数)
四  競売対象株式につき株券が発行されているときは,当該株券の番号

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宙に浮いた三世家元の財産について

2008-03-28 20:31:52 | Weblog
花柳流で後継争い,相続人なく財産数十億円が宙に YOMIURI ONLINE

 記事には,概略,後継者を名乗る1人は,土地・建物の贈与を約束されていたとし,引渡請求訴訟に踏み切った,とある。提訴したところをみると,そもそも契約の存否自体に争いがあるのだろう。

さて,民法第958条の3第1項には「前条の場合において,相当と認めるときは,家庭裁判所は,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって,これらの者に,清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」とある。
特別縁故者への相続財産の分与は,昭和37年の民法改正で創設された制度。日本評論社の基本法コンメンタールには,制度創設の理由として次のようにある。

 戦後の相続法は戦前の旧規定とは異なり,相続人の範囲が比較的狭く,また遺言もあまり利用されないため,相続人不存在となって国庫帰属となる事態が少なくなかった。しかし,国庫に帰属させるよりも,内縁の配偶者や事実上の養親子のように相続人ではないが被相続人と何等かの縁故関係のある者に取得させることが望ましいことなどへの配慮から,特別縁故者への相続財産分与の制度が導入された。

記事からは,四世襲名の帰趨が三世家元の相続財産の帰属に直結しているような印象も受けなくはないが,もちろん,そうではない。贈与契約等が不存在となれば,四世であれ何であれ,相続財産の帰属については,分与を求める者が上記民法第958条の3第1項の「その他被相続人と特別の縁故があった者」に該当するかが問題となる。

最後になったが,記事には,三世家元につき「72歳で急死」とある。健康に問題の無かった方なのかもしれないが,そろそろ,相応の準備,しておいても不思議ではない年齢だったのではなかろうか。いや,就いていた地位や親族関係を考えれば,むしろ,「しておかなければならない年齢だった」とさえいえる。
記事を読んでいて,ふと,『その死に方は,迷惑です』という本を思い出してしまった。件の流派に属する人の中にも,同じようなことを心ならず呟いた人,いるかもしれない。


民法の関連条文

(相続財産法人の成立)
第九百五十一条  相続人のあることが明らかでないときは,相続財産は,法人とする。

(相続財産の管理人の選任)
第九百五十二条  前条の場合には,家庭裁判所は,利害関係人又は検察官の請求によって,相続財産の管理人を選任しなければならない。
2  前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは,家庭裁判所は,遅滞なくこれを公告しなければならない。

(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
第九百五十三条  第二十七条から第二十九条までの規定は,前条第一項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。

(相続財産の管理人の報告)
第九百五十四条  相続財産の管理人は,相続債権者又は受遺者の請求があるときは,その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。

(相続財産法人の不成立)
第九百五十五条  相続人のあることが明らかになったときは,第九百五十一条の法人は,成立しなかったものとみなす。ただし,相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。

(相続財産の管理人の代理権の消滅)
第九百五十六条  相続財産の管理人の代理権は,相続人が相続の承認をした時に消滅する。
2  前項の場合には,相続財産の管理人は,遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条  第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは,相続財産の管理人は,遅滞なく,すべての相続債権者及び受遺者に対し,一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において,その期間は,二箇月を下ることができない。
2  第七十九条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は,前項の場合について準用する。

(相続人の捜索の公告)
第九百五十八条  前条第一項の期間の満了後,なお相続人のあることが明らかでないときは,家庭裁判所は,相続財産の管理人又は検察官の請求によって,相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において,その期間は,六箇月を下ることができない。

(権利を主張する者がない場合)
第九百五十八条の二  前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは,相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は,その権利を行使することができない。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の三  前条の場合において,相当と認めるときは,家庭裁判所は,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって,これらの者に,清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2  前項の請求は,第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条  前条の規定により処分されなかった相続財産は,国庫に帰属する。この場合においては,第九百五十六条第二項の規定を準用する。

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無断の証拠申請と無断の証拠決定について

2008-03-26 22:10:29 | Weblog
無断で証拠申請と抗議 TBS番組、地検と地裁に - さきがけ on the Web

 記事の最後には,TBSは地検に証拠申請の撤回を求めているとあるが,一方で,地検が取り調べ請求した録画映像は採用され,既に法廷で上映されたともある。とすれば,今から「撤回」を言っても詮ないと思うのだが・・・。

さて,報道機関の取材の自由と刑事裁判の公正確保の関係については,ご存じのとおり,取材フィルムの提出命令に係る博多駅事件最判(S44.11.26)がある。以下,その判示。

 ところで,本件において,提出命令の対象とされたのは,すでに放映されたフイルムを含む放映のために準備された取材フイルムである。それは報道機関の取材活動の結果すでに得られたものであるから,その提出を命ずることは,右フイルムの取材活動そのものとは直接関係がない。もつとも,報道機関がその取材活動によつて得たフイルムは,報道機関が報道の目的に役立たせるためのものであつて,このような目的をもつて取材されたフイルムが,他の目的,すなわち,本件におけるように刑事裁判の証拠のために使用されるような場合には,報道機関の将来における取材活動の自由を妨げることになるおそれがないわけではない。しかし,取材の自由といつても,もとより何らの制約を受けないものではなく,たとえば公正な裁判の実現というような憲法上の要請があるときは,ある程度の制約を受けることのあることも否定することができない。
 本件では,まさに,公正な刑事裁判の実現のために,取材の自由に対する制約が許されるかどうかが問題となるのであるが,公正な刑事裁判を実現することは,国家の基本的要請であり,刑事裁判においては,実体的真実の発見が強く要請されることもいうまでもない。このような公正な刑事裁判の実現を保障するために,報道機関の取材活動によつて得られたものが,証拠として必要と認められるような場合には,取材の自由がある程度の制約を蒙ることとなつてもやむを得ないところというべきである。しかしながら,このような場合においても,一面において,審判の対象とされている犯罪の性質,態様,軽重および取材したものの証拠としての価値,ひいては,公正な刑事裁判を実現するにあたつての必要性の有無を考慮するとともに,他面において取材したものを証拠として提出させられることによつて報道機関の取材の自由が妨げられる程度およびこれが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を比較衡量して決せられるべきであり,これを刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ないと認められる場合においても,それによつて受ける報道機関の不利益が必要な限度をこえないように配慮されなけれぼならない。


本件,詳細はわからないが,録画映像自体は,差押手続きなどを経て押収されたものではなさそうだ。もちろん,司法警察職員によってマザーテープまで押収されたいわゆる「TBS事件」(最判H2.7.9)などとは事情はだいぶ異なる。勝手に上映されたというTBSらの不満,わからないではないが・・・。
因みに,証拠決定については,刑事訴訟規則第190条第2項に「前項の決定をするについては,証拠調の請求に基く場合には,相手方又はその弁護人の意見を,職権による場合には,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。」とある。検察官や被告人の意見を何ら聴かない場合は,「無断」という言い方,あるいは可能なのかもしれない。

判例検索システム 昭和44年11月26日 取材フイルム提出命令に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件


日本国憲法の関連条文

第二十一条  集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
2  検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。

刑事訴訟法の関連条文

第九十九条  裁判所は,必要があるときは,証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。但し,特別の定のある場合は,この限りでない。
2  裁判所は,差し押えるべき物を指定し,所有者,所持者又は保管者にその物の提出を命ずることができる。

第二百九十八条  検察官,被告人又は弁護人は,証拠調を請求することができる。
2  裁判所は,必要と認めるときは,職権で証拠調をすることができる。

第二百九十九条  検察官,被告人又は弁護人が証人,鑑定人,通訳人又は翻訳人の尋問を請求するについては,あらかじめ,相手方に対し,その氏名及び住居を知る機会を与えなければならない。証拠書類又は証拠物の取調を請求するについては,あらかじめ,相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。但し,相手方に異議のないときは,この限りでない。
2  裁判所が職権で証拠調の決定をするについては,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。

刑事訴訟規則の関連条文

(証拠調の請求の方式・法第二百九十八条)
第百八十九条 証拠調の請求は,証拠と証明すべき事実との関係を具体的に明示して,これをしなければならない。
2 証拠書類その他の書面の一部の取調を請求するには,特にその部分を明確にしなければならない。
3 裁判所は,必要と認めるときは,証拠調の請求をする者に対し,前二項に定める事項を明らかにする書面の提出を命ずることができる。
4 前各項の規定に違反してされた証拠調の請求は,これを却下することができる。

(証拠の厳選・法第二百九十八条)
第百八十九条の二 証拠調べの請求は,証明すべき事実の立証に必要な証拠を厳選して,これをしなければならない。

(証拠決定・法第二百九十八条等)
第百九十条 証拠調又は証拠調の請求の却下は,決定でこれをしなければならない。
2 前項の決定をするについては,証拠調の請求に基く場合には,相手方又はその弁護人の意見を,職権による場合には,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
3 被告人が出頭しないでも証拠調を行うことができる公判期日に被告人及び弁護人が出頭していないときは,前項の規定にかかわらず,これらの者の意見を聴かないで,第一項の決定をすることができる。

(証拠決定の送達)
第百九十一条 証人,鑑定人,通訳人又は翻訳人を尋問する旨の決定は,公判期日前にこれをする場合においても,これを送達することを要しない。
2 前項の場合には,直ちにその氏名を訴訟関係人に通知しなければならない。

(証人等の出頭)
第百九十一条の二 証人,鑑定人,通訳人又は翻訳人を尋問する旨の決定があつたときは,その取調を請求した訴訟関係人は,これらの者を期日に出頭させるように努めなければならない。

(証人尋問の準備)
第百九十一条の三 証人の尋問を請求した検察官又は弁護人は,証人その他の関係者に事実を確かめる等の方法によつて,適切な尋問をすることができるように準備しなければならない。

(証拠決定についての提示命令)
第百九十二条 証拠調の決定をするについて必要があると認めるときは,訴訟関係人に証拠書類又は証拠物の提示を命ずることができる。

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「プロとして適切な処置・治療」と「規則正しく規律ある努力」について

2008-03-25 19:48:36 | Weblog
サッカー日本代表のオシム前監督が退院・今後は自宅でリハビリ NIKKEI NET

 メッセージ,全文読んでみた。
クスッとさせられた後,ハッとさせられ,再びクスッ。これで終わりと油断したら,最後にホロリとさせられた (/_;) 。
「今後ともご支援をお願いします。」ですって? 何をあらたまって。えぇ,えぇ,もちろん喜んで。

日本サッカー協会 オシム前日本代表監督が退院 ~オシム前監督からメッセージ~(08.03.25)


医療法の関連条文

第一条 この法律は,医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項,医療の安全を確保するために必要な事項,病院,診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により,医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り,もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする。

第一条の二 医療は,生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし,医師,歯科医師,薬剤師,看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき,及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに,その内容は,単に治療のみならず,疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。
2 医療は,国民自らの健康の保持増進のための努力を基礎として,医療を受ける者の意向を十分に尊重し,病院,診療所,介護老人保健施設,調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。),医療を受ける者の居宅等において,医療提供施設の機能(以下「医療機能」という。)に応じ効率的に,かつ,福祉サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図りつつ提供されなければならない。

第一条の三 国及び地方公共団体は,前条に規定する理念に基づき,国民に対し良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制が確保されるよう努めなければならない。

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判決に対する不満の電話について

2008-03-24 20:24:03 | Weblog
判決への不満の電話60件,地裁に 藤里連続児童殺害 - さきがけ on the Web

 芦部先生の教科書の「司法権独立の内容」には,次のような記述がある。

 司法権の独立は,従来,何回か脅かされた。その侵害は,外部勢力によるものもあるが,司法部内において生ずることも稀ではない。また,一般国民やマス・メディアによる裁判批判が司法権の独立を害するのではないかという議論もある(ただ,これは表現の自由の問題であるから,裁判批判が制限されるのは,裁判の公正確保に対して「明白かつ現在の危険」を及ぼすような場合に限られよう。)

ところで,ご存じのとおり,刑事裁判については,来年5月までの裁判員裁判のスタートが決定している。
裁判員法第8条には「裁判員は,独立してその職権を行う。」,同第9条第1項には「裁判員は,法令に従い公平誠実にその職務を行わなければならない。」とある。裁判員もまた,職業裁判官同様(日本国憲法第76条第3項参照),過剰報道,偏向報道等に左右されることなく,泰然と職務を遂行することが求められる。
この点に関しては,裁判員制度Q&Aに次のようなものがある。

○ 裁判員になった場合,その事件が取り上げられたテレビのニュースを見たり,新聞の記事を読んだりしてはいけないのですか。

帰宅された後は普通の生活に戻るのですから,テレビを見たり新聞を読んでいただいて構いません。しかし,裁判員として判断していただくときには,あくまで法廷で示された証拠だけに基づいて判断してもらうことになります。


なお,裁判員裁判の対象事件であっても,裁判員の生活の平穏が著しく侵害される等のおそれがあり,裁判員の参加が困難な事件については,検察官等の請求又は裁判所の職権で,裁判官のみで裁判をおこなうことになっている(裁判員法第3条第1項)。

裁判員制度 裁判員制度Q&A


日本国憲法の関連条文

第二十一条  集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
2  検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。

第七十六条  すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2  特別裁判所は,これを設置することができない。行政機関は,終審として裁判を行ふことができない。
3  すべて裁判官は,その良心に従ひ独立してその職権を行ひ,この憲法及び法律にのみ拘束される。

「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」の関連条文

(趣旨)
第一条  この法律は,国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ,裁判員の参加する刑事裁判に関し,裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。

(対象事件及び合議体の構成)
第二条  地方裁判所は,次に掲げる事件については,次条の決定があった場合を除き,この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は,裁判所法第二十六条の規定にかかわらず,裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
一  死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二  裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件であって,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
2  前項の合議体の裁判官の員数は三人,裁判員の員数は六人とし,裁判官のうち一人を裁判長とする。ただし,次項の決定があったときは,裁判官の員数は一人,裁判員の員数は四人とし,裁判官を裁判長とする。
3  第一項の規定により同項の合議体で取り扱うべき事件(以下「対象事件」という。)のうち,公判前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ,事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては,裁判所は,裁判官一人及び裁判員四人から成る合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる。
4  裁判所は,前項の決定をするには,公判前整理手続において,検察官,被告人及び弁護人に異議のないことを確認しなければならない。
5  第三項の決定は,第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日までにしなければならない。
6  地方裁判所は,第三項の決定があったときは,裁判所法第二十六条第二項の規定にかかわらず,当該決定の時から第三項に規定する合議体が構成されるまでの間,一人の裁判官で事件を取り扱う。
7  裁判所は,被告人の主張,審理の状況その他の事情を考慮して,事件を第三項に規定する合議体で取り扱うことが適当でないと認めたときは,決定で,同項の決定を取り消すことができる。

(対象事件からの除外)
第三条  地方裁判所は,前条第一項各号に掲げる事件について,被告人の言動,被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により,裁判員候補者,裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命,身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり,そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し,裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは,検察官,被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で,これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない。
2  前項の決定又は同項の請求を却下する決定は,合議体でしなければならない。ただし,当該前条第一項各号に掲げる事件の審判に関与している裁判官は,その決定に関与することはできない。
3  第一項の決定又は同項の請求を却下する決定をするには,最高裁判所規則で定めるところにより,あらかじめ,検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
4  前条第一項の合議体が構成された後は,職権で第一項の決定をするには,あらかじめ,当該合議体の裁判長の意見を聴かなければならない。
5  刑事訴訟法第四十三条第三項及び第四項並びに第四十四条第一項の規定は,第一項の決定及び同項の請求を却下する決定について準用する。
6  第一項の決定又は同項の請求を却下する決定に対しては,即時抗告をすることができる。この場合においては,即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。

(裁判員の職権行使の独立)
第八条  裁判員は,独立してその職権を行う。

(裁判員の義務)
第九条  裁判員は,法令に従い公平誠実にその職務を行わなければならない。
2  裁判員は,第七十条第一項に規定する評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
3  裁判員は,裁判の公正さに対する信頼を損なうおそれのある行為をしてはならない。
4  裁判員は,その品位を害するような行為をしてはならない。

(裁判員等を特定するに足りる情報の取扱い)
第百一条  何人も,裁判員,補充裁判員,選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の氏名,住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない。これらであった者の氏名,住所その他の個人を特定するに足りる情報についても,本人がこれを公にすることに同意している場合を除き,同様とする。
2  前項の規定の適用については,区分事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員の職にあった者で第八十四条の規定によりその任務が終了したものは,すべての区分事件審判の後に行われる併合事件の全体についての裁判(以下「併合事件裁判」という。)がされるまでの間は,なお裁判員又は補充裁判員であるものとみなす。

(裁判員等に対する接触の規制)
第百二条  何人も,被告事件に関し,当該被告事件を取り扱う裁判所に選任され,又は選定された裁判員若しくは補充裁判員又は選任予定裁判員に接触してはならない。
2  何人も,裁判員又は補充裁判員が職務上知り得た秘密を知る目的で,裁判員又は補充裁判員の職にあった者に接触してはならない。
3  前二項の規定の適用については,区分事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員の職にあった者で第八十四条の規定によりその任務が終了したものは,併合事件裁判がされるまでの間は,なお裁判員又は補充裁判員であるものとみなす。

(裁判員等に対する請託罪等)
第百六条  法令の定める手続により行う場合を除き,裁判員又は補充裁判員に対し,その職務に関し,請託をした者は,二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2  法令の定める手続により行う場合を除き,被告事件の審判に影響を及ぼす目的で,裁判員又は補充裁判員に対し,事実の認定,刑の量定その他の裁判員として行う判断について意見を述べ又はこれについての情報を提供した者も,前項と同様とする。
3  選任予定裁判員に対し,裁判員又は補充裁判員として行うべき職務に関し,請託をした者も,第一項と同様とする。
4  被告事件の審判に影響を及ぼす目的で,選任予定裁判員に対し,事実の認定その他の裁判員として行うべき判断について意見を述べ又はこれについての情報を提供した者も,第一項と同様とする。

(裁判員等に対する威迫罪)
第百七条  被告事件に関し,当該被告事件の審判に係る職務を行う裁判員若しくは補充裁判員若しくはこれらの職にあった者又はその親族に対し,面会,文書の送付,電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず,威迫の行為をした者は,二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2  被告事件に関し,当該被告事件の審判に係る職務を行う裁判員若しくは補充裁判員の選任のために選定された裁判員候補者若しくは当該裁判員若しくは補充裁判員の職務を行うべき選任予定裁判員又はその親族に対し,面会,文書の送付,電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず,威迫の行為をした者も,前項と同様とする。

(裁判員の氏名等漏示罪)
第百九条  検察官若しくは弁護人若しくはこれらの職にあった者又は被告人若しくは被告人であった者が,正当な理由がなく,被告事件の裁判員候補者の氏名,裁判員候補者が第三十条(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。),第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。次条において同じ。)に規定する質問票に記載した内容又は裁判員等選任手続における裁判員候補者の陳述の内容を漏らしたときは,一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

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違法で無効な法定外目的税について

2008-03-19 22:14:17 | Weblog
asahi.com 神奈川県独自の「臨時特例企業税」は違法 地裁判決

 地方税法第4条第6項には「道府県は,第四項各号に掲げるもの及び前項に規定するものを除くほか,別に税目を起こして,目的税を課することができる。」とあるところ,日本国憲法第94条には「地方公共団体は,その財産を管理し,事務を処理し,及び行政を執行する権能を有し,法律の範囲内で条例を制定することができる。」とある。
本件では,神奈川県の臨時特例企業税が「法律(この事案では,地方税法)の範囲内」にあるといえるかが問題となる。
記事には,横浜地裁の判断として,概略,臨時特例企業税は法人事業税の課税規定の目的・効果を阻害している,とある。詳細は分からないが,この部分からは,本判決が徳島市公安条例事件最判(昭和50.9.10)に依拠していることが推測できる。ご存じのとおり,この最判は,上記論点につき次のとおり判示。

 普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが,条例が国の法令に違反するかどうかは,両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく,それぞれの趣旨,目的,内容及び効果を比較し,両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。例えば,ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも,当該法令全体からみて,右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは,これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし,逆に,特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも,後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり,その適用によって前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや,両者が同一の目的に出たものであっても,国の法令が必ずしもその規制を施す趣旨ではなく,それぞれの普通地方公共団体において,その地方の事情に応じて,別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは,国の法令と条例との間にはなんらの矛盾抵触はなく,条例が国の法令に違反する問題は生じえない。

地方税法が欠損金の繰越しを認めているのは,言わば,病み上がり企業の体力増強を考慮したもの。神奈川県の臨時特例企業税の課税対象は,実質,国が控除を認めた繰越欠損金。横浜地裁,目的と効果に照らし,法人事業税と臨時特例企業税の間には抵触があると判断したわけだ。


日本国憲法の関連条文

第二十九条  財産権は,これを侵してはならない。
2  財産権の内容は,公共の福祉に適合するやうに,法律でこれを定める。
3  私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のために用ひることができる。

第九十四条  地方公共団体は,その財産を管理し,事務を処理し,及び行政を執行する権能を有し,法律の範囲内で条例を制定することができる。

地方税法の関連条文

(道府県が課することができる税目)
第四条  道府県税は,普通税及び目的税とする。
2  道府県は,普通税として,次に掲げるものを課するものとする。ただし,徴収に要すべき経費が徴収すべき税額に比して多額であると認められるものその他特別の事情があるものについては,この限りでない。
一  道府県民税
二  事業税
三  地方消費税
四  不動産取得税
五  道府県たばこ税
六  ゴルフ場利用税
七  自動車税
八  鉱区税
3  道府県は,前項各号に掲げるものを除くほか,別に税目を起こして,普通税を課することができる。
4  道府県は,目的税として,次に掲げるものを課するものとする。
一  自動車取得税
二  軽油引取税
三  狩猟税
5  道府県は,前項各号に掲げるものを除くほか,目的税として,水利地益税を課することができる。
6  道府県は,第四項各号に掲げるもの及び前項に規定するものを除くほか,別に税目を起こして,目的税を課することができる。

(法定外目的税の新設変更)
第七百三十一条  道府県又は市町村は,条例で定める特定の費用に充てるため,法定外目的税を課することができる。
2  道府県又は市町村は,法定外目的税の新設又は変更(法定外目的税の税率の引下げ,廃止その他の政令で定める変更を除く。次項及び次条第二項において同じ。)をしようとする場合においては,あらかじめ,総務大臣に協議し,その同意を得なければならない。
3  道府県又は市町村は,当該道府県又は市町村の法定外目的税の一の納税義務者(納税義務者となるべき者を含む。以下本項において同じ。)であつて当該納税義務者に対して課すべき当該法定外目的税の課税標準の合計が当該法定外目的税の課税標準の合計の十分の一を継続的に超えると見込まれる者として総務省令で定めるもの(以下本項において「特定納税義務者」という。)であるものがある場合において,当該法定外目的税の新設又は変更をする旨の条例を制定しようとするときは,当該道府県又は市町村の議会において,当該特定納税義務者の意見を聴くものとする。

第七百三十二条  総務大臣は,前条第二項の規定による協議の申出を受けた場合においては,その旨を財務大臣に通知しなければならない。
2  財務大臣は,前項の通知を受けた場合において,その協議の申出に係る法定外目的税の新設又は変更について異議があるときは,総務大臣に対してその旨を申し出ることができる。

第七百三十二条の二  総務大臣は,第七百三十一条第二項の同意については,地方財政審議会の意見を聴かなければならない。

(総務大臣の同意)
第七百三十三条  総務大臣は,第七百三十一条第二項の規定による協議の申出を受けた場合には,当該協議の申出に係る法定外目的税について次に掲げる事由のいずれかがあると認める場合を除き,これに同意しなければならない。
一  国税又は他の地方税と課税標準を同じくし,かつ,住民の負担が著しく過重となること。
二  地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること。
三  前二号に掲げるものを除くほか,国の経済施策に照らして適当でないこと。

(法定外目的税の非課税の範囲)
第七百三十三条の二  地方団体は,次に掲げるものに対しては,法定外目的税を課することができない。
一  当該地方団体の区域外に所在する土地,家屋,物件及びこれらから生ずる収入
二  当該地方団体の区域外に所在する事務所及び事業所において行われる事業並びにこれらから生ずる収入
三  公務上又は業務上の事由による負傷又は疾病に基因して受ける給付で政令で定めるもの

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本人確認書類としての運転経歴証明書について

2008-03-18 22:09:06 | Weblog
時事ドットコム 高齢者免許返納に特典=民間が協議会を発足-東京

 毎日によれば,秋田県では,運転免許証の返納者へのタクシー料金割引制度が始まってから返納者が急増しているとのこと。

さて,金融機関等の本人確認に係る本人確認法施行規則第4条では,有効期間の無い本人確認書類は提示等を受ける前6カ月以内に作成されたものに限るとされていた。
運転経歴証明書には有効期間がない(見本参照)。このため,運転経歴証明書は,身分証明書ではあるものの,本人確認書類としては,実際のところ,使えないという不都合が指摘されていた。
本人確認法は犯罪収益移転防止法の本格施行に伴い廃止されたが,運転経歴証明書に係る上記扱いは犯罪収益移転防止法下でも変わっていない(犯罪収益移転防止法施行規則第4条第1号ヘ参照)。
運転免許証は身分証明書の代表的なもの。運転経歴証明書は,運転免許証返納による社会生活上の不都合を回避するために創設されたものと言っても差し支えないと思うが,完全に代替できているとまではいえないようだ。

警察庁 運転経歴証明書制度の運用について 平成14年5月13日

追記 現在,上記本文記載の運転経歴証明書に係る期間制限は外されている(犯罪収益移転防止法施行規則第7条第1号イ参照)。(平成28年12月6日記)


道路交通法の関連条文

(七十歳以上の者の特例)
第百一条の四 免許証の更新を受けようとする者で更新期間が満了する日における年齢が七十歳以上のものは,更新期間が満了する日前三月以内にその者の住所地を管轄する公安委員会が行つた第百八条の二第一項第十二号に掲げる講習を受けていなければならない。ただし,当該講習を受ける必要がないものとして政令で定める者は,この限りでない。
2 公安委員会は,免許を現に受けている者で更新期間が満了する日における年齢が七十歳以上のものに対し,免許証の更新を受けようとするときは更新期間が満了する日前三月以内に前項の規定により講習を受けていなければならない旨,当該講習を受けることができる日時及び場所その他当該講習に係る事務の円滑な実施を図るため必要な事項を記載した書面を送付するものとする。

(免許の取消し,停止等)
第百三条 免許(仮免許を除く。以下第百六条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは,その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は,政令で定める基準に従い,その者の免許を取り消し,又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。ただし,第五号に該当する者が前条の規定の適用を受ける者であるときは,当該処分は,その者が同条に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後でなければ,することができない。
一 次に掲げる病気にかかつている者であることが判明したとき。
イ 幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの
ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの
ハ イ及びロに掲げるもののほか,自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
一の二 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八条第十六項に規定する認知症であることが判明したとき。
二 目が見えないことその他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として政令で定めるものが生じている者であることが判明したとき。
三 アルコール,麻薬,大麻,あへん又は覚せい剤の中毒者であることが判明したとき。
四 第五項の規定による命令に違反したとき。
五 自動車等の運転に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反したとき。
六 重大違反唆し等をしたとき。
七 道路外致死傷をしたとき。
八 前各号に掲げるもののほか,免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき。
2 公安委員会は,前項の規定により免許を取り消し,又は免許の効力を九十日(公安委員会が九十日を超えない範囲内で期間を定めたときは,その期間)以上停止しようとする場合において,当該処分に係る者がその住所を他の公安委員会の管轄区域内に変更していたときは,当該処分に係る事案に関する第百四条第一項の意見の聴取又は聴聞を終了している場合を除き,速やかに現にその者の住所地を管轄する公安委員会に内閣府令で定める処分移送通知書を送付しなければならない。
3 前項の処分移送通知書が当該公安委員会に送付されたときは,当該公安委員会は,その者が第一項各号のいずれかに該当する場合(同項第五号に該当する者が前条の規定の適用を受ける者であるときは,その者が同条に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後に限る。)には,同項の政令で定める基準に従い,その者の免許を取り消し,又は六月を超えない範囲内において期間を定めて免許の効力を停止することができるものとし,処分移送通知書を送付した公安委員会は,同項の規定にかかわらず,当該事案について,その者の免許を取り消し,又は免許の効力を停止することができないものとする。
4 第二項の規定は,公安委員会が前項の規定により免許を取り消し,又は免許の効力を停止しようとする場合について準用する。
5 公安委員会は,第一項第一号から第四号までのいずれかに該当することを理由として同項又は第三項の規定により免許の効力を停止する場合において,必要があると認めるときは,当該処分の際に,その者に対し,公安委員会が指定する期日及び場所において適性検査を受け,又は公安委員会が指定する期限までに内閣府令で定める要件を満たす医師の診断書を提出すべき旨を命ずることができる。
6 公安委員会は,第一項各号(第四号を除く。)のいずれかに該当することを理由として同項又は第三項の規定により免許を取り消したときは,政令で定める基準に従い,一年以上五年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が免許を受けることができない期間を指定するものとする。
7 第一項又は第三項の規定により免許を取り消され,又は免許の効力の停止を受けた時におけるその者の住所が当該処分をした公安委員会以外の公安委員会の管轄区域内にあるときは,当該処分をした公安委員会は,速やかに当該処分をした旨をその者の住所地を管轄する公安委員会に通知しなければならない。
8 公安委員会は,第一項又は第三項の規定による免許の効力の停止(第一項第一号から第四号までのいずれかに該当することを理由とするものを除く。)を受けた者が第百八条の二第一項第三号に掲げる講習を終了したときは,政令で定める範囲内で,その者の免許の効力の停止の期間を短縮することができる。

(申請による取消し)
第百四条の四 免許を受けた者は,その者の住所地を管轄する公安委員会に免許の取消しを申請することができる。この場合において,その者は,第八十九条第一項及び第九十条の二第一項の規定にかかわらず,併せて,当該免許が取り消された場合には他の種類の免許(取消しに係る免許の種類ごとに政令で定める種類のものに限る。)を受けたい旨の申出をすることができる。
2 前項の規定による申請を受けた公安委員会は,政令で定めるところにより,当該申請に係る免許を取り消すものとする。
3 前項の規定により免許を取り消した公安委員会は,第一項の申出をした者から第百七条第一項第一号の規定による当該免許に係る免許証の返納を受けたときは,その者に対し,当該申出に係る免許を与えることができる。
4 前項の規定により与えられる免許は,第二項の規定により取り消された免許を受けた日に受けたものとみなす。
5 第二項の規定により免許を取り消された者(第三項の規定により免許を受けた者を除く。)は,当該取消しを行つた公安委員会に対し,当該取消しを受けた日前五年間の自動車等の運転に関する経歴について,第九十二条の二第一項の表の上欄に規定する優良運転者,一般運転者又は違反運転者等の区分に準じた区分により表示する書面(次項において「運転経歴証明書」という。)の交付を申請することができる。
6 前項の規定による申請を受けた公安委員会は,政令で定めるところにより,運転経歴証明書を交付するものとする。この場合において,運転経歴証明書は,免許証と紛らわしい外観を有するものであつてはならない。
7 前各項に定めるもののほか,第二項の規定による免許の取消しについて必要な事項は,内閣府令で定める。

(免許証の返納等)
第百七条 免許を受けた者は,次の各号のいずれかに該当することとなつたときは,すみやかに,免許証(第三号の場合にあつては,発見し,又は回復した免許証)をその者の住所地を管轄する公安委員会に返納しなければならない。
一 免許が取り消されたとき。
二 免許が失効したとき。
三 免許証の再交付を受けた後において亡失した免許証を発見し,又は回復したとき。
2 第百四条の二の二第一項,第二項若しくは第四項又は第百四条の四第二項の規定により免許を取り消された者がなお他の種類の免許を受けている場合において,前項の規定により免許証を返納したときは,公安委員会は,当該他の種類の免許に係る免許証を交付するものとする。
3 免許を受けた者は,第九十条第四項,第百三条第一項若しくは第三項,第百四条の二の三第一項又は同条第三項において準用する第百三条第三項の規定により免許の効力が停止されたときは,速やかに,免許証をその者の住所地を管轄する公安委員会に提出しなければならない。
4 前項の規定により免許証の提出を受けた公安委員会又は第百三条の二第四項若しくは第五項の規定により免許証の送付を受けた公安委員会は,当該免許証に係る免許の効力の停止の期間が満了した場合においてその提出者から返還の請求があつたときは,直ちに当該免許証を返還しなければならない。

道路交通法施行令の関連条文

(運転経歴証明書の交付)
第三十九条の二の四 法第百四条の四第六項の規定による運転経歴証明書の交付は,同条第五項の規定による申請をした日前一月以内に同条第二項の規定により免許を取り消され,かつ,現に受けている免許がない者に対して行うものとする。

「犯罪による収益の移転防止に関する法律」の関連条文

(本人確認義務等)
第四条  特定事業者(第二条第二項第三十九号に掲げる特定事業者(第八条において「弁護士等」という。)を除く。以下同じ。)は,顧客(同項第三十五号に掲げる特定事業者にあっては,利用者たる顧客。以下同じ。)又はこれに準ずる者として政令で定める者(以下「顧客等」という。)との間で,次の表の上欄に掲げる特定事業者の区分に応じそれぞれ同表の中欄に定める業務(以下「特定業務」という。)のうち同表の下欄に定める取引(以下「特定取引」という。)を行うに際しては,運転免許証の提示を受ける方法その他の主務省令で定める方法により,当該顧客等について,本人特定事項(当該顧客等が自然人である場合にあっては氏名,住居(本邦内に住居を有しない外国人で政令で定めるものにあっては,主務省令で定める事項)及び生年月日をいい,当該顧客等が法人である場合にあっては名称及び本店又は主たる事務所の所在地をいう。以下同じ。)の確認(以下「本人確認」という。)を行わなければならない。
(表は省略)
2  特定事業者は,顧客等の本人確認を行う場合において,会社の代表者が当該会社のために当該特定事業者との間で特定取引を行うときその他の当該特定事業者との間で現に特定取引の任に当たっている自然人が当該顧客等と異なるとき(次項に規定する場合を除く。)は,当該顧客等の本人確認に加え,当該特定取引の任に当たっている自然人(以下「代表者等」という。)についても,本人確認を行わなければならない。
3  顧客等が国,地方公共団体,人格のない社団又は財団その他の政令で定めるものである場合には,当該顧客等のために当該特定事業者との間で現に特定取引の任に当たっている自然人を顧客等とみなして,第一項の規定を適用する。
4  顧客等(前項の規定により顧客等とみなされる自然人を含む。以下同じ。)及び代表者等は,特定事業者が本人確認を行う場合において,当該特定事業者に対して,顧客等又は代表者等の本人特定事項を偽ってはならない。

「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則」の関連条文

(本人確認書類)
第四条  前条第一項に規定する方法において,特定事業者が提示又は送付を受ける書類は,次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める書類のいずれかとする。ただし,第一号ハからホまでに掲げる本人確認書類及び第三号に定める本人確認書類並びに有効期間又は有効期限のある第一号ヘ及びト,第二号ロに掲げる本人確認書類並びに第四号に定める本人確認書類にあっては特定事業者が提示又は送付を受ける日において有効なものに,その他の本人確認書類にあっては特定事業者が提示又は送付を受ける日前六月以内に作成されたものに限る。
一  自然人(第三号及び第四号に掲げる者を除く。) 次に掲げる書類のいずれか
イ 特定取引を行うための申込み又は承諾に係る書類に顧客等が押印した印鑑に係る印鑑登録証明書
ロ 印鑑登録証明書(イに掲げるものを除く。),外国人登録原票の写し,外国人登録原票の記載事項証明書(地方公共団体の長の外国人登録原票に登録された事項を証する書類をいう。),戸籍の謄本若しくは抄本(戸籍の附票の写しが添付されているものに限る。),住民票の写し又は住民票の記載事項証明書(地方公共団体の長の住民基本台帳の氏名,住所その他の事項を証する書類をいう。)
ハ 国民健康保険,健康保険,船員保険,後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証,健康保険日雇特例被保険者手帳,国家公務員共済組合若しくは地方公務員共済組合の組合員証又は私立学校教職員共済制度の加入者証(当該自然人の氏名,住居及び生年月日の記載があるものに限る。)
ニ 国民年金法第十三条第一項 に規定する国民年金手帳,児童扶養手当証書,特別児童扶養手当証書,母子健康手帳,身体障害者手帳,精神障害者保健福祉手帳,療育手帳又は戦傷病者手帳(当該自然人の氏名,住居及び生年月日の記載があるものに限る。)
ホ 道路交通法 (昭和三十五年法律第百五号)第九十二条第一項 に規定する運転免許証,外国人登録証明書,住民基本台帳法 (昭和四十二年法律第八十一号)第三十条の四十四第一項 に規定する住民基本台帳カード(当該自然人の氏名,住居及び生年月日の記載があるものに限る。)又は旅券等
ヘ イからホまでに掲げるもののほか,官公庁から発行され,又は発給された書類その他これに類するもので,当該自然人の氏名,住居及び生年月日の記載があり,かつ,当該官公庁が当該自然人の写真をはり付けたもの
ト イからヘまでに掲げるもののほか,官公庁から発行され,又は発給された書類その他これに類するもので,当該自然人の氏名,住居及び生年月日の記載があるもの
二  法人(第四号に掲げる者を除く。以下この号において同じ。) 次に掲げる書類のいずれか
イ 当該法人の設立の登記に係る登記事項証明書(当該法人が設立の登記をしていないときは,当該法人を所轄する行政機関の長の当該法人の名称及び本店又は主たる事務所の所在地を証する書類)又は印鑑登録証明書(当該法人の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の記載があるものに限る。)
ロ イに掲げるもののほか,官公庁から発行され,又は発給された書類その他これに類するもので,当該法人の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の記載があるもの
三  前条第一項第二号に掲げる者 旅券等
四  外国人(日本の国籍を有しない自然人をいい,本邦に在留しているもの(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第九条第一項又は日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定第三条第一項の規定により本邦に入国し在留しているものを除く。)を除く。)及び外国に本店又は主たる事務所を有する法人 第一号又は第二号に定めるもののほか,日本国政府の承認した外国政府又は権限ある国際機関の発行した書類その他これに類するもので,第一号又は第二号に定めるものに準ずるもの(自然人の場合にあってはその氏名,住居及び生年月日の記載のあるものに,法人の場合にあってはその名称及び本店又は主たる事務所の所在地の記載のあるものに限る。)

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実はセコムしていなかったホテルについて

2008-03-17 23:23:06 | Weblog
セコム,配線ミスで火災時に役立たず…横浜で3人死傷 YOMIURI ONLINE

 工事ミスと点検作業の懈怠で,セコムが火災を知ったのは,近所の方の110番通報から約5時間後。行うべきことをきちんと行ってさえいれば,少なくとも,2人死亡,1人重傷というような重大な結果にはつながらなかったのではなかろうか。ホテル側の「納得できない」はもっともな話し。

セコムの謝罪は当然だが,謝罪の際にオンライン火災監視サービスに係る料金約30万円を返還するという感覚,ちょっと信じられない。因みに,この約30万円,防犯システムの料金を除いた金額だそうだ。
この事案,30万円を返還しておしまい,というわけにはいかないのでは。


民法の関連条文

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも,同様とする。

(損害賠償の範囲)
第四百十六条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は,これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2  特別の事情によって生じた損害であっても,当事者がその事情を予見し,又は予見することができたときは,債権者は,その賠償を請求することができる。

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学生向け告知文を剥がした学生に対する退学処分について

2008-03-16 20:12:21 | Weblog
asahi.com 掲示はがし退学処分 学長批判記事の反論 ノースアジア大

 ご存じのとおり,私立大学による学生の退学処分に関しては,昭和女子大事件(最判S49.7.19)がある。三菱樹脂事件最判を引いて間接適用説に簡単に挨拶した後,学生の規律について大学に包括的権能を認めたものとしてあまり評判の芳しくないものだが,次のように判示。

 ところで,大学は,国公立であると私立であるとを問わず,学生の教育と学術の研究を目的とする公共的な施設であり,法律に格別の規定がない場合でも,その設置目的を達成するために必要な事項を学則等により一方的に制定し,これによつて在学する学生を規律する包括的権能を有するものと解すべきである。特に私立学校においては,建学の精神に基づく独自の伝統ないし校風と教育方針とによつて社会的存在意義が認められ,学生もそのような伝統ないし校風と教育方針のもとで教育を受けることを希望して当該大学に入学するものと考えられるのであるから,右の伝統ないし校風と教育方針を学則等において具体化し,これを実践することが当然認められるべきであり,学生としてもまた,当該大学において教育を受けるかぎり,かかる規律に服することを義務づけられるものといわなければならない。もとより,学校当局の有する右の包括的権能は無制限なものではありえず,在学関係設定の目的と関連し,かつ,その内容が社会通念に照らして合理的と認められる範囲においてのみ是認されるものであるが,具体的に学生のいかなる行動についていかなる程度,方法の規制を加えることが適切であるとするかは,それが教育上の措置に関するものであるだけに,必ずしも画一的に決することはできず,各学校の伝統ないし校風や教育方針によつてもおのずから異なることを認めざるをえないのである。

「伝統」「校風」「教育方針」などとはあるが,重きを置いて読むべきは,「学校当局の有する右の包括的権能は無制限なものではありえず,在学関係設定の目的と関連し,かつ,その内容が社会通念に照らして合理的と認められる範囲においてのみ是認される」という部分ではないだろうか。

次に,学生の地位確認が司法審査の対象になるかに関しては,これも著名なものとして,富山大学事件(最判S52.3.15)がある。こちらは次のように判示。

 大学は,国公立であると私立であるとを問わず,学生の教育と学術の研究とを目的とする教育研究施設であつて,その設置目的を達成するために必要な諸事項については,法令に格別の規定がない場合でも,学則等によりこれを規定し,実施することのできる自律的,包括的な権能を有し,一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成しているのであるから,このような特殊な部分社会である大学における法律上の係争のすべてが当然に裁判所の司法審査の対象になるものではなく,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題は右司法審査の対象から除かれるべきものであることは,叙上説示の点に照らし,明らかというべきである。

退学処分は,言わば,学生を大学から放逐する処分。「一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題」にとどまらないのは明らか。普通に考えれば,司法審査の対象になる。

判例検索システム 昭和49年07月19日 身分確認請求

判例検索システム 昭和52年03月15日 単位不認定等違法確認請求


日本国憲法の関連条文

第十九条  思想及び良心の自由は,これを侵してはならない。

第二十一条  集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。
2  検閲は,これをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない。

第二十三条  学問の自由は,これを保障する。

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総裁空席を避けるための週末にかけての熟慮について

2008-03-14 21:47:41 | Weblog
官房長官,日銀人事「週末に首相が熟慮」 NIKKEI NET

 日本中が,日銀総裁人事をめぐる膠着状態を憂え,ご飯も喉を通らない状況,かどうかは知らないが,福田首相,総裁空席の状態をつくらないため,週末にかけて熟慮されるとのこと。
主要紙の社説を含め,「総裁空席=この世の終わり」的論調のものがほとんど。しかし,昨日の「ラジオあさいちばん」の「ビジネス展望」では,中北教授が,肩肘張らないいつもの穏やかな調子で「はたしてそうだろうか?」と疑問を呈しておられた。中北教授のお話,誤解もあるかもしれないが,管理人なりに要約するとこんな感じになる。因みに,放送は朝6時台で,衆議院の議決前のもの。

 日銀総裁は日銀という「組織」の代表者(日銀法第22条第1項)。重要な地位には違いないが,日銀の機能として最も重要なのは,政策委員会による金融政策決定会合の決定にほかならない(同第15条参照)。
日銀総裁の空席は憂慮すべき事態かもしれない。しかし,それは政策委員会を総理する議長空席まで意味するわけではない。例えば,白川氏の副総裁就任が決定した場合は,氏を政策委員会で議長に選出すれば,この事態にも対応が可能である(同第16条第3項)。
日銀ウォッチャーと呼ばれる事情通の人たちの話しから,福井総裁をサポートしてFRBや欧州主要行とのやり取りなどで重要な役割をはたしてきたのは当時の白川理事であったというのはよく知られているところ。「武藤総裁」が不同意なら,中途半端な政治決着より,「白川総裁代理」でいいではないか(同第22条第2項)。


日銀総裁のことをシンボリックな存在に過ぎないなどと言うつもりはない。しかし,あれこれ尤もらしい理由をつけながら,結局のところ,「恥の文化」の国よろしく,「みっともない」といった程度の意見が少なくない中,中北教授のご意見,これはこれで「なるほど」と思わせるものがあった。

東洋大学大学院 経済学研究科 公民連携専攻 中北徹教授

毎日jp 日銀人事:副総裁候補 白川方明氏…日銀きっての理論家


日本銀行法の関連条文

(目的)
第一条  日本銀行は,我が国の中央銀行として,銀行券を発行するとともに,通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2  日本銀行は,前項に規定するもののほか,銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り,もって信用秩序の維持に資することを目的とする。

(通貨及び金融の調節の理念)
第二条  日本銀行は,通貨及び金融の調節を行うに当たっては,物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって,その理念とする。

(日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保)
第三条  日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は,尊重されなければならない。
2  日本銀行は,通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。

(政府との関係)
第四条  日本銀行は,その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ,それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう,常に政府と連絡を密にし,十分な意思疎通を図らなければならない。

(業務の公共性及びその運営の自主性)
第五条  日本銀行は,その業務及び財産の公共性にかんがみ,適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならない。
2  この法律の運用に当たっては,日本銀行の業務運営における自主性は,十分配慮されなければならない。

(設置)
第十四条  日本銀行に,政策委員会(以下この章及び次章において「委員会」という。)を置く。

(権限)
第十五条  次に掲げる通貨及び金融の調節に関する事項は,委員会の議決による。
一  第三十三条第一項第一号の手形の割引に係る基準となるべき割引率その他の割引率並びに当該割引に係る手形の種類及び条件の決定又は変更
二  第三十三条第一項第二号の貸付けに係る基準となるべき貸付利率その他の貸付利率並びに当該貸付けに係る担保の種類,条件及び価額の決定又は変更
三  準備預金制度に関する法律 (昭和三十二年法律第百三十五号)第四条第一項 に規定する準備率及び基準日等の設定,変更又は廃止
四  第三十三条第一項第三号に規定する手形又は債券の売買その他の方法による金融市場調節(金融市場を通じて行う通貨及び金融の調節(公開市場操作を含む。)をいう。)の方針並びに当該金融市場調節に係る手形又は債券の種類及び条件その他の事項の決定又は変更
五  その他の通貨及び金融の調節に関する方針の決定又は変更
六  前各号に掲げる事項の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解その他通貨及び金融の調節に関する日本銀行としての見解の決定又は変更
2  前項の規定により委員会の議決によるものとされる事項のほか,次に掲げる事項は,委員会の議決を経なければならない。
一  第三十七条第一項の規定による貸付けの実施及び第三十八条第二項の規定による業務の実施
二  第三十九条第一項の規定による認可の申請及び当該認可に係る業務に関する重要事項
三  第四十条第三項に規定する国際金融面での協力に該当するものとして財務大臣が定めるもののため行う外国為替の売買の実施,第四十一条に規定する業務に係る各外国中央銀行等(同条に規定する外国中央銀行等をいう。)との取引の開始及び第四十二条の規定による取引の実施
四  第四十三条第一項ただし書の規定による認可の申請及び当該認可に係る業務に関する重要事項
五  第四十四条第一項に規定する考査に関する契約の内容及び毎事業年度の考査の実施に関する重要事項
六  定款の変更
七  業務方法書の作成又は変更
八  支店その他の事務所及び代理店の設置,移転又は廃止
九  組織及び定員に関する重要事項(前号に掲げるものを除く。)
十  第三十一条第一項に規定する給与等の支給の基準及び第三十二条に規定する服務に関する準則の作成又は変更
十一  不動産その他の重要な財産の取得又は処分
十二  経費の予算(第五十一条第一項に規定する経費の予算をいう。)の作成又は変更,財産目録,貸借対照表,損益計算書及び決算報告書の作成,剰余金の処分その他の会計に関する重要事項
十三  第五十四条第一項に規定する報告書の作成及び第五十五条に規定する業務概況書の作成
十四  第五十九条に規定する規程の作成又は変更
十五  この法律の規定により委員会が定め,又はこの法律若しくは他の法令の規定により委員会が行うこととされる事項
十六  前各号に掲げるもののほか,委員会が特に必要と認める事項
3  委員会は,日本銀行の役員(監事及び参与を除く。)の職務の執行を監督する。

(組織)
第十六条  委員会は,委員九人で組織する。
2  委員は,審議委員六人のほか,日本銀行の総裁及び副総裁二人をもってこれに充てる。この場合において,日本銀行の総裁及び副総裁は,第二十二条第一項及び第二項の規定にかかわらず,それぞれ独立して委員の職務を執行する。
3  委員会に議長を置き,委員の互選によってこれを定める。
4  議長は,委員会の会務を総理する。
5  委員会は,あらかじめ,委員のうちから,議長に事故がある場合に議長の職務を代理する者を定めておかなければならない。

(会議の招集)
第十七条  委員会の会議は,議長(議長に事故があるときは,前条第五項に規定する議長の職務を代理する者。以下この条,次条及び第二十条において同じ。)が招集する。
2  議長は,委員会の会議のうち第十五条第一項各号に掲げる事項(以下この章において「金融調節事項」という。)を議事とする会議については,政令で定めるところにより,これを定期的に招集しなければならない。
3  前項の規定は,議長が必要と認める場合又は現に在任する委員の総数の三分の一以上が必要と認めて議長に対しその招集を求めた場合において金融調節事項を議事とする会議を招集することを妨げるものと解してはならない。

(議事の運営)
第十八条  委員会は,議長が出席し,かつ,現に在任する委員の総数の三分の二以上の出席がなければ,会議を開き,議決をすることができない。
2  委員会の議事は,出席した委員の過半数をもって決する。可否同数のときは,議長が決する。
3  この法律に定めるものを除くほか,議事の手続その他委員会の運営に関し必要な事項は,委員会が定める。

(政府からの出席等)
第十九条  財務大臣又は内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第十九条第二項 に規定する経済財政政策担当大臣(経済財政政策担当大臣が置かれていないときは,内閣総理大臣。次項において「経済財政政策担当大臣」という。)は,必要に応じ,金融調節事項を議事とする会議に出席して意見を述べ,又はそれぞれの指名するその職員を当該会議に出席させて意見を述べさせることができる。
2  金融調節事項を議事とする会議に出席した財務大臣又はその指名する財務省の職員及び経済財政政策担当大臣又はその指名する内閣府の職員は,当該会議において,金融調節事項に関する議案を提出し,又は当該会議で議事とされた金融調節事項についての委員会の議決を次回の金融調節事項を議事とする会議まで延期することを求めることができる。
3  前項の規定による議決の延期の求めがあったときは,委員会は,議事の議決の例により,その求めについての採否を決定しなければならない。

(議事録等の公表)
第二十条  議長は,金融調節事項を議事とする会議の終了後,速やかに,委員会の定めるところにより,当該会議の議事の概要を記載した書類を作成し,当該書類について金融調節事項を議事とする会議において委員会の承認を得て,これを公表しなければならない。2  議長は,委員会の定めるところにより,金融調節事項を議事とする会議の議事録を作成し,委員会が適当と認めて定める相当期間経過後に,これを公表しなければならない。

(役員)
第二十一条  日本銀行に,役員として,審議委員六人のほか,総裁一人,副総裁二人,監事三人以内,理事六人以内及び参与若干人を置く。

(役員の職務及び権限)
第二十二条  総裁は,日本銀行を代表し,委員会の定めるところに従い,日本銀行の業務を総理する。
2  副総裁は,総裁の定めるところにより,日本銀行を代表し,総裁を補佐して日本銀行の業務を掌理し,総裁に事故があるときはその職務を代理し,総裁が欠員のときはその職務を行う。
3  監事は,日本銀行の業務を監査する。
4  監事は,監査の結果に基づき必要があると認めるときは,財務大臣,内閣総理大臣又は委員会に意見を提出することができる。
5  理事は,総裁の定めるところにより,総裁及び副総裁を補佐して日本銀行の業務を掌理し,総裁及び副総裁に事故があるときは総裁の職務を代理し,総裁及び副総裁が欠員のときは総裁の職務を行う。
6  参与は,日本銀行の業務運営に関する重要事項について,委員会の諮問に応じ,又は必要があると認めるときは,委員会に意見を述べることができる。

(役員の任命)
第二十三条  総裁及び副総裁は,両議院の同意を得て,内閣が任命する。
2  審議委員は,経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから,両議院の同意を得て,内閣が任命する。
3  監事は,内閣が任命する。
4  理事及び参与は,委員会の推薦に基づいて,財務大臣が任命する。
5  総裁,副総裁又は審議委員の任期が満了し,又は欠員が生じた場合において,国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは,内閣は,第一項及び第二項の規定にかかわらず,総裁,副総裁又は審議委員を任命することができる。
6  前項の場合においては,任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において,両議院の事後の承認が得られないときは,内閣は,直ちにその総裁,副総裁又は審議委員を解任しなければならない。

(役員の任期)
第二十四条  総裁,副総裁及び審議委員の任期は五年,監事及び理事の任期は四年,参与の任期は二年とする。ただし,総裁,副総裁又は審議委員が欠員となった場合における補欠の総裁,副総裁又は審議委員の任期は,前任者の残任期間とする。
2  総裁,副総裁,審議委員,監事,理事及び参与は,再任されることができる。

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