法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

『一問一答 新・会社法』 雑感 1

2005-07-30 22:39:26 | Weblog
 購入してそのままになっていた『一問一答 新・会社法』。今日の午後,第2章第7節~第13節の機関の辺り(Q75~Q127)だけだが,ザッと目を通してみた。精読は後日ということで,感想というか,気付いた点を少し。

1 機関の任期

 取締役の任期については,Q103の5に,「具体的には,取締役の任期は原則2年としつつ,株式譲渡制限会社については,定款で定めることにより,最長10年まで伸長することができることとしている(会社法332条)。」との記述がある。
会計参与の任期(Q114),監査役の任期(Q119),についても同じような記述ぶりである。
しかし,これは正確とは言えない。ここは,「原則は,選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までで,定款で定めることにより選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長できる」といった書き方をすべきだろう。
条文も添えてあるから問題ないとしても,この種の書籍としては,少し粗っぽい書き方のような気がする。どうだろうか。
もちろん,ある程度の知識がある人にとっては,トラップでも何でもないわけだが・・・。

2 共同代表取締役等の登記の廃止

 Q106は,「共同代表取締役,共同代表執行役,共同支配人の登記の制度を廃止したのは,なぜか。」という内容。
例えば,商法第188条は,第2項第9号で,共同代表取締役である旨を登記事項として掲げている。しかし,会社法にはこれにあたるものは存しない(会社法第911条第3項参照)。それもそのはずで,会社法では,共同代表取締役を設置できるとする実体法上の根拠条文が見あたらない(会社法第349条,商法第261条第2項参照)。
要綱も,第2部「株式会社関係」第3「機関関係」3「取締役・取締役会」(7)「取締役等に関する登記」の中でだが,「共同代表取締役,共同代表執行役及び共同支配人の制度は,廃止するものとする。」としていた。

しかし,Q106の4には次のような記述がみられる。

「そこで,会社法では,共同代表制度については,取締役の代表権に対する単なる内部的制限と位置づけ,これを登記事項から削除することとしている。」

この記述は,登記事項からは削除されたが,共同代表を設けること自体は,定款自治の範囲として許容される,と読めないこともない。
考えてみれば,取引上のトラブルの回避ということでは,登記事項から外せば足り,共同代表は認められない,とまでする必要はないようにも思える。
実体法上の根拠条文が削除された以上,定款自治としても認められない,と考えるのが自然だとは思うが・・・。Qの設定の仕方も含め,少し気になる記述ではある。後でキチンと調べてみよう。

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会社法等の原稿ミスに関する正誤表について

2005-07-29 22:29:42 | Weblog
  会社法及び同整備法が7月26日に公布されたが,同じ官報(168号)で原稿ミスの正誤表(会社法:1箇所,同整備法:1箇所)が掲載されているようだ。
会社法の正誤は,第233条で,

 誤)非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第四編の規定

 正)非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三編の規定
                       
ということらしい。
官報は見ていないが,会社法第233条は,第二編「株式会社」第二章「株式」第九節「株券」第三款「株券喪失登録」の最後の条文。
非訟事件手続法の第四編「公示催告事件」は,今般の整備法第119条において,第三編に編名があらためられている。

 会社法及び同整備法の施行だが,ここにきて,平成18年5月説が有力のようだ。ゴールデンウィークがあけるのは,5月8日(月)だが,さて,どうなるのだろうか。
実務家よりも,案外,資格試験の受験者の方が気を揉んでいるのかもしれない。

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(社)日本監査役協会の「会社法の委任に基づく法務省令の整備に対する意見」について

2005-07-29 20:58:17 | Weblog
 社団法人日本監査役協会が,7月26日付けで表題の意見書を公表している。
内容は,次のとおり3つ。

1 改定監査役監査基準に規定された監査役の職責及び監査役監査環境の整備
  について
2 監査役(会)監査報告の記載事項
3 株主総会議事録への監査役の署名 

上記3点は,いずれも監査役の業務・職責に直接かかわるもの。日本監査役協会の強い意思を感じさせる内容となっている。
http://www.kansa.or.jp/PDF/ns050726.pdf

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裁判手続きを悪用した架空請求について

2005-07-27 12:38:06 | Weblog
 未だ雪が残っていたので,2月頃のことだったと思う。
車の運転中偶々ラジオを付けたところ,衆議院の予算委員会か何かで,法務省民事局長の寺田逸郎氏が,政府参考人として,よくある架空請求と裁判手続きを利用した架空請求の見分け方について説明しているところであった。

 先日,姉の自宅に架空請求が送られてきた。
以前も送られてきたことがあったが,その時は,旧姓で実家の方に送られてきていた。
古い名簿を見て作られたものだろう。因みに,その時送られてきたのは「電子消費者未納利用料請求最終通達書」というタイトルのハガキだった。
大体,この手のハガキは,記載の「裁判取り下げ最終期日」の前日ないし当日に届くように発送されている。「あの時のサイトかな? 時間もないし,取りあえず連絡してみよう」ということで電話し,更に不安を煽られ,金銭を騙し取られるということもあるのだろう。

 以前は,この手のハガキは無視すれば足りるとされていた。しかし,昨年あたりから裁判手続きを悪用したものが現れ始めたから,ことはそう単純ではなくなってきた。
件の寺田民事局長の回答も,このようなことを背景におこなわれた議員の質問に対するものであった。
裁判所からの呼出状の場合,放置して裁判に欠席すれば,相手方の主張したことを認めたことになる(民訴法第159条第3項本文・第1項)。相手方の主張に破綻がない限り,裁判をするに熟したと判断されれば,相手方勝訴判決が出されるのが通常だ(民訴法第243条第1項)。少額訴訟制度(同第368条以下)や支払督促(同382条以下)を利用した場合は,債務名義の取得がより簡単におこなわれる。
一度裁判が確定してしまえば,再審だ,執行異議だ,といっても,現実にはなかなか難しい。結局,本物の裁判所からの通知かどうかの見極めが重要ということになる。

裁判所からの呼出状は,ハガキや普通の郵便で送られてくることはなく,「特別送達」といった形で送られてくる。郵便受けに投げ込まれるといったことはない。先ずは,ここをハッキリさせたい。
裁判所からのものではなく,かつ,身に覚えがない場合は,無視すれば足りる。裁判所からのものであった場合は,答弁書や異議申立書の提出といった相応の対応をする必要がある。
自分で判断できない場合は,タウンページなどの電話帳で電話番号を調べたうえで,直接裁判所なり,消費生活センターに問い合わせるべきだ。安易に封書等の記載を信用すべきではない。


 最近は,HP上で架空請求事業者を公開している消費生活センターも多い。適宜参考にしたい。因みに,秋田県生活センター公表の架空請求業者は以下のHPのとおり。
http://www.pref.akita.jp/atorion/seikatu/index.html

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会社法及び同整備法が公布されました

2005-07-26 09:47:55 | Weblog
 本日付の官報(号外第168号)で,6月29日に成立した「会社法」及び「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が公布されました。
http://kanpou.npb.go.jp/20050726/20050726g00168/20050726g001680000f.html

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「宮崎市ピンクちらし等の配布行為等の防止に関する条例」について

2005-07-19 22:32:00 | Weblog
 たまにレンタル・ビデオ店に行くが,多くの場合,AV(アダルトビデオ)は奥まったブースに置かれているように思う。
私は,成人した大人がAVを観ること自体は問題ないと思っている。何を嗜好するかは個人の問題。周囲がとやかく言う筋合いのものではない。もちろん,「見たくない物を見ない自由」というのも同じように尊重されるべきだ。配偶者や同居するパートナーの間で,このあたりの意見が分かれる場合は,深刻な問題に発展する場合もあろう。因みに,私は,アダルトビデオは借りない。わざわざ書く必要もないことだが ^^; 。
問題だなぁ,と思うのは,面白半分に幼稚園ないし小学生の小さな子どもが件の領域に出入りすることである。これは困ったことだ。責任者には,このようなことのないよう,キチンとした対応を望みたいものだ。

 先日,第一法規『法令解説資料総覧』No.281に掲載されている橋口一也氏(宮崎市市民部生活課主幹兼交通安全係長)の「宮崎市ピンクちらし等の配布行為等の防止に関する条例」に関する解説が偶々目にとまり,興味深く読ませていただいた。
確かに,郵便受けに無断で放り込まれる,いわゆる「ピンクちらし」の類は由々しき問題だ。個人の生活領域に無断で入り込むのに等しいし,教育上の悪影響も看過できない。
宮崎市の条例制定には敬意を表したい。因みに,我が県都秋田市には,今のところ,この種の条例は制定されていないようだ。

 条例を一覧しての感想を3つほど。

1 宮崎市の当該条例の第1条は目的に係るもの。次のとおり規定している。

(目的)
第1条 この条例は、公共の場所において氾濫している人を不快にさせ、又は人に嫌悪を覚えさせることにより迷惑をかけるピンクちらし等を配布する行為等(以下「ピンクちらし配布行為等」という。)を防止し、もって、市民の安心できる快適な生活環境を保持するとともに、心身ともに健全な青少年の育成を図り、及び観光その他の地域間の交流を促進し、市の活性化に寄与することを目的とする

目的は,法・条例解釈の拠り所となる重要なところ。
「観光その他の地域間の交流を促進」は,観光立県の中核都市である宮崎市の面目躍如,といったところだろう。
ただ,「ピンクちらし配布行為等の防止」→「市民の安心できる快適な生活環境の保持」「心身ともに健全な青少年の育成」はもちろん問題ないのだが,「ピンクちらし配布行為等の防止」→「観光その他の地域間の交流を促進し、市の活性化に寄与する」という流れは,少々強引な感じがするのだが,どうなのだろうか。条例制定&施行に伴う副次的効果としての「市の活性化」,というのであれば分かるのだが。ちょっとチグハグな感じは否めない。ピンクちらし配布行為の防止と市の活性化・・・。あまり考えたこともなかったが。

2 条例の第2条は,定義規定である。宮崎市が条例制定の際,参考にしたとされる「福岡市ピンクちらし等の根絶に関する条例」の定義規定と並べてみる。

宮崎市条例

(定義)
第2条 この条例において「ピンクちらし等」とは、性的好奇心をそそる、衣服を脱いだ人の姿態、水着姿、制服姿等の写真若しくは絵又は人の性的好奇心に応じて人に接する役務の提供を表す文言を掲載し、かつ、電話番号等の連絡先を記載したはり紙、ビラ、パンフレットその他これらに類する文書図画をいう。
2 この条例において「電気通信事業者等」とは、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第5号に規定する電気通信事業者、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)第7条第1項に規定する鉄道事業者及び道路運送法(昭和26年法律第183号)第9条第1項に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者をいう。

福岡市条例

(定義)
第2条 この条例において「ピンクちらし等」とは,次の各号のいずれかに該当する内容及び電話番号等の連絡先を記載したはり紙,はり札,立看板,ビラ,パンフレットその他これらに類する文書図画であって,人の性的好奇心に応じて人に接触する役務の提供を表し,又は推測させるものをいう。
(1) 性的好奇心をそそる,衣服を脱いだ人の姿,水着姿,制服姿等の写真又は絵
(2) 性的好奇心をそそる文言

似ているが,違う。
例えば,「a 性的好奇心をそそる,b 衣服を脱いだ人の姿の写真で,c 電話番号の記載のあるビラ」だけでは,福岡市条例の「ピンクちらし等」に該当するかは俄には判断できない。「人の性的好奇心に応じて人に接触する役務の提供を表し,又は推測させるもの」かハッキリしないからだ。福岡市の場合は,「推測させる」の解釈がどのようにおこなわれるかがポイントになる。
一方,宮崎市条例の場合は,前記abcを充足する物が「ピンクちらし等」に該当するのは明らかだ。宮崎市の場合,写真又は絵については,「人に接する役務の提供を表すもの」という要件は外されている。この点は,運用を誤れば,処罰の範囲が拡大しないとは言い切れないところ。まぁ,ちょっと考えにくいけれど。

3 条例の第6条は市民の責務に係るもの。次のとおり規定している。

(市民の責務)
第6条 市民は、自主的にピンクちらし配布行為等の防止に努めるとともに、市の実施する施策に協力するよう努めなければならない。

これは,正直,疑問を禁じ得ない。もちろん,努力規定ではあろう。しかし,他人のするピンクちらし配布行為等の防止を「市民の責務」のタイトルのもとに規定するのはどうだろうか・・・。

最後になったが,「宮崎市ピンクちらし等の配布行為等の防止に関する条例」,6月1日から施行されている。

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養育費・婚姻費用の算定について

2005-07-19 15:40:22 | Weblog
 『判例タイムズ』1179号に「養育費・婚姻費用算定の実務 -大阪家庭裁判所における実務-」(P35~41)というレポートが掲載されている。大阪家庭裁判所岸和田支部判事の濱谷由紀氏,大阪家庭裁判所判事中村昭子氏によるもの。
2年前,『判例タイムズ』1111号に掲載された,東京・大阪養育費等研究会編「簡易迅速な養育費等の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案-」(P285~315)が家裁実務に与えたインパクトは極めて大きかったように思われる。
今般のレポートは,a 前記算定方式による審理の実務,b 前記算定方式を活用した審理における論点についての検討結果,を合わせ,報告するもの。算定方式・算定表の活用にあたっては,是非とも一読しておきたい資料である。

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相続に伴う預貯金の名義書換あるいは解約について

2005-07-18 22:27:03 | Weblog
 金融機関の窓口で預貯金を払い出す際,わざわざ自分で払戻請求書を作る人はいない。払戻請求書は金融機関のロビーに備え付けられている。
しかし,仮に,払戻請求書をPC等で作り,口座番号,預金者名,金額等を記入し,届出印を押印,これを通帳に添えて窓口に提出した場合,どうなるだろうか。
この場合,余程のことがない限り,備え付けの払戻請求書を示され,再度書き直すことになる,と考えるのが自然だろう。
預貯金契約は,法的には,金融機関と預金者等の結ぶ消費寄託契約にあたる(民法第666条)。どのような用紙に記載したとしても,払戻の対象・額,払戻請求者等が明確になるのであれば,問題はなさそうにも思える。
しかし,預貯金契約の一内容である「預金規定集」(約款)の中には,「普通預金の払戻しまたは定期預金等の解約,書替継続をするときは,当行所定の払戻請求書に届出の印章により記名押印して,通帳とともに提出してください。」 といった条項が盛り込まれているのが通常だ。約款一般に係る問題はあるが,内容が不合理でない限り,それに従うのは,ある意味,当然と言える。
ATM,振込機,両替機等の設置状況で変わるとは思うが,大きな支店の窓口であれば,総体で,千件以上/日の預金取引がおこなわれるのは何も珍しいことではない。業務の効率化を追求すれば,画一化された用紙により預金者の同一性等を確認できることは必須となる。その意味では,上記の約款の条項は合理性を認めてよいように思う。自作の払戻請求書では,やはり,具合いが悪いということになる。

 それでは,現在多くの金融機関でみられる,預金者等が亡くなった場合の預貯金の名義書換や解約の手続きの合理性の如何はどうだろうか。
例えば,郵便局の窓口にある「ご案内 郵便貯金の相続に関するお取扱い」というパンフレットを見てみる。「◎提出書類の内容について」の「同意書」覧には次のような記載がある。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

相続される方が数人おられる場合,相続人の方が行う名義書換えなどの請求について,他の法定相続人の方が同意されていることを証明する書類
(同意書用紙を13ページに用意しておりますので,ご利用ください)。
(遺産分割協議書,遺言書又は家庭裁判所の調停・審判による謄本がある場合は,同意書の代替書類とすることができる場合がありますので,郵便局窓口にご相談ください。) 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

上記パンフレットには,同意書以外の書類は認められないと書いてあるわけではない。
調停・審判ならずとも,遺産分割協議書や自筆証書遺言であっても,協議内容・遺言内容等が明確であれば,名義書換等に応ずるのが通常であろう。
しかし,中には,遺産分割協議書等の内容には何ら瑕疵がないにもかかわらず,あくまでも自行所定の用紙等にこだわり,容易に解約等の要求に応じないケースもあるやに聞く。

 人の死,それに伴う相続問題は誰しも避けられない。できれば,預貯金と言わず,不動産と言わず,一度に済ませたいというのが人情だ。あれこれ揉めたあげく,漸く遺産分割協議書を作成したにもかかわらず,更に別途同意書を・・・,というのでは,利用者側の負担を一顧だにしない取り扱い,と言われても仕方がない。
即時に支払うべき,と言うのではない。提出された書類が所定の同意書等ではなかった場合は調査も必要になろう。「内容確認のため数日時間をいただきたい」というのは理解できる。しかし,中身も確認せず「所定の同意書を提出して下さい」では,あまりに金融機関の便宜に傾いてはいまいか。

 現在の,相続に関する金融機関の取り扱いは,少なからず,形式主義に堕している。金融機関と利用者双方の負担を秤にかければ,合理性が認められるかは相当に疑わしい。
効率を追求するあまり,何が本質か見極められなくなっている,あるいは,その見極めを怠っていると言わざるを得ない。
内容上問題があるのなら格別,そうでない限り,速やかに名義書換や解約の要求に応ずるのが筋である。そうでなければ,履行遅滞の責めを負うほかないと考える。

 何十万,何百万という顧客を相手にする以上,様々なことが起きよう。しかし,組織内に蓄積されているのが,単に,「トラブルに巻き込まれた嫌な記憶」だけというのではお粗末に過ぎる。個々のケースにつき,何が問題だったかキチンと検証し,行員等一人一人への申し送りは怠らないようにしてほしいものだ。そうでなければ,そのツケは常に顧客が支払わされることになる。金融機関には善処を望みたい。

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会社法に関するメモ 9 ~ 会計監査人 ~

2005-07-16 13:12:19 | Weblog
 6月29日,「会社法」「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が,参議院本会義で可決成立した。施行は,公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日,となっている(会社法附則第1号。なお,同附則第3号・第4号参照)。以下は,私的なメモ。

1 総論

 会計監査人は,株式会社の計算書類及びその附属明細書,臨時計算書類並びに連結計算書類を監査する会社外部の独立した存在である。
会社法では,会計監査人につき,任意で会計監査人を設置できる会社の範囲,会計監査人の欠格事由,会計監査人の報酬の決定方法,会計監査人の責任,等につき見直しがおこなわれた。

2 会計監査人の設置

ア 会社法において,会計監査人の設置が義務づけられるのは,大会社(法第2条第6号)である(法第328条)。この点は,現行と変わりはない(商特法第2条第1項参照)。
一方,任意で会計監査人を設置できる会社の範囲については,会社法は制限を設けていない(法第326条第2項)。よって,いかなる規模の株式会社でも,定款で定めることにより,会計監査人の設置が可能となった。現行の「小会社」にも計算書類の適正性を確保したいというニーズがあることを踏まえたものであろう。
この点,商法は,平成14年の商法改正において,いわゆる「みなし大会社」制度を導入し会計監査人の任意設置を認めていたが,対象は「中会社」にとどめていた(商特法第2条第2項参照)。会社法により,会計監査人の任意設置の範囲が広がった形だ。

イ 大会社以外の会社が,任意で会計監査人を設置する場合,機関構成として考えられるのは次のとおり。

a 公開会社

  取締役会+監査委員会+会計監査人(+会計参与)
  取締役会+監査役会+会計監査人(+会計参与)
  取締役会+監査役+会計監査人(+会計参与)

b 公開会社以外

  取締役会+監査委員会+会計監査人(+会計参与)
  取締役会+監査役会+会計監査人(+会計参与)
  取締役会+監査役+会計監査人(+会計参与)
  取締役+監査役+会計監査人(+会計参与)

なお,特例有限会社については,大会社であっても,会計監査人の設置は義務づけられていないことに注意(整備法第17条第2項,法第328条第2項)。
* 会計監査人の設置が義務づけられる会社の範囲につき,売上高基準,従業員数基準等の導入も検討されたが,数値設定が困難であることなどを理由に見送られた。また,合同会社に対する義務づけも,制度利用の不透明さなどから見送られた。

3 会計監査人の資格

 会計監査人は,公認会計士又は監査法人でなければならない(法第337条第1項)。
この点は,現行と変わりはない(商特法第4条第1項参照)。
欠格事由については,公認会計士法の規定により当該株式会社に係る監査をすることができない者とされ(法第337条第3項第1号),現行の欠格事由である商特法第4条第2項第1号・第3号・第4号前段に相当するものは設けられなかった。なお,法第337条第3項第2号・第3号,法第396条第5項参照。

4 会計監査人の選任・解任及び任期

ア 会計監査人の選任及び解任は,株主総会の決議でおこなわれる(法第329条第1項,法第339条第1項,法第309条第1項)。他の役員と同様,欠員に備え,予選も可能である(法第329条第2項)。再任については,法第338条第2項参照。
取締役が,a 会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出する場合,b 会計監査人の解任を株主総会の目的とする場合,会計監査人を再任しないことを株主総会の目的とする場合,は監査役等の同意を要する(法第344条第1項・第3項)。委員会設置会社については,法第404条第2項第2号参照。

イ 会計監査人の任期は,選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである(法338条第1項)。
なお,会社が「会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更」をした場合,当該定款変更の効力が生じた時に会計監査人の任期は満了する(法第338条第3項)。

5 会計監査人の報酬

 商法では,会計監査人の報酬決定につき,監査役会等の関与に関する規定は存しない。
会社法では,取締役が,会計監査人等の報酬等を定めるには,監査役等の同意を得なければならないとされた(法第399条)。会計監査人の独立性を高めるための措置と思われる。

6 会計監査人の権限・義務

 会計監査人は,株式会社の計算書類及びその附属明細書,臨時計算書類並びに連結計算書類の監査を職務とするが(法第396条第1項),以下のような権限・権利を有し,義務を負う。

a 会計帳簿等の閲覧・謄写請求権(法第396条第2項)
b 取締役等に対する会計に関する報告請求権(法第396条第2項)
c 子会社に対する会計に関する報告請求権(法第396条第3項)
d 会社又は子会社に対する業務・財産調査権(法第396条第3項)
e 監査役等と計算書類の適法性等につき意見が一致しない場合の定時株主総会での意見陳述権(法第398条第1項)
f 会計監査人の選任等に関する意見等陳述権(法第345条第5項,同第1項・第2項)
g 会計監査報告書の作成義務(法第396条第1項後段)
h 定時株主総会への出席義務・意見陳述義務(法第398条第2項)
i 監査役等への報告義務(法第397条)

なお,会計監査人が,a 計算書類につき不適法意見を述べる場合,b 監査のための必要な調査をすることができなかった場合,には決算公告においてその旨を明示しなければならないとされるようである(法第440条参照)。会計監査人が計算書類につき不適法意見を述べた場合,計算書類は定時株主総会の承認事項となる(法第439条,法第438条第2項)。この点は,現行と変わりはない(商特法第16条第1項,同第21条の31,商法第283条第1項参照)。
後記のとおり,会計監査人の責任は重くなる。会社と会計監査人が対立する場面は多くなるとみるのが自然だろう。

7 会計監査人の責任

 株式会社と会計監査人もまた,委任契約関係にある(法第330条,民法643条以下)。会計監査人の責任については,法第423条~法第427条,法第429条,法第430条,法第847条~法第853条,が適用される。
会計監査人の免責については,総株主の同意による免責(法第424条)のほか,善意・無重過失の場合は一部免責も可能とされた(法第425条~法第427条)。
なお,会計監査人の会社に対する責任も,株主代表訴訟の対象とされた(法第847条第1項,法第423条第1項)。会計監査人の社会的責任は重いとの認識にたった措置といえよう。

8 会計監査人に係る登記

 会社法では,会計監査人設置会社であるときは,会計監査人を設置した旨及び会計監査人の氏名又は名称が登記事項とされた(法第911条第3項第19号)。


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平成17年度版 暮らしの税情報

2005-07-16 10:47:58 | Weblog
 信頼出来る身近な税に関する資料として,国税庁が出している『暮らしの税情報』というパンフレット(全35頁)がある。先日,所用で近くの税務署に行った際,いただいてきた。
例年,税務署に備え置かれるのは8月に入ってからだと思う。今年は早かった。表紙のデザインは平成13年から変わっていないが,色は,みず色→ライトグリーン→ピンク→オレンジと変わってきている。今年は,レモン色。
あやふやな知識は,トラブルのもと。税理士ならずとも,常に参照できるよう手元においておきたい。

なお,このパンフ,国税庁のHPからもダウンロードできる。
http://www.nta.go.jp/category/mizikana/sitte/h17/infoind.htm


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