法律の周辺

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福祉型信託に係る担い手の拡大について

2008-09-15 17:27:56 | Weblog
毎日jp 敬老の日:75歳以上,人口の1割 70歳以上,2000万人超す--総務省推計

 平成18年の信託法改正の折り,衆議院法務委員会では「来るべき超高齢化社会をより暮らしやすい社会とするため,高齢者や障害者の生活を支援する福祉型の信託について,その担い手として弁護士,NPO等の参入の取扱い等を含め,幅広い観点から検討を行うこと。」,また,参議院法務委員会では「高齢者や障害者の生活を支援する福祉型の信託については,特にきめ細やかな支援の必要性が指摘されていることにも留意しつつ,その担い手として弁護士,社会福祉法人等の参入の取扱いなども含め,幅広い観点から検討を行うこと。」との付帯決議が行われている。

高齢者や障害者の財産管理制度については既に民法の成年後見制度があるが,信託制度には,いわゆる「親亡き後の財産管理」への対処,スキーム策定の柔軟性,といった点で,独自性ないし優位性を認めることができる。その制度限りでは身上監護に対応できないという弱点はあるが,この点は,任意後見契約等の併用により対応することになるのだろう。
ただ,高齢者・障害者の財産管理という場面での今後の福祉型信託の普及というものを考えた場合は,なお解決すべき問題が残されている。信託業法第3条に「信託業は,内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ,営むことができない。」とあり,弁護士などの専門家が「業として」信託契約を締結し,受託者に就任,とは簡単にいかない状況にあるのだ(なお,信託法第2条,同施行令第1条の2参照)。冒頭の附帯決議,そして平成16年の信託業法改正時の同旨の附帯決議は,信託という有用の道具を持ちながら,それが宝の持ち腐れとなることを危惧したものである。
この辺りの議論は,金融審議会金融分科会第二部会で中間論点が整理されるなど,ようやく緒に付いたところ。我が国に広く民事信託が根付くどうかにも係る重要な議論。今後の成り行きを注目したい。

金融庁 中間論点整理~平成16年改正後の信託業法の施行状況及び福祉型の信託について~


信託業法の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,信託業を営む者等に関し必要な事項を定め,信託に関する引受けその他の取引の公正を確保することにより,信託の委託者及び受益者の保護を図り,もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「信託業」とは,信託の引受け(他の取引に係る費用に充てるべき金銭の預託を受けるものその他他の取引に付随して行われるものであって,その内容等を勘案し,委託者及び受益者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを除く。以下同じ。)を行う営業をいう。
2  この法律において「信託会社」とは,第三条の内閣総理大臣の免許又は第七条第一項の内閣総理大臣の登録を受けた者をいう。
3  この法律において「管理型信託業」とは,次の各号のいずれかに該当する信託のみの引受けを行う営業をいう。
一  委託者又は委託者から指図の権限の委託を受けた者(委託者又は委託者から指図の権限の委託を受けた者が株式の所有関係又は人的関係において受託者と密接な関係を有する者として政令で定める者以外の者である場合に限る。)のみの指図により信託財産の管理又は処分(当該信託の目的の達成のために必要な行為を含む。以下同じ。)が行われる信託
二  信託財産につき保存行為又は財産の性質を変えない範囲内の利用行為若しくは改良行為のみが行われる信託
4  この法律において「管理型信託会社」とは,第七条第一項の内閣総理大臣の登録を受けた者をいう。
5  この法律において「外国信託業者」とは,外国の法令に準拠して外国において信託業を営む者(信託会社を除く。)をいう。
6  この法律において「外国信託会社」とは,第五十三条第一項の内閣総理大臣の免許又は第五十四条第一項の内閣総理大臣の登録を受けた者をいう。
7  この法律において「管理型外国信託会社」とは,第五十四条第一項の内閣総理大臣の登録を受けた者をいう。
8  この法律において「信託契約代理業」とは,信託契約(当該信託契約に基づく信託の受託者が当該信託の受益権(当該受益権を表示する証券又は証書を含む。)の発行者(金融商品取引法 (昭和二十三年法律第二十五号)第二条第五項 に規定する発行者をいう。)とされる場合を除く。)の締結の代理(信託会社又は外国信託会社を代理する場合に限る。)又は媒介を行う営業をいう。
9  この法律において「信託契約代理店」とは,第六十七条第一項の内閣総理大臣の登録を受けた者をいう。

(免許)
第三条  信託業は,内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ,営むことができない。

信託法の関連条文

(趣旨)
第一条  信託の要件,効力等については,他の法令に定めるもののほか,この法律の定めるところによる。

(定義)
第二条  この法律において「信託」とは,次条各号に掲げる方法のいずれかにより,特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。
2  この法律において「信託行為」とは,次の各号に掲げる信託の区分に応じ,当該各号に定めるものをいう。
一  次条第一号に掲げる方法による信託 同号の信託契約
二  次条第二号に掲げる方法による信託 同号の遺言
三  次条第三号に掲げる方法による信託 同号の書面又は電磁的記録(同号に規定する電磁的記録をいう。)によってする意思表示
3  この法律において「信託財産」とは,受託者に属する財産であって,信託により管理又は処分をすべき一切の財産をいう。
4  この法律において「委託者」とは,次条各号に掲げる方法により信託をする者をいう。
5  この法律において「受託者」とは,信託行為の定めに従い,信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う者をいう。
6  この法律において「受益者」とは,受益権を有する者をいう。
7  この法律において「受益権」とは,信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利をいう。
8  この法律において「固有財産」とは,受託者に属する財産であって,信託財産に属する財産でない一切の財産をいう。
9  この法律において「信託財産責任負担債務」とは,受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務をいう。
10  この法律において「信託の併合」とは,受託者を同一とする二以上の信託の信託財産の全部を一の新たな信託の信託財産とすることをいう。
11  この法律において「吸収信託分割」とは,ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする他の信託の信託財産として移転することをいい,「新規信託分割」とは,ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする新たな信託の信託財産として移転することをいい,「信託の分割」とは,吸収信託分割又は新規信託分割をいう。
12  この法律において「限定責任信託」とは,受託者が当該信託のすべての信託財産責任負担債務について信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う信託をいう。

(信託の方法)
第三条  信託は,次に掲げる方法のいずれかによってする。
一  特定の者との間で,当該特定の者に対し財産の譲渡,担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法
二  特定の者に対し財産の譲渡,担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法
三  特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的,当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法

(信託の効力の発生)
第四条  前条第一号に掲げる方法によってされる信託は,委託者となるべき者と受託者となるべき者との間の信託契約の締結によってその効力を生ずる。
2  前条第二号に掲げる方法によってされる信託は,当該遺言の効力の発生によってその効力を生ずる。
3  前条第三号に掲げる方法によってされる信託は,次の各号に掲げる場合の区分に応じ,当該各号に定めるものによってその効力を生ずる。
一  公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録(以下この号及び次号において「公正証書等」と総称する。)によってされる場合 当該公正証書等の作成
二  公正証書等以外の書面又は電磁的記録によってされる場合 受益者となるべき者として指定された第三者(当該第三者が二人以上ある場合にあっては,その一人)に対する確定日付のある証書による当該信託がされた旨及びその内容の通知
4  前三項の規定にかかわらず,信託は,信託行為に停止条件又は始期が付されているときは,当該停止条件の成就又は当該始期の到来によってその効力を生ずる。

(受益者指定権等)
第八十九条  受益者を指定し,又はこれを変更する権利(以下この条において「受益者指定権等」という。)を有する者の定めのある信託においては,受益者指定権等は,受託者に対する意思表示によって行使する。
2  前項の規定にかかわらず,受益者指定権等は,遺言によって行使することができる。
3  前項の規定により遺言によって受益者指定権等が行使された場合において,受託者がこれを知らないときは,これにより受益者となったことをもって当該受託者に対抗することができない。
4  受託者は,受益者を変更する権利が行使されたことにより受益者であった者がその受益権を失ったときは,その者に対し,遅滞なく,その旨を通知しなければならない。ただし,信託行為に別段の定めがあるときは,その定めるところによる。
5  受益者指定権等は,相続によって承継されない。ただし,信託行為に別段の定めがあるときは,その定めるところによる。
6  受益者指定権等を有する者が受託者である場合における第一項の規定の適用については,同項中「受託者」とあるのは,「受益者となるべき者」とする。

(委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例)
第九十条  次の各号に掲げる信託においては,当該各号の委託者は,受益者を変更する権利を有する。ただし,信託行為に別段の定めがあるときは,その定めるところによる。
一  委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託
二  委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託
2  前項第二号の受益者は,同号の委託者が死亡するまでは,受益者としての権利を有しない。ただし,信託行為に別段の定めがあるときは,その定めるところによる。

(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)
第九十一条  受益者の死亡により,当該受益者の有する受益権が消滅し,他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は,当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間,その効力を有する。

商法の関連条文

(営業的商行為)
第五百二条  次に掲げる行為は,営業としてするときは,商行為とする。ただし,専ら賃金を得る目的で物を製造し,又は労務に従事する者の行為は,この限りでない。
一  賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為
二  他人のためにする製造又は加工に関する行為
三  電気又はガスの供給に関する行為
四  運送に関する行為
五  作業又は労務の請負
六  出版,印刷又は撮影に関する行為
七  客の来集を目的とする場屋における取引
八  両替その他の銀行取引
九  保険
十  寄託の引受け
十一  仲立ち又は取次ぎに関する行為
十二  商行為の代理の引受け
十三  信託の引受け

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