法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

著作権をめぐる「53年問題」について

2006-07-11 20:38:18 | Weblog
「ローマの休日」は権利消滅 東京地裁,格安DVD認める Sankei Web

 この件については,以前,このブログでも触れたことがあった。いつの間にやら,「53年問題」などという名がついている。

 保護期間についての判断は,次のとおり。

 著作権法54条1項及び57条の規定は,「年によって期間を定めた」(民法140条)ものであって,「時間によって期間を定めた」(同法第139条)ものではない。年によって期間を定めた場合は,「期間は,その末日の終了をもって満了する。」(同法141条)とされるから,あくまでも,保護期間の満了を把握する基本的な単位は「日」となるというべきである。
(中略)
本件改正法が平成16年1月1日午前零時の瞬間から施行されるとしても,「施行の際」との文言によって,その施行の一瞬を切り取るべきものでもない。


 また,債権者の,概略,「文化庁も同じ解釈をとっており,これを覆すことは法解釈の安定性を損なう」との主張についての判断は,次のとおり。債権者側には誠に厳しい内容。

 しかしながら,本件改正法附則2条の適用関係に関する文化庁の上記見解は,従前司法判断を受けたものではなく,これが法的に誤ったものである以上,誤った解釈を前提とする運用を将来においても維持することが,法的安定性に資することにはならない。

立法担当者の意図と実際の法文の正しい解釈との間に齟齬が生じているかたち。これも一種の錯誤か。第2ラウンドもあるようだが,さて,どうなるのだろうか。

なお,記事には,「同年(管理人註:1953年)は名作が多く,決定は映画業界に大きな影響を与えそうだ。」とある。なるほど,『シェーン』,『地上より永遠に』,『聖衣』,『乱暴者』etc 。確かに,ある,ある。

判例検索システムHP 著作権仮処分命令申立事件


民法の関連条文

(期間の起算)
第百三十九条  時間によって期間を定めたときは,その期間は,即時から起算する。

第百四十条  日,週,月又は年によって期間を定めたときは,期間の初日は,算入しない。ただし,その期間が午前零時から始まるときは,この限りでない。

(期間の満了)
第百四十一条  前条の場合には,期間は,その末日の終了をもって満了する。

著作権法の関連条文

(映画の著作物の保護期間)
第五十四条  映画の著作物の著作権は,その著作物の公表後七十年(その著作物がその創作後七十年以内に公表されなかつたときは,その創作後七十年)を経過するまでの間,存続する。
2  映画の著作物の著作権がその存続期間の満了により消滅したときは,当該映画の著作物の利用に関するその原著作物の著作権は,当該映画の著作物の著作権とともに消滅したものとする。
3  前二条の規定は,映画の著作物の著作権については,適用しない。

(保護期間の計算方法)
第五十七条  第五十一条第二項,第五十二条第一項,第五十三条第一項又は第五十四条第一項の場合において,著作者の死後五十年,著作物の公表後五十年若しくは創作後五十年又は著作物の公表後七十年若しくは創作後七十年の期間の終期を計算するときは,著作者が死亡した日又は著作物が公表され若しくは創作された日のそれぞれ属する年の翌年から起算する。

附則(平成一五年六月一八日法律第八五号)

(施行期日)
第一条  この法律は,平成十六年一月一日から施行する。

(映画の著作物の保護期間についての経過措置)
第二条  改正後の著作権法(次条において「新法」という。)第五十四条第一項の規定は,この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について適用し,この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については,なお従前の例による。

第三条  著作権法の施行前に創作された映画の著作物であって,同法附則第七条の規定によりなお従前の例によることとされるものの著作権の存続期間は,旧著作権法(明治三十二年法律第三十九号)による著作権の存続期間の満了する日が新法第五十四条第一項の規定による期間の満了する日後の日であるときは,同項の規定にかかわらず,旧著作権法による著作権の存続期間の満了する日までの間とする。

(罰則についての経過措置)
第四条  この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については,なお従前の例による。

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婦女暴行訴訟における衝立の設置について

2006-07-11 17:18:50 | Weblog
被害者保護,本人尋問で異例のついたて…婦女暴行訴訟 YOMIURI ONLINE

 記事の「証言台と傍聴席との間についたてを設けること」は,裁判公開の原則(憲法第82条)との関係が問題となる。
本件は性的陵辱による損害賠償請求事件だが,公開することにより「公の秩序又は善良の風俗を害する虞がある」場合とまではいえない。よって,公開が原則であり,衝立の設置は許されないようにも思える。
しかし,翻って考えるに,裁判公開の原則は,「裁判の公正確保」,「当事者に対する適正手続保障」及び「国民の知る権利」等に資するものとして認められている制度。
もし,衝立の設置がないとすれば,当事者は傍聴席の好奇の目に曝されることになり,訴訟の提起を躊躇することにもなりかねない。そうなっては,「裁判を受ける権利の保障」(憲法第32条)は画餅に帰する。もはや,「当事者に対する適正手続保障」どころの話しではない。手段を貫くために目的を犠牲にしては,本末転倒である。

本件のようなケースでは,まさに,「当事者に対する適正手続保障」,さらに言えば,「裁判を受ける権利の保障」を損なわないためにも,憲法第82条を緩やかに解すべきは当然である。衝立の設置により得られる利益を考えれば,「裁判の公正確保」及び「国民の知る権利」が蔑ろにされたなど,言う必要はなかろう。
よって,衝立を設置するという本件訴訟指揮,合目的的処置として妥当である。

なお,訴訟記録の閲覧の制限に関して民訴規則第34条がある。


日本国憲法の関連条文

第三十二条  何人も,裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

第八十二条  裁判の対審及び判決は,公開法廷でこれを行ふ。
2  裁判所が,裁判官の全員一致で,公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には,対審は,公開しないでこれを行ふことができる。但し,政治犯罪,出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は,常にこれを公開しなければならない。

民事訴訟法の関連条文

(裁判長の訴訟指揮権)
第百四十八条  口頭弁論は,裁判長が指揮する。
2  裁判長は,発言を許し,又はその命令に従わない者の発言を禁ずることができる。

(当事者本人の尋問)
第二百七条  裁判所は,申立てにより又は職権で,当事者本人を尋問することができる。この場合においては,その当事者に宣誓をさせることができる。
2  証人及び当事者本人の尋問を行うときは,まず証人の尋問をする。ただし,適当と認めるときは,当事者の意見を聴いて,まず当事者本人の尋問をすることができる。

民事訴訟規則の関連条文

第三十四条 秘密記載部分の閲覧等の請求をすることができる者を当事者に限る決定を求める旨の申立ては,書面で,かつ,訴訟記録中の秘密記載部分を特定してしなければならない。
2 前項の決定においては,訴訟記録中の秘密記載部分を特定しなければならない。

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刑罰制度の抜本的な見直しについて

2006-07-11 15:50:54 | Weblog
杉浦法相:社会奉仕命令など再犯防止策を法制審で検討へ MSN毎日インタラクティブ

 刑罰理論などに直結する部分。

プロジェクトチーム発足から約半年。いよいよ,議論は法制審の場に。
1月の記事にはなかった「保護観察よりも厳しく監視する「中間処遇制度」」というのが目をひく。
「社会奉仕命令」には,教育刑という側面がある。今回の見直し,刑務所の過剰収容解消ということだけでなく,刑事制度の大きな転換点といえそう。


刑法の関連条文

(刑の種類)
第九条  死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留及び科料を主刑とし,没収を付加刑とする。

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暴力行為にともなう退場処分について

2006-07-11 13:00:41 | Weblog
asahi.com エリゼ宮で開かれた昼食会に出席し,シラク大統領と握手するジダン=10日,パリで

 ワールドカップ・サッカーの最終結末を,イタリアの4回目の優勝より,ジネディーヌ・ジダンの退場と考えた人も少なからずいたに違いない。フランスの敗退はともかく,何とも残念な結末だった。

確かに強烈な頭突きに見える。どのような名選手であれ,サッカーの試合なら,一発退場はやむを得ない。
しかし,仮に,昨日来報道されているような暴言を件のイタリア人選手が口にしたとすれば,サッカーの話しはともかく,一般社会においてはイエローカードは間違いない。就いている役職によっては,レッドカードだってありうる。
ジダンの行為がそれに誘発されたのなら,制裁かどうかはさておき,オフィシャルな形でことの真相が明らかにされるべきだ。
もし仮に,「頭突き以上の暴力」をおこないながら,被害者役を独り占めし,美酒に酔いしれている者がいるとすれば,感情的な言い方になるけれど,ちょっと許せない。
この事件,自制心が欠けていた,あるいは,名選手にあるまじき行為,で終わらせるのは片手落ちのような気がする。

今回のワールドカップ,テレビ観戦したのは数試合に過ぎない。しかし,試合前,各チームの主将が,「いかなるRacism(民族差別)にも反対する」とのコメントを読み上げるのを聞いたとき,FIFAも金権主義に毒された団体というだけでもなさそうだ,と少し見直したところだった。
「サッカーの話しはともかく」と書いたが,FIFAにはきちんとした対応をお願いしたいもの。そうでなければ,あれは,単なるお飾りのセレモニーだったということになってしまう。

それにしても,不思議だ。かつて,権謀術数家の代表のようにいわれたジャック・シラクが滋味溢れる父親にみえる。いや,これは皮肉でも何でもない。傍らでジダンを見つめる大統領夫人の少し悲しげな眼差しが印象的だ。
さて,大統領,ジダンにどんな言葉をかけたのだろう・・・。

いずれにしても,ジダンよ,俯かないで欲しい。こちらも悲しくなるではないか。


「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の関連条文

この規約の締約国は,
 国際連合憲章において宣明された原則によれば,人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由,正義及び平和の基礎をなすものであることを考慮し,
 これらの権利が人間の固有の尊厳に由来することを認め,
 世界人権宣言によれば,自由な人間は市民的及び政治的自由並びに恐怖及び欠乏からの自由を享受するものであるとの理想は,すべての者がその経済的,社会的及び文化的権利とともに市民的及び政治的権利を享有することのできる条件が作り出される場合に初めて達成されることになることを認め,
 人権及び自由の普遍的な尊重及び遵守を助長すべき義務を国際連合憲章に基づき諸国が負っていることを考慮し,
 個人が,他人に対し及びその属する社会に対して義務を負うこと並びにこの規約において認められる権利の増進及び擁護のために努力する責任を有することを認識して,
 次のとおり協定する。

第二条

1 この規約の各締約国は,その領域内にあり,かつ,その管轄の下にあるすべての個人に対し,人種,皮膚の色,性,言語,宗教,政治的意見その他の意見,国民的若しくは社会的出身,財産,出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束する。
2 この規約の各締約国は,立法措置その他の措置がまだとられていない場合には,この規約において認められる権利を実現するために必要な立法措置その他の措置をとるため,自国の憲法上の手続及びこの規約の規定に従って必要な行動をとることを約束する。
3 この規約の各締約国は,次のことを約束する。
 (a) この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が,公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも,効果的な救済措置を受けることを確保すること。
 (b) 救済措置を求める者の権利が権限のある司法上,行政上若しくは立法上の機関又は国の法制で定める他の権限のある機関によって決定されることを確保すること及び司法上の救済措置の可能性を発展させること。
 (c) 救済措置が与えられる場合に権限のある機関によって執行されることを確保すること。

コメント (3)
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