横領:未成年の財産3000万円 東京国税局職員ら逮捕 MSN毎日インタラクティブ
asahi.com 新宿税務署職員が横領 運用相談で3千万円着服
民事上の責任はどうなるだろうか。
国税局職員については,業務上横領も認めており,不法行為責任を免れないのは明らか(民法第709条)。
「女性家族らの相続税の調査にあたったことをきっかけに,資金運用などの相談に乗るようになった」とあることから,「事業の執行」「事業の監督」との関係で,使用者としての国の責任も問題になりそう(同第715条参照)。ただ,「資金運用の相談」が国税局の所掌事務とは思えない。件の職員が個人的におこなったとなれば,国に対する責任追及,現実には難しい。
それでは,財産管理を依頼した未成年後見人の責任はどうだろうか。
相手が公務員ということで,宥恕すべき点,無くはない。しかし,未成年後見人の職責(同第869条,同第644条,同第106条参照),金額の大きさ等に照らせば,やはり,不注意というほかはない。善管注意義務違反に基づく債務不履行責任(同第415条,同第416条),過失に基づく不法行為責任(同第709条)は免れないように思われる。
なお,国税局職員についても,民法第107条経由により,未成年後見人同様,債務不履行責任が一応問題になろう。
民法の関連条文
(復代理人を選任した代理人の責任)
第百五条 代理人は,前条の規定により復代理人を選任したときは,その選任及び監督について,本人に対してその責任を負う。
2 代理人は,本人の指名に従って復代理人を選任したときは,前項の責任を負わない。ただし,その代理人が,復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら,その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは,この限りでない。
(法定代理人による復代理人の選任)
第百六条 法定代理人は,自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において,やむを得ない事由があるときは,前条第一項の責任のみを負う。
(復代理人の権限等)
第百七条 復代理人は,その権限内の行為について,本人を代表する。
2 復代理人は,本人及び第三者に対して,代理人と同一の権利を有し,義務を負う。
(受任者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は,委任の本旨に従い,善良な管理者の注意をもって,委任事務を処理する義務を負う。
(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は,法律行為でない事務の委託について準用する。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし,使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは,この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も,前項の責任を負う。
3 前2項の規定は,使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
(共同不法行為者の責任)
第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは,各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも,同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇助した者は,共同行為者とみなして,前項の規定を適用する。
(財産の管理及び代表)
第八百二十四条 親権を行う者は,子の財産を管理し,かつ,その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし,その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には,本人の同意を得なければならない。
(未成年後見人の指定)
第八百三十九条 未成年者に対して最後に親権を行う者は,遺言で,未成年後見人を指定することができる。ただし,管理権を有しない者は,この限りでない。
2 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは,他の一方は,前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。
第八百四十条 前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは,家庭裁判所は,未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって,未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも,同様とする。
(未成年被後見人の身上の監護に関する権利義務)
第八百五十七条 未成年後見人は,第八百二十条から第八百二十三条までに規定する事項について,親権を行う者と同一の権利義務を有する。ただし,親権を行う者が定めた教育の方法及び居所を変更し,未成年被後見人を懲戒場に入れ,営業を許可し,その許可を取り消し,又はこれを制限するには,未成年後見監督人があるときは,その同意を得なければならない。
(財産の管理及び代表)
第八百五十九条 後見人は,被後見人の財産を管理し,かつ,その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
2 第八百二十四条ただし書の規定は,前項の場合について準用する。
(財産に関する権限のみを有する未成年後見人)
第八百六十八条 親権を行う者が管理権を有しない場合には,未成年後見人は,財産に関する権限のみを有する。
(委任及び親権の規定の準用)
第八百六十九条 第六百四十四条及び第八百三十条の規定は,後見について準用する。