法律の周辺

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事業承継の円滑化に係る信託の活用について

2008-08-31 21:59:35 | Weblog
事業承継に信託活用を 中小企業庁が報告書 NIKKEI NET

 平成18年6月に公表された事業承継関連相続法制検討委員会「事業承継ガイドライン. ~中小企業の円滑な事業承継のための手引き~」には,「相続紛争を防止しつつ後継者に事業用資産を集中させる方策」に「その他の手法」として次のようにあった。
因みに,信託法案が国会に提出されたのは平成18年3月13日。継続審議の後,法律として成立したのは同年12月7日。

③後継ぎ遺贈型受益者連続の信託
)概要
いわゆる「後継ぎ遺贈型受益者連続の信託」とは,受益者の死亡により,当該受益者の有する受益権が消滅し,他の者が新たな受益権を取得する旨の定めがある信託のことである。
中小企業の事業承継における活用例としては,企業経営者(=委託者)が,自社株式を信託財産とし,第一次受益者を妻,第二次受益者を妻の死後に事業後継者としたい長男とする後継ぎ遺贈型の受益者連続の信託を設定するようなケースが考えられる。


ひとつの案はわかるが,30年の期間制限には触れられていない(信託法第91条参照)。
後継ぎ遺贈型受益者連続信託については遺留分との関係も気になるが,立法担当者は,信託法には特段の規定はないが,遺留分に係る民法の規定からすれば,減殺の対象になるとしている。

2006年版の中小企業白書によれば,後継者不在で毎年7万社の中小企業が廃業し,それにより20万~35万人の雇用が失われるとか。事業承継問題は喫緊の政策課題だ。

事業承継協議会 事業承継ガイドライン. ~中小企業の円滑な事業承継のための手引き~

中小企業庁 中小企業白書 2006年版


信託法の関連条文

(趣旨)
第一条  信託の要件,効力等については,他の法令に定めるもののほか,この法律の定めるところによる。

(定義)
第二条  この法律において「信託」とは,次条各号に掲げる方法のいずれかにより,特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。
2  この法律において「信託行為」とは,次の各号に掲げる信託の区分に応じ,当該各号に定めるものをいう。
一  次条第一号に掲げる方法による信託 同号の信託契約
二  次条第二号に掲げる方法による信託 同号の遺言
三  次条第三号に掲げる方法による信託 同号の書面又は電磁的記録(同号に規定する電磁的記録をいう。)によってする意思表示
3  この法律において「信託財産」とは,受託者に属する財産であって,信託により管理又は処分をすべき一切の財産をいう。
4  この法律において「委託者」とは,次条各号に掲げる方法により信託をする者をいう。
5  この法律において「受託者」とは,信託行為の定めに従い,信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う者をいう。
6  この法律において「受益者」とは,受益権を有する者をいう。
7  この法律において「受益権」とは,信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利をいう。
8  この法律において「固有財産」とは,受託者に属する財産であって,信託財産に属する財産でない一切の財産をいう。
9  この法律において「信託財産責任負担債務」とは,受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務をいう。
10  この法律において「信託の併合」とは,受託者を同一とする二以上の信託の信託財産の全部を一の新たな信託の信託財産とすることをいう。
11  この法律において「吸収信託分割」とは,ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする他の信託の信託財産として移転することをいい,「新規信託分割」とは,ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする新たな信託の信託財産として移転することをいい,「信託の分割」とは,吸収信託分割又は新規信託分割をいう。
12  この法律において「限定責任信託」とは,受託者が当該信託のすべての信託財産責任負担債務について信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う信託をいう。

(信託の方法)
第三条  信託は,次に掲げる方法のいずれかによってする。
一  特定の者との間で,当該特定の者に対し財産の譲渡,担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法
二  特定の者に対し財産の譲渡,担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法
三  特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的,当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法

(信託の効力の発生)
第四条  前条第一号に掲げる方法によってされる信託は,委託者となるべき者と受託者となるべき者との間の信託契約の締結によってその効力を生ずる。
2  前条第二号に掲げる方法によってされる信託は,当該遺言の効力の発生によってその効力を生ずる。
3  前条第三号に掲げる方法によってされる信託は,次の各号に掲げる場合の区分に応じ,当該各号に定めるものによってその効力を生ずる。
一  公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録(以下この号及び次号において「公正証書等」と総称する。)によってされる場合 当該公正証書等の作成
二  公正証書等以外の書面又は電磁的記録によってされる場合 受益者となるべき者として指定された第三者(当該第三者が二人以上ある場合にあっては,その一人)に対する確定日付のある証書による当該信託がされた旨及びその内容の通知
4  前三項の規定にかかわらず,信託は,信託行為に停止条件又は始期が付されているときは,当該停止条件の成就又は当該始期の到来によってその効力を生ずる。

(委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例)
第九十条  次の各号に掲げる信託においては,当該各号の委託者は,受益者を変更する権利を有する。ただし,信託行為に別段の定めがあるときは,その定めるところによる。
一  委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託
二  委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託
2  前項第二号の受益者は,同号の委託者が死亡するまでは,受益者としての権利を有しない。ただし,信託行為に別段の定めがあるときは,その定めるところによる。

(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)
第九十一条  受益者の死亡により,当該受益者の有する受益権が消滅し,他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は,当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間,その効力を有する。

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