毎日jp DV防止法違反:元妻に対し面会要求で逮捕,法改正後初--福島
容疑者,妻に殴るけるの暴力を振るい,本年1月28日に保護命令が出されたとのこと。
記事には,容疑者の供述として,今後のことを話し合いたかった,とある。この言葉,もっと前に出ていたなら・・・。
さて,保護命令に係る改正DV防止法第10条の第2項には「前項本文に規定する場合において,同項第一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者に対し,命令の効力が生じた日以後,同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間,被害者に対して次の各号に掲げるいずれの行為もしてはならないことを命ずるものとする。」とあり,第1号に「面会を要求すること。」とある。「要求」とあるから,「強要」の程度に至らずとも,保護命令違反になるということだろう。
因みに,保護命令違反の法定刑は,一年以下の懲役又は百万円以下の罰金(DV防止法第29条)。
内閣府 男女共同参画局 配偶者暴力防止法が改正されました
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の関連条文
我が国においては,日本国憲法 に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ,人権の擁護と男女平等の実現に向けた取組が行われている。
ところが,配偶者からの暴力は,犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず,被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった。また,配偶者からの暴力の被害者は,多くの場合女性であり,経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力を加えることは,個人の尊厳を害し,男女平等の実現の妨げとなっている。
このような状況を改善し,人権の擁護と男女平等の実現を図るためには,配偶者からの暴力を防止し,被害者を保護するための施策を講ずることが必要である。このことは,女性に対する暴力を根絶しようと努めている国際社会における取組にも沿うものである。
ここに,配偶者からの暴力に係る通報,相談,保護,自立支援等の体制を整備することにより,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため,この法律を制定する。
(定義)
第一条 この法律において「配偶者からの暴力」とは,配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい,配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に,その者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。
2 この法律において「被害者」とは,配偶者からの暴力を受けた者をいう。
3 この法律にいう「配偶者」には,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み,「離婚」には,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が,事実上離婚したと同様の事情に入ることを含むものとする。
(国及び地方公共団体の責務)
第二条 国及び地方公共団体は,配偶者からの暴力を防止するとともに,被害者の自立を支援することを含め,その適切な保護を図る責務を有する。
(被害者の保護のための関係機関の連携協力)
第九条 配偶者暴力相談支援センター,都道府県警察,福祉事務所等都道府県又は市町村の関係機関その他の関係機関は,被害者の保護を行うに当たっては,その適切な保護が行われるよう,相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。
(苦情の適切かつ迅速な処理)
第九条の二 前条の関係機関は,被害者の保護に係る職員の職務の執行に関して被害者から苦情の申出を受けたときは,適切かつ迅速にこれを処理するよう努めるものとする。
(保護命令)
第十条 被害者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫(被害者の生命又は身体に対し害を加える旨を告知してする脅迫をいう。以下この章において同じ。)を受けた者に限る。以下この章において同じ。)が,配偶者からの身体に対する暴力を受けた者である場合にあっては配偶者からの更なる身体に対する暴力(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に,被害者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。第十二条第一項第二号において同じ。)により,配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた者である場合にあっては配偶者から受ける身体に対する暴力(配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後に,被害者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。同号において同じ。)により,その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは,裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた後に,被害者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者。以下この条,同項第三号及び第四号並びに第十八条第一項において同じ。)に対し,次の各号に掲げる事項を命ずるものとする。ただし,第二号に掲げる事項については,申立ての時において被害者及び当該配偶者が生活の本拠を共にする場合に限る。
一 命令の効力が生じた日から起算して六月間,被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この号において同じ。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい,又は被害者の住居,勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないこと。
二 命令の効力が生じた日から起算して二月間,被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならないこと。
2 前項本文に規定する場合において,同項第一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者に対し,命令の効力が生じた日以後,同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間,被害者に対して次の各号に掲げるいずれの行為もしてはならないことを命ずるものとする。
一 面会を要求すること。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ,又はその知り得る状態に置くこと。
三 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
四 電話をかけて何も告げず,又は緊急やむを得ない場合を除き,連続して,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,若しくは電子メールを送信すること。
五 緊急やむを得ない場合を除き,午後十時から午前六時までの間に,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,又は電子メールを送信すること。
六 汚物,動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し,又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ,又はその知り得る状態に置くこと。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ,若しくはその知り得る状態に置き,又はその性的羞恥心を害する文書,図画その他の物を送付し,若しくはその知り得る状態に置くこと。
3 第一項本文に規定する場合において,被害者がその成年に達しない子(以下この項及び次項並びに第十二条第一項第三号において単に「子」という。)と同居しているときであって,配偶者が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めるときは,第一項第一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者に対し,命令の効力が生じた日以後,同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間,当該子の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この項において同じ。),就学する学校その他の場所において当該子の身辺につきまとい,又は当該子の住居,就学する学校その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとする。ただし,当該子が十五歳以上であるときは,その同意がある場合に限る。
4 第一項本文に規定する場合において,配偶者が被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者(被害者と同居している子及び配偶者と同居している者を除く。以下この項及び次項並びに第十二条第一項第四号において「親族等」という。)の住居に押し掛けて著しく粗野又は乱暴な言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めるときは,第一項第一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者に対し,命令の効力が生じた日以後,同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間,当該親族等の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この項において同じ。)その他の場所において当該親族等の身辺につきまとい,又は当該親族等の住居,勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとする。
5 前項の申立ては,当該親族等(被害者の十五歳未満の子を除く。以下この項において同じ。)の同意(当該親族等が十五歳未満の者又は成年被後見人である場合にあっては,その法定代理人の同意)がある場合に限り,することができる。
(管轄裁判所)
第十一条 前条第一項の規定による命令の申立てに係る事件は,相手方の住所(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所)の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
2 前条第一項の規定による命令の申立ては,次の各号に掲げる地を管轄する地方裁判所にもすることができる。
一 申立人の住所又は居所の所在地
二 当該申立てに係る配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫が行われた地
(保護命令の申立て)
第十二条 第十条第一項から第四項までの規定による命令(以下「保護命令」という。)の申立ては,次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた状況
二 配偶者からの更なる身体に対する暴力又は配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後の配偶者から受ける身体に対する暴力により,生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる申立ての時における事情
三 第十条第三項の規定による命令の申立てをする場合にあっては,被害者が当該同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情
四 第十条第四項の規定による命令の申立てをする場合にあっては,被害者が当該親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情
五 配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に対し,前各号に掲げる事項について相談し,又は援助若しくは保護を求めた事実の有無及びその事実があるときは,次に掲げる事項
イ 当該配偶者暴力相談支援センター又は当該警察職員の所属官署の名称
ロ 相談し,又は援助若しくは保護を求めた日時及び場所
ハ 相談又は求めた援助若しくは保護の内容
ニ 相談又は申立人の求めに対して執られた措置の内容
2 前項の書面(以下「申立書」という。)に同項第五号イからニまでに掲げる事項の記載がない場合には,申立書には,同項第一号から第四号までに掲げる事項についての申立人の供述を記載した書面で公証人法 (明治四十一年法律第五十三号)第五十八条ノ二第一項 の認証を受けたものを添付しなければならない。
(迅速な裁判)
第十三条 裁判所は,保護命令の申立てに係る事件については,速やかに裁判をするものとする。
(保護命令事件の審理の方法)
第十四条 保護命令は,口頭弁論又は相手方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ,これを発することができない。ただし,その期日を経ることにより保護命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは,この限りでない。
2 申立書に第十二条第一項第五号イからニまでに掲げる事項の記載がある場合には,裁判所は,当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長に対し,申立人が相談し又は援助若しくは保護を求めた際の状況及びこれに対して執られた措置の内容を記載した書面の提出を求めるものとする。この場合において,当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長は,これに速やかに応ずるものとする。
3 裁判所は,必要があると認める場合には,前項の配偶者暴力相談支援センター若しくは所属官署の長又は申立人から相談を受け,若しくは援助若しくは保護を求められた職員に対し,同項の規定により書面の提出を求めた事項に関して更に説明を求めることができる。
(保護命令の申立てについての決定等)
第十五条 保護命令の申立てについての決定には,理由を付さなければならない。ただし,口頭弁論を経ないで決定をする場合には,理由の要旨を示せば足りる。
2 保護命令は,相手方に対する決定書の送達又は相手方が出頭した口頭弁論若しくは審尋の期日における言渡しによって,その効力を生ずる。
3 保護命令を発したときは,裁判所書記官は,速やかにその旨及びその内容を申立人の住所又は居所を管轄する警視総監又は道府県警察本部長に通知するものとする。
4 保護命令を発した場合において,申立人が配偶者暴力相談支援センターの職員に対し相談し,又は援助若しくは保護を求めた事実があり,かつ,申立書に当該事実に係る第十二条第一項第五号イからニまでに掲げる事項の記載があるときは,裁判所書記官は,速やかに,保護命令を発した旨及びその内容を,当該申立書に名称が記載された配偶者暴力相談支援センター(当該申立書に名称が記載された配偶者暴力相談支援センターが二以上ある場合にあっては,申立人がその職員に対し相談し,又は援助若しくは保護を求めた日時が最も遅い配偶者暴力相談支援センター)の長に通知するものとする。
5 保護命令は,執行力を有しない。
(即時抗告)
第十六条 保護命令の申立てについての裁判に対しては,即時抗告をすることができる。
2 前項の即時抗告は,保護命令の効力に影響を及ぼさない。
3 即時抗告があった場合において,保護命令の取消しの原因となることが明らかな事情があることにつき疎明があったときに限り,抗告裁判所は,申立てにより,即時抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間,保護命令の効力の停止を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は,原裁判所も,この処分を命ずることができる。
4 前項の規定により第十条第一項第一号の規定による命令の効力の停止を命ずる場合において,同条第二項から第四項までの規定による命令が発せられているときは,裁判所は,当該命令の効力の停止をも命じなければならない。
5 前二項の規定による裁判に対しては,不服を申し立てることができない。
6 抗告裁判所が第十条第一項第一号の規定による命令を取り消す場合において,同条第二項から第四項までの規定による命令が発せられているときは,抗告裁判所は,当該命令をも取り消さなければならない。
7 前条第四項の規定による通知がされている保護命令について,第三項若しくは第四項の規定によりその効力の停止を命じたとき又は抗告裁判所がこれを取り消したときは,裁判所書記官は,速やかに,その旨及びその内容を当該通知をした配偶者暴力相談支援センターの長に通知するものとする。
8 前条第三項の規定は,第三項及び第四項の場合並びに抗告裁判所が保護命令を取り消した場合について準用する。
(保護命令の取消し)
第十七条 保護命令を発した裁判所は,当該保護命令の申立てをした者の申立てがあった場合には,当該保護命令を取り消さなければならない。第十条第一項第一号又は第二項から第四項までの規定による命令にあっては同号の規定による命令が効力を生じた日から起算して三月を経過した後において,同条第一項第二号の規定による命令にあっては当該命令が効力を生じた日から起算して二週間を経過した後において,これらの命令を受けた者が申し立て,当該裁判所がこれらの命令の申立てをした者に異議がないことを確認したときも,同様とする。
2 前条第六項の規定は,第十条第一項第一号の規定による命令を発した裁判所が前項の規定により当該命令を取り消す場合について準用する。
3 第十五条第三項及び前条第七項の規定は,前二項の場合について準用する。
(第十条第一項第二号の規定による命令の再度の申立て)
第十八条 第十条第一項第二号の規定による命令が発せられた後に当該発せられた命令の申立ての理由となった身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫と同一の事実を理由とする同号の規定による命令の再度の申立てがあったときは,裁判所は,配偶者と共に生活の本拠としている住居から転居しようとする被害者がその責めに帰することのできない事由により当該発せられた命令の効力が生ずる日から起算して二月を経過する日までに当該住居からの転居を完了することができないことその他の同号の規定による命令を再度発する必要があると認めるべき事情があるときに限り,当該命令を発するものとする。ただし,当該命令を発することにより当該配偶者の生活に特に著しい支障を生ずると認めるときは,当該命令を発しないことができる。
2 前項の申立てをする場合における第十二条の規定の適用については,同条第一項各号列記以外の部分中「次に掲げる事項」とあるのは「第一号,第二号及び第五号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」と,同項第五号中「前各号に掲げる事項」とあるのは「第一号及び第二号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」と,同条第二項中「同項第一号から第四号までに掲げる事項」とあるのは「同項第一号及び第二号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」とする。
第二十九条 保護命令に違反した者は,一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
容疑者,妻に殴るけるの暴力を振るい,本年1月28日に保護命令が出されたとのこと。
記事には,容疑者の供述として,今後のことを話し合いたかった,とある。この言葉,もっと前に出ていたなら・・・。
さて,保護命令に係る改正DV防止法第10条の第2項には「前項本文に規定する場合において,同項第一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者に対し,命令の効力が生じた日以後,同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間,被害者に対して次の各号に掲げるいずれの行為もしてはならないことを命ずるものとする。」とあり,第1号に「面会を要求すること。」とある。「要求」とあるから,「強要」の程度に至らずとも,保護命令違反になるということだろう。
因みに,保護命令違反の法定刑は,一年以下の懲役又は百万円以下の罰金(DV防止法第29条)。
内閣府 男女共同参画局 配偶者暴力防止法が改正されました
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の関連条文
我が国においては,日本国憲法 に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ,人権の擁護と男女平等の実現に向けた取組が行われている。
ところが,配偶者からの暴力は,犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず,被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった。また,配偶者からの暴力の被害者は,多くの場合女性であり,経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力を加えることは,個人の尊厳を害し,男女平等の実現の妨げとなっている。
このような状況を改善し,人権の擁護と男女平等の実現を図るためには,配偶者からの暴力を防止し,被害者を保護するための施策を講ずることが必要である。このことは,女性に対する暴力を根絶しようと努めている国際社会における取組にも沿うものである。
ここに,配偶者からの暴力に係る通報,相談,保護,自立支援等の体制を整備することにより,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため,この法律を制定する。
(定義)
第一条 この法律において「配偶者からの暴力」とは,配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい,配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に,その者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。
2 この法律において「被害者」とは,配偶者からの暴力を受けた者をいう。
3 この法律にいう「配偶者」には,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み,「離婚」には,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が,事実上離婚したと同様の事情に入ることを含むものとする。
(国及び地方公共団体の責務)
第二条 国及び地方公共団体は,配偶者からの暴力を防止するとともに,被害者の自立を支援することを含め,その適切な保護を図る責務を有する。
(被害者の保護のための関係機関の連携協力)
第九条 配偶者暴力相談支援センター,都道府県警察,福祉事務所等都道府県又は市町村の関係機関その他の関係機関は,被害者の保護を行うに当たっては,その適切な保護が行われるよう,相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。
(苦情の適切かつ迅速な処理)
第九条の二 前条の関係機関は,被害者の保護に係る職員の職務の執行に関して被害者から苦情の申出を受けたときは,適切かつ迅速にこれを処理するよう努めるものとする。
(保護命令)
第十条 被害者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫(被害者の生命又は身体に対し害を加える旨を告知してする脅迫をいう。以下この章において同じ。)を受けた者に限る。以下この章において同じ。)が,配偶者からの身体に対する暴力を受けた者である場合にあっては配偶者からの更なる身体に対する暴力(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に,被害者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。第十二条第一項第二号において同じ。)により,配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた者である場合にあっては配偶者から受ける身体に対する暴力(配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後に,被害者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。同号において同じ。)により,その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは,裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた後に,被害者が離婚をし,又はその婚姻が取り消された場合にあっては,当該配偶者であった者。以下この条,同項第三号及び第四号並びに第十八条第一項において同じ。)に対し,次の各号に掲げる事項を命ずるものとする。ただし,第二号に掲げる事項については,申立ての時において被害者及び当該配偶者が生活の本拠を共にする場合に限る。
一 命令の効力が生じた日から起算して六月間,被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この号において同じ。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい,又は被害者の住居,勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないこと。
二 命令の効力が生じた日から起算して二月間,被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならないこと。
2 前項本文に規定する場合において,同項第一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者に対し,命令の効力が生じた日以後,同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間,被害者に対して次の各号に掲げるいずれの行為もしてはならないことを命ずるものとする。
一 面会を要求すること。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ,又はその知り得る状態に置くこと。
三 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
四 電話をかけて何も告げず,又は緊急やむを得ない場合を除き,連続して,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,若しくは電子メールを送信すること。
五 緊急やむを得ない場合を除き,午後十時から午前六時までの間に,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,又は電子メールを送信すること。
六 汚物,動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し,又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ,又はその知り得る状態に置くこと。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ,若しくはその知り得る状態に置き,又はその性的羞恥心を害する文書,図画その他の物を送付し,若しくはその知り得る状態に置くこと。
3 第一項本文に規定する場合において,被害者がその成年に達しない子(以下この項及び次項並びに第十二条第一項第三号において単に「子」という。)と同居しているときであって,配偶者が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めるときは,第一項第一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者に対し,命令の効力が生じた日以後,同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間,当該子の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この項において同じ。),就学する学校その他の場所において当該子の身辺につきまとい,又は当該子の住居,就学する学校その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとする。ただし,当該子が十五歳以上であるときは,その同意がある場合に限る。
4 第一項本文に規定する場合において,配偶者が被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者(被害者と同居している子及び配偶者と同居している者を除く。以下この項及び次項並びに第十二条第一項第四号において「親族等」という。)の住居に押し掛けて著しく粗野又は乱暴な言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めるときは,第一項第一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は,被害者の申立てにより,その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため,当該配偶者に対し,命令の効力が生じた日以後,同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間,当該親族等の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この項において同じ。)その他の場所において当該親族等の身辺につきまとい,又は当該親族等の住居,勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとする。
5 前項の申立ては,当該親族等(被害者の十五歳未満の子を除く。以下この項において同じ。)の同意(当該親族等が十五歳未満の者又は成年被後見人である場合にあっては,その法定代理人の同意)がある場合に限り,することができる。
(管轄裁判所)
第十一条 前条第一項の規定による命令の申立てに係る事件は,相手方の住所(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所)の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
2 前条第一項の規定による命令の申立ては,次の各号に掲げる地を管轄する地方裁判所にもすることができる。
一 申立人の住所又は居所の所在地
二 当該申立てに係る配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫が行われた地
(保護命令の申立て)
第十二条 第十条第一項から第四項までの規定による命令(以下「保護命令」という。)の申立ては,次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた状況
二 配偶者からの更なる身体に対する暴力又は配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後の配偶者から受ける身体に対する暴力により,生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる申立ての時における事情
三 第十条第三項の規定による命令の申立てをする場合にあっては,被害者が当該同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情
四 第十条第四項の規定による命令の申立てをする場合にあっては,被害者が当該親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情
五 配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に対し,前各号に掲げる事項について相談し,又は援助若しくは保護を求めた事実の有無及びその事実があるときは,次に掲げる事項
イ 当該配偶者暴力相談支援センター又は当該警察職員の所属官署の名称
ロ 相談し,又は援助若しくは保護を求めた日時及び場所
ハ 相談又は求めた援助若しくは保護の内容
ニ 相談又は申立人の求めに対して執られた措置の内容
2 前項の書面(以下「申立書」という。)に同項第五号イからニまでに掲げる事項の記載がない場合には,申立書には,同項第一号から第四号までに掲げる事項についての申立人の供述を記載した書面で公証人法 (明治四十一年法律第五十三号)第五十八条ノ二第一項 の認証を受けたものを添付しなければならない。
(迅速な裁判)
第十三条 裁判所は,保護命令の申立てに係る事件については,速やかに裁判をするものとする。
(保護命令事件の審理の方法)
第十四条 保護命令は,口頭弁論又は相手方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ,これを発することができない。ただし,その期日を経ることにより保護命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは,この限りでない。
2 申立書に第十二条第一項第五号イからニまでに掲げる事項の記載がある場合には,裁判所は,当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長に対し,申立人が相談し又は援助若しくは保護を求めた際の状況及びこれに対して執られた措置の内容を記載した書面の提出を求めるものとする。この場合において,当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長は,これに速やかに応ずるものとする。
3 裁判所は,必要があると認める場合には,前項の配偶者暴力相談支援センター若しくは所属官署の長又は申立人から相談を受け,若しくは援助若しくは保護を求められた職員に対し,同項の規定により書面の提出を求めた事項に関して更に説明を求めることができる。
(保護命令の申立てについての決定等)
第十五条 保護命令の申立てについての決定には,理由を付さなければならない。ただし,口頭弁論を経ないで決定をする場合には,理由の要旨を示せば足りる。
2 保護命令は,相手方に対する決定書の送達又は相手方が出頭した口頭弁論若しくは審尋の期日における言渡しによって,その効力を生ずる。
3 保護命令を発したときは,裁判所書記官は,速やかにその旨及びその内容を申立人の住所又は居所を管轄する警視総監又は道府県警察本部長に通知するものとする。
4 保護命令を発した場合において,申立人が配偶者暴力相談支援センターの職員に対し相談し,又は援助若しくは保護を求めた事実があり,かつ,申立書に当該事実に係る第十二条第一項第五号イからニまでに掲げる事項の記載があるときは,裁判所書記官は,速やかに,保護命令を発した旨及びその内容を,当該申立書に名称が記載された配偶者暴力相談支援センター(当該申立書に名称が記載された配偶者暴力相談支援センターが二以上ある場合にあっては,申立人がその職員に対し相談し,又は援助若しくは保護を求めた日時が最も遅い配偶者暴力相談支援センター)の長に通知するものとする。
5 保護命令は,執行力を有しない。
(即時抗告)
第十六条 保護命令の申立てについての裁判に対しては,即時抗告をすることができる。
2 前項の即時抗告は,保護命令の効力に影響を及ぼさない。
3 即時抗告があった場合において,保護命令の取消しの原因となることが明らかな事情があることにつき疎明があったときに限り,抗告裁判所は,申立てにより,即時抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間,保護命令の効力の停止を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は,原裁判所も,この処分を命ずることができる。
4 前項の規定により第十条第一項第一号の規定による命令の効力の停止を命ずる場合において,同条第二項から第四項までの規定による命令が発せられているときは,裁判所は,当該命令の効力の停止をも命じなければならない。
5 前二項の規定による裁判に対しては,不服を申し立てることができない。
6 抗告裁判所が第十条第一項第一号の規定による命令を取り消す場合において,同条第二項から第四項までの規定による命令が発せられているときは,抗告裁判所は,当該命令をも取り消さなければならない。
7 前条第四項の規定による通知がされている保護命令について,第三項若しくは第四項の規定によりその効力の停止を命じたとき又は抗告裁判所がこれを取り消したときは,裁判所書記官は,速やかに,その旨及びその内容を当該通知をした配偶者暴力相談支援センターの長に通知するものとする。
8 前条第三項の規定は,第三項及び第四項の場合並びに抗告裁判所が保護命令を取り消した場合について準用する。
(保護命令の取消し)
第十七条 保護命令を発した裁判所は,当該保護命令の申立てをした者の申立てがあった場合には,当該保護命令を取り消さなければならない。第十条第一項第一号又は第二項から第四項までの規定による命令にあっては同号の規定による命令が効力を生じた日から起算して三月を経過した後において,同条第一項第二号の規定による命令にあっては当該命令が効力を生じた日から起算して二週間を経過した後において,これらの命令を受けた者が申し立て,当該裁判所がこれらの命令の申立てをした者に異議がないことを確認したときも,同様とする。
2 前条第六項の規定は,第十条第一項第一号の規定による命令を発した裁判所が前項の規定により当該命令を取り消す場合について準用する。
3 第十五条第三項及び前条第七項の規定は,前二項の場合について準用する。
(第十条第一項第二号の規定による命令の再度の申立て)
第十八条 第十条第一項第二号の規定による命令が発せられた後に当該発せられた命令の申立ての理由となった身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫と同一の事実を理由とする同号の規定による命令の再度の申立てがあったときは,裁判所は,配偶者と共に生活の本拠としている住居から転居しようとする被害者がその責めに帰することのできない事由により当該発せられた命令の効力が生ずる日から起算して二月を経過する日までに当該住居からの転居を完了することができないことその他の同号の規定による命令を再度発する必要があると認めるべき事情があるときに限り,当該命令を発するものとする。ただし,当該命令を発することにより当該配偶者の生活に特に著しい支障を生ずると認めるときは,当該命令を発しないことができる。
2 前項の申立てをする場合における第十二条の規定の適用については,同条第一項各号列記以外の部分中「次に掲げる事項」とあるのは「第一号,第二号及び第五号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」と,同項第五号中「前各号に掲げる事項」とあるのは「第一号及び第二号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」と,同条第二項中「同項第一号から第四号までに掲げる事項」とあるのは「同項第一号及び第二号に掲げる事項並びに第十八条第一項本文の事情」とする。
第二十九条 保護命令に違反した者は,一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。