法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

日本版LLCと日本版LLPについて

2005-05-22 13:05:21 | Weblog
一 はじめに

 会社法案が,自民、民主、公明、社民などの賛成多数で,一部修正のうえ,5月17日,衆議院を通過,参議院に送付された。今国会で成立する可能性は高いように思われる。
施行は公布日から1年6月を超えない範囲で政令で定める日となっており(会社法案附則1),成立した場合,平成18年4月施行が有力視されている。

二 日本版LLCについて

1 会社法案は会社法制の現代語化と現代化を目的としているが,後者の「最近の社会経済情勢の変化に対応するための各種制度の見直し」の1つとしてあげられるのが,合同会社の創設である(会社法案575)。
この合同会社,アメリカのLLC(Limited Liabilitiy Company)をモデルとしており,日本版LLCとも呼ばれている。その性格を一言で表現するなら「有限責任の人的会社」ということになる。
制度創設の背景には,人的資産が核となる事業,産学連携事業等には,貢献度に応じた利益分配や自由な組織運営が是非とも必要,という事情がある。

2 すなわち,合名会社や合資会社を利用した場合,組織運営の自由度は高いが(商法68,民法670~673),無限責任社員の不可欠性(商法80,146,147)がネックとなる。
他方,株式会社や有限会社では,この点はクリアできるが(商法200,有限会社法17),組織運営が強行法規によって規律されるため,使い勝手の悪さがある(商法260等)。種類株式(商法222)等による修正にも限界があったのである。
そこで,a社員全員の有限責任,b内部自治の徹底,の両方を満足させる会社類型として日本版LLC,すなわち合同会社が創設されることになったわけである(会社法案576,580,590~592)。

3 出資者からすれば,有限責任と内部自治の徹底とくれば,いいこと尽くしということになりそうである。
制度設計としては,組織運営は自由で構わないが,その代わり責任は重い,あるいは逆に,責任は出資の限度で構わないが,その代わり組織運営の規律は厳しくなる,というのが自然の成りゆきだからだ。
しかし,合同会社の場合,社員が全て有限責任であるため,B/S等の作成の義務づけに加え(同617),a資本の額の減少に関する特則(同626,627),b利益の配当に関する特則(同628~631),c出資の払戻しに関する特則(同632~634),d退社に伴う持分の払戻しに関する特則(同635,636),が他の持分会社と異なり設けられている。
責任の度合いと組織運営の自由及びその先にある利益の分配等は,前述のとおり,バーターの関係にある。会社法も,会社に関係する個々の主体間の私的利益の調整を目的とする以上,当然と言えば当然の規律ではある。

三 日本版LLPについて

1 しかし,この日本版LLCとよく似た制度が実は一足先に創設されている。ご存じのとおり,4月27日に成立した「有限責任事業組合契約に関する法律」(以下,有責組合法という)で定める有限責任事業組合がそれである。この法律,この夏にも施行が予定されているようである。
この法律により創設される有限責任事業組合はアメリカのLLCやイギリスのLLP(Limited Liability Partnership)をモデルとしており,日本版LLPとも呼ばれている。

2 有限責任事業組合は,民法の組合の特例として認められるものである。所管の経済産業省のニュースリリースを要約すると,おおよそ次のようになる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 アメリカではLLCが,イギリスではLLPが,近年,新たな事業制度として整備・創設され,大きな成果をあげている。これは,LLP等の特徴である,a有限責任制,b内部自治制,c構成員課税,が理由と考えられる。翻ってみるに,わが国には現在のところLLP等にあたるものがない。よって,わが国企業の競争力向上には,民法の組合の特例として,上記の特徴を兼ね備えた事業制度を整備する必要がある。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

3 通常の民法の組合との主な相違点は,a有限責任(有責組合法3,15),b組合契約の要式性(同4),c共同事業性の徹底(同12,13),d意思決定方法の自由(同12),e事業の営利性(同1),f組合員適格の限定(同3),g労務出資の禁止(同11),h設立時の全部出資の必要性(同3),i登記の必要性(同8,57),といったところになる。以上,特例たる所以ということになろう。
構成員課税,利益分配の自由度(有責組合法33,民法674)については,両者は基本的に変わらないと思われる。

4 債権者保護に関する日本版LLCの手当てについては先に述べたが,有限責任事業組合においても,機関運営の規律を云々するのではなく,端的に分配可能額等を制限するといった形で種々手当てがなされている(有責組合法4,31,34~36)。

四 まとめ

1 この日本版LLCと日本版LLP,字づらだけでなく,あげられる特徴もよく似ている。
日本版LLCの根拠法たる会社法案は,法務省所管。日本版LLPの根拠法たる有責組合法は経済産業省所管。
すわ,縦割り行政の弊害か,と思いきや,話はむしろ逆で,法務省による日本版LLCの検討の中で,財務省がLLCの特徴である構成員課税に難色を示したため,急遽,経済産業省が代替的にLLPの検討を始めた,というのが実態のようだ。
構成員課税とは,収益等の帰属が複数の段階を経る場合,最終段階に至るまで課税を控える,いわゆるパス・スルー課税(Taxation on pass-through securities)のことをいう。本家のアメリカのLLCの場合,納税者が法人課税か構成員課税かを選択できる「チェック・ザ・ボックス制」が採用されているという。
LLCが普及している背景には、構成員課税のメリットがある。それが無いとすれば,日本版LLC,法制度としてはともかく,「仏作って魂入れず」の感がないではない。どうだろうか。

2 このように見てくると,LLCとLLPは,出資者全員の有限責任は同じ,内部自治の徹底という点でも重要財産の処分等の留保(有責組合法12条1項但書,同2項,省令)を除けば概ね同じだが,法人格の有無,構成員課税の許容の如何で異なるということになりそうである。
結局,どちらを選択するかは,事業の性質,株式会社への発展の可能性等をも睨みながら判断することになるのであろう。
ただ,法人格と構成員課税を秤にかけるというのは,正直,乱暴な話ではある。
加えて,中長期的には構成員課税が可能なLLCの創設も・・・,という試みもある中での日本版LLPの創設。「構成員課税を選択したいのなら,税制改正を言うより,日本版LLPへどうぞ」といった話にもなりかねない。この点は,日本総研の藤田哲雄氏も指摘しておられる。制度の固定化につながらなければよいのだが。

3 ざっと見ての印象だが,この「日本版」というバイアス,なかなかくせ者である。両制度間の距離,近いようでいて案外遠い,というのが率直な感想だ。

参考 秋田県においても,地域内の新事業・新産業の創出促進をねらいとした支援体制を構築している。これを「地域プラットフォーム」という。
詳細は,財団法人あきた産業振興機構 http://www.bic-akita.or.jp/sangyou/ までお問い合わせを。


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有限会社に関する整備法案の規定

2005-05-13 17:27:26 | Weblog
 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(以下,「整備法案」という)は,その第2節「有限会社法の廃止に伴う経過措置」第1款「旧有限会社の存続」で次のように規定している。

第2条 前条第3号の規定による廃止前の有限会社法(以下「旧有限会社法」という。)の規定による有限会社であってこの法律の施行の際現に存するもの(以下「旧有限会社」という。)は,この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後は,この節の定めるところにより,会社法(平成17年法律第  号)の規定による株式会社として存続するものとする。

 枝葉は落とすとして,有限会社に関する第2節は,概略以下のように要約できるものと思われる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 整備法案第1条第3号により有限会社法は廃止されるが,会社法施行時に存在する有限会社は,「会社法下の株式会社」として存続することになる(整備法案第2条第1項)。
この会社は,株式会社ではあるが,商号中に有限会社という文字を用いなければならず,他の会社類型と区別し,特に「特例有限会社」と呼ばれることになる(同第3条第1,2項)。
しかし,特例有限会社も株式会社ではあるから,株主総会の決議によって定款を変更し,商号中に株式会社の文字を用いることができる(同第45条第1項)。
その場合,形式的には,特例有限会社については解散の登記を,株式会社については設立の登記をおこなうことになる(同第46条)。当該定款の変更は,この登記によって効力が生ずる(同第45条第2項)。
整備法案は,この登記を「特例有限会社の通常の株式会社への移行の登記」と呼んでいる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 第2節に目を通すと,当然のことながら,「みなす」「なお従前の例による」「会社法第○○条の規定は適用しない」のオンパレードであるが,上掲の第2条,第3条,第45条及び第46条などとともに,

 第5条(定款の記載等に関する経過措置)
第15条(社員総会の権限及び手続に関する経過措置)
第16条(社員総会の決議に関する経過措置)
第17条(株主総会以外の機関の設置に関する特則)
第18条(取締役の任期等に関する規定の適用除外)
第42条(登記に関する経過措置)

は,この節の核となる規定のように思われる。何ということもない規定のようだが,やはりきちんと押さえておきたいところではある。
注意が必要なのは,整備法案第10条のみなし規定により,議決権(第1号),利益配当(第2号),残余財産の分配(第3号)につき,種類株式があるとされる場合は,いくつか,これに係る登記義務が課されている点である(整備法案第42条第8~10項)。
また,技術的な読み替えは法務省令で定めることになっている(同第44条)。こちらも忘れずに目を通しておきたい。

 なお,税経通信4月号9頁において,弥永真生教授は,機関の改正点に関する説明の中でではあるが,「第1に,有限会社の新設は認められないが,既存の有限会社については,無期限の経過措置として,現行の有限会社法の規律に服するという選択肢が認められる。」と明確に書いておられる。この記述には注目しておきたい。

 以下は,蛇足。
それにしても,「特例有限会社」というネーミングである。これは,むしろ「特例株式会社」とすべきではなかったのか。
つまり,会社法下の「株式会社」ではあるが「有限会社」たる商号の使用を義務づけられる「特例」会社,であるのなら,「特例株式会社」とするのが自然ではないのかということである。もちろん,有限会社法は廃止されるのだから,「通常の有限会社」と区別する必要もない。力点が,実質(会社類型)ではなく,外観(商号)の方に置かれているわけだが,疑問を禁じ得ない。
確かに,現行の有限会社法の規律を受けるということからすれば,実質もまた有限会社という見方もできないわけではない。しかし,それは,整備法案第2条第1項と真っ向から抵触する解釈である。
有限会社の皮を被った株式会社か,あるいは,株式会社の皮を被った有限会社か…。両論あり得るのは,経過措置法というのが本来的にそういうものだからであろう。
私は「特例有限会社」ではスッキリしないと思う方だが,どうだろうか。あるいは,「特例株式会社」,過去に存在したことがあるのか。


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成年後見制度の問題点

2005-05-12 22:24:31 | Weblog
 埼玉県富士見市に住む認知症の80歳と78歳の姉妹が、複数の業者から家屋のリフォーム工事を繰り返されて財産を失い、自宅を競売にかけられた問題で、浦野清・富士見市長は9日、さいたま家裁川越支部に姉妹を支援する成年後見人の選任を申し立てた。同支部は11日から姉妹の生活状況を調査する。
 同市の調査では、認知症の姉妹には判断能力がなく、業者らに勧められるまま約3600万円分の不要な工事をされた疑いがある。(後略)
(以上,5月10日インフォシークニュース掲載の毎日新聞の記事からの引用)

 豊田商事事件から20年経ったが,今でも独居老人などをターゲットにした悪徳商法は後を絶たない。
成年後見制度は,認知症,知的障害などのため法律行為に関する意思決定が十分ではない人を保護するための制度全体をいう。大きく分けて,法定後見制度(補助・保佐・後見)と任意後見制度から成り立っている。
法定後見制度を利用する場合,その多くは,判断能力の十分ではない人(成年被後見人等)の配偶者や4親等内の親族等の申立によって開始される(民法7,11,14)。

 しかし,市町村長には,老人福祉法第32条,知的障害者福祉法第27条の3,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第51条の11の2等で成年後見の開始につき申立権が付与されている。
富士見市長の申立が,具体的にどの法律を根拠にしたのか報道からは明らかではないが,おそらく老人福祉法第32条辺りではないかと思われる。

 それにしても,不要な工事をされたあげく,工事代金が払えなくなったため当該自宅を競売にかけられる…。秋田魁新報の11日夕刊によると,競売は取り下げられる見込みとのことだが,全くひどい話しである。
詐欺(刑法第246条)ないし準詐欺(同第248条)で刑事事件として立件されるケースと思われるが,市長の申立も遅きに失した感がないではない。
市町村長の申立権については,裁判所による職権開始制度も有力だったところ,パターナリズムに対する危惧・批判といったことから,これに代わる措置として設けられたという立法の経緯がある。
福祉事務所や民生委員に寄せられた情報→市町村長の申立,といった連絡が十分ではなかったということだろう。今後,改善が望まれる点である。

 さて,それでは,配偶者や親族が周りにいる場合は問題ないのかというと,そうでもなさそうである。
法務省民事局が出している成年後見制度のパンフレットなどを見ると,制度の利用事例としてあげられているのは,隣県に住む息子が認知症の老父と同居するため,この際,父名義の土地建物を売却するため申立をおこなった,といった教科書事例とでもいうべきもの。
しかし,現実には,「借金返済のため亡父名義の土地・家屋を自分のものにして処分したいのだが,相続人の一人である母親が認知症患者で遺産分割ができずに困っている。後見人をたてれば可能と聞いたが…」といった類の相談も少なくないようだ。
制度は新しくなった。しかし,利用者側の意識の方は,禁治産制度の時からほとんど変わっていない。困ったものである。

 申立の契機がどのようなものであろうと,「本人の生活・医療・介護・福祉など,本人の身のまわりの事柄にも目を配りながら本人を保護(する)」(法務省民事局のパンフから引用)という成年後見人等の役割の基本には何ら変わりはないのだ。利用者側は,この点に今一度思いを致す必要があるように思う。

 こういうことを言うと,自分は母親の面倒を見ているのだから,母親の相続分は自分がもらう権利がある,といったことを言う人がいる。
しかし,言うところの負担は,母親が亡くなった場合の寄与分(民法第904条の2)や遺産分割の際の「一切の事情」(同第906条),後見人に選任された場合であれば後見事務に係る報酬(同第862条),といった形で考慮されるというのが本筋である。
加えて,正式に母親の成年後見人に選任された場合であっても,遺産分割協議の場面では,母親の利益は成年後見監督人(同第849条の2,同第851条第4号)あるいは特別代理人(同第860条,同第826条)によって守られることになる。遺産分割協議は利益相反行為にあたるからである。

 また,成年被後見人が権利を有する居住用不動産の処分については家裁の許可が必要であるが(同第859条の3),これについても,いや,うちの母親は最近施設に入ったから許可は不要だ,などと反論する人もいる。
しかし,住居は全ての生活の基盤である。それが居住用不動産かどうかは,住民票上の住所がどこになっているかといったことではなく,成年被後見人本人の心情,これまでの生活実態などにも鑑み,慎重に判断されるべきだ。実務も,そのように運用されている。そうでなければ,「ボケ老人は施設に入れるにかぎる」といった話しになりかねない。これが不当なのは,誰の目にも明らかであろう。

 最後になったが,弁護士等の実務家もまた,依頼人の希望に応えようとするがあまり,実体法規や業法,倫理規定といった枠を踏み越えてしまうことのないよう十分な注意が必要であろう。

 このように,冒頭に掲げたニュース記事や相談事例などを見るにつけ,それが「成年後見制度の問題点」のように見えて,実は「成年後見制度の利用者側の問題点」とでも呼ぶべき場合が少なくないことに気付くのである。もちろん,制度の方にも,鑑定費用,鑑定期間,後見事務の監督(同第863条)といった点で,更なる改善を必要とするところはあるわけだが。

参考 法務省民事局 成年後見制度~成年後見登記制度~   http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html


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レジー・ルイスのこと

2005-05-07 10:03:46 | Weblog
 突然,NBAの話し。
ボストン・セルティックスが東カンファレンスのプレーオフ準決勝でペーサーズ相手にタイに持ち込んだらしい。嬉しい。
最近はほとんど見ないが,ラリー・バードのファンだったのだ。そして,セルティックスにはもう1人,レジー・ルイスという素晴らしい選手がいた。

 ラリー・バードが引退したので,何となくNBAから離れてしまった。
しばらく経って,ある時,セルティックスの試合をテレビで観たら,レジー・ルイスが出ていない。始めは「故障かな」と思っていたのだが,亡くなったという。亡くなった…,何故。事件,事故,病死?
ずっと,わからずにいた。そして,ネットでさっき知った。

 93年7月27日,ボストン郊外のブランダイス大学の体育館でシュート練習中に倒れ,亡くなったのだという。享年27才。涙が溢れた。
心臓神経症,それとも,コカイン中毒? 医療訴訟になったようだが,そんなこと,正直どうでもよい。

 レジー・ルイス,本当にいい選手だったなぁ。13才のレジー・ジュニア,バスケットやってるかな…。

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会社法下の株式会社の機関設計について

2005-05-05 11:32:39 | Weblog
 書店の棚には,個人情報保護法ほどではないにしても,会社法関連の書籍が数多く並び始めた。
機関設計が柔軟化されるということなので,該当箇所にザッと目を通す。各誌様々な工夫をこらしながら機関のあり方を一覧表にしているが,法案の根拠条文を参照しながらだと却って時間を空費してしまうような気がする。
ここは,一覧表で概要を掴んだら,横着をせず一覧表から一旦離れて条文にあたった方がよさそうである。件の一覧表は理解出来ているかといった検証用に利用するのがよいように思う。
機関設計に係る原則は,以下の3つの会社法案の条文でおおよそ押さえられる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(株主総会以外の機関の設置)
第326条 株式会社には,一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。
2 株式会社は,定款の定めによって,取締役会,会計参与,監査役,監査役会,会計監査人又は委員会を置くことができる。

(取締役会等の設置義務等)
第327条 次に掲げる株式会社は,取締役会を置かなければならない。
 一 公開会社
 二 監査役会設置会社
 三 委員会設置会社
2 取締役会設置会社(委員会設置会社を除く。)は,監査役を置かなければならない。ただし,公開会社でない会計参与設置会社については,この限りでない。
3 会計監査人設置会社(委員会設置会社を除く。)は,監査役を置かなければならない。
4 委員会設置会社は,監査役を置いてはならない。
5 委員会設置会社は,会計監査人を置かなければならない。

(大会社における監査役会等の設置義務)
第328条 大会社(公開会社でないもの及び委員会設置会社を除く。)は,監査役会及び会計監査人を置かなければならない。
2 公開会社でない大会社は,会計監査人を置かなければならない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 条文を読む限り,公開会社(会社法案第2条第5号)かどうか,大会社(同第2条第6号)かどうか,といった辺りが,先ずは,機関設計の分岐点になるようである。
多くの株式会社がそうである「株式譲渡制限のある中小会社」について言うと,取締役会の設置は任意となる結果,1人取締役が可能となり(同第326条第1項,同第327条第1項第1号),その場合,監査役の設置も任意となる(同第327条第2項本文)。
また,「株式譲渡制限のある中小会社」は,取締役会を設置した場合でも,会計参与を設置すれば監査役を設置する必要はない(同第327条第2項但書)。
このほか,

a 取締役会を設置しない会社における株主総会の規律(同第295条第1,2項等々)
b 公開会社ではない株式会社(委員会設置会社を除く)における取締役の任期の伸長(同第332条第2項)
c 公開会社ではない株式会社における監査役の任期の伸長(同第336条第2項)
d 公開会社ではない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)における監査役の権限の限定(同第389条第1項)

なども「株式譲渡制限のある中小会社」に関係あるところである。

 さて,現在ある「株式譲渡制限のある中小会社」が,会社法施行後,なお「取締役会+監査役」というスキームにとどまるのか,あるいは,一気に「任期10年の1人取締役会社」へと進むのか…。
完全子会社の場合などは,任期10年はともかく,簡素な「1人取締役会社」という選択もあるように思う。
ただ,役員変更に係る登記手数料の負担回避といったことだけを理由に,身軽に越したことはない,結構な制度が出来て渡りに船,というのは少し安易に過ぎるような気もする。どうだろうか。
最後になったが,会社の所有者たる株主を構成員とする株主総会は,もちろん必置。取締役も右に同じ。


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