功夫電影専科

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『西遊記リローデッド』

2010-06-15 22:39:42 | カンフー映画:珍作
「西遊記リローデッド」
原題:情癲大聖/情天大聖
英題:A Chinese Tall Story
製作:2005年

▼古来より、西遊記という物語は様々な方面で人気を博してきた。
日本でもマチャアキのTVドラマ版を筆頭に、新解釈された『最遊記』や、「なまか」と連呼していた変なの(爆)まで、実に多種多様だ。香港ではショウブラ産の旧作や、周星馳(チャウ・シンチー)主演の『チャイニーズ・オデッセイ』という作品も作られたが、今回はその『チャイニーズ・オデッセイ』の監督である劉鎮偉(ジェフウ・ラウ)が製作した、新たな西遊記を紹介しよう。
 本作は香港製のSFファンタジーアクションで、著名なスターがこぞって参加している超大作でもある。主演は謝霆鋒(ニコラス・ツェー)と蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)の両名で、それぞれ三蔵法師とブサイクな妖怪(笑)を演じている。
邦題には西遊記の名前が冠してあるが、実際の主役は謝霆鋒&蔡卓妍の2人であり、陳柏霖(チェン・ポーリン)らが演じる孫悟空一行は序盤と終盤にしか登場しない。アクションシーンではCGを多用した場面が多く、香港映画らしい手作り感は感じられないようになっている。

■謝霆鋒たち三蔵一行は、とある街に立ち寄って盛大な歓迎を受けるのだが、妖怪軍団によって襲撃を受けてしまう。
形勢不利と悟った陳柏霖は、謝霆鋒に如意棒を持たせて逃がすことを決意。どうにか謝霆鋒だけは助かったが、今度はブサイクな妖怪の娘・蔡卓妍と行動を共にする羽目になった。謝霆鋒は陳柏霖たちを助けようと奔走するも、海の将軍・元華(ユン・ワー)が自害した責任を問われ、天上界のお偉いさんを撲殺してしまう。これが後に大きな波紋を呼ぶこととなるだが…。
 その後は色々あって、謝霆鋒が妖怪の仲間入りをしてしまったり、蔡卓妍といい仲になってきちゃったり、氷河期時代から時空を越えて人類の祖先が現れたり(※マジです)、蔡卓妍がその人類の祖先の仲間だった事が判明したりして、最後は蔡卓妍が妖怪軍団を壊滅させて万事めでたし…とはいかなかった。元華と天上界のお偉いさんが死亡した責任を取るため、蔡卓妍は全ての罪を1人で被ろうと天上界へ向かってしまったのだ。
これにブチ切れた謝霆鋒は、如意棒を片手に天上界で大暴れを繰り広げるも、衛兵に阻まれて大怪我を負ってしまう。それでも蔡卓妍のことを想い、彼女の元へと近付こうとする謝霆鋒であったが、そこへお釈迦様が姿を現した。
 お釈迦様は「あんたの思いも立派やけど罪は罪や。蔡卓妍は死罪やったけど、馬にして生かしたるから堪忍な。ほなお前らはスタート地点からやり直しや」と裁き、時間は謝霆鋒が旅立つ場面へと戻った。こうして謝霆鋒と蔡卓妍は、お互いがお互いと知らぬまま砂漠を歩んでいくのだった。

▲…という話だが、残念ながら私は楽しめませんでした。こういうラブストーリーは嫌いじゃないのだが、あまりにも飛びまくったストーリー展開だったので、途中から完全に置いてけぼり状態に。「フリーダムな展開は香港映画につきもの」とは言うものの、次から次へと訳の解らないキャラクターが登場するため、いまいち話に感情移入しづらかったです。
非暴力を唱える一方で何度もキレてしまう謝霆鋒、心情の変化が掴みにくい蔡卓妍など、登場人物の信念が一貫されていないのも問題のひとつ。特に謝霆鋒は、蔡卓妍と仲直りしたと思ったらすぐに彼女を見放したりと、やってることがメチャクチャだ。この2人の演技は良かったのだが、行動に移るとどうも釈然としないというか何というか…。
 さて功夫アクションについてだが、本作にはそういった要素は1つもない(!)。一応、謝霆鋒が暴れるシーンでそれらしい動作は見られるものの、先述のCGアクションが多すぎて完全に埋没しているのだ。
本作におけるCG描写はハリウッド作品に匹敵するほど派手なもので、これはこれで「香港映画もこういった一流のCGが作れるようになった」と感心できるが、一方で「香港映画もハリウッドのようなCG作品に傾倒してしまうのではないか」という不安も感じられる。このへんの問題はハリウッドも香港も同じだと解るが、私は動作設計を担当した元奎(ユン・ケイ)のアクションを期待していたため、随分とガッカリさせられました。
 ストーリーは支離滅裂で、生身のアクションもほとんど削られてしまったCGだらけのファンタジー映画。ちなみに、惠英紅(ベティ・ウェイ)が蔡卓妍の育ての母親として、劉家輝(リュウ・チャーフィ)が天上界の1番偉い人としてゲスト出演しているが、どちらもアクションを見せないのでご用心を。

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