功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

ステイサム罷り通る(1)『ザ・ワン』

2017-06-13 22:38:32 | 李連杰(ジェット・リー)
「ザ・ワン」
原題:THE ONE
中文題:最後一強
製作:2001年

●この世界は125の多次元宇宙に分かれており、MVAと呼ばれる機関が均衡を守っていた。だが、MVAの一員だった李連杰(ジェット・リー)は別次元の自分を抹殺し、唯一無二の存在――“ザ・ワン”になろうと企んだ。
1人が死ねば、そのエネルギーは別次元の1人へと流れ込む。その法則を利用した李連杰は自分を殺し続け、恐るべきパワーを身に付けた超人と化していった。
 MVA捜査官のデルロイ・リンドジェイソン・ステイサム(公開当時の日本語表記はステーサム)は、やっとの思いで彼を逮捕するも、刑の執行直前に逃走されてしまう。
一方、最後の1人となった別次元の李連杰は、愛妻のカーラ・グジーノや同僚に囲まれて穏やかに暮らしていた。だが、驚異的な力が発現するようになり、次元を超えて現れた李連杰の猛攻を受ける事となる。
悪の李連杰によって殺人の濡れ衣を着せられ、窮地に陥る最後の李連杰。ステイサムと手を組んだ彼は、カーラを殺した悪の李連杰に決戦を挑むが…。

 突如としてハリウッドのアクション映画戦線に現れ、今ではドウェイン・ジョンソンらと並んで業界をリードする存在となったジェイソン・ステイサム。その活躍は留まるところを知らず、最近では成龍(ジャッキー・チェン)との共演が噂されています。
今月はそんなステイサムの魅力に迫りつつ、あまり当ブログでは紹介してこなかった彼の出演作を一気にレビューしてみましょう。さて、初回となる本日はステイサムがアクションに開眼し、ある重要な人物と出会いを果たした作品の登場です。
 本作は李連杰が『マトリックス・リローデット』のオファーを蹴ってまで出演したSFアクションで、ステイサムは彼と共闘する若き捜査官に扮しています。
ただし、SFといっても内容の8割は現代のロサンゼルスが舞台であり、それらしい雰囲気はあまり感じません。序盤で世界観の説明をしたのに、劇中でも登場人物たちが説明を繰り返す(つまり序盤の説明は不要)など、ストーリー構成も実に大雑把でした。

 また、この手の一人二役アクションにありがちな事ですが、2人の李連杰が絡むカットはアクションである以前に特撮なので、生の迫力に欠けています(ちなみに代役を演じたのは、いずれもベテランの武術指導家である黄凱森・國建勇・林峰)。
その他の格闘シーンもCGでデコレーションされており、立ち回りにおいてもやや難点のある本作。とはいえ、李連杰による堂々とした悪役演技や、別次元のデルロイに礼を言うステイサムなど、それなりにグッとくるシーンはあったと思います。
ところで肝心のステイサムですが、意外にも本作ではアクションらしいアクションをしていません。もっぱら銃を撃つばかりで、格闘戦はなんとデルロイが担当。設定上もそれほど強いわけではなく、今のステイサムからは考えられないような光景が見られます。

 しかし彼は本作でアクションに興味を持ち、動作設計を担当した元奎(コリー・ユエン)と不思議な縁で結ばれる事になるのです。元奎は李連杰と何度もタッグを組み、『リーサル・ウェポン4』でアメリカ進出した李連杰のアクション指導も務めました。
本作の後、フランスに渡ったステイサムはリュック・ベッソン製作の『トランスポーター』に参加。そこで監督兼武術指導を担当したのが、『キス・オブ・ザ・ドラゴン』でベッソンの目に留まった元奎だったのです。
 そして『トランスポーター』シリーズはステイサムの出世作となり、彼がアクションスターとして本格始動する起爆剤となりました。もし元奎と出会っていなければ、ステイサムの覚醒は無かった…のかもしれませんね。
その後、2人は再び李連杰と共演した『ローグ・アサシン』、間接的な接触となった『エクスペンダブルズ』で再会。続いて骨太なアクション大作でまたも巡りあうワケですが…続きは次回にて!