指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

劇団俳小から公演の案内が来たが

2021年02月10日 | 演劇
劇団俳小から3月公演の案内が来た。俳小は、元は俳優小劇場で、今は俳小という名になり、先輩の斎藤真さんが代表をつとめている。
斎藤真って誰だ、と思うかもしれないが、たぶん多くの人は見ている役者である。
          
黒木和雄監督の『祭の準備』で、主人公の竹下景子の処女を奪ってしまう共産党の文化オルグである。

             
私の3年上の方で、二枚目で声のよく、早野寿郎が演出をやっていた時代の劇団俳優小劇場に入り、早野から非常に目を掛けられ期待されて、劇団俳優小劇場が
劇団俳小になってからは代表をつとめられていられている。
今度は3月19日から28日までで、オーストラリアの作家の劇『聖なる日』である。

              
              

毎年、何人かの先輩と見に行くのだが、今回は絶対に行かないことにした。
理由は、会場の日暮里の「Dー倉庫」というのがあまりにもひどいからである。
ここは、日暮里駅から7分くらいのところにある。
だが、まず玄関に10段くらいの階段がある。
そこから入口に入ると、今度は暗い螺旋階段を2階分くらいを降りる。すると今度は、壁伝いに1回分くらい登ってやっと会場に到達するのだ。
足に障害を持っている私には、非常にひどい劇場である。
これで建築基準法の許可を得たのか、不思議に思う。
いわゆる二方向避難が義務づけられているはずだが、できるのか不思議である。
もし、火事や地震が起きたら、会場の人は安全に避難できるのだろうか。
私は、絶対に駄目で、たぶん死んでいるにちがいない。
コロナの状況下で、演劇は大変だからと言われるが、その前にきちんと会場を整備すべきだろうと私は思うのだ。


『分断の歴史』

2021年02月10日 | 映画
「朝鮮半島100年の記憶」とサブ・タイトルされたフランスの映画で、さすがに公平に描いている。
これを見て、思ったのは、北朝鮮と韓国はよく似ているなとのことだ。
北には、金日成の生家等が保存されて拝観されているのは有名だが、韓国には朴正熙首相の生家を多くの人が見に来ている。
要は、個人崇拝の強い国柄なのだ。

   

今では、信じられないことだが、1960年代まで、韓国よりも北朝鮮の方が経済的には繁栄していたのだ。日本統治時代から、北の方が重化学工業地帯で、南は農業のみで、人口も多く総体として貧困だったのだ。
1960年代までは、世界的に重工業時代で、そこではソ連に典型の国家の計画と命令による経済が優勢だったのだ。
それが、大衆消費社会になり、少品種大量生産は無意味になり、多品種少量生産の時代になったのだ。ここあっては、政府の計画や命令には無効になる。ソ連が崩壊した原因はいろいろあるが、こうした経済体制の変化に対応できなかったことも大きかったと思う。
その上に、農業政策の失敗から、北は飢餓になってしまうが、韓国は、「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を起こす。大衆消費社会では、人口が多いことも有利になったわけだ。

そして、将来の統合の問題が語られる。ドイツの統合が、西による東の吸収だったが、朝鮮の場合は、そうはならないだろうと言われる。
では、どのような統合があるのか、北朝鮮のプライドをできる限り尊重しながら、やはり韓国による北の吸収になるのではないかと私は思う。

横浜シネマリン



早稲田出の三大音楽家 

2021年02月09日 | 音楽
大学には、愛校心はまったくない。
ただ、古川ロッパ、タモリ、そして大滝詠一に繋がるのは、一応自慢できることだ。

       
この3人に共通するのは、音楽家として成功しているが、どこかアマチュア的  なところを残しているところだ。
このアマチュア的というのは、どの分野でも早稲田出の人間の特質のように思う。
勿論、良いことである。

『真昼の惨劇』と『ここに泉あり』

2021年02月08日 | 映画
昨日の午後、ラピュタに行くと、『ここに泉あり』で、『帝銀事件』は昨日までだった。『ここに泉あり』は、3回目で、しかも長いので躊躇したが見ることにした。
最初に見たのは、中学生のとき、クラシック愛好者の義兄の家でのNHKの放映。2度目は、川崎市民ミュージアムで、「もういい」と思ったが、どこかで暇を潰すならと見ると、長さが気にならなかった。
みちろん、水木洋子のシナリオもあるが、出演者の多彩さがすごくて、厭きない。
バイオリニストで、コンサートマスターとなる岡田英次が、高崎駅に来るところから始まる。喫茶店の二階に練習場があり、そこには雑多な連中がいる。十朱久雄、近衛敏明、清村功次、そして三井弘次と加東大介。三井と加東は軍楽隊出で、結局この二人だけが最後まで残ることになる。
軍楽隊は、戦後の日本音楽界の出身者の源泉で、ジャズの渡辺貞夫もそうで、この映画の音楽の団伊玖磨もそうだ。芥川也寸志や、小津安二郎映画の斉藤一郎も軍楽隊にいた。ただ、これは芸大幹部の「軍楽隊なら戦場の最前線にはいかずに済む」との計算だったようだ。
市民フィルハーモニーには、有能なピアニストの岸惠子がいるが、十朱久雄以下は、「戦時中のマンドリン楽団」で廻った連中で、皆仕事のあるアマチュアで、彼らは岡田の手で淘汰されてしまう、「下手だからだ」
増村保造の映画『第二の性』で、ある電気会社の陸上部のコーチになった緒方拳は、安田道代だけを指導し、他の運動部員は
「ただの運動愛好家だ」と切り捨ててしまう。
そして、3年後東京管弦楽団と山田耕筰の指揮で、大合同演奏会が開かれる。
室井摩耶子のピアノの凄さに、岸は自分との差を実感し、他のメンバーも実力の差を強く感じる。このとき、山田はすでに左半身マヒで、右手だけで指揮している。彼は戦後の1948年に脳梗塞で倒れたのだそうだ。
その中で、マネージャーの小林桂樹の奔走で、農村等への移動演奏活動に精出していく。
この辺のロケは非常に多彩で、撮影の中尾駿一郎の今井正作品への貢献は、あらためて大きいと思った。
この言うことは大きいが、いつも最後は知り抜けというマネージャーの小林が非常に良いが、当時の左翼文化運動にはこうした人がいたのだと思うが、今井はそれを肯定しているようだ。
それから数年後、山田は、マネージャーの伊沢一郎と共に旅行していて、高崎に来て、「あの楽団はどうしたかね」と聞く。
伊沢は言う「潰れたらしいですよ、結局、地方ではまだ無理なんですな」
だが、山田は高崎駅を降り、引き揚げ者住宅のようなところに、岡田以下の団員を見つけ、その演奏に自然と指揮してしまう。
そして、合同演奏会となる。ベートーベンの『第九』の演奏に、かつての移動公演の様子が挿入される。そこには、草軽電鉄の貴重な映像もある。
これは2時間30分だが、本当はもっと長く、テレビ放映のときに30分くらいプロデユーサーによって切られたとのこと。岸惠子とライバルの草笛光子の件があったそうだが、全くなし。最後の方で中学の先生役で、湯川れい子さんも出たそうだが、これもなし。最初の村の学校の生徒に、河原崎次郎の顔が見えた。


      

そして、歌舞伎座の映画『真昼の惨劇』を見た。監督野村企峰で、リアルでモノクロの強い画面で、東京のバタヤで起きた、10代の姉妹による父親(福原秀雄)殺人事件が描かれる。妻は望月優子であり、二人の姉妹と男のこは、児童劇団の子のようだ。
バタヤの人は、紙類を回収する仕事をしており、今で言えばリサイクル業である。親分は清水元、住民には、左卜全、武智豊子などがいる。
福原は、ろくに働かず、望月がニコヨンに出て得たわずかな賃金も取り上げて酒につぎ込んでしまう。酒と言っても、焼酎である。
長女は、上野の惣菜屋で働き、店から土産でコロッケをもらって帰って来るが、そこに運悪く福原も戻って来て怒り、ちゃぶ台返し。
普段は、鍋で米を炊き、塩を付けて食事しているのだから、コロッケは大御馳走なのだ。
中での演芸大会があり、左が浪曲の『30石船』、武智が『マンボ』を踊るが、どちらも様になっている。昔の役者は芸があったなと思う。
ともかく、福原のアルコール依存はひどく、絶望した望月優子は、自殺しようとするができず、家を出てしまう。
望月から唯一預かっていた4000円を福原が取り上げて、飲んでしまい、倒れて家に寝転がったとき、妹は言う、
「父ちゃんなんて死んでしまえば良い」
二人は決意し、弟を外に出す。
俯瞰でバラック家屋が映された後、室内のシーンでは布をかけれられた男の体。
二人は、自首して警察に捕まり、望月優子も新聞を見て警察に来ての再会。
そして、国会議事堂が映されて「政治の貧困がこの惨劇を生んだ」とのタイトルが出るのには白けた。
「それを言っちゃおしまいよ」と思う。
実話に基づいたものだとのこと。
福原秀雄は、不思議な俳優で、独立プロの映画で多数出て、気の弱い役を演じているが、日活ロマンポルノの藤田敏八の『実録不良少女・姦』にも、主人公の父親で出ている。

保育園と幼稚園

2021年02月07日 | 横浜
保育園と幼稚園は、どう違うのか。福祉施設と教育施設の違いである。
横浜市では、その運営主体に大きな違いがある。
保育園は、神社、幼稚園はお寺なのだ。
もちろん、社会福祉法人や私立学校法人のものもあるが。
近年は、幼保一元化で、変化しているかもしれないが、この棲み分けはきちんと守られていた。

どうして、そうなのか、ある区にいたとき、元は横浜市の課長だったが、父親が急死したので、その跡を継ぎ園長になったと人にきいた。
お答えは、
「神社は貧乏で、お寺は裕福だから」だそうだ。
確かに、大きな神社以外は、お賽銭はなく、そう裕福ではないようだ。
対してお寺は、檀家があり、葬式は大きな「金づる」である。

           

保育園は、福祉施設なので、国や市町村から「措置費」という公的補助があるが、幼稚園は教育施設なので、今は少し変わっているようだが、基本的に公的補助はなく保護者からの園費のみである。
この棲み分けは誰が考えたのか知らないが、 なかなか上手くできていると思う。





もっと遠くで見た映画

2021年02月05日 | 映画
海外で見た映画もある。
一つは、元妻と二度目にインドネシアのジャカルタに流行に行った時、一人で市内の文化センターで2本、インドネシアの映画を見た。
1本は、中年の女性が主人公のホームドラマで、もう1本は怪獣映画で、特撮ものだった。インドにシアのカリマンタン島から怪獣が出てくる作品だった。
もう一つは、1988年に、その後パシフィコ横浜で行う「ウォーマッド」を開催するために、イベント会場のイギリスの西海岸のサン・オーステレルに行った。
すぐ近くは、プリマス港で、ここからメイフラワー号がアメリカに出帆したのだ。
このウォーマッドの後、ロンドンでは劇を2本見たが、ドーバー海峡を渡ってパリに行き、シャイよー宮の地下のシネマテークに行った。見たのは、アメリカのジョセフ・ロージー監督の『プラウラー』という作品だった。
後に、赤狩りでアメリカを追われるジョセフ・ロージーだが、特に思想性はなく、ただのアクション映画だった。


         
日本国内では、2014年12月に神戸の映画資料館で、渡辺護監督のピンク映画を2本見た。『あばずれ』と『マル秘湯の町・夜のひとで』だった。

遠くの映画館

2021年02月04日 | 映画
20代の頃は、暇だったので、遠くまで映画を見に行った。
東京、神奈川を越えて、北では大宮、東は千葉、西は三鷹である。
南は、小田原だが、これは見に行くために行ったのではなく、役所の旅行の帰りに下車した小田原に日活の映画館があったので、ロマンポルノ作品を見たのだ。

       

大宮では、『ファール・プレイ』、千葉では『ビリー・ジョーの唄』だった。
『ファール・プレイ』は、なかなか面白い映画で、ヒチコック映画の引用のような作品だった。『ビリー・ジョーの唄』は、カントリーのヒット曲を元にした映画で、地味な作品だったが、ここでしかやっていなかったので、千葉まで行ったのだ。
三鷹には、オスカーという名画座があり、洋画3本立てだったと思う。



『背徳のメス』

2021年02月03日 | 映画
1961年の松竹映画で、京都撮影所作品だが、監督は野村芳太郎、撮影も川又昂が大船から行っている。この頃、京都は大船から見れば、一段したのように思われていたので、大作は大船から行って作ることがあった。

主人公は、大阪の阿倍野の病院(教会の下にあるようだ)の医師田村高広。
冒頭は安ホテルでの田村と瞳麗子ベッドシーンで、瞳は売春婦かと思うと、病院の看護婦。田村は、ニヒルな男で、瞳の他、あらゆる女に手を出していて、薬剤師の高千穂ひづるも、当直の夜に、部屋の窓の鍵を開けておいて忍び込み、ものにしてしまう。
田村の上司の部長の山村聡は、ある日、売春婦の手術をするが、手術ミスで死なせてしまう。彼女のヒモの城所英夫は、「医療ミスだ!」と山村を脅し、田村も山村の判断ミスと考えていて、医師の二人は対立している。

そんな時、田村が当直の夜、水差しに睡眠薬を入れられ、ガスの栓が外されていて、死にそうになる。
ここからの犯人捜しは、まるで「火曜サスペンス劇場」みたいだが、ある看護婦と職員の結婚祝いの席、
山村がワインで乾杯すると、毒で死んでしまい、それを注いだ看護婦長の久我美子も死んでしまう。すべては、オールドミスとバカにされていた久我の仕業だった。

謎解きは、まさしく「火曜サスペンス劇場」なみだが、ここで興味深いのは、山村が田村のことを「医専出の医者」と軽蔑していることだ。
国立大の医学部は、もともとは旧帝大にしかなかったが、戦争の進行で軍医が不足したので、医学専門学校を作ったのだ。
わが横浜市立大学医学部も、元はこのときに作られた専門学校が始まりである。

       
看護婦に松井康子がいた。松井は、松竹を辞めてピンク映画界に行き、多数の作品に出て「ピンクの女王」と言われた女優である。
衛星劇場



なぜSPレコードの蒐集をやめたのか

2021年02月03日 | 大衆芸能
タモリクラブの「日本レコード大会」で、高円寺の円盤の田口史人さんが出ていて、「特殊レコード」を紹介されていた。そして、
「レコードは、歌など音楽よりも、それ以外の方が多かった」ことを言われていた。
その通りで、たしかレコードを発明したエジソン(彼のは蝋環式で、円盤式ではないが)は、音を録音することで、記録、教育、宣伝など多くの目的に使用できると言っていたはずで、音楽のみではなかった。
それが、SPからLPとEPなどのなるに連れて、レコードは音楽専用になった。
今や、配信でレコード、SP盤など見たこともない人が多いだろう。
 
         

だが、世の中には、SP盤コレクターがいて、私も独身時代は少し集めていた。
中古レコード屋の他、古道具屋等を廻り集めるのだ。
だが、途中でやめることにした。
その理由は、上に書いたようにSP盤は、音楽以外にその種類が多く、集めるとキリがないからである。
例えば、演説レコードがある。政治家の他、偉い人の言葉を録音したもので、意外に多いのは軍人で、戦前は軍人は社会で尊敬されていたからだろと思う。
私が持っている演説レコードでは、日本の救世軍の創始者山室軍平のものがあり、結構面白い比喩による演説だった。
そして、結婚したとき、SP盤蒐集は止めたのである。





「名曲殺し 2」

2021年02月02日 | 音楽
続いて、なぎら健壱がリベンジしたというので、「名曲殺し」。
今度はなぎら組は、なぎらとYOU、タモリ組は萩原健太。
まずは、マイケル・ジャクソンの『ビート・イット』で、これは石川秀美とは驚き。LPを埋める曲がなかったからなのだろうか。

あいざき進也のグランド・ファンクや伊藤咲子のジャニス・イアン、川崎麻世の『ジンギスカン』などは、自分が好きなので、入れたのかもしれないが。
しかし、この回で、一番の驚きは、映画『史上最大の作戦』のミッチー・ミラー合唱団の曲を、林家三平が歌っていたことで、これはテレビでも歌っていたような気がする。

        
この回の最後は、田中健のボズ・スキャッグスだったが、やはり本家は上手いと思った。


「名曲殺し タモリクラブ」

2021年02月02日 | 音楽
『タモリクラブ』は、音楽もののときが面白い。
このところ、ずっと録画していなかったが、昔のユーチューブで見たのは、欧米の名曲の日本のカバー特集で、非常に面白かった。
まず、ママス&パパスのヒットの『カルフォルニア・ドリーミン』で、なんと麻丘めぐみ。インスト曲のベンチャーズの『10番街の殺人』に詩を付けて歌ったアン・ルイスや、ギルバート・オサリバンの名曲『アローン・アゲイン』を歌った九重祐美子。
だが、なんといっても凄いのは、『スター・ウォーズ』で、子門真人のクセの強い歌い方。これは、日本公開以前に作られたので、内容と相当に乖離しているものらしいが。
                 

こういう時局便乗レコードは、SPレコードの大コレクターの岡田則夫さんによれば、「あやかりもの」と言って、SP時代からあったものだそうだ。
私も、1枚だけ持っていた。
『こどもオリンピック』というもので、1936年のベルリンオリンピックの時の、「前畑頑張れ、」の河西アナウンサーの放送をそっくり女の子が真似したものだった。さらに、これが不思議なのは、前畑の名を言っていないことで、「日本の女子頑張れ」と言っている。これは、ショウチクという会社のレコードで、NHKとは無関係だったのだが、どうしてなのだろうか。
この変なSP盤は、私が持っていても意味がないので、岡田則夫さんに進呈した。