指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

日本文学界の救世主

2009年06月12日 | その他
村上春樹の新作小説『1Q84』が大評判で、とても売れているそうだ。
横浜市図書館の貸出予約数も、1,800を越えているが、いずれ2,000を越えるだろう。
予約数2,000ということは、2,000÷22冊×3週間(平均回転日数)で、全員に回るまでには、5年かかってしまう。
本当かね、それまで予約者は待っているのでしょうか。

実に大変な村上春樹人気で、私も村上春樹はすごいとは思う。
1970年代後半に、『風の歌を聴け』と『1973年のピンボール』を読んだ時は本当に驚いた。
「日本にもこんな作者がいたのか」と。
しかも、『風の歌を聴け』には、私が入っていた学生劇団の周辺の連中のことも書かれていた。
彼らは、あまり出来の良くない、文句ばかり言う「問題児」グループだったので、そいつらの周辺に、村上春樹のような優秀な人間がいたなど、とても信じられなかった。彼らは、1960年代末のほんの数ヶ月しか存在しなかったので、ある程度接触があった人間でなければ、彼らを知るはずはなかったのだ。

私もすぐに彼の愛読者になった。『羊をめぐる冒険』が一番良い小説だと思う。
ただ、『ノルウェーの森』に典型だが、主人公の肯定の仕方には違和感を感じるようになった。
そこでは、主人公の男は、最後まで結局何もしない。
そして、周囲の女性は、自殺したりするなど、みんな不幸になる。
主人公の男は、どこまで行っても無垢で、それに気づかず「何でみんな不幸になってしまうの、僕の責任じゃないのに」とイノセントを決め込む。
こういうのって卑怯じゃありませんこと?
女性の読者は、どのように感じているのでしょうねぇ。

本や雑誌が売れない日本文学界にあって、村上春樹先生は救世主なのだから、ケチをつけるなど、本当に罰が当たるのでしょうか。


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