指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『帝銀事件』

2021年03月31日 | テレビ
1948年1月、豊島区椎名町の帝国銀行椎名町支店で起きた毒殺事件。
1980年にテレビ朝日で放映されて見たが、やはり大変に面白い。監督は森崎東で、彼はテレビ映画も結構作っているが、これがベストだと思う。
主人公の平沢貞通役の中谷昇が非常な好演である。
中谷は、二枚目で芝居も上手いが、脇役が多く、これという作品がないが、これは彼の代表的作品だと思う。

      

平沢は、当時はかなり名をなしていたペンペラ画家で、毒殺事件などの関わる人ではなかった。
だが、刑事の一人に、犯人が類似事件で使った名刺から、その交換相手を異常に捜査する男がいて、これを田中邦衛が演じてこれも大熱演。
田中が、平沢のいる小樽から逮捕して、東京に護送するが、ここは列車に新聞記者等が乱入して大騒ぎになる。ここでは使われていないが、列車での様子は、ニュース映画で撮影されていたと思う。
事件で生き残った人による「面通し」があり、銀行員の一人が木村理恵で、彼女は犯人と似てないとの証言をする。木村も後に日活ロマンポルノに出ることになるが、ここでは清純派。

だが、起訴され裁判になると、なんと有罪で死刑になる。
殺人の凶器である「毒物」も特定されず(青酸性毒物であり、かなり特異な毒物である)、入手先も一切不明という「異常な証拠」だった。
そして、歴代の法務大臣は死刑の執行許可を与えず、平沢は39年間を獄中で過ごし、95歳で死ぬ。
えん罪事件の典型というべきだろうが、平沢貞通は、かなり異常な人間で、ここで中谷昇は、大変によく演じていると思う。
日本映画専門チャンネル

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