指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『泣いてたまるか・定期便の源さん』

2019年08月17日 | 映画
テレビの『泣いてたまるか』から渥美清の『男はつらいよ』が生まれたのは有名だが、これも『泣いてたまるか』からスピンアウトした作品。

             

監督は宮崎晃、主役は坂上二郎、男はつらいよのように、持てない中年男のところに、美女が来て・・・という同様な話。
だが、『男はつらいよ』ほどに面白くない。
渥美清の演技の上手さを再認識させられるが、それよりも坂上と渥美との芸質の差を感じさせる。
長距離トラックの運転手の坂上は、福島で少女榊原るみを乗せ、赤羽駅に連れてくる。
恋人が西武線にいるという。坂上は、38歳で、何度も見合いを繰り返しているが、不細工なのでいつもまとまらない。
弟は、白タク運転手の萩本欣一で、彼らの母はミヤコ蝶々で、坂上と二人で都電が走る荒川で暮らしている。
喫茶店の女が倍賞千恵子、アルバイトが佐藤我次郎と『男はつらいよ』的世界だが、どこかはじけない。
宮崎晃は、悪くない監督だったと記憶しているが、これは面白くない。
榊原の恋人だったのは、高橋長英で、山田洋次の世界より、ややリアルな方向で、東宝の青春もののように見える。
その理由は、坂上が、やはりコント55号だからで、一人だと冴えないが、萩本が出てきてケンカになるとハリが出てくる。
やはり、芸の蓄積は恐ろしい。
その点、渥美は一人だったので、どんな相手とやっても面白かった。その一番は、おいちゃん役の森川信で、初期のこの二人の掛け合いは実に面白かった。

話は、もちろん坂上の榊原への片思いは敗れ、しかし坂上は元気に長距離便を運転していて、榊原は下町の石鹸工場で働いている。
国立映画アーカイブ

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