指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『83年11月の美空ひばり公演』で

2023年12月30日 | 音楽

前の美空ひばり公演の写真に使ったのは、1983年11月の新宿コマ公演だった。

             

これは、1部はミュージカル『水仙の詩』で、樋口一葉の『たけくらべ』をもとにしたものだった。

だが、これは信如の橋爪淳とは、16歳で別れてしまうので、筋が続かない。

だから、『婦系図』のようになり、新内の師匠になるが、狒狒おやじに迫られたりするなど困った話で、これが沢島なの、と思ったものだ。

だが、二部の歌は素晴らしかったが、途中で若い女性が二人、客席に入って来た。

すると、一瞬ひばりさんは、むっとしたが、すぐにこう言った。

「ご苦労様、会社で働いているとすぐに帰れないのよね、お掃除とかいろいろあるし・・・」

このとき、私は「ひばりさんは、1950年代の新東宝映画のような世界に生きているんだんなあ」と思った。

この頃、すでに普通の職場では、若手女性社員が部屋の掃除をするなどはなく、下請けの中高年の方の労働になっていたのだから。

美空ひばりさんは、1980年代でも1950年代の社会と世界に生きていたのだと思ったものだ。


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