指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『天と地と』

2016年12月24日 | 映画

角川春樹が製作から監督まで務めた作品、彼は余程川中島の戦いが好きらしく、『戦国自衛隊』も同題材の映画である。

               

 

この1990年の10年前に黒澤明の『影武者』があったわけだが、これの後半の不可解さに比べ、ドラマ性は薄く、気楽に見られる。

思ったよりはひどくなく、『影武者』の役者の演技のぎこちなさはないので、それなりに面白い。

俗に「戦国絵巻」と言ったフレーズをうたい文句にする作品が多いが、まさに絵巻風で、上杉陣、武田陣が、黒と赤に色分けされていて非常に分かりやすく見られる。

キャストはいろいろと事故があったようだが、榎木孝明と津川雅彦、渡瀬恒彦は文句ないが、浅野温子が例の気の抜く演技で不快。

こんなのが時代劇に出るのはどうかしている。現代ものなら、あのタイミングを外す芝居はそれなりのリアリティがあるが、時代劇には不要。

一番の問題は音楽が小室哲弥で、いかにも安手、やはり伊福部先生のような重厚さがほしいところだが、ない物ねだりだろうか。

川中島ものには、衣笠貞之助監督、長谷川一夫主演の戦時中の1941年の映画に『川中島合戦』がある。

これは農馬を徴用され戦いにも就いていかされる一農民(長谷川一夫)の目で、武士の戦いを見るという意外にも面白い作品だった。

ここには、当時の太平洋戦争も、庶民には無縁という、衣笠貞之助なりの抵抗を示した映画だと私は思う。

その意味では、軍馬の増産を賛美した映画『馬』の監督山本嘉次郎とは対照的であるともいえるだろう。

BS朝日

 

コメント (2)
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