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経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

適正な人事評価制度の構築

2012-07-19 10:19:03 | 達人経理マンへの道

(利益に貢献する人材を創出する人事戦略その5)

 小さな会社では、人事考課は社長の感覚一つで決まってしまう。だから整備された人事考課の仕組みもなく、社長の好き嫌いと思い込みで人事考課を行うことが多い。

 だが中小企業といえども、もうそんな人事評価制度の元では、良い人材は育たないし、居付かない時代になってしまった。まず会社の発展と成長のために必要かつ大切な価値基準を、幹部全員で具体的かつシンプルにまとめよう。そしてそれに基づいた人事評価基準を明文化し、全従業員に対して「明確に提示する」ことが必須である。

 また評点の良くなかった者に対しても、評価結果について本人と面談し、今後モチベーションを低下させないようなフォローも必要であろう。これは実際にはなかなか難しい事だが、良いところは褒めて、さらにそれを伸ばせば、次に繋がるのだと励ますことである。

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仕事を任せて経営者意識を持たせる

2012-07-17 10:55:51 | 達人経理マンへの道

(利益に貢献する人材を創出する人事戦略その4)

 前述のH会長が、子会社の社長をやりたい者に任せたように、全従業員に経営意識を持ってもらうことが大切である。それにより人の能力と仕事量は、2倍にも3倍にも膨張するものなのだ。

 中小出版社に勤務していた事があるが、ここでは出版の仕事を社長が行い、収益源である編集プロダクションの仕事は全て従業員に任せていた。一冊の本を創るまでの製作管理は、編集担当者が外部の校正マンやイラストレーター等を使い、印刷屋へ責了を出すまで一人で行うことになる。
 この書籍製作業務の報酬は、入稿時に契約出版社から手数料の半分が入金され、残り半分は責了時に支払われることになっていた。

 従って進捗状況が遅くなると、入金も遅くなるし、出版社との信頼関係を損ねてしまうのだ。もしこの進捗が大幅に遅れた場合は、全てが編集担当者一人の責任となる事は言うまでもない。
 だから皆必死であり、仕事の遅い編集者は、無償の深夜残業を何日も繰り返していた。その代わり、納期さえ守れば誰にも文句を言われず、20代の若者でも、自分の好きなように仕事が出来るシステムになっていたのだ。

 これこそ零細出版社が考えた「全員参加の経営システム」という究極の従業員操縦法だったのであろう。当時20代だった私には、その仕組みが良く理解出来ず、お人好しな連中ばかりだと思い込んでいた。ところが、それからずっと後になって、それが社長のしたたかで深謀な経営手腕だったことに気付いたのである。

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中小・零細企業では、社員教育が出来ない

2012-07-16 13:37:43 | 達人経理マンへの道

(利益に貢献する人材を創出する人事戦略その3)

 大企業の従業員は、真っ白な学生を大勢雇用し、入社前から何ヶ月も研修を受けさせる。その研修には、社会人としての常識やマナーを始めとして、会社の主要な業務全般の実習や、主要部門の業務知識などを詰め込む。これによって、真っ白な学生達はその会社の色に染まってゆく。

 ところが小さな会社には、そんな余裕も体力もなく、即戦力となる中途入社組を集めて、あとは社長のアクの強さだけで従業員を引っ張ってゆくのである。それが一種の従業員教育になってしまっている。政治家の世界で言えば、小沢一郎流のやり方なのだ。とにかく自分の言うことを良く聞く人間だけを重用し、それで本人だけ満足して終わりなのである。

 だがこうしたやり方では人材は育たない。もはや社長一人の力だけでは、企業は大きく成長しない時代に突入しているのである。経営のトップに立つ人には、このことを十分に理解して欲しい。

 だから本来は、小さな会社こそ従業員教育にお金と時間を掛けなければならないと思う。ただ教育しても短期間に退職してしまう社員が多いのでもったいない。という反論が出る事も承知しているが、それはトップに魅力がない証拠である。だからこそ前述したように、まずトップ自身が変身しなければならないのだ。

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中小・零細企業では、トップの影響力が非常に強い

2012-07-14 11:27:00 | 達人経理マンへの道

(利益に貢献する人材を創出する人事戦略その2)

従業員のモチベーション向上を図る
 中小・零細企業ではどうしても目先の即戦力に拘る結果、中期的な人事戦略が希薄になり易いものだ。だが既に述べた通り、小さな会社こそ有能な人材が必要なのである。そこで、小さな会社で必須の人事戦略を簡単にまとめてみた。

 トップの経営姿勢が良ければ、従業員の質も高まるが、その逆では有能な従業員は育たない。まずはトップ自身が、勤勉で仕事熱心で、誠実であることである。そして従業員の信頼感を向上させて欲しい。
 某製造業の創業者であるH会長は、戦後裸一貫から起業して、現在会社を売上高約1000億円の一部上場会社まで成長させた。彼は口ベタであるが、正義感が強く誠実で何よりも情熱の人であった。また決して驕らず、従業員300人の時代までは、全従業員の顔とその家族の名前を覚えていたという。

 仕事に厳しい人だから、従業員に対しても厳しい態度で臨んだが、仕事が一段落すると叱った従業員を連れて焼鳥屋で一杯飲んで、一緒に頑張ろうと励ましてくれたという。会社の交際費は一切使わない人だったので、自腹で焼鳥屋だったのである。そして会社が大幅な利益を出した年度は、通常の賞与とほぼ同額の決算賞与を全従業員に支払ったという。

 そして子会社を創れば、社長をやりたい従業員を募集した。そして30代で子会社の社長に抜擢されて、死に物狂いで頑張った従業員が大勢育ったのである。だからこの会長のためなら死ねるという社員が何人もいた。こうなるともうカリスマとしか良いようがない。
 私が中途入社した頃は、H会長はほとんど引退状態であったが、私のような下っ端にも丁重に挨拶をしてくれ、感動した記憶がある。
  もはやこのような立志伝中のカリスマ経営者は現れないと思うが、従業員を大切にして上手に使うという姿勢が重要だと言いたいのである。

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利益に貢献する有能な人材の確保

2012-07-13 10:24:36 | 達人経理マンへの道

 企業は「ヒト、モノ、カネ」と言われるが、一番大切なのはヒトである。ことに中小企業においては、人ひとりの能力が利益に直結し、将来大企業に成長する源泉となるだろう。
 従って言うまでもないが、有能な従業員は大切にしなくてはならない。そして有能な人材には、フルに活躍してもらわなければ会社の損失である。そのために、有能な従業員の確保と彼等が腐らないような、職場環境を作り上げる必要があるのだ。

有能な人材の確保
 中小・零細企業の人材募集と言えば、ほとんどが縁故か中途採用であろう。縁故は募集費用がかからず信頼感を抱けるが、余程の事がない限り断れないため、往々にして不毛な人材を雇用する事になってしまう。従って縁故に頼らず、費用や時間を掛けても通常の求人活動を行ってみよう。就職難の現代では、優秀な人材が野に溢れているはずである。

 中小・零細企業の場合は、社長が面談して気に入れば即決してしまう場合が多い。ところがこれで失敗している会社がかなり多いのも確かだ。
 また学歴や職歴だけ見て能力が高いと思い込み、独断で同年代の社員を大幅に上回る給与を設定しまう。だが協調性が全くなく、社内で浮いた存在になったり、期待していた半分も仕事が出来なかったりと、問題児を抱えてしまうこともある。
 会社が小さいからといって、簡単に人を雇用してはいけない。と言うより会社が小さいからこそ、貴重な人件費を無駄に出来ないのである。

  そもそも中小企業の場合は、大企業に比べて人が集まりにくい。従って少なくとも30代前半位までは、大企業の平均程度以上の給与体系を設定すべきである。またどんなに気に入った人材でも、中途入社の給料は同年齢の既存従業員のトップを超えてはならない。もしその中途入社した者が、入社後1~2年のうちに、皆が認める実力を発揮した場合には、大幅な昇給をすれば良いのである。そのことは面接の時に約束しておけば良い。
 また面接日に即決はやめ、面接官も複数の者で行い、全員の意見が反映された評価を基にして決めようではないか。

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不正を未然に防ぐ対策は万全か

2012-07-04 16:16:07 | 達人経理マンへの道

 上場会社での不祥事例が時々ニュースになるが、中小・零細企業では最低限の人数で事務処理を行い、かつ内部統制などのしくみもないため、一歩間違えれば不正の温床となり易いことになる。 ただ上場企業のように取引金額が莫大ではないため、不正をする側も犯罪というリスクを犯すほどのメリットがないかもしれない。だからといって、全く無関心で放置しておくわけにもゆかない。中小企業なりに突発的な不正が起こり得るので、最低限の不正防止対策を練っておく必要があるだろう。

一般社員の横領など
①商品や消耗品等の持ち帰り  
 会社の電話を私用利用するのと同様、そもそも自社商品等の持ち帰り自体に、従業員が罪悪感を抱いていない例が多い。従って社内の処罰規定等で不正の具体例として列挙し、処罰も明確にしておいたほうがよい。
 ただし持ち帰り程度なら可愛いほうで、悪質な業者とつるんで横流しする不埒な従業員もいる。こうなると、はじめから悪いと知りながら行っているので始末が悪い。単に処罰規定を作成しただけでは防止できないだろう。
②集金した現金の着服
 これは昔からよくある不正手口であるが、最近は銀行振込みや口座自動引落などにより集金作業自体が減少している。どうしても集金が必要な場合は、必ず集金記録簿などを作成し、集金者以外がチェックする仕組みを作っておこう。

経理マンの不正
 中小・零細企業では、お金に係わる業務のほとんどは、少人数の経理マンが行っている。従って不正をしようと思えばいくらでも出来る状態にある。だから社長の奥さんが経理を握っているという零細企業が多いわけだが、いつまでも経理を奥さん任せにしておくわけにもゆかない。そこで第三者に経理を任せる場合には、定期的または抜き打ち的に顧問税理士に「経理監査」をさせてはどうだろうか。多少金はかかるが、もう一人経理マンを増やすよりは効果的であろう。また大きな資産・負債項目については、社長自らがチェックを行うことも必要である。

経営トップの不正
 オーナー社長の不正といえば、大体が銀行等から金を借りるための粉飾決算であろう。これは経理マンが加担しなければ出来ないのだが、経理マン自身も資金繰りの必要性からむげに断れないという事情がある。
 上場企業の場合は、債権者や株主保護の観点から規制法令が多く、監査法人の監査もあるため、粉飾決算は絶対に許されない。だが中小・零細企業では必ずしもガチンコの決算書を作っているわけではない。
 だからといって、決して粉飾決算を奨励しているわけではなく、ある程度の理論と経験の幅の中で柔軟な考え方も必要ということである。いずれにしても何の根拠もなく、取り返しの利かないハチャメチャな粉飾は行ってはいけない。結局はいずれバレて、信用力を落とすだけだからである。やむなく粉飾をするにしても、翌期に調整できる範囲にするよう社長を説得しなくてはならないだろう。

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小さな会社でも、原価管理を忘れるな

2012-06-22 13:41:19 | 達人経理マンへの道

 大手製造会社であれば必ず原価計算を行い、値決めやコストダウン等の経営戦略資料として利用している。もちろん経理部門も関与するものの、こと標準原価においては、購買部門や製造部門を経験した者でないとなかなか難しい。部品の値段や物の作り方が分からないからである。
 それで大企業では、それらの部署を経験した職人を集めて、原価企画とかコストセンターという部署を創り、標準原価の策定や全般的な原価の管理を行っている。経理はそこで作られた標準原価を利用して、毎月原価計算を行っているのである。
 ところが小さな会社では、そんな余力も知識もないため、正確な原価計算は行わず、どんぶり勘定で大雑把に原価を把握するのが精一杯であろう。

 標準原価とは、ある製品を作るために通常必要な材料費、労務費、経費を予測し集計した原価のことである。具体的には、統計資料や科学的調査に基づき次のように計算される。
①許容範囲の歩留まりを加えた材料の消費量×通常の予想購入単価
②能率的な状態での労働時間数×製造部門の平均賃率
③製造に直接必要な経費
④製造に間接的に必要な経費を合理的に配賦
 これら①~④を集計した金額となる。

 こうして計算式をみるだけなら原価計算は単純で簡単のようなのだが、実際に計算するとなるとかなり大変なのだ。ことに大企業となると製品の種類が多く、その製品を構成する部品点数も何百とか何千というレベルになるからである。そうなると、これはもう人間の手には負えず、かなりハイレベルのコンピューターシステムが必要となる。
 また能率的な状態での労働時間と言っても、実際にはどのようなやり方が能率的な状態なのかを判断するのも素人には無理であり、その時間数をカウントするのも簡単ではない。従って専門的に扱う部署が必要になるのである。

 そしてなによりもやっかいなのは、1962年に企業会計審議会から「原価計算基準」が発表されて以来全く手付かずであること。原価計算を扱った書籍は、学者の書いたものばかりで実用的ではないこと。さらには会社ごとに原価計算の仕組みは異なるが、それらの具体的手法については全く公開されていないという状況なのだ。
 いずれにせよ大企業の原価計算システムを創設した人達は、大変な努力を重ねて今日の原価計算を構築したはずである。だが小さな会社では、製品数や部品点数も少なく、全体の製造工程や製品の流れを見渡せるので、経理マンが標準原価を作る事も不可能ではない。

 経理マンが標準原価を作るためには、まず現場作業を全て経験し、作業の流れと内容を把握しておかねばならない。また作業の難易度や問題点などについて、現場のリーダーに十分なヒアリングを行う必要があるだろう。
 小さな会社では、大企業のように原価計算を財務会計と結合させる必要はない。目的は経営管理のためオンリーと割り切り、なるべく時間と金をかけずに済む独自の手法を築けば良いのである。
 つぎに私が編集プロダクション時代に行った標準原価の仕組みを簡単に紹介しよう。純粋な製造業ではないが、本の製作をしている訳であるから、ある意味で製造業ではないかと考えて原価計算を行った。

①まず編集長、デザイナー、カメラマン等とそれぞれヒアリングを行い、本の種類と形態、本が出来るまでの工程、作業手順や外注依存度などを克明に調査した。
②製作頻度の一番多いB6判モノクロ224頁を、基本編集パターンと定め、このパターン通りなら編集作業時間600時間と決めた。
③224頁を超える場合、またはそれ以下の場合には、2.7時間を加算または減算した。
④また本のサイズが、B6判以外の場合や、写真・図版等が一定の使用量を超えた場合などにも③と同様の加算・減算を行った。
⑤全編集者の平均給与から時間当たりの平均賃率を算定し、それに合計時間数に乗じて、一冊当たりの直接社内労務費を算出した。

 標準原価を作成したのは、この社内労務費部分だけであり、その他の費用は全て実績額を加算して直接原価を算出した訳である。大企業の経理マンからみると、単純かつ会計と直結しない中途半端な原価計算に映るが、小さな会社ではこれで十分なのだ。

 この原価計算の結果は、オーナー出版社に対する編集料値上げ交渉にも使用したが、真の目的は編集担当者の人事評価であった。つまり一人の編集者が、年間に編集完了した標準労務費と、実際にその編集者に支給した給与を比較した訳である。
 そう、実際に支給した給与のほうが高ければ採算ベースに乗らない訳であるから、当然人事評点は低くなる。むろん標準より低ければ利益貢献度が高まり、人事評点も高くなるということになる。
 このようにして、言葉は悪いが編集者達を脅したり、褒めたりしながら競わせて、全社の編集作業効率を50%アップさせたのだった。この様に小さな会社では、幹部のコンセンサスさえ得られれば、思い切った原価管理、いや経営管理が実現出来るのである。

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役員報酬の決め方 後編

2012-06-20 13:08:08 | 達人経理マンへの道

(昨日からの続きです)

 役員報酬の決め方によっては、税務上損金として認められず有税となるので注意しなくてはいけない。具体的には、次のような場合は有税となる。
毎月の報酬額が同額ではない場合
 法人税法上損金として認められるためには、役員報酬の変更を新年度または株主総会決議後に行い、1年間は同額を支給しなくてはならない。但し経営状況の著しい悪化に伴いやむを得ず期中に減額する場合は、減額後も損金とすることが出来る。

過大な役員報酬を支払っている場合
 もし日産自動車が上場会社ではなく同族会社であれば、ゴーン氏の役員報酬は過大役員報酬に該当し、税務上の損金性を否認されるに違いない。だが上場会社が、国税局から過大役員報酬として否認された例は聞いた事がない。結局株主総会で承認された枠の中に収まっている限り、過大であるか否かの客観的な根拠を示すことが難しいからである。
 ところが同族会社である中小・零細企業では、税法に「行為計算の否認」の定めがあり、税務署内の統計や調査官の主観によって過大役員報酬と認定される場合があるので要注意だ。
 従って、社長の報酬を超高額に設定する場合は、その根拠を明瞭に整理しておき、過大報酬には該当しない旨を税務署に説明する必要がある。もちろん言うまでもないが、株主総会の承認枠以内でなくてはならない。

 また役員退職慰労金についても、株主総会の決議と退職金規程の存在が必要である。だがそれらに不備がなければ、職務内容や期間、会社の収益状況、同業他社の水準に比して著しく高額でない限りは損金算入とされる。
 では著しく高額でない額とは具体的にどのように計算するのだろうか。実務上は、適正と認められる退職金の金額を、次の算式で計算する。
最終報酬月額×在任年数×功績倍率
 なんだかこの功績倍率の決め方一つでどうにでもなりそうだが、平成11年12月10日の札幌地裁で税務当局が算出した功績倍率は3.9であった。(ちなみに司法は3.0、原告は8.3)従って3.0以下なら問題はないと言う神話が出来てしまったのである。

役員賞与を支給した場合
 基本的に利益の配分とみなされる役員賞与は、税務上の損金とされない。ただし事前に所轄税務署長に支給額の届出を行い、かつその届出通りに支給した場合は損金として認められる。
 また平取締役で部長などの役職を併せ持っている「使用人兼務役員」の場合は、届出の有無に関係なく、使用人相当額については、従業員と同様に損金性が認められる。この使用人相当額として認められる金額は、他の従業員に支給した賞与のうち最高額までという実務慣行がある。

☆税務上の役員とは
①取締役、監査役、執行役、理事、監事など法定の役員
②相談役、顧問などで、その会社の地位や職務からみて、他の役員と同様に実質的に経営に従事していると認められる者。
③同族会社の使用人のうち、特定株主として次の1)~3)の条件をすべて満たす場合
 1)株主グループの持ち株割合が多いものから順位をつけ、第1順位から第3順位の株主グループ(親族は何人いても一つのグループとなる)の持ち株割合を順次加算して50%超となった場合、その使用人がその株主グループのいずれかに含まれていること
 2)判定の対象となる人の属する株主グループの持ち株割合が10%超であること
 3)判定の対象となる人の持ち株割合が5%超であること
 従ってオーナー社長の家族が株式を持っている場合は、たとえ普通の従業員であっても、彼等に支払われる給与は、役員報酬と見做される事があるので要注意である。

役員と会社の取引
 役員と会社間の取引については、会社法でも利益相反取引に該当する場合には、取締役会での事前承認が必要となる。さらに税法においても、社宅の賃料、貸付金の利息、土地の賃貸料、資産の売買などが、適正額で行われない場合は、役員報酬として認定課税されることがあるので注意が肝要である。
 いずれにせよ、役員報酬を決めるには、全従業員のモチベーションを崩さず、会社法に外れず、余計な税金を払わなくて済む十分な配慮を忘れないで欲しい。

(完)

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役員報酬の決め方 前編

2012-06-18 10:05:43 | 達人経理マンへの道

(長いので、二日に亘って連載いたします。)

 小さな会社だけではなく、上場会社においても、役員報酬はアンタッチャブルであり、トップのお手盛りで決めている会社が多い。 ところで、上場企業については2010年3月期決算から、年間1億円以上の報酬を受けた役員の氏名・金額等を個別に開示することが金融庁の新ルールで義務付けられたのである。

 これによって、日産自動車の役員報酬が異常に高い事が広く世間に知れ渡る事となった。ことにカルロス・ゴーン社長にいたっては、総額約8億9000万円という破格の報酬を受けているのだ。この事に関してはいろいろな意見があると思うが、過去の事はともかくとして、現状では同氏の価値がそれほどあるとは思えない。

 確かに米国の超インフレ報酬と比較すればそれほど高くないかもしれない。だがここは日本なのだから、日本の相場で決めてもらいたいのだ。それに米国での超インフレ報酬こそ、今日の世界不況を生み出した諸悪の根源なのだと言いたい。
 例えば日産自動車の直近三期間の平均利益率は約1%である。従って逆算すると約9億円の税引き利益を計上するには、年間約900億円の売上高が必要なのである。どう考えてもゴーン氏一人の経営マジックで、それだけの売上高が増加したとは思えないのだ。

 さて話が多少横道にそれてしまったが、中小企業においては、外人役員の超破格報酬などは、夢のまた夢のような話であろう。ただ注意して欲しいのは、社長の家族を名前だけの役員にして報酬を支払うのはよしたほうがよい。それは法人税法上問題になるばかりか、従業員のモチベーションを低下させてしまうからである。
 またどんな状況下でも社長報酬が断トツに高い状態も避けなければならない。中小・零細企業の場合は、上場企業の社長と違って、ほとんどの社長が銀行などに個人保証をしている。また創業者の場合には、画期的な新商品開発を成し遂げたり、既存顧客の確保に尽力している場合が多い。

 つまりそれだけリスクを負っている訳であり、ロイヤリティーに値する功労を行っているのだ。従ってある程度破格の報酬を受けても、誰も文句は言えないはずである。
 だが不況や経営判断の誤りから、会社の業績が思わしくないときは、率先して報酬を下げなくてはならない。それがあって初めて、好況時には破格の報酬を手にする事が出来るのである。

(以下は明日掲載します)

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資金繰り表は経理の命綱なのだ

2012-06-11 12:49:12 | 達人経理マンへの道

 最近黒字倒産が増加している。「損益計算書ってそんなに偉いの」でも書いたが、損益計算書はあてにならない。実際に会社が倒産するのは、金融機関に見放されたときである。つまり、利益が出ようと出まいと、企業運営のための資金がなくなったらおしまいなのだ。 だから資金管理こそ、企業運営の要であり、「資金繰り表」は企業丸の羅針盤ともいえるだろう。
 資金繰り表のフォームは、縦の項目として、前月末現預金残高、当月入金、当月支出、過不足額、資金調達又は運用、当月末現預金残高に大分類される。さらに当月入金、当月支出、資金調達又は運用の内訳を記載し、その内容を把握できる表にする。
 また横の項目は、前月実績、当月予定、次月予定、次々月予定と続く。実績はあくまでも予定を作るための参考データーであり、必要なのは予定の部分なのである。会社の規模や業種によって細部は異なるものの基本形は同じである。

 

  資金繰り表の各項目は、会社の規模や業種によって多少異なるので、上記の表を参考にしながら、自分の会社に合ったフォームを作成するとよい。またこの月単位の資金繰り表は、少なくとも3ヶ月先まで予測し、毎月繰り返し作り替える必要がある。
 いずれにせよ、この月単位の資金繰り表だけでは実務上は役に立たない。なぜならば月単位で帳尻が合っても、同月の入金より出金のほうが先であれば、どこかで資金ショートしてしまうからである。
 従ってこれをさらに分解して、1日単位の「日繰り表」も合わせて作成する必要がある。実はその「日繰り表」こそ、実務上絶対に欠かせない資金繰りの羅針盤なのだ。創り方は簡単だ。家計簿同様、日付順に入金、出金、残高を並べて、どの日も残高がマイナスにならない入・出金予定表を創ればいいのである。
 資金に余裕がない場合は、この表によって何日頃、金融機関から借入れをすればよいのかが明確になるので、早めに金融機関に融資予定日を連絡することが出来るわけである。

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