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経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

給与計算のお話

2012-06-08 11:25:17 | 達人経理マンへの道

 独立した人事部のない小さな会社では、やはり経理マンが給料計算を行うことになる。これもかなり重要な業務であり、この仕事に関して説明しはじめたら、すぐに一冊の本になってしまうほどだ。従ってここでは、その概略と手順を記載することに留めたい。
 まだパソコンのない時代のことである。約50人分の給与計算を手書きで行っていたことがある。そのころはまだ給与振込み制度もなかったため、銀行に行って現金を引き出し、各人別の手取り額を数え、手作業で現金を袋詰めしていたのである。

  それで全ての袋詰めが終了したとき、手持ち現金がゼロになれば問題ないのだが、余ったり不足したりすることもあった。その場合は、既に袋詰めされた中身をもう一度確認し直すことになる。だから別室に閉じこもって、二人で二回勘定しながら袋に詰めていったものだ。それでもたまに合わないときがあるので、ピタリと合ったときは嬉しかった。
 さらに12月には、各人別の所得税等を精算する「年末調整」があり、これも手作業で計算したが、さすがに50人分の計算は厳しかった。 ところが現在では、小さな会社でも給与振込み制度が確立されているし、年末調整まで出来るパソコンソフトが廉価で販売されている。昔に比べるとかなり楽になったものだ。なにせ現金を運ばなくて良くなったのが一番だね。

 有名な三億円事件も、東芝府中工場の従業員賞与を、銀行の現金輸送車が輸送中に強奪されたものだ。大企業だから銀行が現金を運んでくれたのだが、中小企業は経理マンが銀行まで現金を取りに行かねばならなかった。それで、銀行からの帰り路はビクビク、キョロキョロしながら、アタッシュケースをしっかり抱きかかえていた時代もあったのだ。とにかく給与振込みほど画期的で、経理マンにとってありがたい制度はなかったのである。

 昔話が長くなってしまったが、次に給与計算の手順を、簡単にまとめておこう。

①タイムレコーダーなどを使って勤怠管理を行い、出勤日数や残業時間を集計しておく。この場合、毎月給料日当日までの計算は不可能なので、便宜的に給料日前5日前位から一ヵ月間前までを勤怠の集計期間と定めておく。
②集計した勤怠により、欠勤日数に相当する給料相当額を計算し月給より減算したり、残業や休日出勤相当額を加算することになる。これで給与支払い総額が決定する。
③税金・社会保険料・立替金などを計算して、給与総額の控除額とする。これらの内訳を記載した書類を給与明細表という。またこの給与明細を各人別に年間集計した表を、給与台帳といい年末調整のときに使用する。
④月末までに従業員から天引きした社会保険料と会社負担分を、銀行経由で所轄社会保険事務所に納付する。
⑤給与日の翌月10日までに、給与総額、人員数、納付税額を記入した納付書とともに、従業員から天引きした源泉所得税を、銀行経由で所轄税務署に納付する。
⑥毎月従業員から天引きしている源泉所得税は、あくまで源泉徴収税額表に基づく仮納付に過ぎない。従って12月の給料時に、生命保険料控除などを考慮しながら、一年間の各人別所得計算を行い、正規の税額を確定するのである。これが年末調整と呼ばれる制度であり、サラリーマンの場合は他の収入がない限り、これで税金の確定申告が不要となる。つまり会社が従業員に代わって、税務署に確定申告書を提出しているようなものなのだ。もっとも実際に書類を税務署に提出する訳ではなく、会社で保存しておき税務調査があれば、いつでも提出出来るようにしておく訳である。
⑦翌年1月末までに、従業員全員の給与支払報告書を、各人の住所地市町村に提出する。これにより、次年度の住民税額が確定される。

 これで一連の給与関連事務が終了するのだが、パソコンの給与ソフトを使用すれば、前述した②③⑥⑦のほとんどが自動的に計算・作成されてしまう。まことにありがたい時代になったものである。

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固定資産管理と減価償却

2012-05-29 10:05:02 | 達人経理マンへの道

 大企業では、なぜか固定資産の管理と減価償却計算の担当を新人に任せている例が多い。固定資産の管理は、他の会計システムと分離し易く、パソコンのパッケージソフトを使う企業が多いからであろうか。それに現物とのチェックなどの雑務が伴うため、まだ文句の言えない新人に押し付けているのであろう。
 だが固定資産管理には、税務をはじめとしていろいろな要素が絡んでおり、実はかなり重要な業務なのである。だから本来担当者の選択は、ベテランと新人の組み合わせとしなければならない。
 ところが、超巨大企業を除いた大・中企業の大半が、新人一人に丸投げしているようである。従って大企業においても、一度固定資産管理について、じっくりと内部監査をして欲しい。きっとびっくりするような実態が浮かび上がってくるだろう。

 周知の通り会計上の固定資産とは、企業が一年を超えて使用または保有する資産のことをいう。具体的には、土地・建物・構築物・機械設備・什器備品・車両運搬具などの有形固定資産と、工業所有権・借地権・営業権などの無形固定資産、及び投資有価証券などの投資等の総称である。
 だがここでいう固定資産管理には、投資等は含めないことにする。投資等については、通常財務部門が管理することが多く、その性格が異なることから、ここでは分離して考えたいのだ。
 さて固定資産管理と一口に言っても、その内容はかなり広範囲に亘る。ざっとまとめると次のようになるだろう。

①固定資産の取得・移動・廃棄記録と現物管理
②建設仮勘定の管理
③資本的支出と修繕費の区分判定
④減価償却計算(通常の減価償却、リース資産、一括償却資産、特別償却、圧縮記帳などがある) 
⑤固定資産税のチェックと納付
⑥償却資産税の申告及び納付
⑦事業所税の資産割りの計算
⑧リース資産の管理
⑨減損会計
⑩研究開発費とソフトウェア会計
⑪資産除去債務
⑫賃貸等不動産の時価等の開示

 かなり中身が濃いのが分かったであろう。またそれぞれが一冊の本になるほどのボリュームなのだから、固定資産管理の担当者は税務と会計の大ベテランでなくては勤まらない。そのうえ税務調査や会計監査でも、かなり精査される項目が多い。とてもじゃないが、新人任せに出来るはずがないのだ。
 さて減価償却については、税法がかなり詳細に定めていたため、従来は会計も税法に従っていた。ところが会計ビッグバン以降は、微妙な食い違いが生じている。さらに今後は、第二次会計ビッグバンといえるIFRSの強制適用により、さらに会計と税務が乖離する可能性があるだろう。

 固定資産管理の重要性について延々と述べてきたが、これらの大半は大企業に関連するものである。ことに⑧~⑫に関しては中小・零細企業には縁のない項目かもしれない。だがそれらを除いても、固定資産管理のボリュームは膨大である。
 また減価償却には、中小企業だけを対象にした特例も多い。そして法的義務がなくとも、土地建物などの最新評価額は、中小企業にとっても重要な関心事である。
 従って達人経理マンになるには、固定資産についての十分な知識の習得が必須であることは言うまでもない。

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守るべく資金運用上の注意点

2012-05-22 10:52:55 | 達人経理マンへの道

 ある程度利益が続き、資金に余裕が出てくると、「余剰資金を活用せよ」とばかりに、本業意外の不動産投資や株式投資などに資金をつぎ込みたくなる経営者が多い。だが過剰な投資が原因で、バブル崩壊とともに会社の屋台骨も崩壊してしまった会社が沢山あった。逆に地道に本業だけに専念して、余計な運用を行わず、急成長した会社をいくつか知っている。これは全て経営トップの経営に対する姿勢の違いが原因であろう。

 不動産屋や証券会社の営業マンは、経理部に売り込みに行っても、余り乗ってこないのを熟知している。それで勢い経理部長を飛び越え、社長と直接会ってしまう輩が時々いるのである。そしてド素人の社長に美味しい話をして、訳のわからないデリバディブ等を勝手に売り込んでしまうのだ。
 これが一番困ってしまう。既にトップがOKしてしまったものを経理で覆すわけにもゆかず、渋々契約をするのだが、こうした類の投資は必ずといっていいほど失敗するものである。

 また本業に対する投資でも、費用対効果を無視した莫大な金額の製造設備や、十分な事業計画を立てないまま行う新規事業や海外展開も要注意である。ただ闇雲に反対ばかりしていても、「保守的な経理の言うことを聞いていては、チャンスを逃してしまうじゃないか」と文句を言われるだろう。
  だからといって思い付きや無計画な投資を安易に許容してしまっては、あとで取り返しのつかないことになる。例え社長といえども、本業意外の投資や莫大な投資に対しては、投資計画書や事業計画書を作成しなくてはならないというルールを創っておいたほうがよい。そして、幹部全員が納得したうえで「決定」するシステムも併せて構築しておこう。
 具体的な計画書作成の方法等は後で述べる事として、ここで言いたいことは、重要な投資については、聖域や例外を作らずルール化し、幹部全員の検討と理解が必要だということである。ことにワンマン社長の中小企業では重要な課題ではないだろうか。

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銀行から金を借りるための基本定石

2012-05-14 11:00:22 | 達人経理マンへの道

 昔から「銀行は雨が降っているときには傘を貸さず、晴れているときに貸したがる」と言われている通り、金を借りたい中小・零細企業にはなかなか貸してくれないのが実情である。とくにメガバンクには、そうした傾向が強いし、例え貸してくれても、すぐに貸しはがしにかかるので要注意だ。
 相手も貸したくないのだから、こちらもメガバンクは余り相手にしないほうがよい。ただ支店数が多いので、顧客の振込先として普通預金口座だけは作っておかねばならないだろう。

 中小企業の場合は、見栄を張らずに信用金庫や地方銀行など、身分相応な銀行をメインバンクとしたほうがよい。但し信用金庫や地方銀行でも、自社の体質と合わない場合もある。多少借入金利が高くとも、自社の力になってくれそうな金融機関を選択しよう。また、多少企業規模が大きくなっても、一度お世話になった金融機関はいつまでも大切にしなくてはならない。本物の信頼関係とは、築くだけではなく継続することに意味があるのだ。
 では信頼関係をつくるにはどうしたら良いのだろうか。「まず一にも二にも誠実であれ」と言いたい。例え窓口嬢であれ、預金の集金係であれ、決してバカにしてはいけない。おかしな態度をとれば、必ずその支店中に広がってしまうものなのだ。

 それから督促される前に、毎月必ず月次決算書と資金繰り予定表の提出をすること。金融機関だって、年一回の決算書の提出だけではタイムリーな情報が得られない。相手の欲しがるものを素早く与えてこそ、信頼関係も深まるというものなのだ。それから、3ヶ月に一度くらいは、社長を連れて営業報告をすることも重要である。
 またメインバンクは重要であるが、たったひとつの銀行だけの取引は避けたほうがよい。自社資金の流れを銀行に完全に把握され、資金繰りが悪化した場合に、新たな借入れが難しくなる場合がある。従って、入金と出金の銀行は分けるような工夫も必要である。だからといって、余り多くの銀行と付き合っても小さな資金が分散され過ぎるので、必要最低限の数に絞ったほうがよいだろう。

 金融機関がどの程度貸してくれるのかは、その金融機関の審査基準に従って決める。従って達人経理マンなら、一般的な金融機関の主な貸付審査基準の概略を知らなくて話にならない。
①会社の沿革、その事業内容と将来性の有無、会社の属する業界での地位と業界の動向、同業他社の経営状況 
②会社の与信や格付、売上と利益、社長個人の与信、保証人、担保状況等
③受取手形・売掛金・在庫の流動性
④預金の協力度、過去の借入と返済状況、既存の借入残高、借入申請時期と資金需要時期との整合性
⑤社長の経営能力、将来のビジョン
⑥事業計画書の実現性と数値の根拠など 

 以上ざっとみてすぐに気が付くと思うが、中小企業の場合、ほとんどの審査項目が、社長の資質や能力の如何にかかっている。従って経理マンだけがジタバタしてもはじまらないのだ。つまり達人経理マンの技とは、社長の能力を磨きかつ社長の理解を得ることにかかっているわけである。
 ざっと銀行借入れの基本を述べたが、借入れ出来るのは民間の金融機関だけではい。公的な機関である日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、商工会議所、都道府県等の融資も併せて検討してみよう。そしてそれらの融資を円滑にするため、信用保証協会の保証を受けることも必要である。

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交際費は給料にしてしまえ

2012-05-11 10:45:42 | 達人経理マンへの道

 税法では交際費を、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と定めている。
 だがその実体は、会社の金で美味しいものを食ったり、美女をはべらせたり、ゴルフを楽しむことが多いのである。場合によっては、相手が行きたいからではなく、接待するほうが楽しみたいから、相手をダシにしていることもある。
 まさに交際費は、自分の金ではとても実現出来ない贅沢三昧を、会社の金で楽しむ費用に成り下がっているのだ。だから税法ではこれを冗費と呼び、大企業の場合は全額費用として認めてくれないのである。
 逆に言えば税金のかかる費用であり、通常の費用に比べて4~5割キャッシュフローを悪くする費用と言い替えてもよい。
 だからバブル崩壊後には、多くの企業でこの交際費が削減された。とはいえまだまだ個人にとって美味しいこの冗費は健在である。

 しかしながら経理を預かる身としては、こうした冗費を率先して使う訳にはいかない。大体交際費を使う輩は、偉い人と営業部の人間と相場は決まっている。
 だから営業部長には、交際費を1億円使っても良いから、売上を10億円増やしなさいと言う。するとほとんどの営業部長が、「それなら交際費など使わなくてもいいよ」と逃げてしまう。
 結局のところいまどき交際費など使っても余り効果がないということなのだ。もちろん日本の習慣である中元・歳暮や得意先との歓談に要する飲食代などについては、その全てを否定するつもりはない。但し通常の常識的な範囲でお願いしたいものである。

 また平成19年の税制改正で、社外の人との飲食代については、1人5000円以内なら費用として認められるようになった。 社外の人との飲食代とことわっているところに、税法の鋭さが見えるだろう。先に述べた通り、実際には得意先接待よりも、社内の者だけで飲み食いするほうが多いからである。
 本来ならオジさんたちのポケットマネーでは、場末の居酒屋でまずい酒を飲むのが関の山。美食三昧のあとに、クラブでカラオケなんてとんでもないのだ。ましてや料亭で芸妓を呼ぶなんていうのは、夢のまた夢だろう。

 それから自腹でゴルフともなれば、月に一回程度がやっとであり、それも河川敷あたりがいいところである。だから毎週のように名門ゴルフ場のグリーンに通うなんてことも、夢のまた夢のはずである。
 ところがこれらの「夢のまた夢」を「夢の正夢」として、簡単に実現しているサラリーマン達がいるのだ。程度の差こそあれ、全てが交際費様のお陰なのである。
 しかも会社の金で遊んでおいて、大いばりで自慢している輩がいる。またそれを聞かされた人達は、「とんでもない奴だ!」と思わずに、羨望の眼差しを向ける。そして自分もご相伴に預かろうと考えるのだから困りものである。

 だから交際費は絶対になくならない。だがこの無駄使いを辞めさせる手がひとつある。
 それは税法を改正して、一定額を超える交際費を使ったら、それを使った者の現物給与として、給与課税するのだ。もちろん個人に課税する訳だから、法人税法のほうでは全額費用として認めてもらう。
 逆に給与課税される個人は、年末調整で税金をガバッと取られて、眼玉が飛び出すに違いない。人によっては、給料の手取りゼロ、あるいはマイナスの手取りとなる可能性もある。
 こうすればほとんどの社用族は、撲滅するはずだ。冗談じゃないよ、ってか。

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金庫には、なるべく現金を置かないこと

2012-05-07 09:25:52 | 達人経理マンへの道

 当然のことなのだが、うっかりしていると会社の金庫に多額の現金を置きっぱなしにしてしまうことがある。金庫に現金を入れておいても、金利がつくわけでもなく、盗難や不正のリスクを抱えるだけで何もいいことはない。
 だからといって、余り少量だと銀行への入出金業務が頻繁になり過ぎて非効率である。では金庫に常時入れておく現金はどのくらいが適正なのだろうか。臨時の大きな出金は除き、大体一週間分の定量的な出金額程度を金庫に入れておけばよいだろう。ただし、その前に次のようなルールを決めておく必要がある。

①会社と社長個人の現金を厳格に区別する
 ことに中小・零細企業では、社長の金銭感覚がルーズで、会社の金は自分の金と思い込んでいる社長が多い。だがこれは従業員に示しがつかないばかりか、不正の温床となりかねないので絶対に改めよう。どんな小さな会社であっても、会社と個人は別物なので、資産は厳格に区分したい旨を社長に理解してもらうしかないだろう。また経理マンがいる会社では、社長といえども勝手に金庫から現金を持ち出せないようなルール決めをしておこう。

②現金取引は出来るだけ廃止し、入金も出金も出来るだけ銀行振り込みに変更すること。
そしてどうしても現金でなくてはならない入出金を限定しておく。この方法に変えるときは、他の従業員から文句が出ると思うが、慣れてしまえば誰も何も言わなくなるはずである。もちろん事前に社長を説得しておくことが肝要だが、従業員の抵抗にはひるまないで、徹底して変革をしてしまうことだ。

③振込みする経費などの精算は、原則として週に1~2回程度に抑えておこう。これを毎日やっていたのでは、業務効率が非常に悪くなるため絶対に譲れないのだ。

 さて出金のほうはある程度調整が効くものの、顧客からの入金については相手の都合に合わせなくてはならず、場合によっては多額の現金を金庫に保管せざるを得ない。例えば銀行の営業時間外に、営業マンが顧客から現金や手形・小切手などを集金して来た場合である。さらにそれが深夜の場合だと経理マンも帰宅しているかもしれない。

 こんなときの場合に、入金専用の夜間金庫を設置していたマンション販売業者があった。例えば営業マンが、夜遅くなって顧客から手付金として多額の現金を受け取った場合、営業所内に保管したのでは危険なので、本社に備え付けてある堅牢な夜間専用金庫に保管するのである。この夜間専用金庫には、ポストのような入金口があり、入金は誰でも出来るが、出金はカギが無ければ出来ない。そして翌日、経理マンが金庫を開いて現金と伝票を確認し、現金を銀行の口座に入金するという仕組みである。

 このように入金については待ったなしの場合があるため、このような苦肉の策を弄することもあるのだ。もちろん大手マンション業者は、手付金も銀行振込みになっているが、中小業者の場合は、顧客の気が変わることを恐れて、現金を担保に取ってしまうのだろう。
 また現金残高については、経理担当者が毎日金種別現金収支日報を作成し、現金実際残高と照合すること。もし一人経理の場合は、不正防止のために社長が現金残高のチェックを行うほうがよいだろう。

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もらった手形が不渡りになったときの緊急措置

2012-05-01 11:42:37 | 達人経理マンへの道

 顧客からもらった手形の満期日が近づいたら、取立委任裏書を行って銀行に取り立て依頼を行うことになる。銀行は手形交換所を通してその手形金額の取立てを行うわけだが、手形を振り出した企業の銀行口座に金が無ければ、その手形は支払銀行から返却され不渡り手形となってしまう。
 不渡りには資金不足・取引なしの「1号不渡」と偽造・変造・盗難・紛失・詐欺などによる「2号不渡」がある。これらの場合、原則として銀行は手形交換所に不渡届を提出しなくてはならない。これを受けて手形交換所は、交換加盟銀行へ不渡報告を出すことになる。この不渡届が6ヶ月以内に二回出されると、手形の支払い義務者は二年間銀行取引停止処分を受け、事実上倒産することになる。

 倒産するほうは自業自得であるが、もらった手形を決済出来ないほうは悲劇である。あてにしていた入金が急になくなってしまったのだから大変だ。その手形金額が僅少だったり会社に資金余裕があれば問題ないが、その入金がなければ支払いが出来ない場合は、どこかで不足額を調達しなくてはならない。もしそれが出来なければ自分の会社も倒産してしまうのだ。これを連鎖倒産という。

 通常の取引の中で受け取った手形の場合は、いきなり期日に不渡りになるわけではなく、事前に手形振出人からジャンプ(支払い期日の延長)等の依頼があるはずである。もしすでに取立て依頼している場合は、銀行経由で依頼返却の検討を行うことになる。
 その後その手形の振出人(裏書人がいれば、裏書人)と早急に話し合いを行い、今後の対応を決めなくてはならない。和解できることが一番望ましいが、それが難しい場合は手形訴訟に踏み切ることになる。いずれにせよ次に示した一連の対応は、経理マンだけでは無理なので、営業担当や社長と一緒に行動することになるだろう。

手形を不渡りされた場合の一連の対応
①相手に対する支払いがあれば相殺する
②預かっている担保があれば処分する 
③債務者管轄の簡易裁判所に支払命令申立書を提出し、支払命令書を発行してもらう
④民事調停により解決を計る
⑤即決和解で解決する
⑥契約を解除して販売した商品を引き上げる
⑦取引先が有する優良債権を譲渡してもらう
⑧債務を肩代りしてくれる債務引受人を探す
⑨スピード判決の出る手形訴訟を行う
⑩余りやりたくないが、最後の手段としては、弁護士に頼んで通常訴訟を行うことになる

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合法的に税金を安くするノウハウ (4/4)

2012-04-27 09:35:17 | 達人経理マンへの道

~前回からの続きです~

そのほかの税金について
 会社にかかる税金は、前述した法人税等と消費税だけではない。ざっと並べても、印紙税、源泉所得税、固定資産税、償却資産税、事業所税、登録免許税などがある。
 印紙税については、手形や領収書、契約書などに金額に応じた収入印紙を貼ることで納税が完結する。但し貼り忘れると三倍の過怠税が課せられ、これは損金にならないので要注意。
 源泉所得税については、それだけで数冊の書籍になるほど内容が濃いので、ここでの詳しい解説は割愛させてもらう。いずれにせよ源泉税は、個人や非居住者の税金仮徴収を、国に代わって企業に代行依頼している制度である。従って節税対策というより、企業側では徴収の有無や税率などを間違えないようにすることだ。もし間違えれば、源泉徴収義務者である企業側が責任を負わなくてはならないからである。

 固定資産税は土地建物に係る税金で、自主申告ではなく、市町村が賦課徴収してくる税金である。役所の調査官の話では、新しい建物が建っているかどうか、毎年航空写真を見てチェックしているとのこと。一方の償却資産税は、土地建物以外の事業用有形固定資産について課税される税金で、企業が自主申告することになっている。
 ここで注意すべきことは、建物付属設備についてである。建物と一体化しているとして、固定資産税の対象になるか、償却資産税の対象になるのか微妙な部分があるからである。基本的に「屋外の設備」や「取り外しが容易な設備」が、償却資産税の対象になるようだ。その具体的な区分については、市役所などから送られて来る償却資産税の申告手引きに記載されているので、くれぐれも固定資産税との重複納税がないよう注意されたい。


(4回に分けて掲載しました「合法的に税金を安くするノウハウ」は、一応これでお終いにします。お疲れ様でした。次回からは別の記事になりますのでご期待ください。)

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合法的に税金を安くするノウハウ (3/4)

2012-04-25 10:09:48 | 達人経理マンへの道

~前回からの続きです~

消費税
 法人税等の次に大きな税金だが、場合によっては最大規模の税金となる。だが消費税はあくまでも売上先から預かっている税金であり、企業はそれを代行して納税しているに過ぎない。とは言っても、中小企業では売上先に転嫁できず、税込みで1000円などという価格で販売してしまうことがある。こうなると本当に預かったのか、自前で消費税を負担しているのかよく判らなくなってしまう。
 いずれにせよ納税額が少ないほうが良いに決まっている。ただ前々事業年度の課税売上高が1000万円以下の超零細企業の場合には、免税事業者となり、消費税の納税義務が免除されている。免除だから、本来消費税相当額を受け取る必要がないのだが、取引上の慣行から消費税相当額を価格に上乗せして販売している業者もいる。
その場合は結果として預かった消費税は、税務署ではなく販売会社の収入になるという美味しい話もある。だが売上高1000万円以下という会社は、ほとんど個人事業者であり、零細企業でも余り該当しないのではないだろうか。

 一方仕入れなどの購入品にも消費税が付加されている。だがその消費税は、消費税の申告時に控除できるのだ。つまり消費税の申告納税額は、(預かった消費税-支払った消費税)となるわけである。

また全ての取引に消費税がかかる訳ではなく、その取引内容により次の4つの課税区分に分類されている。
①課税取引
 通常の国内取引など
②非課税取引
 土地等の譲渡・貸付、有価証券、支払手段(手形、小切手等)の譲渡、利子、保証料、保険料、商品券、ビール券などの物品切手等の譲渡、社会保健医療、介護保険サービス、社会福祉事業のサービス、助産費用、埋葬料、火葬料、一定の身体障害者用物品の譲渡・貸付、一定の学校の授業料、入学金、施設設備費、教科用図書の譲渡、住宅の貸付などが該当し、消費税は非課税となる。
③免税取引 
主に輸出取引などで、非課税同様消費税は徴収しない。
④不課税(課税対象外)取引
これが一番曲者で無限地獄だが、国外取引、対価を得て行うことに該当しない寄付や贈与、出資に対する配当金、内部取引などが該当する。これも非課税同様消費税は徴収しない。
 従って輸出100%の会社なら、納税額=預かった消費税-支払った消費税がマイナスになるから、仕入等で支払った消費税が全額還付となるわけである。
 またなぜ課税取引と非課税取引だけではなく、非課税取引と似たような免税取引や不課税取引に分類するのだろうか。実はどんな場合でも、預かった消費税から支払った消費税を全額控除出来る訳ではないのだ。全額控除できるのは、課税売上割合が95%以上の場合に限られる。すなわち、課税売上割合が95%未満の場合は、課税売上げに対応する部分のみが控除されることになるのである。

この課税売上割合の計算は、次のようになっている。(ここでいう売上割合とは通常の売上高ではなく、収入全般の割合と考えて欲しい)
(課税売上高+免税売上高)÷(課税売上高+免税売上高+非課税売上高)   
 従って収入等を課税売上、免税売上、非課税売上、そして課税対象外(不課税売上)に分類する必要があるのだ。

この分類がかなり複雑で面倒である。こんな計算に時間と労力をかけたくない。そんな企業には、課税売上高に業種別みなし仕入率を乗じるだけの簡易課税方式も用意されている。
但しこの方式を選択するためには、基準期間の課税売上高が5000万円以下で、事前に届出書を所轄税務署に提出する必要がある。またこの簡易課税方式を選択すると、以後2年間は変更が出来ないので、届出前に十分な検討が必要だろう。

先に述べたように、免税売上高は課税売上計算の分母にも分子にも入る。従って非課税取引と異なり、輸出取引が増えれば増えるほど、仕入消費税の還付額が増加することになるのだ。

(以下は次回に続く)

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合法的に税金を安くするノウハウ (2/4)

2012-04-24 08:59:41 | 達人経理マンへの道

~前回からの続きです~

 また飲食代以外で、交際費と似通った費用があり、良く考えずに交際費としてしまう場合があるので注意しよう。主なものは次の通りである。

販売促進費や販売手数料として処理できるもの
①得意先等に対して、売上高や売掛金の回収高に比例して、又は売上高の一定額ごとに金銭で支出する費用   
②得意先の営業地域の特殊事情、協力度合い等を勘案して金銭で支出する費用 
③金銭に替えて物品を交付する場合には、その物品が得意先である事業者において、たな卸資産や固定資産として販売し又は使用することが明らかな物品(事業用資産という)
④購入単価が少額(おおむね3,000円以下)である物品(少額物品という) 
(注)③、④の物品は、当然①や②の条件(売上等に比例する等)に合致しなければならない        
⑤取引数量又は取扱金額に応じて一定の基準に従って交付する販売手数料(但し支払先が個人の場合は、1ヶ月12万円超の部分は、所得税の源泉徴収をし、翌年1月に支払調書を税務署へ提出する必要がある)
※例え売上高等に比例していても、得意先や代理店等に対する観光旅行や観劇、ゴルフへの招待は交際費となる。また食事券、旅行券、観劇招待券、商品券、お買い物券も同様に扱われるので要注意。従って売上高等に比例しているのなら、販売手数料に上乗せして現金で支給したほうが節税となる。
但し、観光旅行と視察・研修旅行を同時に行なっている場合は、観光割合が90%なら全額交際費となるが、観光割合が10%以下なら全額旅費交通費等として処理してもよいことになっている。
 また、それ以外の割合の場合は、往復旅費等の共通費は、交際費と旅費交通費等のそれぞれに按分することが出来る。従って、なるべく工場見学などの視察を含めて得意先の接待を行うことを心がけたい。

広告宣伝費として処理してよいもの
①一般に広く配布する目的で、社名や製品等の印刷がされているカレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐい等の宣伝を意図して交付する少額物品
②一般消費者に抽選、引換券付販売により交付する金品、旅行等の費用 
③一般消費者への試飲、モニター謝礼等の費用 
④見本品、試用品等の費用 
⑤テレホンカード、オレンジカードなどはおおむね1000円以下であること
 以上間違い易い項目を列挙してみたが、その処理の仕方により、払わなくても良い税金を納めることになるので、くれぐれも注意が肝要である。
 
 さて冒頭に記載した役員賞与等については、別途「役員報酬の決め方には要注意」に詳しく記載する予定なので、ここでは割愛することにした。
 そのほかの節税アイデアを羅列してみよう。
①売上計上基準を検収基準にすれば、得意先との不一致もなく、出荷基準に比べて計算が簡単であり税金を先延ばし出来る。
②棚卸資産の評価方法を最終仕入原価法にして、仕入先に期末仕入れ分を値引いてもらえば、棚卸資産の評価額が低くなり、税金を先延ばし出来る。
③従業員・役員に対する生命保険は、掛け捨て保険料にしよう。満期保険金付きの保険では、会社が受取人なら保険料は資産扱い、従業員・役員が受取人なら給与と見做されるのでつまらないからである。
④土地建物を一括購入する場合は、契約書で土地と建物の価格を分離し、法的に可能な限り建物の価格を大きくしてもらうこと。土地は非減価償却資産だが、建物は毎年減価償却が出来るので税金が安くなるのだ。
⑤不良債権はそのまま放置せず、税法の許容範囲内で貸倒れ処理や、貸倒引当金の計上をしてしまおう。もちろん貸倒れ処理等をするのは帳簿上だけで、実際には取立て処理を継続してもかまわない。
 いちいち節税アイデアをあげたら切がないのでこのくらいにするが、くれぐれも節税であり、脱税は絶対にしてはならない。

(以下は次回に続く)

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