独立した人事部のない小さな会社では、やはり経理マンが給料計算を行うことになる。これもかなり重要な業務であり、この仕事に関して説明しはじめたら、すぐに一冊の本になってしまうほどだ。従ってここでは、その概略と手順を記載することに留めたい。
まだパソコンのない時代のことである。約50人分の給与計算を手書きで行っていたことがある。そのころはまだ給与振込み制度もなかったため、銀行に行って現金を引き出し、各人別の手取り額を数え、手作業で現金を袋詰めしていたのである。
それで全ての袋詰めが終了したとき、手持ち現金がゼロになれば問題ないのだが、余ったり不足したりすることもあった。その場合は、既に袋詰めされた中身をもう一度確認し直すことになる。だから別室に閉じこもって、二人で二回勘定しながら袋に詰めていったものだ。それでもたまに合わないときがあるので、ピタリと合ったときは嬉しかった。
さらに12月には、各人別の所得税等を精算する「年末調整」があり、これも手作業で計算したが、さすがに50人分の計算は厳しかった。 ところが現在では、小さな会社でも給与振込み制度が確立されているし、年末調整まで出来るパソコンソフトが廉価で販売されている。昔に比べるとかなり楽になったものだ。なにせ現金を運ばなくて良くなったのが一番だね。
有名な三億円事件も、東芝府中工場の従業員賞与を、銀行の現金輸送車が輸送中に強奪されたものだ。大企業だから銀行が現金を運んでくれたのだが、中小企業は経理マンが銀行まで現金を取りに行かねばならなかった。それで、銀行からの帰り路はビクビク、キョロキョロしながら、アタッシュケースをしっかり抱きかかえていた時代もあったのだ。とにかく給与振込みほど画期的で、経理マンにとってありがたい制度はなかったのである。
昔話が長くなってしまったが、次に給与計算の手順を、簡単にまとめておこう。
①タイムレコーダーなどを使って勤怠管理を行い、出勤日数や残業時間を集計しておく。この場合、毎月給料日当日までの計算は不可能なので、便宜的に給料日前5日前位から一ヵ月間前までを勤怠の集計期間と定めておく。
②集計した勤怠により、欠勤日数に相当する給料相当額を計算し月給より減算したり、残業や休日出勤相当額を加算することになる。これで給与支払い総額が決定する。
③税金・社会保険料・立替金などを計算して、給与総額の控除額とする。これらの内訳を記載した書類を給与明細表という。またこの給与明細を各人別に年間集計した表を、給与台帳といい年末調整のときに使用する。
④月末までに従業員から天引きした社会保険料と会社負担分を、銀行経由で所轄社会保険事務所に納付する。
⑤給与日の翌月10日までに、給与総額、人員数、納付税額を記入した納付書とともに、従業員から天引きした源泉所得税を、銀行経由で所轄税務署に納付する。
⑥毎月従業員から天引きしている源泉所得税は、あくまで源泉徴収税額表に基づく仮納付に過ぎない。従って12月の給料時に、生命保険料控除などを考慮しながら、一年間の各人別所得計算を行い、正規の税額を確定するのである。これが年末調整と呼ばれる制度であり、サラリーマンの場合は他の収入がない限り、これで税金の確定申告が不要となる。つまり会社が従業員に代わって、税務署に確定申告書を提出しているようなものなのだ。もっとも実際に書類を税務署に提出する訳ではなく、会社で保存しておき税務調査があれば、いつでも提出出来るようにしておく訳である。
⑦翌年1月末までに、従業員全員の給与支払報告書を、各人の住所地市町村に提出する。これにより、次年度の住民税額が確定される。
これで一連の給与関連事務が終了するのだが、パソコンの給与ソフトを使用すれば、前述した②③⑥⑦のほとんどが自動的に計算・作成されてしまう。まことにありがたい時代になったものである。
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