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経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

地方税における人員数把握のポイント3/3

2012-12-22 14:50:03 | 達人経理マンへの道

(4)資本金 1 億円以上の製造業を行う法人の特例
 製造業を営む法人で、事業年度等末日現在で資本金が1億円以上の場合は、工場の従業者については、その従業者数の1/2 を加算する (法人事業税の分割基準に使用)

 工場とは?
  物品の製造、加工又は組立て等の生産に関する業務が行われている事務所  
 生産に関する業務とは?
  物品の製造、加工、組立、整備、修理を行う業務をいう
 工場かどうか?
   事業年度末日現在の状況による。途中で廃止した場合は、該当しない
  また、名称のいかんを問わず、上記の業務を行っている事務所かで判断すること 
 工場の従業者? 
 ・事業物品の製造・加工・組立て・整備・修理に関する業務を直接担当している者
 ・製品の検査・包装・原材料の運搬・動力の保守点検等生産を補助する業務を担当している者
 ・工場内の総務・経理・生産管理・資材管理等の業務を行う者
 ※ ただし工場に併置されている本社・支店・出張所・営業所・研究所・試験所等の従業者は除くこと
 計算方法
 ・工場の従業者の数に2 分の1 を加算する。
 ・工場の従業者が奇数の場合は、1 を加えてから2 分の1 をする。
  例 ) 工場の従業者 123 人
  → (123 + 1) × 1/2 = 62   123 + 62 = 185 
  この工場の分割基準   185 人 

(5)その他
均等割り → 期中に新規開設または、閉鎖した場合は、月途中分は切捨て。但し最低1ヶ月。
     例) 5月8日に開設した場合は10/12、8月10日に閉鎖した場合は4/12 
中間申告 → 分割基準、均等割りともに、分母は12となり分子は中間期の所在月数となる。端数処理は、上記と同じ。

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地方税における人員数把握のポイント2/3

2012-12-21 11:09:33 | 達人経理マンへの道

前回よりの続きです

(3)従業者の数とは 

 事業年度または均等割の算定期間(以下「期末日」という)における人員数をいう
 ただし、事業年度等の途中に、新設または廃止をした事務所等の場合は、事務所等の所在した月数を按分する

 新設の場合
  期末日現在の人数 ×事業年度等の新設の日から事業年度等の末日までの月数÷事業年度等の月数

 廃止の場合
 廃止日前月末の人数×事業年度等の開始の日から廃止日までの月数÷ 事業年度等の月数
 →期中に新規開設または、閉鎖した場合は、月途中であっても1ヶ月として計算する

 例) 3月決算の場合は、5月8日に開設した場合は11/12、8月10日に閉鎖した場合は5/12となる (閉鎖後人員が他事業所へ異動すると人員数は重複することになるが仕方ない)

※ただし各月の変動が激しい事業所の場合は、下記計算式による平均人員数を使用する
 各月末日の人数÷事業年度等の月数
  (変動が激しい場合とは、算定期間中の各月の末日現在における従業員数のうち、最大のものが最小のものの2倍を超える場合をいう)
 ※上記の全ての計算結果について1人未満の端数が生じた場合は切り上げる
 ※解散・合併・決算期変更等があった場合は、別段の定めがあるので要注意

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地方税における人員数把握のポイント1/3

2012-12-19 12:53:15 | 達人経理マンへの道

 法人税は国税なので、全額を本店所轄税務署へ納付すれば良いのだが、地方税である法人事業税・法人住民税については、複数の都道府県・市町村に事務所や事業所を有する法人の場合、それぞれの事業所等が所在する行政別に納税しなくてはならない。

 その方法として、まず全社の利益や法人税額を基にした課税標準額を、各地方行政単位に振り分けることになる。この振り分ける方法を「分割基準」と呼んでいるのだが、その多くを各事業所ごとの従業員数を基にした方法に頼っている。そして実はこの従業員数の把握がなかなか曲者であり、間違い易いのであるがこれらを具体的に解説した書籍が実に少ない。それで今回は、その人員把握のポイントを三回に分けてまとめてみることにした。

1.分割基準における従業者数とその所属場所        
(1)従業者とは        
 実際に給与を支払いの有無に関わらず、給与の対価として労務等を提供している人をいう。具体的には、従業員・役員のほか、アルバイト、パートタイマー、派遣社員等の人数も含むことになる。      
    
(2)間違い易い具体的な所属等について
       
事例1: 給与支払事務所と勤務している事務所または事業所が異なる場合
回答1) 勤務している事務所の人員に含める

事例2: 転勤によって勤務すべき事務所または事業所が1月のうち複数ある場合
回答2) その月の末日に勤務すべき事務所の人員に含める
 
事例3: 1月未満で複数の事務所または事業所を巡回しており、主に勤務すべき事務所がない場合
回答3) 給与を支払っている事業所の人員に含める
      
事例4: 期末日現在、連続して1月以上同一事務所に出張している場合
回答4) 期末日現在、連続して1月以上勤務している事務所の人員に含める

事例5: 複数の事務所に兼務している場合
回答5) 給与を支払っている事業所の人員に含める

事例6: 給与支払を受ける法人と勤務している法人が異なる場合
回答6) 勤務している法人の勤務事業所の人員に含める

事例7: 1月未満で複数法人の事務所を巡回して、主に勤務すべき事務所がない場合
回答7) 給与を支払っている法人の給与支払事業所の人員に含める

事例8: 期末日現在、連続して1月以上他の法人の同一事務所に出張している場合
回答8) 出張先法人の出張先事業所の人員に含める

事例9: 複数法人の事務所に兼務している場合
回答9) それぞれの法人の勤務事業所の人員に含める

※ 従業者の数に含めない者 
 * 研修施設において、研修を受ける者
 * 勤務すべき事務所または事業所が分割基準の対象外(例:国外支店勤務など) 
 * 勤務すべき施設が事務所または事業所ではない(例:乗組員など) 
 * 病気欠勤者など1月以上勤務していない者(長欠者)

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資産除去債務という難解な会計処理

2012-12-17 17:19:37 | 達人経理マンへの道

 経理関係者以外には全く耳慣れない『資産除去債務』という会計用語。これは有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、その有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準じるものいう。平たく言えば、現在有している土地や建築物等が将来の除去(解体、売却等)で必要となる費用のことを指している。

 具体的には、建物を解体する際や土地を改変する際などで法令上生じる義務にかかる費用、または契約条件等により、土地の売却の予定がある場合の土壌汚染の調査・浄化費用や原状回復義務に基づき実施する解体にかかる費用等がこの資産除去債務として取り扱われる。
 現在国内法における法令上要求される義務としては、石綿障害予防規則等で規定されているアスベスト建材の除去や、PCB特別措置法で規定されているPCBの適切な処理、さらに土壌汚染対策法で規定されている特定施設廃止時の調査などがあげられるだろう。

1.なぜこんな複雑な処理が要請されるようになったのか 

  米国会計基準では、既にこの「資産除去債務」の会計処理を実施しているが、日本では解体の際に多大な費用のかかる原子力施設など一部の事例は見られるものの、一般的には、資産除去債務についての会計処理は行われていなかった。ところが会計の国際化をにらんで、2008年3月31日に企業会計基準委員会から、「資産除去債務に関する会計基準」と「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」が公表されることになり、2010年4月1日以降に開始する事業年度から適用となったわけである。        
 つまり、上記に掲げた資産除去債務に関する法的義務が将来的に発生する場合には、当該義務に対して発生する費用(アスベストやPCBの撤去処分費用や土壌汚染にかかる調査対策費用等)を資産除去債務として、事前に負債計上する必要があるということなのである。
 計上義務が生じる対象企業は、上場会社(マザーズ、ジャスダックを含む) 及びその国内外子会社等、いわゆる連結決算グループを構成する各関係会社等となる。

2.対象となる有形固定資産とは

 建設仮勘定、リース資産、投資不動産も含む         
 建物等の賃借契約において、内部造作等の有形固定資産の除去などの原状回復が契約で要求されている場合の原状回復費用も資産除去債務に該当するので注意!
 ●使用期間中に実施する環境修復、修繕及び遊休状態は対象外
 除去には売却、廃棄、リサイクル等が含まれ、転用や用途変更は含まれない
 有形固定資産自体の除去が義務付けられていなくても、当該有形固定資産に含まれる一定の有害物質を特定の方法で除去する義務がある場合における、有害物質の除去費用を含む 

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源泉所得税における税務調査対策

2012-12-05 16:44:44 | 達人経理マンへの道

 資本金1億円以下の中小企業では、所轄税務署によって、源泉所得税と法人税調査が同時に行われる。だが国税局管轄の大企業においては、法人税については本店の所在する地域の国税局が全社の調査を行い。源泉所得税調査については、各事業所ごとに所轄する税務署が調査を担当することになっている。
 今回は後者の大企業における、源泉所得税調査のポイントと対策を簡単にまとめてみよう。また調査内容により、対応が経理部と人事部に分かれるので、事前に両部間で対策及び担当割りなどを討議しておく必要がある。

1.まず初日は挨拶が終わったら、会社の概略説明をする 

しかるべく役職者が、会社案内やパンフレットを使って会社の概略や製品等の説明 
経理部にて全社の源泉税関係の納付所轄税務署の説明と当該事業所で納付している源泉税の説明 
経理部にて会計帳簿等のしくみを簡単に説明
人事部にて給与計算方法のしくみを簡単に説明 

 

4.事前検討項目
 
1.調査時の役割分担、会社案内、パンフレット、稟議書、組織図、伝票、証憑類の準備 
2.海外送金のうち、技術関連の支払の有無と契約書の内容確認しておく 
3.租税条約の届出書の実態を把握しておく 
4.現物給与と経済的利益などの内容と処理方法を把握しておく
5.海外出向者に対する負担方法と納税方法の把握をしておく 
6.社宅の実態と役員と従業員の負担規定の確認しておく 
7.従業員に対する無償貸付、自社商品割引き販売等のルールと実態を把握しておく 
8.業務委託契約などが給与に該当しないかどうかを確認しておく 
9.役員報酬の課税、役員個人に対すると思われる支出の有無とその内容を確認しておく 

以上

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日本と米国の移転価格税制比較

2012-11-24 10:10:56 | 達人経理マンへの道

 もはや全世界の主要国で導入された移転価格税制だが、世界に先駆けてこの税制を導入した米国と日本の税制の比較をするのが一番手っ取り早いと考え、以下に比較一覧表として掲示することにした。

 

注1)移転価格の対象取引とは
 棚卸資産の販売・購入、ライセンス等の譲渡又は使用、利息の受取・支払、有形資産のリース、役務の提供、費用の分担契約など

注2)延滞利子について
日本 7.3%と前年の11月30日の公定歩合+4%のいずれか低い方 
米国 連邦短期利率+α=概ね9% ・・・更に日歩複利で計算し、APAと関係なく課される

注3)米国の移転価格ペナルティー
A.20%ペナルティー(追徴税額の20%)
①移転価格純調整額が1課税事業年度につき500万ドル、或いは売上の10%のどちらか少ない額を超えた場合
②移転価格が200%以上又は50%以下変動する調整を受けた場合
B.40%ペナルテイー(追徴税額の40%)  
①移転価格純調整額が1課税事業年度につき2000万ドル、或いは売上の20%のどちらか少ない額を超えた場合
②移転価格が400%以上又は25%以下変動する調整を受けた場合
但し上記ペナルティーは、同時文書(スタディー)の提出があれば、免除される

注4)同時文書とは
 通称移転価格スタディー(ドキュメンテーション)と呼ばれ、2~3年ごとにまとめて提出している日系企業が多いようである。
 この書類の目的は、移転価格の経済分析をして、対象の関連者間の取引価格が適正であることを検証するもので、比較企業の平均的な営業利益率の幅に納まっていれば適格であると判定される。またこれらの文書は、移転価格に精通した専門家によって作成され、必要に応じ提出する必要がある。 
『主要文書の内容』 
事業概要、組織図、規則で定められている全ての文書、算定方法及び選択理由、他の方法を選択しなかった理由の説明、関連者取引の説明、比較企業と比較性の判断及び調整を行ったかの説明、価格設定において用いた経済分析及び予測値の説明、価格算定に影響を与えた後発事象の説明、同時文書の項目一覧。

注5)移転価格の算定方法・・・棚卸資産の販売の場合
①基本三法   
A.独立価格比準法(CUP法) ・・・ 第三者に対して同種・同条件で売買する価格を適正価格とする
B.再販売価格基準法(RP法) ・・・ 買い手が、第三者に再販する場合の価格から通常の利潤(売上利益)を控除した価格を適正価格とする
C.原価基準法(CP法) ・・・ 売り手が原価の額に通常の利潤を加算した価格を適正価格とする
②利益分割法(PSM法) ・・・ 国外関連者との間の利益貢献度に応じて利益を分配する方法
③取引単位営業利益法(TNMM法) ・・・ 1つの関連者間取引から生ずる営業利益を、適切な基準で測定し、関連者が第三者間取引で得るであろう営業利益と比較する方法
④利益比準法(CPM法) ・・・ 同業他社の営業利益率を参照して適正価格を決める方法

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租税条約上の移転価格税制に関する定め

2012-11-23 18:35:23 | 達人経理マンへの道

1.米国での時効について

 原則3年(調査により、所得が25%以上増加した場合は6年)ということになっているのだが、実務上IRSが時効を適用しない形での運用を行う場合があり(繰越欠損金の控除が20年間適用などを楯にとり・・・)、過去に日米相互協議がやり辛い経緯があった。
 そこで2004年7月施行の新日米租税条約において、7年間という更正期間制限が設けられた。これにより延滞税も7年間以上は遡れないことになる。但しIRSが調査を7年間出来なかったことが、その企業の作為又は不作為に帰せられる場合や不正に租税免れた場合には、この期間制限は適用されないことになる。 

2.両国がOECDのガイドラインに従って調査を行い、事前確認申請の内容を審査する

3.日本の親会社は、IRSに資料提供する義務がある

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日米間APAの具体例

2012-11-19 14:30:13 | 達人経理マンへの道

1.APA(事前確認)の申請について

 APA(Advance Pricing Arrangement)とは、移転価格税制で課税される前に、相手国の税務当局と国税庁に対して相互協議で独立企業間価格の調整を行ってもらうための事前申請手続きである。
 その効果として・・・対象期間中に相互協議で決定された価額(利益率)レンジの中で取引がなされれば、移転価格税制に抵触しないこととなり、どちらの国からも課税されないこととなる。またAPA申請期間中は国税局の税務調査による寄付金課税も緩和または凍結されることになる。       
『具体例』
 2003年3月期より米国子会社が赤字化し、米国税務当局からの移転価格課税防御のため 2008年6月、日米同時にAPA申請を行った。その後当局への書類提出・審査、関係者間の打合せ等を経て、ほぼ予定通り日米相互協議が終了した。

2.日米相互協議の主な合意内容

①対象期間 6年+ロールバック1年=7年間が対象となる(主な租税条約上の時効が7年) その決算期の申告期限が申請初年度となる
     
②対象取引 米国子会社へ販売する製品及び商品、予備部品等の有形資産取引

③独立企業間価格の算定方法(TPM Transfer Pricing Method )
 ●米国側 CPM法(comparable profit method利益比準法)
  CPM法は、対象会社全体の営業利益率で独立企業間価格が適正なのかを判定する
 ●日本側 TNMM法(Transactional Net Margin Method取引単位営業利益法)
  TNMM法は、対象となった取引部分を集約したPLの営業利益率を使用する。 どちらも営業利益率を目安とするなど基本構造が似ているため、双方余りこだわりがない

④営業利益率
 米国子会社の対象期間中の累計営業利益率が、2%~6%のレンジ内であること(商社の場合)。 孫会社を含まない、米国子会社単体PLより、営業外取引とみなされるもの(リストラ費用、訴訟費用等の一部等)を除外して計算する。

⑤補償調整
 対象期間中の米国子会社の累計営業利益率が、2%~6%のレンジ内で納まった場合は調整しない(国税庁はなるべく最低レンジ前後での着地を望んでいる) 米国子会社累計営業利益率が2%未満の場合は、2%に達するまでの金額を日本で費用・米国で収入処理する。
 米国子会社累計営業利益率が6%超の場合は、6%を超える金額を、米国で費用・日本で収入処理する。
 原則としてこの処理は、対象期間の終了事業年度に行う。
 最終年度の2013年3月に会計伝票を1枚入れて送金(相殺)処理する方法と、税務申告調整する方法があるが、税務申告調整は日米での手続きが煩雑なため、伝票処理が望ましいと国税庁の担当官が話していた。

⑥重要な前提条件
 対象取引に関して、日本国親会社と米国子会社の事業活動や機能、負担しているリスク、使用資産、財務・税務処理方法が申請時と大きく変わらないこと。
 具体的には、商社である海外子会社で、研究開発や製造を行うなどの大幅な事業変更等があった場合は、再度レンジの見直しや取り消しが行われるということである。

3.APA締結後の実務処理

①米国子会社の累計営業利益率が、最低レンジ2%に到達するための方策を検討する    
 米国子会社独自の収益改善
 対象期間に限定した、日本からの輸出価格の値下げ(対象期間後、元に戻しても国税庁は了解とのこと)

②毎年「年次報告書」を提出し、国税庁から質問や資料の追加提出を求められる。また当然のことながら、最終年度まで重大な事業変更等や仮装隠蔽等を行わないことが求められる。 

③さらに2013年3月以降も継続してAPA申請をする場合は、再度税理士法人から見積もり(今回の6~7割の費用)が提出され、それから3ヶ月以内をめどに再契約するという流れとなる。

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移転価格税制上の「無形の取引」の考え方

2012-11-16 17:01:09 | 達人経理マンへの道

 移転価格税制では、有形の製品・商品の販売価格や購入価格だけが対象になるだけではなく、次のような無形の取引等も対象になるので要注意である。

1.ロイヤルティー
1) 特許権・工業所有権及びこれらに順ずる製造ノウハウ等の使用許諾による使用料        
 原則として関連者間あるいは業務提携者間においてのみ存在する取引のため、公平な独立価格比準法の採用は困難であり、再販売価格基準法にもなじまない。   
 どちらかといえば、原価基準法の適用が望ましいのだが、工業所有権等は、長期間に亘る研究開発の成果であり、そこには成功もあり、失敗もあり、間接費用もあり、さらに主々の成果物に係るコスト配分等もあり、その原価算定には技術的に非常な困難を伴うことになる。 

 ロイヤルティーの計算については、実務的には当該工業所有権を含む製品を子会社等で販売したときに、その売上高等に一定の料率を乗じる方法が多く。その料率は統計的に同種の権利使用の場合の平均値を用いるのが安全である。また料率変更時の更正例が多いので、確実に立証できない限り変更は非常に困難である。     
 国によっては、ロイヤルティー部分が子会社等の利益に貢献していると考える場合がある。従ってロイヤルティーの支払によって通常より売上増・利益増に繋がっている根拠を示す必要もあるだろう。

2)  ロイヤルティーの料率に実質的な上限がある場合        
  国によっては、規制があって一定料率以上のロイヤルティーが認められない場合がある。その場合は、その規制料率を超える部分は製品輸出価格等に上乗せしておく方法をとっている会社もある。 

3) 工業所有権等以外のロイヤルティー
 ブランドロイヤルティー、独占販売権ロイヤルティーなどがある。

2.人的役務の対価        
 親会社が子会社に対して行う「経営指導」、「管理」、「助言」、「情報提供」、「リサーチ」、「代行業務」        
 原価基準法によりにより、人的役務に係る総コストに5%程度のマージンを上乗せしている例が多い。        
  これらについては、契約書(覚書)だけではなく、実際の工数計算表・経費の領収書等、成果物(レポート等)の保管も必要となるので、安易に行わないこと。また前期以前は対価を得ておらず、当期に急に対価を得るようになった場合などは、なぜ急に変ったのかなどの理由を明確にしておくこと。        

3.研究開発費の負担の正当性
 通常子会社等が親会社等から受ける技術やノウハウ等を用いることによる利便性については、ロイヤルティーとしての対価に含まれていると解釈されるため、重複して請求することは非常に難しい。
 もし子会社等が、親会社に対して委託研究開発を依頼した場合には、ロイヤルティーとは別に上記2に準じた役務の対価とされ、親会社が「委託された研究開発の役務提供料」を収受しても問題はない。但し当然その成果物は対価を支払う子会社等に属することになる。

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移転価格ポリシーの策定方法

2012-11-12 11:37:15 | 達人経理マンへの道

 では経理部で行う移転価格ポリシーの策定とは、一体どのようなことをすればよいのかを、以下に簡単にまとめておこう。

1.基本情報の収集

1)移転価格税制の適用対象となる取引相手と取引内容等の把握
 国外にある親会社、子会社、孫会社、兄弟会社、実質支配会社
  「グループ企業全体の資本相関図」(貸付・保証等も加える)を作成する
  「グループ企業全体の取引相関図」を作成する 
  「グループ企業間の商流図」を作成する

2)移転価格税制の対象取引   
 原則として国外関連者との全ての取引   
 第三者経由の取引でも、国外関連者との間で価格の決定等がなされている場合などは対象となる
  親会社→貿易商社→海外子会社   
  三国間取引など

3)書類の整備   
  海外子会社別の業績推移表(過去10年程度)と直近BS主項目の金額など
  海外子会社別の売掛金・買掛金・在庫回転率
  海外子会社との契約書等(体系的に整理・保管)
  海外子会社の組織図
  海外子会社別の出向者人件費負担割合

2.機能とリスクの洗い出し
  各子会社のグループ内での位置付け(機能)と潜在的リスク
  対価の授受のない取引内訳とその理由
  売掛金・買掛金・在庫回転率が極めて悪い場合は、無利息融資とみなされる

3.対価決定のプロセスなど
  輸出価格の決定方法など(いつ誰がどのような基準で)
  ロイヤリティーの内容とその算出基準
  設備売却の内容と売却価額の算出基準
  役務対価の負担元を整理

4.経済分析など
  国別・産業別の平均的な経営指標の収集・分析・当社との乖離の理由など
  不採算機種を廃止しない理由、間接価値の分析
  親会社単体で、仕向け先別PLなどの作成をしておく

5.同時文書
  海外子会社で作成している同時文書(ドキュメンテーション、スタディー)を収集する
  日本版同時文書の検討(子会社との整合性、とりあえず出来る部分に絞ってもよい)

 

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