移転価格税制では、有形の製品・商品の販売価格や購入価格だけが対象になるだけではなく、次のような無形の取引等も対象になるので要注意である。
1.ロイヤルティー
1) 特許権・工業所有権及びこれらに順ずる製造ノウハウ等の使用許諾による使用料
原則として関連者間あるいは業務提携者間においてのみ存在する取引のため、公平な独立価格比準法の採用は困難であり、再販売価格基準法にもなじまない。
どちらかといえば、原価基準法の適用が望ましいのだが、工業所有権等は、長期間に亘る研究開発の成果であり、そこには成功もあり、失敗もあり、間接費用もあり、さらに主々の成果物に係るコスト配分等もあり、その原価算定には技術的に非常な困難を伴うことになる。
ロイヤルティーの計算については、実務的には当該工業所有権を含む製品を子会社等で販売したときに、その売上高等に一定の料率を乗じる方法が多く。その料率は統計的に同種の権利使用の場合の平均値を用いるのが安全である。また料率変更時の更正例が多いので、確実に立証できない限り変更は非常に困難である。
国によっては、ロイヤルティー部分が子会社等の利益に貢献していると考える場合がある。従ってロイヤルティーの支払によって通常より売上増・利益増に繋がっている根拠を示す必要もあるだろう。
2) ロイヤルティーの料率に実質的な上限がある場合
国によっては、規制があって一定料率以上のロイヤルティーが認められない場合がある。その場合は、その規制料率を超える部分は製品輸出価格等に上乗せしておく方法をとっている会社もある。
3) 工業所有権等以外のロイヤルティー
ブランドロイヤルティー、独占販売権ロイヤルティーなどがある。
2.人的役務の対価
親会社が子会社に対して行う「経営指導」、「管理」、「助言」、「情報提供」、「リサーチ」、「代行業務」
原価基準法によりにより、人的役務に係る総コストに5%程度のマージンを上乗せしている例が多い。
これらについては、契約書(覚書)だけではなく、実際の工数計算表・経費の領収書等、成果物(レポート等)の保管も必要となるので、安易に行わないこと。また前期以前は対価を得ておらず、当期に急に対価を得るようになった場合などは、なぜ急に変ったのかなどの理由を明確にしておくこと。
3.研究開発費の負担の正当性
通常子会社等が親会社等から受ける技術やノウハウ等を用いることによる利便性については、ロイヤルティーとしての対価に含まれていると解釈されるため、重複して請求することは非常に難しい。
もし子会社等が、親会社に対して委託研究開発を依頼した場合には、ロイヤルティーとは別に上記2に準じた役務の対価とされ、親会社が「委託された研究開発の役務提供料」を収受しても問題はない。但し当然その成果物は対価を支払う子会社等に属することになる。
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