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経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

移転価格税制への実務対応

2012-11-09 20:20:14 | 達人経理マンへの道

 移転価格税制では、独立企業間価格が基準となると述べたが、頭のよい人ならすぐに、では実際にその独立企業間価格をどうやって算定するのだという疑問を持つだろう。実に良い疑問である。現実的には全ての仕様において完璧に同一の製品が存在することはあり得ないし、製品ごとの個別取引について、それが適正か否かなどの判定をすることは実務上不可能である。従って運用上は「会社全体」又は「企業が管理会計上分類しているPL区分」ごとの営業利益またはその利益率などで判断することが通例になっている。そして自社の利益率が適正だと主張するためには、国際的な企業の経済データーベースで標準的な利益率を算定して比較検討しておく必要があるのだ。

 結局は移転価格調査に入られる前に、日本と相手国の税務当局にAPA(事前申請)を同時に行い、税務リスクを回避する方法が有力となるのだが、国際的経済データーベースを持たない一般企業独自では困難であり、結局KPMG等の大手会計事務所に依頼することになる。だが上場会社なら最低でも約1億円程度の手数料を会計事務所から請求され、そのうえかなりの資料集めや当局とのやりとりは、申請会社自身が行うことになるため膨大な工数を必要とする。場合によっては税金として支払ったほうが得な場合もあるので、APAを申請する場合は事前に社内で十分な検討が必要となる。
 先に述べたとおり、移転価格の対象取引と対象者がからむ国際的な税務なので、「税」という名は付くものの経理部だけで対処できるものではなく、経営者・企画部・海外子会社・営業部・海外事業部・会計事務所などが一体となって戦わなくてはならない。従ってその役割分担を定めておく必要がある。

「役割分担例」
経理部:各国税制概略の把握、日本での移転価格税制研究、移転価格ポリシー・日本版同時文書等の骨子作成、関連部署へ税務情報のアナウンス、移転価格税制の総合事務局
経営者:移転価格税制の理解とグループ会社の役割・利益方針決定、社内外で発生する会計・税務リスク等の掌握
企画部:経営計画、子会社業績管理などの運用面にて、移転価格税制を考慮する
営業部、海外事業部:子会社との輸出(ロイヤリティー含む)・輸入品の価格の決め方をルール化し文書化しておくこと
海外子会社:各国の税務事情の情報収集・研究と、子会社側の提出資料の作成・海外税務当局との折衝など

「注意事項」
子会社からの配当 
 たとえ子会社から十分な配当を得ているとしても、それは通常の取引ではなく、投資に対するリターンに過ぎないため、移転価格税制の適用にはなんら影響を及ぼすものではない。従って、子会社側が経営成績を上げようと過度な利益を毎年計上し、それを「配当で支払えば良いだろう」といった考え方は廃止すべきである。(子会社が強い場合) 

寄付金課税との関連性 
 寄付金課税という制度は、日本にしか存在しない制度である。また国外関連者への寄付金は、交際費同様100%損金不算入となり、取引した子会社では関与しないため二重課税となる。一方、移転価格税制では、日本で損金不算入となれば、海外子会社等で損金算入となり、税率差はあるものの二重課税とはならない。(税金がどちらの国に所属するかということ)   ただ日本の税務調査現場では、国際間の調整がからむ面倒な移転価格税制としては扱わず、確実に税金を回収出来る寄付金課税に持っていく風潮がある。     従って、簡単に寄付金課税を受けず、場合によっては「移転価格税制」として扱ってもらい海外当局との相互協議を目指すという手段もある。そのためには、寄付金と移転価格の違いをしっかりと見定めておかねばならないだろう。 
「法人税法の寄付金の定義」
 「寄附金、きょ出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をした場合の金銭若しくは金銭以外の資産又は経済的な利益の額(その供与の時の価額による。)をいう。ただし、広告宣伝費、交際費及び福利厚生費とされるべきものを除く」と定義されている

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移転価格税制って何なの?

2012-11-06 18:43:08 | 達人経理マンへの道

 なるべく難しい話はしたくなかったのだが、だんだんネタ切れになってきたこともあり、時折こうした話を挿入しなくてはならなくなってしまったのが悲しいな。ただ興味のある人には決して無駄な話ではないので、辛抱強く読み続けてくれれば嬉しいね。またなるべく平易な文章で綴って行きたいと考えているので、退屈な話かもしれないが、何度かに分けて掲載することをお許し願いたい。

 さて海外に子会社を持っている会社の経理マンなら、移転価格税制という言葉を聞いたことがあると思うが、移転価格税制という気難しい名称の税制とは一体何なのだろうか。その定義としては、一般的には次のように堅苦しく記載されているはずである。

 企業が海外の関連企業との取引価格(移転価格)を通常の価格と異なる金額に設定すれば、一方の利益を他方に移転することが可能となる。 移転価格税制とは、このような海外の関連企業との間の取引を通じる所得の海外移転を防止するため、その移転価格を通常の取引価格(「独立企業間価格」)に引き直して課税する制度である。

 ぶっちゃけて言えば、通常100円で売っている商品を、海外子会社には80円で売ったとしよう。そうすると日本の親会社では、通常より20円だけ利益が少なくなり、その結果として日本で課税される税金も少なくなってしまう。逆に言えば、その商品を安く仕入れた海外子会社のほうは、20円分利益が増加することになり、その結果として外国の税収が増加することに繋がってしまう。それでは親会社側の国は損をしてしまうので、独立企業間価格と呼ばれる通常の取引価格との差額に対して課税してしまおうという変な制度なのである。

 つまり本音は国同士の税金(ショバ代)争奪戦であり、始末の悪いことに、国によって運用面でかなり異なるのが、この税制を複雑にしている原因でもある。だから税制と言うよりは、国際外交戦略と言い変えたほうがよいかもしれない。
 まあそんな訳だから、とてもじゃないが経理マン一人だけでは手に負えない制度なのである。では経理マンはいつ何をすればよいのか、そして独立企業間価格とは具体的にどのように算定されるのか等については、おいおい書いてゆきたいと思っているので、次回以降を是非ご期待あれ。

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持ち株会社って何なの

2012-10-23 10:47:38 | 達人経理マンへの道

 最近良く耳にする『持ち株会社』という言葉。ことに会社の偉い人たちが興味を持っているようなので、少し堅苦しいが以下簡単にその概略をまとめてみることにした。

1.持ち株会社とは
 その会社自体は具体的な事業活動を行わないで、他の会社の株式を所有することによって、他の会社の事業活動を自社の管理化に置き、実質的に支配することを目的として設立された会社のことをいう。ホールディングカンパニーとも呼ばれている。

2.持株会社の種類
純粋持株会社→ 自らは事業活動を行わず、他社を支配することだけを目的とする持株会社
事業持株会社→ 自らも事業活動を営み、かつ他社を支配する持株会社
金融持株会社→ 銀行、証券会社などの金融機関を支配することを目的とする持株会社

3.持ち株会社と事業部制やカンパニー制の違い
事業部制は、事業部門を分権化し、それらの業績を明瞭にして、その結果を経営上の判断資料や指針とする方法。
カンパニー制は、1つの会社内における組織ではあるが、社内的に独立法人とみなされ、設備投資、人事上の決定権限まで与えられ独立性を持つ方法で、損益計算書だけでなく、貸借対照表もカンパニー単位で作られる。
※ 分権化された事業を行う部門が、内部組織の問題である事業部制やカンパニー制では、その名称や構成などについて法的な拘束や制約はない。しかし、持株会社方式においては、持株会社と事業子会社はそれぞれ独立した法人であるから、各々が会社法や税法などに拘束されることになる。

4.持ち株会社の設立方法
 7~8通りのいろいろな方法があるが、もっとも一般的な方法は次の三件である
1)自らの事業を子会社に移し(または会社分割し)持株会社となる抜け殻方式
2)持株会社を株式移転により新規に設立する株式移転方式
3)株式交換により既存の会社を持株会社とする株式移転方式

5.純粋持株会社方式のメリット
1)経営と事業の分離によりグループ全体を戦略的に見ることが可能となる
 親会社が純粋持株会社になれば、事業会社である子会社を管理することに専念できる。その場合、親会社はグループ全体としての方向づけと戦略の策定をして、ヒト・モノ・カネといった経営資源の配分を大局的見地から行うことができる。
2)経営判断の迅速化・経営責任の明確化が図れる
 組織が小型化して、経営の意思決定が迅速となる。また親会社の取締役、子会社の取締役ともに自社の経営に専念することができるので、責任の所在が明確になると考えられる。
3)リスクの分散が可能となる
 組織が分散されるため、一事業の不調のために全社が共倒れとなることはない。
4)  子会社の正当な業績評価
 子会社は自社の事業に特化することができるので、親会社にとっても子会社の業績をより正確に評価することができるとともに、成長性のある事業と不採算の事業の区別が明確になり、新たな事業に進出するか、撤退するかの経営判断を早期にすることができる。
5) 事業再編の早期実現
 合併・買収や営業譲渡など事業再編に関する手法はいろいろあるが、特に他の会社の人員を受け入れた場合には、労働条件や賃金体系など人事労務面で苦労する場合が多いのが現実である。持株会社制度の採用により、このような問題から解放され事業再編を早期に実現できる可能性がある。

6.純粋持株会社方式のデメリット
1) 労使交渉の困難性
 親会社はグループ全体を管理することになるため、製造、販売などに従事する労働者は子会社に移ることになる。そうすると労使交渉の直接の当事者は子会社の経営者であるが、最終的な決定権は親会社の経営者になる可能性が高いため、どちらと交渉すればよいかが不透明になる。
2)  別会社になるため横の連携に支障をきたす
3)  間接業務の負担増
 純粋持株会社の採用により、各社ごとに管理・間接部門等を持つことから、間接部門が肥大化し、経費増加につながる危険性がある。
4)  リストラの増大
 メリットのところでも述べたように、持株会社制度の採用は今後、事業再編を加速させる可能性がある。しかしそのことは、子会社を簡単に売却したり、不採算の会社を整理するなどの企業のリストラが増加する可能性があることをも意味する。これが目的の場合は逆にメリットになる。
 
※ あとは上記に記載したことを自社の状況に置き換えて、具体的なメリット・デメリットなどを検討してみるとよいだろう。

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税務調査のワンポイントアドバイス

2012-10-19 14:18:55 | 達人経理マンへの道

  税務調査とは、税務署や国税局が納税者の申告内容を帳簿などで確認し、誤りがあれば是正を求める一連の調査をいい、下記のような種類に分類される。
(A) 任意調査 :通常の調査。質問に対する不答弁、検査の拒否・妨害等については罰則が規定されているので、くれぐれも注意が必要。
(B) 強制調査 :国税局の査察部(俗称マルサ)が行うもので、国税犯則取締法に基づき、裁判所の令状をもとに行われる。これは相当多額で悪質な脱税が探知された場合に行われる。
(C) 特別調査 :多額の申告漏れがありそうな場合、調査の対象範囲が広域にわたる場合、調査案件が複雑な場合等に、国税局の資料調査課等を中心に行われるもので、任意調査ではあるが、実質は強制調査に近い場合がある。

 また調査のやり方を分類すると、調査対象となる納税者の活動拠点に出向いて帳簿書類などを調査するのが「実地調査」、納税者の取引状況を確認するために取引先等を調査する「反面調査」、納税者の資産状況や取引状況を知るために取引銀行へ出向いて調査する「銀行調査」などに分類される。

 さて税務調査に来る時期は、もちろん限定できないが、少なくとも毎年7月は人事異動時期であり、8月は企業の夏休みが重なるため、余り税務調査に集中出来ないため、来ない確立が高い。しかしそれでも7月に来る場合は、特別調査の場合が多く要注意である。通常は9月~12月頃に集中するが、年明けに来る調査は確定申告などと重なるため、余り力が入らないようである。

 調査先の選択は、まず机上で売上や利益が急激に変化している企業や、過去に脱税歴がある企業を優先的に選んでいるという。また好況な業界も、税金逃れをしたくなるという心理が働き易いので対象となるようである。

 次に過去の経験から得られた税務調査上のワンポイントアドバイスを、箇条書きにまとめてみたので参考にされたい。

 表向きのノルマはないが、実質的には調査件数と追徴税額の金額が対象になっているようである。
 決して言いなりにならないこと、だが喧嘩は良くない。あくまでも理論的に反論をするべきである。
● 簡単に始末書を書かない。書くとしても証拠書類になってしまうので、文面は言葉を選んで慎重に書くこと。
● 後で不服申し立てが不可となるし、微妙なものも課税される結果となりかねないので、簡単に修正申告には応じない。但しほとんどの企業が最終的には応じているようである。
● お土産には、確信犯ではなく、うっかりミスの「売上の繰延」が良い(翌期認容となるため)
● 最近の傾向として、昼食は企業では用意しない。但し工場など周囲に飲食店がない場合には、工場の食堂や出前を手配する。調査終了後に飲食費を置いていくが、出前の場合は、工場の食券相当額程度だけもらえばよい。毎日コーヒーブレイクでのコーヒーサービスをすると喜ぶ。また社内に自販機があれば、勝手に飲めるようにしてあげるとよい。
● 最近は女性の進出がめざましいが、国税局も例外ではない。女性は真面目で勉強家で調査も細かいし、しつこいのでバカにしているとしっぺ返しを食うので要注意。また融通が利かないし、大先輩OB税理士の恫喝にもビビらないので意外と強敵なのだ。
● 調査官も人の子である限り、当然いろいろなタイプの人間がいる。最近少なくなっているが、もし激昂して怒鳴ったり恫喝して優位に立とうとする調査官に遭遇したら、冷静に受け答えして「穏やかに話をしませんか」と柔らかく反撃することである。それでも無礼きわまる態度や行動が続く場合は、担当統括官に抗議してみよう。
 だが一番手ごわいのは、冷静沈着でかなり情報通であり、法律にも詳しく、一見企業側の見解を理解したような素振りをしながらも、ジワジワと核心に迫ってくるタイプだろう。とにかく、こうした相手のペースには、絶対ハマらないように注意することが肝要である。
● 国税当局ともめた場合は、絶対に感情的にならず、あくまで紳士的かつ論理的に否認事項を拒否した場合、国税側でも再検討し否認事項に無理があれば、方針を変更してくる場合がある。
● 更正処分に対してどうしても納得が出来ない場合の手順
  1)更正処分日の翌日から2ヶ月以内に税務署長宛に「異議申し立て」を提出
  2)異議申し立てを受けた国税当局では、その処分の正否を再見直しする
  3)その後、さらに不服があれば、その通知を受けた日から1ヶ月以内に国税不服審判所長宛に「審査請求」を行うことが出来る
  4)それでも拉致があかなければ、裁判となる
  ※ 基本的に、国家権力と争っても、時間と金の無駄になることが多いので、余程のことがない限り、この手順は踏まないで交渉したほうが利口である。

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かなり厳しい税務上の貸倒処理

2012-10-18 11:06:55 | 達人経理マンへの道

 税務上、個別評価債権の貸倒引当金計上については、かなり厳しい条件が付されていることは前述した通りである。そして永遠に債権を除却してしまう「貸倒損失」の計上については、さらに厳しい条件が付されており、法人税法では、厳密には次のA~Cの3要件に限定している。

A.「法律上の貸倒れ」           
 債権の全部又は一部が法的手段により切り捨てられた場合              
① 会社更生法の規定による更生計画の認可の決定があった場合に、その決定により切り捨てられることになった部分の金額       
② 会社法の規定による特別清算に係る協定の認可又は整理計画の決定があった場合に、その決定により切り捨てられることになった部分の金額     
③ 民事再生法の規定に基づく再生計画の決定があった場合に、その決定により切り捨てられることになった部分の金額       
④ 私的整理による関係者の協議決定で、次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額         
 イ.債権者集会の協議決定で合理的な基準(全ての債権者について同一基準で切り捨てるような場合をいう)により債務者の負債整理を定めているもの    
 ロ.行政機関又は金融機関その他第三者のあっ旋による当事者間の協議により締結された契約でその内容がイ.に準ずるもの       
⑤ 債務者の債務超過の状態が相当期間(通常3~5年)継続し、その金銭債権の弁済を受けることが出来ないと認められる場合に、その債務者に対し書面(内容証明郵便など)により明らかにされた債務免除額              

B.「事実上の貸倒れ」              
上記の「法律上の貸倒れ」には該当しないが、債務者の資産状況、支払能力等からみて経済的に無価値化し、その全額が回収できないことが明らかとなった場合。但し、この「事実上の貸倒れ」の認定には次のようにかなり厳格な条件が付されており、税務調査官との見解の相違が発生する余地もかなりあると思われるので注意が肝要である    
「条件」              
金銭債権の一部ではなく、全額が回収不能の場合に限る             
損金経理が要件なので税務調整などでの減算は出来ない             
担保や保証が付いている場合は、その処分及び履行がなされない限り認められい          
 また、代表者等の人的保証は、同人に支払能力がないという証明が実際は困難である場合が多い         
債務者の資産状況、支払能力等の判断材料として、債務者の財産目録等の入手が必要であり、当然その書面から残余財産が全くないと判断出来ることが要件となる   

C.形式上の貸倒れ              
売掛債権については、債権そのものが無価値になっていない場合でも、次の事実が発生した場合は、損金経理と備忘価格(通常1円)を残すことを条件として認められる

① 債務者との取り引き停止以後1年以上経過した場合で、かつ次の条件を全て満たす場合
営業取引停止後1年ではなく、最後の弁済(担保や保証が付いている場合は、その処分及び履行も弁済と同様)後1年を経過した時とする 
もちろん担保や保証が付いている場合に、その処分及び履行がされていない時は、認められない
継続した売掛債権でなければならない。また1回限りの取引きで取引きを停止した場合も認められないので注意
従って、固定資産の譲渡による未収金や貸付金、未収利息は対象とならない 
② 法人が同一地域の債務者について有する売掛債権の総額が、その取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、その債務者に対して支払いを督促したにもかかわらず弁済がない場合              

 以上ざっと羅列しただけでも、嫌になるほど厳格な条件を要求している。もちろん税務当局としては、債権を自由勝手に処分して損金算入されては、税金をとれなくなってしまうため、かなり厳格な条件で包囲網を張っている訳である。
  ただこれらをガチンコに守っていては、仕事にならない場合がある。例えばどうしても上記の条件に当てはまらない少額債権などを、何年間も追いかけ続けていても何のメリットもないし、場合によっては一生貸倒処理が出来ない場合もあるかもしれない。そんなこともあり、税法とは若干乖離する部分があっても、実務的には社内処理をスムースに行うために、ある程度柔軟な社内ルールを作成して、貸倒処理をしている上場会社が圧倒的であると聞いたことがある。

 もちろん会計処理を税務を分離することも可能だが、翌年以後税務上の調整・管理がかなり困難なため、基本的に「貸倒損失」については、税務と会計を同一処理とするほうが実務的なのである。そこで私が考えた『不良債権貸倒処理フローチャート』を下記に掲載するので、実務上の参考とされたい。ただしこれは私の長年の経験などから作成したものであり、税務当局に認められたものではない。従って、万一税務調査で咎められたとしても責任は持てないので念のため・・・。

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会計と税務が乖離してしまった貸倒処理

2012-10-17 10:22:02 | 達人経理マンへの道

 平成12年度より「金融商品に係る会計基準」が本格導入されたことに伴い、税務と会計は大幅に乖離することになってしまった。また会計監査人は保守的であり、少しでも回収見込みが薄れている債権があれば、すぐに貸倒引当金若しくは貸倒れ処理をするように指摘する。一方で税務のほうは、貸倒処理に関してはかなり厳格な姿勢をとっており、会計と税務の考え方はかなり乖離してしまった。

 それで税務調整項目がどんどん増えて、税務申告書の別表四は満杯状態である。さらには帳簿から債権が除去されることにより、営業部における不良債権の回収作業がなおざりになり、実損を実現させてしまうという悪循環を産んでいるのである。
 このままでは良いことは何もないと考え、なるべく会計と税務の処理方法を近づけたり、実務上分かり易く処理するためのフローチャートを作成することにした。もちろんこのような社内ルールによる運用する場合には、事前に会計監査人の了解を得ておくことが必要なのは言うまでもないことである。

1)貸倒引当金の区分比較
 会計上はその債権の回収状況により、一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等に3分類されるが、税務上は一般売掛債権等と個別評価債権に分類される。ではこれらの共通点は何か、実務上はどのようなルールによって分類するのかを一覧表にして下記に掲載してみた。

2)税務上の個別評価債権について
 一般売掛債権等が、過去の貸倒実績率に応じた金額しか損金参入出来ないのに比べて、個別評価債権のほうはその50%または100%が損金算入出来るので、その認定がかなり厳しくなり、具体的には「法人税法施行令第96条第1項」により下記のように分類されている。
            
第1号 会社更正法の更生計画認可決定等、特定の事由が生じたことにより、その弁済を猶予され、又は賦払いにより弁済されることとなった金銭債権。特定の事由とは、次の事由をいう 
 イ 会社更生法又は金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律の規定による更生計画認可の決定
 ロ 民事再生法の規定による再生計画認可の決定 
 ハ 破産法の規定による強制和議の認可の決定 
 ニ 会社法の規定による特別清算に係る協定の認可
 ホ 私的整理による関係者の協議決定など
            
第2号 金銭債権(上記に該当するものを除く)の債務者について、債務超過の状態が相当期間(概ね一年以上)継続し、その営む事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由が生じていることにより、その一部の金額につき取り立て等の見込みがないと認められる金銭債権
             
第3号 金銭債権(上記に該当するものを除く)の債務者について、会社更正法の更生手続き開始の申立て等の一定の事実が生じている場合におけるその金銭債権 。 一定の事実とは、次の申立て等をいう             
 イ 会社更生法又は金融機関の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の申立て   
 ロ 民事再生法の規定に基づく再生計画認可の決定及び再生手続き開始の申立て     
 ハ 破産法の規定による破産の申立て         
 ニ 会社法の規定による整理開始又は特別清算の申立て       
 ホ 手形交換所による取引停止処分
            
第4号 外国の政府、中央銀行又は地方公共団体に対する金銭債権のうち、これらの者の長期にわたる債務の履行遅滞によりその経済的価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる事由が生じている金銭債権
             
※また税務申告書中に上記の分類が必要なため、個別に貸倒引当金を計上する個別評価債権に付いて、不良債権として認識した理由の記載を忘れないこと。さらには、不良債権として認識した年月日、最終取引日、担保や保証の有無を記載することが必要である。

(今回は貸倒引当金だけに終始したが、貸倒損失処理については次回以降に掲載するつもりである)  

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現物給与と経済的利益の課税分岐点

2012-10-12 10:56:59 | 達人経理マンへの道

 通常給与といえば、金銭で支給されるのが普通だが、食事の現物支給や自社商品の値引販売などのように、金銭以外の経済的利益をもって支給されることがある。これを無制限に放置しておくと、あえて形を変えた給与方式を行い、個人の所得税逃れを行う企業があとを絶たないだろう。だからといって、通勤費や通常必要な会社負担分にまで課税すると、厳しすぎて国民の非難が巻き起こってしまう。
 税法はそのあたりを考慮しながら、その課税分岐点を実に上手に調整している。下記にそれらを簡単にまとめてみたので参考にされたい。

食事の支給
 会社が支給する食事については、次の二つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されない。
(1) 役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること
(2) (食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額が、月額3,500円(税抜き)以下であること。
※この場合の食事の価額は、社員食堂のような場合には、材料費などの直接費の額で計算するが、飲食店から購入する場合には、購入価格がその食事の価額となる。
 ただし、残業又は宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてもよいことになっている。

制服の支給
 職務の性質上制服を着用しなければならない人に支給する制服や身のまわり品については、課税されない。ただし、制服等の支給に代えて金銭を支給すると、給与所得として課税されることになる。

電車・バスの通勤手当
 最も経済的かつ合理的な経路及び方法により算出した通勤手当や通勤定期券などの金額とし、1か月当たり10万円までは非課税、10万円を超えた部分には課税される。またマイカーや自転車で通勤している場合には別途限度額が定められており、電車・バス・マイカー等を併用している場合は、その全ての合計額で10万円が非課税限度額となる。

永年勤続者表彰のための記念品
 受彰者の地位等に照らして相当と認められるものであり、かつ、10年以上の勤続年数の者を対象とするものは、そのもらった記念品については課税されない。(ただし、2回以上表彰を受ける者については、5年以上の間隔をおいて表彰が行われないとダメ)

運動会、慰安会の費用
 従業員等のレクリエーションのために行う慰安旅行の費用を会社が負担した場合には、次の要件をどちらも満たしていれば、従業員に対して給与所得として課税されない。
(1) 旅行の期間が4泊5日以内(目的地が海外の場合には、目的地における滞在日数)
(2) 旅行に参加する従業員の数が全従業員の50%以上であること
※工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要

社員割引販売
 会社が取り扱っている商品を安く買えるのは、社員の特典であるが、この値引販売を受けた場合には、次の要件をいずれも満たしていれば、給与所得として課税されない。      
(1) その商品の取得価額以上の価額で販売を受けていること       
(2) 通常の販売価額に比し著しく低額(およそ70%未満)でないこと       
(3) 勤続年数等に応じて値引率が異なる場合には、合理的なバランスの値引率であること    
(4) 値引販売を受けた商品の数量が、通常消費する程度のものであること

使用人に社宅や寮などを貸したとき
 使用人に対して社宅や寮などを貸与する場合には、使用人から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」という)以上を受け取っていれば給与として課税されない。
 賃貸料相当額とは、次の(1)~(3)の合計額をいう。
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
 使用人に無償で貸与する場合には、この賃貸料相当額が給与として課税されることになる。
 また使用人から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合には、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が、給与として課税される。
※しかし、使用人から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されない。

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研究開発費に関する税務上の取扱い

2012-10-10 09:13:34 | 達人経理マンへの道

  かつては、会計と税務はある程度整合性を保っていたのだが、1998年3月に企業会計審議会が 「研究開発費基準」を公表してから、会計では試験研究費用を一般管理費として即時費用処理する方向へ向かってしまったため、税務の方は未だこれについて行けない状況が続いている。       
  もともとの立場及び考え方が異なるため、完全な整合性がとれないのは仕方ないのだが、ことに税務では政策的な要素も特別措置として織り込んでくるため、勢い会計と乖離することになってしまうのである。 更に税務では、社会通念を基本的な尺度とし、オリジナリティーがある場合には、客観的な証拠資料の提出を要求するのでやっかいなのである。
 このように会計との乖離が著しく、複雑怪奇な開発研究費について、項目別に税務上の考え方を簡単にまとめてみることにした。       
       
1.工業化研究の製造原価算入       
 趣  旨
 工業化研究についての試験研究費用(人件費・経費)については製造原価を構成していると考えられるので、期間費用として処理せずに、期末の製品、仕掛品等に配賦しなくてはならない 
 工業化研究とは
 基礎研究、応用研究に基づいて工業化又は量産化するための研究のことである。基礎研究、応用研究部分が実務上分類出来れば、その部分は期間費用として損金算入できる  
 計算方法
 工業化研究費用の総額×期末製品、仕掛品等÷(売上原価+期末製品、仕掛品等)
  ※ (下記2、3の未使用部品及び貯蔵品計上した試作品の金額は重複を避けるため除外する)       
  上記の計算結果を税務申告上で毎年利益に加算、減算(前年分)して調整することになる
       
2.未使用の購入部品については、棚卸し計上する       
  基礎研究、応用研究、工業化研究にかかわらず棚卸し計上する(最新購入価格)       
 原材料として実験に供している部品は、棚卸しする必要はない
       
3.工業化研究の過程において製作した試作品の資産計上       
 工業化研究の過程において製作した試作品のみを棚卸し計上する (その試作品が廃却されない限り毎期継続して棚卸し計上する必要がある)     
 その資産価格については、その完成度合いに応じて評価する事になるが、その価格の客観性については判断が難しいため部品の購入価格にて計算する
  上記3~4の計算結果は税務申告上で毎年利益に加算、減算(前年分)して調整している       

4.税額控除の対象となる試験研究費       
 製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する原材料費、人件費及び経費のほか、他の者に試験研究を委託するために支払う費用などの額をいう。ただし、試験研究に充てるために他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額が試験研究費の額となる。また開発本部で使用した交際費は対象から除外する必要がある。       
 (但し上記の対象額は帳簿上の金額に税務調整した金額を加減した金額となる)       
       
5.ソフトウェアの処理       
   税務及び会計ともども、かなり難解なので別途詳しく説明しようと思うが、内製ソフトウェアの人件費相当額は、会計上は通常は費用処理のままであるが、少なくとも税務上は資産価値のある部分について、別途工数計算をして、無形固定資産として申告書上で償却計算処理(加・減算)することになる。       

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資本的支出の具体例について

2012-10-07 09:59:17 | 達人経理マンへの道

 資本的支出とされるか、修繕費と認められるかは、微妙な判断を要する場合が多い。従ってそんな場合の具体例をいくつか書きまとめておこう。

1.エレベーターの特別点検費用
                           
 事故等が発生した場合の特別点検費用は、この点検によって価値の増加、耐用年数の延長等がないことは明らかであり、これに要する費用は修繕費等として損金に算入される。
 また、部材取替費用は、法人税法基本通達によりリフォーム費用の30%を修繕費に計上し、残りの70%相当額を資本的支出とする簡便法で処理を行うことになる。
  ただし、除却あるいは交換部材のその時点の帳簿価額の算定が可能であれば、その価額を除却等として損金算入が可能になるが、一方で、新規取得または取替部材等は取得価額に算入されることになる。

2.資本的支出となるリフォーム費用

 建物のリフォーム費用が、資本的支出として損金の額に算入されないも のとして次のように定められている。(法人税法施行令第132条)
(1)当該支出する金額のうち、その支出により、その資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額
(2)当該支出する金額のうち、その支出によって、当該資産の取得の時において当該資産について通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその支出の時における当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額

3.壁面工事と内装及び外装の塗替工事

 法人が建物のリフォームのために支出する費用には、①汚損した壁の塗替えの維持修理費、②屋根の張替えの取替補修費、③事務所から店舗への改装費、④事務所拡張や階段及び廊下等の新設取り付費用のように修繕費用から増築、増設費までいろいろな支出が行われている。                       
 これらのうち、税務上の修繕費となるのは、その建物の通常の維持管理のため又は災害等によりき損した建物について、その現状を回復するために要したと認められる部分の金額である。                              
 すなわち、①の「維持修理費」は修繕費となり、②の「取替補修費」には修繕費になるものと、資本的支出となるものが含まれる。また、③の「他の利用目的への改装費」や④の「拡張や新設取り付費」のような増築、増設費用は、当然、資本的支出に該当することになる。
 なお、建物に対して行う次のようなものは維持管理補修として取り扱われます。
(1)家屋又は壁の塗替え (ただし、新規取得した建物を事業の用に供する場合や建物の用途を変更する場合の塗装等を除く)
(2)家屋の床のき損部分の取替え
(3)き損した畳の表替え
(4)き損した瓦の取替え
(5)き損したガラスの取替え又は障子、ふすまの張替え

4.屋根の一部の張替工事
                                
  屋根の張替えが、雨漏りを防止するために行われたものであり、その雨漏りが何箇所にも及ぶ場合には、部分補修よりもある程度の部分を張替えた方が、工費、工期等から判断して合理的である。従ってその屋根の一部につき、張替工事費用を行った場合に要した費用は、修繕費として損金経理ができると考えられる。またその屋根の一部という判定は、過去に公表された「固定資産の耐用年数の算定方式」を参考にすると、通常は10%未満と考えられるだろう。(但しトタン屋根は20%未満)

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資本的支出の意義とその範囲について

2012-10-04 17:35:00 | 達人経理マンへの道

 経理のベテランなら、資本的支出という言葉を聞いたことがあると思うし、それが税法特有の用語であることも理解しているはずである。そしてこれが税務調査において、たびたび争点になっていることも承知しているであろう。
 ただこの資本的支出について書かれている書籍は以外と少ないのである。そこで本ブログにおいて、資本的支出の定義や具体例について、何回かに分離してまとめてみようと思う。ただし管理人はすでに現役を引退しているため、その内容に多少の判断違いがあるかもしれないが、そのあたりはご容赦願いたい。

1.資本的支出に該当する支出とは
 これは法人税法基本通達 7-8-1において、次のように定められている。

 法人が有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すことになると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるから、例えば次のような金額は、原則として資本的支出に該当する。
 イ 建物の避難階段の取付け等、物理的に付加した部分に係る費用の額
 ロ 用途変更のために模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
 ハ 機械の部品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額
 (注)建物等の増築、構築物の拡張、延長等は建物の取得に当たる。

 この通達は、資本的支出の基本的な考え方を明らかにしているものである。
 これについては、そのリフォームが、①建物の価値を高めているか否か、②建物の耐久性を増加させるかどうかで、資本的支出又は修繕費に該当するかどうかを示している。

2.資本的支出と修繕費の区分の特例 
 そうは言っても、実務上は、資本的支出、修繕費の区分は、大変困難な問題であり一筋縄ではゆかない。そこで、法人税法基通 7-8-5において、その区分の特例として次の取扱いが認められている。

 一の修理、改良等のために要した費用の額のうち資本的支出であるか修繕費であるか明らかでない金額(「少額又は周期の短い費用の損金算入」(法基通7-8-3)、「形式基準による修繕費の判定」(法基通7-8-4)の適用を受けるもの又は災害に伴って支出するものを除く)がある場合において、法人が継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、この経理を認める。
 この方法は、法人が継続的に一種の簡便法を適用することを認めたものであるが、予め文書により所轄の税務署長に届出る必要はない。

3.災害等の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例

 これも法人税法基本通達 7-8-6に次のように記載されている。

 災害等によりき損した固定資産について支出した費用の額のうち資本的支出であるか、修繕費であるか明らかでないものがある場合において、法人がその30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、この経理を認める。
 この取扱いは、資本的支出と修繕費の区分について特例を認めたものといえますが、災害等の場合には、き損した建物等についての支出額に関して、資本的支出であるか修繕費であるかの区分が困難な場合が多いことから、この特例が設けられ処理の簡便化を図っている訳である。

※ここまで文章を追っても、細か過ぎて分かり難いのではないだろうか。そこで上記の通達等を集約したフローチャートを下記に掲載したい。実務ではこれを参考にされたい。
 
4.耐用年数を経過した建物についてした修繕、改良等
 これについても、法人税法基本通達7-8-9に次のような記述がある。

 耐用年数を経過した建物について修繕、改良等をした場合であっても、その修繕、改良等のために支出した費用の額に係る資本的支出と修繕費の区分については、一般の例によりその判定を行う。

5.他人の建物に対する造作等
 他人から賃借している建物に対して造作等を行った場合においては、原則として、資本的支出に該当するものとして取り扱うこととされている。
 他人の賃借建物について造作を行った場合においては、原則として、資本的支出に該当することになるが、その取扱いについては、耐用年数により償却する。
 ただし、当該建物について賃貸期間の延長ができないもの(賃借期間の更新のできないものに限る)で、かつ、有益費の請求又は買取り請求ができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができる。

6.機能復旧補償による固定資産の取得又は改良
  法人がその有する固定資産につき電波障害、日照妨害、風害、騒音等による機能の低下があったことによりその原因者からその機能を復旧するための補償金の交付を受けた場合において、当該補償金をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得または改良をしたときは、その取得又は改良に充てた補償金の額のうちその機能復旧のために支出したと認められる部分の金額に相当する金額は、修繕費等として損金の額に算入することができる(法人税法基本通達 7-8-7)。
  当該補償金の交付に代えて、この原因者から機能復旧のための固定資産の交付を受け、又は当該原因者が当該固定資産の改良を行った場合についても、同様とする。

(注)当該補償金の交付を受けた日の属する事業年度終了の時までにその機能復旧のための固定資産の取得又は改良をすることができなかった場合においても、その後速やかにその取得又は改良に充てることが確実であると認められる部分の金額に限り、その取得又は改良をする時まで仮受金として経理することができる。

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