極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

パンツェロッティとケインズ

2013年04月02日 | 時事書評

 


【進展するデジタル革命】

関西大学システム理工学部の稲田貢准教授は、基板上に配置したナノ構造間の距離を制御する「ナノ構
造間相互作用精密制御装置(PICSN)」を開発した。DC(直流)モータで基板を伸縮させ、ナノ
構造間の距離を制御する。基板長の変位量は静電容量位置センサでモニタリングできる。位置分解能は
百ナノメートル(ナノは10億分の1)。量子ドットの間隔を変化させて、太陽電池が吸収しやすい光
の波長に変えることが可能になり太陽電池の高効率化などの応用が期待できるというニュースが朝イチ
に飛び込む。制御方法はいたって簡単で、シリコン(PDMS)基板上にナノ結晶を堆積させ、DCモー
タで試料ホルダに取付けた基板を引っ張り、延ばした距離を、ナノ結晶間距離を可逆的に制御すること
で、仮に、8ミリメートルのPDMS基板に1ナノメータ間隔に配列し、1マイクロメートル引き延ばした
とすれば、結晶間隔は0.125ナノメートル広げることができるというもの(このとき、センサ特性やシス
テムの温度特性一定にするため低温にして測定)。



なるほど、こんなもので再現性や確度良く測定できれば、或る意味画期的なことだろうが、引き延ばさ
れた(あるいはその逆の縮小)結晶体で形成された素子が、過酷な環境下(特に高温(~80℃)特性)
で信頼性のある品質が維持できるものか、素人でよくわからないという疑問符がつく。疑問符がつくが
サブナノメータ以下の微細加工が簡単にできる時代ということに改めて素直に驚く。いろいろな課題は
あるものの、本腰を入れ量子ドット太陽電池の実用化できる時代だと了解するに時間はかからないとい
うことだ。なら、いつやるか?いまでしょう!^^;。

 

   Panzerotti

【イタリア版食いしん坊万歳:パンツェロッティ】

材 料:小麦粉 400g、生イースト 25g、モッツァレッラチーズ 300g、アンチョビーのフィレ 8
    ~10枚、オリーブ油、塩

これは揚げピッツァの中でも特においしいとされている一つ。最初にぬるま湯で溶いた生イーストと、
必要なだけの水と塩とで小麦粉を練り、生地を作る。この生地を寝かせて、醗酵させた後、そこから
普通のピッツァよりも小さめの円盤の形を作る。それぞれの円盤の上の片側にアンチョビーを少し細
かく刻んだものとモッツァレッラチーズの薄切りをそれぞれ1枚ずつのせ、生地のもう片方をその上
に折り返して、重ね合わせた縁を指でつまんで閉じる。こうして作ったパンツェロッティを高温のた
っぶりの油で揚げる。このほかに、詰物としてモッツァレッラチーズとトマト、あるいはリコッタチ
ーズと卵、ソーセージかハムの角切りを組み合わせてもいいとか。

 

 


【新たな飛躍に向けて-新自由主義からデジタル・ケイジアンへの道】


1.タブーと経路依存性

2.複雑系と経路依存性
3.複雑系と計量経済学
4.ケインズ経済学の現在化
5.新自由主義からデジタル・ケイジアン

【ケインズ経済学の現在化】


【経済回復のあとに改革を】

国会中継をたまたまみていたら、例のアベノミクスの質疑がなされていたので答弁を聴いていたが、
金融政策軽視?や財務・日銀官僚の経路依存性の壁に阻まれ思い切った手が打てなかったことを反省
ていた(ワンポイント・レッスン:財政を投入しても円高で相殺され景気浮揚しない)。新しいこ
をやろうとすると必ず抵抗にあい、また思わぬ失敗もする。それを乗り越えてこそ本懐というもの
と思いながらスイッチを切った。さて、ケインズは『ニューヨーク・タイムズ』に掲載されたルーズ
べルト大統領に対する1933年の公開書簡の中で、大統領は強力な経済復興計画を最優先事項として展
開すべきであると勧告したとポール・デヴィッドソンは述べ、復興がうまく軌道に乗ってから、大統
領は「前々からの懸案である実業界と社会の改革」のための法律の制定に取り組むべきであるとされ
たのである。これまでの章では、なぜそしてどういう形の経済復興計画が、現在の経済危機に対する
ケインズ・ソリューションとして必要とされるかを説明してきた。本章と次章では、前々からの懸案
であり2007年に始まった重大な経済危機にわれわれを巻き込んだ過ちを再び繰り返さないようにする
とわたくしの希望する実業界と社会の改革について、説明することとしたい。これらの必要とされる
改革は、将来繁栄する経済システムを作り出すのをより容易なものにするだろうと述べる。


 第1章は、最近の経済危機の原因が、ルーズベルト政権時代に制定された金融制度に関する政府
 の規則と規制の撤廃にまでさかのぼりうることを指摘した。第2章は、銀行制度を証券業や投資
 銀行から分離した1933年のグラスースティーガル法の制定にいたる経緯と、1970年代に始まる銀
 行制度の規制緩和がどのようにして始まったかについて説明した。この規制緩和は、1999年のグ
 ラスースティーガル法の事実上の廃止で最高潮に達したが、このことは、銀行や投資銀行家たち
 が、債務担保証券(CDO)や投資運用会社(SIV)の扱う特殊な金融資産などの複雑な住宅ロー
 ン担保証券を「証券化」するための市場を、考案し組織することへの歯止めを解く結果となった。
 そこで投資銀行家たちは、多くの非流動的な住宅ローンを住宅ローン担保証券にひとまとめにす
 ることにより、その結果生み出された仕組み金融派生商品が現金と同じくらい流動性がありなが
 ら高い収益性も見込めることを投資家に保証したのである


 ある投資銀行が多くの非流動的な住宅ローンをひとまとめにし、それを行なった同じ投資銀行に
 よって組織された市場で売買可能な新種の金融商品に仕立て上げることは、金融の証券化といわ
 れる。われわれの今日の危機をもたらしたのは、アメリカにおける最大手の投資銀行によって推
 進された。このような制御の効かなくなった「金融の証券化」事業である。グリーンスパンは、
 何がこれらの複雑な金融商品の取引される組織化された金融市場の大崩壊を引き起こしたのかを
 説明できず困っていることを認めた。しかしながら、第4章で論じたように、資本主義システム
 における貨幣の役割と流動性についてのケインズの考えは、この金融の証券化が最近の経済的混
 乱をなぜ引き起こしたのかを理解するための基礎をわれわれに提供してくれているのである。

                     ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
                   『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』

 
【金融の証券化,流動性および金融市場の失敗】 

グラス・スティーガル法が撤廃された後、たとえ借り手が通常の基準たとえ借り手が通常の基準では
融資を受ける資格がないと考えられる場合でも、とにかく住宅ローンを実行しそれをすぐ他人に売却
してしまうという動きが、サブブライムローン危機をもたらしたのである。2008年の半ばには、各国
政府は、この危
機が米国、英国および他の多くの国における民間銀行制度の活力にとって脅威となる
ことを認識し始めていた。当初、米国におけるサブプライムローン問題として理解されているに過ぎ
なかったものが、やがていくつかの主要投資銀行が多くの住宅ローンを一まとめにした上でそれを「
切り分け」、その後その各部分を混ぜ合わせ金融派生商品に仕立てあげるようになって、難しい問題
が発生した。格付機関は、これらがきわめて安全で流動性のある資産であるとの引受業者の主張にお
墨付を与えた。これらの金融派生商品の購入者は、手持ちの購買力を将来に先送りするための流動的
なタイムマシンであるとともに無限の将来まで高収益をもたらしてもくれる資産を求める一般市民と
機関投資家であった。これらの金融資産を編み出した投資銀行家たちはまた、これらの証券を売買で
きる市場を作り上げた。突然2007年と2008年に、これらの金融資産の多くがその流動性を失ってしま
い,たとえそれら金融資産が売却できたとしても、その市場価値は「投げ売り価格」としばしば呼ば
れる水準にまで急落したが、資産保有者に対しその資産の売却に当たり市場価格の秩序ある値動きを
保証することができなくなる現象は、他の市場にも伝染しやすいことが明らかになった。無秩序な値
動きは、ARS市場(auction-rate securities market: 金利水準が1週間ないし1ヵ月単位で実施される
入札によって決定される債券市場)のような他の市場にも波及するようになったのである。これらA
RS市場は、2008年に入るまでは機能不全に陥るケースがほとんど存在しなかったにもかかわらず、
2008年1月~2月の間だけで1,000件以上もの売買不成立を経験した。これら証券化資産市場における
失敗とそうした失敗の他の市場への伝染を引き起こし、
その結果として市場の機能不全のおびただし
い増加をもたらしたのは、いったい何であったのであろうかと回顧するが、その答えは簡単だとデヴ
ィッドソンは言う。

それは、経済学者、金融市場規制当局や市場参加者はケインズの流動性選好説を忘れてしまい、その
代わりに古典派の効率的市場理論が現実世界の金融市場の動きを理解するための有効なモデルである
という考えを丸ごと鵜呑みにしたためであると。効率的市場理論の示唆するところは、もし十分な情
報を持った買い手と売り手が規制のない自由な金融市場で結び合わされるならば、そこでの市場価格
はつねに秩序ある仕方で市場清算価格に調整されるという楽観主義に流されると。この市場清算価格
は、これら派生商品を裏付けている原住宅ローンが生み出す将来のキャッシュフローから保険数理的
に「割り出された収益性」を表わす市場の「基礎的諸要因」に基づいているが、不幸なことに、将来
が不確実で現存するデータを基礎にして信頼できる予測ができないならば、割り振ることのできる確
実な保険数理的な価値は存在しないのだと解説し、「有価証券の市場価格を決定するのは、何だろう
か」と問う。


 有価証券の市場価格が秩序ある仕方で変化するのを確実にするために、スペシャリストたちは、
 取引価格が直前の水準より無秩序に変化するのを阻止する「マーケットメーカー」として行動す
 ることが期待された。例えば、もし取引日中のある時点で、売り手の数が買い手の数をはるかに
 上回っているならば、スペシャリストたちには、どのような市場価格の変化にも秩序正しさを維
 持する目的で、自己勘定で買い出動することが求められた(またもし買い手が売り手を大きく上
 回っているならば、逆に売り出動することが求められた)のである。取引資産の所有者に、直前
 に公表された価格に近い市場価格で容易に換金できることを確信させるのに必要な条件とは、こ
 の秩序ある値動きである。言い換えれば、これらの市場においては秩序ある値動きは流動性を維
 持するために必要とされるのである

                     ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
                   『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』


しかし、これでは不十分だったという。現代の効率的金融市場理論は、これらの巧妙に作られたマー
ケットメーカーとしてのスペシャリストという制度的取り決めが、コンピューター時代には古臭くな
っているとほのめかしている。古典派の効率的市場理論が暗に意味していることは、コンピューター
とインターネットを用いることによって膨大な数の買い手と売り手が仮想空間で瞬時に効率よく出会
うことができるということである。その結果、この理論の唱道者たちは、人間が値付けするスペシャ
リストとして行動する必要はない。コンピューターが売りと買いの注文を記帳し、両者を秩序あるや
り方で、過去にこれらのことを行なってきた人間よりもはるかに迅速かつ安価に、突き合わせること
ができるからだと。そして、その古典派の効率的市場理論の基礎的な確信は、取引される金融資産の
価値はすでに前もって今日の市場の基礎的諸要因によって決定されているという想定にあり、機能不
全に陥った多くの金融市場で、投資家に将来のキャッシュフローを提供するはずの基礎的金融証券は、
住宅ローン、長期社債や地方債といった長期の債務証券が多く、これらの市場効率の必要条件が、債
務者が契約上の返済義務としての将来のすべての現金支払いを行なうことができなくなる確率的リス
クが保険数理的な確実性をもって知ることができるということであり、自分の利己心に最も合致した
利潤獲得の機会が選択できるということになる。

つまり、古典派の理論家たちは、これら債務証券に代表される取引資産の仮説上の保険数理的価値を
めぐるどのような観察される市場価格の変動も、統計的なホワイトノイズであると想定し、標本の規
模が大きくなればなるほど、その分散が小さくなることは、どのような統計学者でも指摘するところ
である。標本の規模が大きくなればなるほど、実際の市場価格の値は基礎的諸要因により決定される
市場価格に漸近いくというのである。コンピューターは、それが出現する以前の旧来の仕組みの市場
より、はるかに多くの買い手と売り手をグローバルに引き合わせることができるから、コンピュータ
ー時代の取引参加者という標本の規模は飛躍的に増加するであろう。もし古典派の効率的市場理論を
信じるのなら、コンピューターに市場の組織を支援させれば分散は顕著に低下し、はるかによく組織
化され秩序ある市場のでき上がる可能性が高まる。


【なぜ証券化資産市場は機能不全に陥ったのか】

そしてその結果、グリーンスパンのような古典派の効率的市場理論の唱道者たちは、これらの資産の
保有者たちにとっての確率的リスクを分散させることがはるかに効率的であり、個々の取引コストも
大幅に削減できると示唆している。すでに指摘したように、この古典派の効率的市場理論の根底にあ
るのは、将来の成り行きは分かっているという基本的な考え方(エルゴード性の公理)というわけだ
が、「もしこの理論がわれわれの世界に適用されるというのならば、投資家が突然換金できない投資
物件で身動きが取れなくなっていることに気付くという意昧での、あまりにも多い証券化資産市場の
機能不全をいったいどのように説明することができるのであろうか」とデヴィッドソンが問いかける。


 ケインズが主張したのは、経済の将来の成り行きが不確実であり、したがってどのような効率的
 市場理論にとっても基本とされる古典派のエルゴード性の公理が現実世界の金融市場には当ては
 まらないということである。不確実なわれわれの世界においては、金融市場の主たる機能は、諸
 資産の転売をつうじて流動性を提供することである。第4章(「1ペニーの支出は1ペニーの所
  得になる-資本主義経済と貨幣の役割に関するケインズの考え」)で指摘したように、どのような組織化さ
  れた市場で取引される資産の流動性の度合も、つねに秩序ある転売市場が存在するという考えに
 対する人びとの信頼を醸成しようとする信用のおけるマーケットメーカーの存在によって高めら
 れるであろう。マーケットメーカーの存在が資産保有者に示していることは、もし売りに出され
 た有価証券を適正に引き下げられた価格で購入したいという買い手が現れないならば、マーケッ
 トメーカー
が秩序を維持するために、たとえそうすることが自己勘定で購入しなければならない
 ことを意味するとしても、最善を尽くすであろうということである。言い換えれば、マーケット
 メーカーが存在する市場においては、資産の保有者は、自分たちがいつでも速やかな出口戦略を
 取ることができ保有資産を容易に換金することができると、確信していて差し支えないのである。

                     -中略-

 将来が不確実でたんに確率的にリスキーというだけではない世界において、秩序ある流動的な転
 売市場
が存在するためには、売り注文一色となったときでも、潮流に逆らって買い行動に出るこ
 とを大衆に請け合うようなマーケットメーカーが存在しなければならないのである。したがって、

 マーケットメーカーは手元資金を潤沢にもっているか、あるいは必要とあらばかなりの金額の資
 金を入
手できなければならない。にもかかわらず、どのような民間のマーケットメーカーにも、
 滝のような売り注文に立ち向かって自分の現金準備を使い果たしてしまうような事態が十分起こ
 りうるであろう。そしてマーケットメーカーが金融市場の秩序を維持するのに必要な資金を得る

 ために国の中央銀行を直接的ないし間接的に容易に利用できる方策が整っている場合にのみ、最
 も厳しい市場の状態の下でさえ流動性は保証されうるであろう。このような中央銀行に対する優
 先的なアクセスをもっているマーケットメーカーだけが,起こりうるどのような悲惨な金融市場

 の崩壊をも食い止めるのに十分な資金をつねに調達することができると、確信していて差し支え
 ないのである。

                     ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
                   『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』


このことを踏まえ、デヴィッドソンは、2001年9月11日の世界貿易センターと国防総省へのテロリストに
よる攻撃後の数日の間に起きたときの連邦準備制度の果たした役割を説明する。 

                                        この項つづく



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