極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ケインズにとまどうペリカン

2013年04月08日 | 政策論

 

 

 

 

 

        夜のどこかに隠された
        あなたの瞳がささやく
        どうか今夜のゆく先を
        教えておくれとささやく
        私も今さみしい時だから
        教えるのはずぐ出来る


        夜を二人でゆくのなら
        あなたが邪魔者を消して
        あとを私がついてゆく
        あなたの足あとを消して
        風の音に届かぬ夢をのせ
        夜の中へまぎれ込む

        あなたライオン たて髪ゆらし
        ほえるライオン おなかをすかせ
        あなたライオン 闇におびえて
        私はとまどうペリカン


 

                           詩/曲 井上陽水 “とまどうペリカン” 

                          

ペリカンが胸に穴を開けてその血を与えて子を育てるという伝説があり、あらゆる動物のなかで最も
子孫への強い愛をもっているとされる。この伝説を基礎として、ペリカンは、全ての人間への愛によ
って十字架に身を捧げたキリストの象徴であるとされるこのようなペリカンをキリストのシンボルと
なす記述は、古くは中世の著作にも見つけることができるとか、ペットとして飼育されることがあ
り、人によく馴れ、ときには、主人のもとに魚を持ってこさせたりするほどに しつけることができ
古くは、マクシミリアン皇帝が飼育したペリカンは、80年以上生きたとされているとか、鵜の字は、
日本では鵜飼いなどに用いる鵜を指すが、もともとはペリカンの意であるとか、アラビア語では、水
車についた桶または水酌みを意味する al-qadus がペリカンの意味として用いられていたとか。そんな
ことを井上陽水がつよく意識していたとは思われないが、不思議と揚水ワールドにどっぷり漬かるこ
とができ、疲れた、とても疲れたとき、この一曲を聴き癒している。

 



 



【新たな飛躍に向けて-新自由主義からデジタル・ケイジアンへの道】

1.タブーと経路依存性
2.複雑系と経路依存性
3.複雑系と計量経済学
4.ケインズ経済学の現在化
5.新自由主義からデジタル・ケイジアン

 


【ケインズ経済学の現在化】

  

 
【国際通貨の改革 

【国際決済制度の改革

ポール・デヴィッドソンは、下記の経験から、21世紀の相互依存的なグローバル経済においては、交
易国間でのかなりの程度の経済協力が欠かせないものとなっていると主張し、国際決済制度を改革す
るためのもともとのケインズ案は、単一の超国民的中央銀行の創設を求めていたが、彼はこれとは異
なり、国際金融の新しい制度設計を展開する-ブレトン・ウッズでケインズによって主張されたのと
同じ経済原則の下で機能を果たすべく-超国民的な世界中央銀行の設立を求めることなく、どの国に
も国内の銀行
組織や金融財政政策の実施についての監督権限を超国民的当局者に引き渡すよう要求す
ることの
ないような、より控え目で受け入れられやすい国際的合意を得ることを目指し各国は依然

として、その国民にとって最善の経済的命運を、かりにもその命運が交易相手国の雇用や所得獲得の
機会にマイナスの影響を与えることのないかぎり、自ら決定することができる制度を提示する。


 ケインズ案の根底にある原理を今日の時代に合うよう新しくすることによって、効率的市場論者
 に迎合することなしに、グローバル経済の繁栄を増進し、なおかつ今日の政治的現実にも合った。
 21世紀型の国際金融の枠組みを展開することは可能である。ケインズが記しているように、「[
 社会一般の通念がそうしているように]もしわれわれが、自由放任の方式を信頼してそれに任せ
 さえすれば、均衡を保つ何らかの円滑に機能する自動的な(自由市場の)調整メカニズムが存在
 すると想定することは、歴史的経験からの教訓を顧みず健全な理論の支持を背後にもたない独善
 的な妄想である」。1994年のメキシコのペソ危機以来,実践的な政策立案者の中には、自由市場
 が国際決済分野におけるたび重なる危機を防ぐのに十分ではないことを悟った者もいる、その代
 わりかれらは,そのような危機が起こる時はいつでも、国際金融市場での流動性の急激な枯渇を

 押しとどめ国際的投資家を救済するためのある種の危機管理者の創設を提唱している。メキシコ
 のペソ危機後の1994年に、財務長官のロバート・ルービンが、クリントン大統領に、メキシコに
 対しアメリカの資金を貸し付けることによって危機管理者としての役割を果たし、その結果とし

 ると、タイ、マレーシアおよびその他の東アジア諸国は、それぞれの経済を台無しにした国際通
 貨危機を経験した。1998年には、ロシアの債務不履行がヘッジファンドのロング・ターム・キャ
 ピタル・マネジメント(LTCM)を破綻に導くもうひとつの危機を引き起こした。ニューヨーク連
 銀による素早い措置がなかったならば、その破綻はアメリカの株式市場における暴落を引き起こ
 す可能性があったと思われる(LTCMの首脳陣の中に、効率的市場環境における「適正な」リスク・
 プライシング公式を発見したことでノーベル賞を受けた。マイロン・ショールズがいたことに留
 意されたい。ショールズの公式でさえ、LTCMを投資の大失敗から救うことはできなかったのであ
 る)。

 IMF理事のスタンリー・フィッシャー(Stanley Fischer)もまた、IMFが起こりつつある危機を阻止
 するのに十分な資金を持っていないことを認識していた。フィッシャーは、世界の主要国、いわ
 ゆる先進7力国(G7)が暫定的な仕組みを作り、それによって、国際決済において赤字をこうむ
 っている国が正常な状態に復帰することができるまでそのような赤字国に対する資金提供を劫け
 るための追加融資手段を用意するよう、提案した。赤字国に資金を供給するための先進7カ国グ
 ループによる暫定的な協調を求めるフィッシャーの声は、密集した劇場の中で誰かが火事だと叫
 んだあとで、炎を消すためのボランティアの消防署員を募る行為に等しい。たとえ火事が最終的
 に消されたとしても、多くの巻き添えを食った犠牲者が出ることであろう。さらに、新しい通貨
 危機という火事が起こる度毎に、ボランティアの消防署員である先進7カ国グループは、炎を消
 すために市場にいっそうの流動性を注ぎ込む必要があるであろう。より望ましい目的は、恒久的
 な防火体制を作り出すことであって、新しい危機が起こる毎にますます大きなボランティアグル
 ープの結成を当てにすることではない。言い換えれば,危機管理というよりはむしろ、危機防止
 こそが政策目標でなければならないのである。 

 クリントン大統領が新しい国際金融の仕組みを声高に求めたのは、現在の国際決済システムに恒
 久的な変革と改良の必要があることを暗黙裡に認めていたからである。残念なことに,クリント
 ン大統領の要請は、国やその住民の中には厳しい経済的苦痛を経験したところもなくはなかった
 ものの、国際社会がその苦難を何とか切り抜けることに成功したので、取り上げられるまでには
 至らなかった。

                    ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
                  『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』


会員に限定された複式簿記記帳を行なう清算機関は、いろいろな交易国間での支払い「勘定」の記録
に加え、永続的な貿易不均衡および収支不均衡の問題の解決だけでなく、一国の経済を混乱させたり
グローバル経済を脅かしたりする可能性のある国際金融市場取引を防ぐためにも、相互の合意によっ
て定められたいくつかの規則が必要だとし、デヴィッドソン、この案のもとで設立されるべき新しい
国際機関を、国際通貨清算同盟(lnternational Monetary Clearing union, IMCUと呼称する-輸入のため
であれ、国境を越える資金調達のためであれ、すべての国際的決済はこの清算同盟を経由させ、各国
の中央銀行は、IMCUに預金勘定を設定するものとする。A国居住者がB国居住者に行なうどのような
支払いも、IMCUにおける各国中央銀行の勘定を通して清算させる。IMCUを通じて清算されるとき、
A国の住民からB国の住民への支払いは、IMCUにおけるB国の中央銀行勘定の貸方記入として現れ、
IMCUにおけるA国の中央銀行勘定の借方記入として現れるこの過程は、一般の人びとには複雑なよ
うに見えるかもしれないが、米国内のある地域(たとえば,カリフォルニア州)の住民が、他の地域
(たとえば、ニューヨーク州)の住民に支払いを行なった場合の小切手を清算する方法のたんなる国
際版にすぎないもので、小切手は、米国連邦準備制度によって設立された手形交換所をつうじて清算
されるものだとし、このIMCUは、ケインズ案を21世紀のグローバル経済にも当てはまるように改良
したもので、これを機能させるには、あらゆる種類の国際金融問題を取り扱うための少なくとも8つ
の技術的提案を必要とするが、ここでの議論の目的を考え、これらの技術的な詳細に立ち入らず、そ
の代わり、永続的な貿易収支の不均衡と国境をまたがる破壊的な資金移動の起こらないようにしなが
ら、他方でグローバルな完全雇用と経済成長を促進するよう企図されたIMCUによるケインズ・ソリュ
ーションに含まれる原則を詳しく解説する。このIMCUの3つの目的は、以下の通りである。

1.ある国がその国際的に稼いだ所得からあまりにも多くを貯蓄することによって過大な遊休外貨準
  備を保有している時はいつでも、流動性問題が原因で産業の生産物に対するグローバルな有効市
  場需要の不足が発生することのないようにすること。言い換えれば、このIMCUは、グローバルな
  完全雇用を確保するのに役立つような利潤インセンティブを輸出産業において生じさせるための
  十分なグローバルな支出を促すはずである。
2.国際貿易の不均衡を是正する主な責任を、永続的に貿易黒字を出している国に負わせるための自
  動的メカニズムを用意すること。
3.各国に、以下のような資金の自国からの移動を監視でき、もし望むならば、管理できる能力を与
  えること。

  1.自らに課せられる税金逃れのために、国境を越えて移動する資金および貨幣
  2.国外逃亡を図る、違法な事業によって稼いだ所得
  3.テロリストに活動資金を提供するために国境を越える資金

この議論にとって関連の深い最も重要な原則は、項目(1)と(2)の原則であり。IMCUシステムは、
輸入を超える輸出によって永続的に貿易黒字を出しているどのような国に対しても、IMCUにおけるそ
の国の預金勘定に預け入れられた流動的な外貨準備資産のうちで、(前もっての)国際社会の合意に
よって「過剰な」預金残高(貯蓄)であるとみなされる部分を支出するよう促す自動的メカニズムを
持だなければならない。これらの蓄積された預金(国際的取引で稼いだ所得からの貯蓄)は、債権国
が外国の産業の生産物を購入するのに使用することができたにもかかわらず、そうせずにIMCUへの
預金の形での外貨準備を増やすことに用いた資金を表わしている。このことには、ある国がIMCUへ
のその預金勘定に過剰な残高を保有しているとき、これらの過剰な預金残高はグローバル経済のどこ
かで失業問題や企業にとっての利潤獲得の機会の不足状態を生み出しつつあるという認識が必要であ
る。もし債権国がその過剰預金残高を支出するならば、この支出は世界中で利潤獲得の機会と労働者
の雇用を増加させ、それによってグローバルな完全雇用を促進するであろう。ケインズ・ソリューシ
ョンは、債権国にこれらの過剰預金残高を次の3つの方法で、すなわち

    1. 他のどのようなIMCU加盟国の生産物に対して、
    2. 他のIMCU加盟国内における新規の海外直接投資プロジェクトに対して、あるいは
    3. 赤字のIMCU加盟国に、マーシャル・プランと同じような海外援助を提供する形で

支出するよう促すことにしている。債権国は、これら3つの方法のどのような組み合わせをも自由に
選んで、IMCUにおけるその過剰な預金残高を支出してもよいとされる。過剰な預金残高を他のIMCU
加盟国の生産物に支出することは、黒字国に、他の国々における利潤と雇用を作り出すよう促すこと
になる。このことは、輸入超過の貿易収支を経験しており輸出品を超える輸入品の購入のために外国
人から借入をしている国民や企業にとって,より多くの所得を意味する。要するに、このような支出
は、赤字国に対して、自らの債権者に追加的に輸出品を販売することによって追加的な所得を稼ぎ、
その結果として徐々に国際的債務の解消を図る機会を与える。

海外の直接投資プロジェクトヘの支出においては、IMCUに過剰預金残高を持つ国には、赤字国内に工
場や機械設備を建設し、それによって赤字国内の建設産業における利潤や働き口や所得を増加させる
必要がある。もしこの海外直接投資を受け入れる国が後進国であるならば、この海外直接投資支出は、
その国の諸施設を21世紀基準に合ったものに築き直すのに役立つことであろう。海外援助支出は、赤
字国に対しその債務負担を軽減するため、あるいはさらに借金を重ねることなしに外国の生産者から
追加的にその生産物を購入するため用いることのできる「贈り物」を提供することである。これら3
種類の支出代替案は、黒字国に、貿易収支および国際収支の不均衡を是正する主な責務を引き受ける
よう促すものである。にもかかわらず、黒字国には、どうすれば自国民のためになると信じるやり方
で調整の責任を引き受けることになるのかを決定するにあたり、かなりの選択の自由が与えられてい
る。しかしながら、黒字国が赤字国にいっそう貸し込みを図り、赤字国にその支払い能力とは無関係
に契約上の追加的な債務返済義務を課すことによって、責任を債務国に転嫁するようなことは許され
ないと説明し次のように強調する。


 重要なことは、黒字国による継続的な過剰貯蓄が国際流動性準備の形をとって他の国々に不景気
 をもたらすような経済的影響力をまき散らしたり、あるいは21世紀のグローバル経済を貧しくす
 るほどに重い国際的債務を累増させたりするのは許されない。ということを明確にすることであ
 る。黒字国が「過剰」とみなされた預金残高を指定された期間内に支出ないし供与しない場合に
 は、IMCUの運営者は、預金残高の内の過剰とみなされた部分を没収する(とともに加盟債務諸
 国間に再分配する)ことになるであろう。この最後の手段は,ある国の保有している過剰流動性
 に対して100%の税金をかけるのに等しい。継続的に過剰な流動性を保有していることは、貿易
 赤字を出しているひとつあるいはそれ以上の国で永続的に過大な失業が存在していることを意味
 する。もし黒字国がその過剰に保有する黒字分を支出しないならば、それらを没収し債務国に与
 えることは、後者のメリットになるであろう。もちろん、過剰な預金残高を保有している国は、
 もしそれを支出しないならば、税率百%の税金が掛けられることを十分承知しているので、この
 没収ともいえる課税がなされなければならない事態はまず起こりそうにない。


 固定為替相場制のもとであろうと変動為替相場制のもとであろうと、各国はどれだけを輸入する
 かを自ら決定する自由を持っているので、国によっては、たんに交易相手国が身分相応の暮らし
 をしないために、すなわち、それらの国が海外への輸出収入の一部を海外の企業の生産物に支出
 しないで継続的に貯蓄する(保蔵する)ために一永続的な貿易赤字を経験するところも出てくる
 ことであろう。これらの過剰貯蓄国は、そうすることによって、世界の産業が生産することので
 きる製品に対するグローバルな市場需要の不足を引き起こしているのである。

 債権国に過剰な預金残高を払い出すよう要求するこのケインズの原則の下では、他の国々が非常
 に大幅な過剰貯蓄をしているからといって、赤字諸国が自らの輸入を減らしそれによって国際収
 支の不均衡を是正すべく緊縮政策をとり国民の所得を削減する必要性はもはやないであろう。む
 しろこのIMCUシステムは、赤字国がその生産物を海外へ有利に販売でき、それによりさもなけれ
 ばますます悪化していく債務者の立場からの脱却を図る機会を増やすことによって、国際収支上
 の赤字を是正しようとするものである。

 最近、グローバルな金融危機がより深刻になるにつれて、各国は、おそらくIMFと世界銀行の機
 能を拡大するなど現行システムをへたにいじくりまわそうとすることが、かえって目下進展中の
 国際貿易および金融決済問題を解決することにはならないことを思い知らされることになるであ
 ろう。ここ数年の間に、問題を終息させるための応急手当てが無駄な試みであったことがわかり、
 国際通貨制度は困難な事態に立ち至りつつある。世界は、米国が1944年にブレトン・ウッズでケ
 インズ案を拒否したとき、ひとつの絶好の機会を逃してしまった。再び巡ってきたこの機会を、
 われわれはぐずぐずして逃すようなことのないようにしたいものである。2009年のオバマ大統領
 の経済再生計画がアメリカ経済を復活させ始めるならば、米経済は再び世界の成長の原動力とし
 ての役割を果たすことになるのかもしれない。しかしながら、その結果としてもたらされる輸出
 を上回る輸入の超過は、米国の国際収支の不均衡問題をより重大なものにし、多くの人が最も流
 動性が高く安全な避難先である外貨準備資産としてのドルの地位の劣化を恐れるような雰囲気を
 醸し出すかもしれない。そのような恐れは、グローバルな金融市場を混乱させ、グローバル経済
 をいっそう景気後退に陥れる可能性がある。

                    ポール・デヴィッドソン著 小山庄三・渡辺良夫訳
                  『ケインズ・ソリューション-グローバル経済繁栄の途』 


以上のように主張し、ポール・デヴィッドソンは、かりにそのようなことが起こるとしたら、国際貿
易および国際決済システムの改革は、これまでにもまして必要とされるであろう。主要国のリーダー
たちが、グローバル経済の回復を促進し繁栄の時代を取り戻すために、IMCUのようなケインズ案を基
礎にした改革案を採択する必要性のあることを明確に理解してくれることを願うと述べる。

 

毎日、彼女が用意してくれている朝食。何気ない日常の中から「感性の赴くまま」に「美しさ」を切
り取ることも面白のではないかと前々から考えていたが、それを行動にした。気取らずに、完璧なも
のとして編集する技(わざ)。しばらくそんなことをやってみようと。

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