彦根藩の当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと伝え
られる招き猫と井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊軍団
編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと兜(かぶと)を合体
させて生まれたキャラクタ-。
【季語と短歌:7月25日 】
草も野も大暑に負けず伸び盛る
多嘉山 宇(気合鬼)
大入り満員夏場
角川新書
知らないと恥をかく世界の大問題〈16〉トランプの“首領モンロー主義時代
池上 彰【著】
出版社内容情報
アメリカの「第2期トランプ政権」が、古典的帝国主義の再来を決定づけた。
予測不能なトランプの行動に振り回される世界。アメリカ・ロシア・中国―
強権国の縄張り争いはますます熾烈になる。ジャングルのルールがまかり通
る「弱肉強食の時代」で混沌とする世界。日本はどう対応していけばいいの
か?世界、そして日本が抱える大問題を、歴史的な背景を交えながらわかり
やすく解説していく池上彰の人気新書「知ら恥」シリーズ最新第16弾。大転
換の時代に必読のニュース解説本の登場。内容説明古典的帝国主義が世界を
覆う。アメリカ・ロシア・中国―強権国家の熾烈な縄張り争い。
著者略歴:1950年、長野県生まれ。ジャーナリスト、名城大学教授、東京科
学大特命教授、東京大学客員教授、愛知学院大学特命教授、立教大学客員教
授。73年、慶應義塾大学卒業後、NHK入局。94年から11年間、「週刊こども
ニュース」のお父さん役として活躍。2005年に独立。『そうだったのか!現
代史』『知らないと恥をかく世界の大問題』『世界を動かす巨人たち』等の人
気シリーズはじめ、著書多数。
内容説明:
古典的帝国主義が世界を覆う。アメリカ・ロシア・中国―強権国家の熾烈な
縄張り争い。
目次
プロローグ 弱肉強食のジャングルに戻る世界
第1章 福音派とテクノ・リバタリアンの“ハイブリッド国家”へ
第2章 EUの試練
第3章 変わる中東のパワーバランス
第4章 転機を迎えた中国
第5章 核軍縮と逆行する世界
第6章 内憂外患の日本
エピローグ 「真理がわれらを自由にする」
■ ジャングルのルールが支配する世界へ
さて、私はこのところ毎年、この本のプロローグでイアン·ブレマー氏率い
る「ユーなりの視点を加えて世界の大問題を解説してきました。同社は1998
年にアメリカで設立されたコンサルティング会社で、世界の地政学リスクを
専門に扱っています。毎年1月にその年に予想されるリスクを発表していて、
これが当たるのです。彼らが2024年の10大リスクの1番目にあげていたのは、
「アメリカの敵はアメリカ」。どういうことかというと、「アメリカは国内で
民主党と共和党の対立が激しく分断が進んでいる。アメリカの選挙戦は現在
のところ、民主主義国家のものからはほど遠い。ジョー·バイデン大統領は
2期目終了時には86歳になる。アメリカ人の大多数は、トラプ、バイデンど
ちらも国のリーダーにはしたくないと考えている」。
どうですか? 結果、その片方のトランプ氏が大統領になり、2025年版の10大
リスクを見ると、ほとんどがトランプがらみのものとなっています。
ユーラシア·グループが発表した2025年の10項目を並べてみると
「1.深まるGゼロ世界の混迷」
「2.トランプの支配」、
「3..米中決裂」、
「4 トランプノミクス」、
「5. ならず者国家のままのロシア」、
「6.追い詰められたイラン」、
「7.世界経済への負の押し付け」、
「8.制御不能なAI」、
「9 統治なき領域の拡大」、
「10 米国とメキシコの対立」、
思い返してみると、前回の大統領就任式ではバイデン氏の大統領就任を受け
カマラ·ハリス氏とヒラリー·クリントン氏が紫の服を着ていました。共和党
のシンボルカラーは赤、民主党のシンボルカラーは青。赤と青を合わせると
紫になる。赤でもない、青でもない、1つのアメリカだということを言いた
かったのでしょう。皮肉なことにその後も分断は深まるばかりで、いまとな
っては決して「紫」にはなりそうもないアメリカの姿があります。ユーラシ
ア·グループは、「私たちは再びジャングルのルールが支配する世界へと向か
っている」と分析します。「強者は好き勝手に行動し、弱者は耐えるしかな
い」ということです。たとえばトランプ氏は、2025年2月、「アメリカはガ
ザを所有する」と発言しました。ガザ住民約200万人をヨルダンやエジプト
に永続的に移住させ、その後、ガザを所有してリゾート開発を主導するとい
うのです。まさに、不動産業者の発想です。パレスチナの人たちは、このト
ランプ大統領のガザ住民移住計画についてどう思っているのか。もちろんア
ラブ諸国からは強い反発が起きています。イスラエルとイスラム武装組織ハ
マス(正式名称はイスラム抵抗運動)の戦闘でガザ地区は瓦礫の山と化してし
まいました。アメリカはバイデン·民主党もトランプ·共和党もイスラエル支
持でした。これにはアメリカ人の中にも反発する人がいました。常に大国に
翻弄されてきた中東。トランプ政権誕生で中東情勢はどうなるのか。ユーラ
siア·グループは2025年版の世界10大リスクで、「追い詰められたイラン」を
億番目に挙げています。イランはアメリカを敵視しています。イランが支援
を続けてきたシリアのバッシャール·アル=アサド政権崩壊によって、13年間
続いてきたシリア内戦がどう収まるのかも気になるところです。世界が注視
している中東については第3章で詳しく解説します。
Donald John Trump via Wikipedia
■「ドンの支配」のアメリカ
世界10大リスクの2番目は、日本語版では「トランプの支配」となっていま
すが、オリジナル版(英語版)では「ドンの支配(Ruie of Don)」という言葉を
使っています。ドナルドのドンと首領(独裁者)のドンを掛けている。言い得
て妙ですね。
「ドンの支配」とはどんなものか。それは、1期目の経験を生かして、トラ
ンプが周囲を忠実な側近たちで固めたことです。トランプと周辺は、1期目
にいわゆる「ディープ·ステート(闇の政府)」によって自身の政策の実施が妨
害されたと思い込んでいます。「ディープ·ステート」を解体するために、司
法省やFBI(連邦捜査局)などの権力を持つ役所に側近を送り込み、官僚組織を
思うがままに動かそうとしているというのです。政権が発足するやいなや、
まさにそのように展開しています。「トランプは議会共和党を掌握し、最高
裁判所では保守派判事が6対3で多数を占めており、メディア環境ではX(ツイ
ッター)やポピュリストのポッドキャスト(インタシャルメディア)の影響力が
高まっており、トランプ2期目の政策推進を後押しするだろう」ーネットを
通して音声コンテンツ配信するソーでは、これからどうなるのか。「権力の
ある省庁を掌握することで自身と仲間たちを説明責任から守り、政治的敵対
者や批判者を迫害し、威嚇しようとするだろう。粛清や迫害が効果的に実施
されるかどうかは大した問題ではない。公然と脅したり調査によって平等を
揺るがすことになる」というのです。驚くべき慧眼と言わざるをえません。
いままさに、この予言が私たちの前での眼前で実現しつつあるの
です。
■ 列強がぶつかり合う帝国主義的な対立
先ほど述べた「ドンの支配」を「ドンロー主義」と称していたアメリカのメ
ディアがありました。ドン(首領·トランプ)による支配で、外交方針は「モン
ロー主義」を取るということに引っ掛けたのでしょう。言ってみれば「首領
モンロー主義」です。モンロー主義とは、1823年のジェイムズ·モンロー大
統領の「大統領教書」に示されたアメリカの外交理念のことです。南北アメ
リカ大陸をアメリカの影響圏とみなし、アメリカ以外の国には干渉しない。
その代わり、諸外国も南北アメリカには口を出すな。トランプ大統領もアメ
リカはアメリカさえよければいいのであって、選挙前から世界のことに関知
しない孤立主義をとるだろうと評されていました。世界を俯瞰してみると、
第2次世界大戦後の世界は、「資本主義」対「社会主義」、「自由主義」対「
権威主義」といったイデオロギーの対立でしたが、今後は列強がぶつかり合
う帝国主義的な対立になるのではないか。そういう意味では、第1次世界大
戦前の状況と似ています。大国が資源や領土を奪い合う世界の復活です。
レーニンの『帝国主義論』によると、資本主義の発展段階が帝国主義です。
資本主義は、経済が発展すると生産力が高まりいろいろなモノをつくりすぎ
てしまったり、カネが余ってしまったりして、これが国内で消費できなくな
って海外に出ていき、植民地を獲得していく。これが帝国主義だというわけ
です。これって、いまの中国そのものではないですか。中国はつくりすぎた
鉄などを一帯一路で国外で使おうとしています。資源や領土を奪い合うのが
帝国主義。中国がそのメインプレイヤーであることは間違いないでしょう。
ユーラシア・グループは10大リスクの3番目に「米中決戦」を挙げていま
す。
トランプ大統領は国務長官に「アンチ中国」のマルコ·ルビオ上院議員を指名
しました。ルビオ氏は中国国内での人権弾圧を長年、調査し糾弾し、中国政
府から入国禁止措置を受けています。わかりやすくいえば「出禁」です。し
かし、国務長官とは日本でいう外務大臣ですから、米中外交を考えると中国
としては彼を入国禁止にするわけにはいきません。そこでマルコ·ルビオの
名前の中国語表記を「盧比奥」から「鲁比奥」に変えました。つまり“別人
”という扱いにして中国に入国できるようにしたのです。
中国は現在、世界第2位の経済大国であり、アメリカに取って代わることが
できる唯一の国といえます。アメリカとしては、中国がアメリカに代わる世
界覇権国になるのは許さない。ただトランプ大統領は、中国を叩きのめした
いのであって、習近平氏が独裁者として振る舞っていることには好意を持っ
ています。トランプ氏は、イデオロギーに関係なく「強い指導者」が好きな
のです。トランプ氏は、選挙前から全中国製品に60%の追加関税をかけると
公約していましたが、実際には、2025年4月10日の段階で、相互関税を含め
た追加関税が145%になると発表しました(その後5月12日に、米中双方、追
加関税115%下げで合意しましたが)。中国はいま、国内の不動産バブルが崩
壊し、中国経済はすでにデフレ入りしたと見ていいでしょう。中国経済から
目が離せません。日本にとっては中国の台湾政策も気になるところですが、
アメリカの国務省はHP(ホームページ)から「台湾の独立を支持しない」とい
う文言を削除しました。アメリカは台湾ではなく中国と正式な国交を結んで
います。これまでアメリカは中国を刺激しないように「台湾の独立」に反対
してきたのですが、その文言を削除したということは、台湾の独立を認める
つもりなのかと中国は強く反発しています。アメリカの台湾政策が変わるの
か。アメリカのトランプ政権による経済的圧力が見込まれる中、アメリカに
代わって覇権を狙う中国については第4章で見ていきましょう。
■ 戦争の終わらせ方
「戦争は始めるより、終わらせるほうが難しい」ー。2022年2月24日に始ま
ったロシアのウクライナ侵攻から3年余り、戦争は一旦始めると本当に終わ
らせるのが難しいものです。理由は簡単で、始めるのは自分の独断で始めら
れても、終わらせるには相手の合意を取り付けなければならないからです。
トランプ氏は大統領に復帰したらウクライナ戦争を、「24時間で終わらせる
」と豪語していましたが、実際に再選を果たすと、「6カ月は欲しい」と修正
しました。
■ 支援の見返りにレアアースのディール
2025年2月18日、サウジアラビアの首都リヤドでウクライナ戦争の終結を協
議する初の高官会合が開かれました。会合は当事国であるウクライナ抜きで
行われました。
ロシアのウラジーミル·プーチン大統領はウクライナに軍事侵攻したとき、
短期決戦を想定していました。ガッンとやればすぐに降伏するだろうという
甘い見通しを持っていたのです。その証拠に、キーウに向かっていたロシア
の戦車部隊の兵隊たちは3日分の燃料と食料しか持っていませんでした。
圧倒的に優勢とみられたロシア軍に対し、ウクライナ軍は激しい抗戦を続け
ました。しかしロシアはウクライナ東部·南部4州の併合を一方的に宣言す
ると、その後も消耗戦で物量に勝るロシアが優位に立っています。2024年8
月には、ウクライナ軍が大規模な兵力を投じてロシア本土のクルスク州に侵
攻して一部を占領しましたが、その後は後退を余儀なくされています。
ロシアが一部を占領しているウクライナの東部には、レアアースやリチウム、
チタンのです。トランプ氏はデンマーク自治領のグリーンランドについて、
なんとトランプ氏は、レアーアースを要求します。ヨーロッパ各国が警戒心
を持ちます。ここへきて、ヨーロッパ抜きで話をしようというのは本来の方
針と矛盾し、アメリカが関与することではないという言い方をしていたので、
関わりたくないのだと、トランプ氏はそもそも、ウクライナの戦争はヨーロ
ッパの戦争だと主張してきた。
ウクライナのウォロディミル·ゼレンスキー大統領にしてみると、自分の頭越
しにアメリカとロシアが停戦に向けた協議をすることは実に不愉快だったに
違いありません。アメリカはウクライナの最大支援国ですから、順序として
はアメリカとウクライナが先のはずでした。トランプ氏はそもそも、ウクラ
イナの戦争はヨーロッパの戦争だと主張してきました。アメリカが関与する
ことではないという言い方をしていたので、関わりたくないのだと思われて
きましたが、ここへきて、ヨーロッパ抜きで話をしようというのは本来の方
針と矛盾しますし、ヨーロッパ各国が警戒心を持ちます。なんとトランプ氏
は、「ウクライナが引き続きアメリカの支援を受けるためには、ロシアが一
部を占領しているウクライナの東部には、レアアースやリチウム、チタンな
どが埋蔵されているのです。レアースなどの重要鉱物資源を提供する必要が
ある」とディール(取引)を持ち掛けた。
この項つづく
✳️ 蓄熱材料の結晶構造をX線回折により解明
横浜国立大学,パナソニック,大阪大学,高輝度光科学研究センタ(JASRI),
産業技術総合研究所は,空調などに用いられる蓄熱材料「TBABハイドレート
(TBAB・26H2O)」の結晶構造を大型放射光施設SPring-8における高精度
なX線回折実験により明らかにした。 2025.07.24
図. 本研究で解明されたTBABが占有する空間のサイズ。 従来12面体をTBAB
が占有することは報告されておらず、12面体を利用することによってTBABが
高密度にパッキングされていることを本研究で明らかにした。
展 望:「水素結合ネットワーク中へのイオンの収容」という構造的特徴は、
ハイドレートに限らず、水系高分子、界面活性剤、さらにはシリコン系クラ
スレートなど広範な水系構造材料の設計にも応用が可能です。また、得られ
た構造情報は、ハイドレートにおける準安定相の形成や相転移挙動の解明に
も寄与し、水の構造化という深淵な現象の理解にも貢献。カーボンニュート
ラル社会構築に向けた蓄熱技術開発においては正確な構造に基づく材料・プ
ロセス設計や性能評価にも活用され、将来的には、CO₂分離・貯蔵、省エネ
型空調など、多様な応用展開への橋渡しが期待される。
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関連情報:
・掲載誌:Crystal Growth & Design
・表 題:Solving the 80-Year Structure Mystery: Definitive Crystal Stru‐
cture of TBAB Hydrate Resolved with Synchrotron Radiation
・著 者:室町実大、安田伸広、増永啓康、菅原武、町田博宣
・DOI :https://doi.org/10.1021/acs.cgd.5c00364
パナソニックインダストリーが発売する透明な電磁波シールド
✳️「透明な電磁波シールド」実現 年内投入
2025年内に透明度の高い電磁波シールドフィルムを発売する。電磁波を
遮断・減衰するシールド性能と透明度を両立したフィルムは開発が難しいと
されてきたが、独自の透明導電フィルムを活用し実現した。電磁波ノイズ対
策が必要な工場自動化(FA)機器向けなどで需要を見込み、28年度まで
に年間10億円超の売上高を目指す。厚さ50マイクロメートルの透明導電
フィルム「FineX」、同50マイクロメートルの光学用透明粘着シート
(OCA)、剥離用保護フィルムで構成する。2025年07月24日 ニュースイッチ
025年07月24日 ニュースイッチ
大成建設は電気自動車(EV)への無線給電が可能な次世代道路を使った実
証実験で、最高時速60キロメートルで車両に対し最大出力10キロワット
の連続無線給電に成功した。従来の国内の実証実験では、最高時速20キロ
メートル程度にとどまっていた。同社は今後、中型・商用車両などさまざま
なEVに対応可能な無線給電道路の実用化や、高速道路への本格適用に向け
た技術開発と実証に取り組む計画。最高時速60キロメートルで走行する車
両に連続無線給電を行った場合の伝送効率は平均66%(最大71%)。道
路側からの最大10キロワットの送電出力に対し、EV側で6キロ―7キロ
ワットの電力を連続受電できることを確認した。無線給電道路の施工や更新・
メンテナンスは、大型施工機械による在来工法とほぼ同じ施工法で対応でき
るなど、施工性や維持管理面にも優れる。
水素吸蔵合金の利用イメージ(出所:FDK)
✳️ 水素ステーション向け水素吸蔵合金 貯蔵量20%アップ
FDK(古河電工)は、水素貯蔵タンク向けに高容量の水素吸蔵合金を開発
「AB2型」と呼ばれるタイプの水素吸蔵合金で、水素貯蔵量を電池用途で主
流の「AB5型」に比べて約20%向上させた。2025年7月から一部の需要家に
向けてサンプル提供を、同年10月以降に量産出荷を開始する予定。同年7月
17日に発表。
新開発のAB2型水素吸蔵合金は、水素ステーションに設置した燃料電池など
での使用を想定したもの。現在、ニッケル水素電池の負極材として主流のA
B5型と比較して質量当たりの水素貯蔵量を約20%高めた。従来のAB5型は、
活性化が容易、反応速度が速い、リサイクルが容易といった利点を持つ半面、
タンクで使えるほどの水素貯蔵量は実現できていなかった。AB5型以外で水
素貯蔵量に優れる水素吸蔵合金もあるが、使用中に水素放出圧力が大きく低
下したり活性化プロセスが煩雑だったりと、使い勝手に課題があるという。
そこで開発品では、質量当たりの水素貯蔵量を増やしただけでなく、水素放
出圧力の安定性を高めて、使用前の活性化処理もしやすくした。水素貯蔵量
の体積効率は液体水素の約2倍で、高圧水素ガスの約7倍。日本の高圧ガス保
安法適用外となる1MPa未満の低平衡圧仕様と、海外向けの1MPa以上の高平
衡圧仕様のどちらにも対応する。
AB2型水素吸蔵合金は、MgZn2、ZrNi2のように化学組成がAB2で表される
水素吸蔵合金を指す。安定した水素化物を形成しやすい発熱型金属A〔マグ
ネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)など〕と、水素との親和力の弱い吸熱
型金属B〔ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)など〕で構成される。FDKは、水素吸
蔵合金を開発・製造する中国の包頭富士電気化学(旧社名:包頭三徳電池材
料)を2024年に子会社化し、水素貯蔵タンク用水素吸蔵合金の開発に取り
組んできた。
✳️関連特許事例
1️⃣ 特開2020-167030 ニッケル水素二次電池用の負極、この負極の製造方
法、この負極を用いたニッケル水素二次電池及び水素吸蔵合金粉末 FDK
株式会社
要約:
図1のごとく、ニッケル水素二次電池2に用いられる負極26は、負極芯体
と、この負極芯体に担持された負極合剤とを備えており、負極合剤は、水素
吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末、結着剤及び増粘剤を含んで
おり、前記した水素吸蔵合金粒子は、体積平均粒径が40μm以下であり、塩
素の濃度が180ppm以上、780ppm以下である。製造性を十分に確
保しつつニッケル水素二次電池における充放電特性を高めることに貢献する
ことができるニッケル水素二次電池用の負極を提供する。
図1 本発明の一実施形態に係るニッケル水素二次電池を部分的に破断して
示した斜視図
発明の効果:
二ッケル水素二次電池用の負極は、負極芯体と、前記負極芯体に担持された
負極合剤とを備えており、前記負極合剤は、水素吸蔵合金粒子の集合体であ
る水素吸蔵合金粉末、結着剤及び増粘剤を含んでおり、前記水素吸蔵合金粒
子は、体積平均粒径が40μm以下であり、塩素の濃度が180ppm以上、
780ppm以下である。塩素の濃度を上記の範囲内とするには、低粒度の
水素吸蔵合金粒子が流出するほど過剰に洗浄する必要はないので、低粒度の
水素吸蔵合金の量を維持でき、水素吸蔵合金の反応面積の減少を抑え、所定
の充放電特性を得ることができる。また、塩素の濃度が上記の範囲内であれ
ば、結着剤及び増粘剤の機能を阻害せず、負極の製造性に影響を与えない。
このため、本発明によれば、製造性を十分に確保しつつニッケル水素二次電
池における充放電特性を高めることに貢献することができるニッケル水素二
次電池用の負極、この負極の製造方法、この負極を用いたニッケル水素二次
電池及び水素吸蔵合金粉末を提供することができる。
図2 水素吸蔵合金粒子の構造を概略的に示した断面図
【符号の説明】2 ニッケル水素二次電池 22 電極群 24 正極 26
負極 28 セパレータ 50 水素吸蔵合金粒子 52 Ni 54 表面層
56 コア部
3.考察
実施例1~4は、水素吸蔵合金粒子の表面における塩素の濃度が180p
pm~780ppmの範囲にある。この範囲に塩素の濃度であれば、負極合
剤ペーストの分離も起こらず、負極活物質の脱落も起きていないので、電池
の製造に適しているといえる。また、上記したような範囲に塩素の濃度を維
持するための洗浄では、体積平均粒径を34.2μm~35.2μm程度に維
持でき、得られる電池の充放電特性は良好な状態を維持できると考えられる。
【0116】
特に、実施例1~3の電池は、塩酸による酸処理を行い、表面にNiリッ
チ層が形成されている水素吸蔵合金粒子を含んでいるので、酸処理が行われ
ておらず、表面にNiリッチ層が形成されていない水素吸蔵合金粒子を含ん
でいる実施例4の電池よりも充放電の反応性は高いと考えられる。
【0117】
比較例1は、水素吸蔵合金粒子の表面における塩素の濃度が102ppm
である。この程度まで塩素の濃度を下げるには、洗浄の回数を多くせざるを
得ず、その結果、比較的粒径の小さい粒子が洗浄水とともに流出し、粒径の
大きな粒子の割合が増えてしまい、体積平均粒径が38.1μmと大きくな
っている。比較例1のように、水素吸蔵合金粒子の体積平均粒径が38.1
μmであると、得られる比較例1の電池の充放電特性は、水素吸蔵合金粒子
の体積平均粒径が34.2~35.2μmの実施例1~4の電池の充放電特
性と比べ、低下することが予想される。特に、0℃以下の低温環境下での充
放電特性に関しては、比較例1の電池は、実施例1~4の電池に比べて劣る
と考えられる。【0118】
比較例2は、洗浄の回数を減らしているので、水素吸蔵合金粒子の体積平
均粒径が34.1μmであり、実施例3の水素吸蔵合金粒子の体積平均粒径よ
りも小さい状態を維持している。しかし、水素吸蔵合金粒子の表面における
塩素の濃度が870ppmであり、比較的多く塩素が残留している。このた
め、残留している塩素が負極合剤ペーストに含まれる結着剤や増粘剤の性質
を変化させてしまい、負極合剤ペーストを負極合剤成分と水分とに分離させ
てしまっている。このため、負極の製造が不可能であり、電池の製造には適
していないといえる。この状態の負極合剤ペーストを用いて負極の作製を試
みたが、得られた負極については、負極活物質の脱落が有り、電池の品質に
問題があるといえる。【0119】
以上より、本発明によれば、製造性を十分に確保しつつニッケル水素二次
電池における充放電特性を高めることに貢献することができるニッケル水素
二次電池用の負極、この負極の製造方法、この負極を用いたニッケル水素二
次電池及び水素吸蔵合金粉末を提供できるといえる。
✳️ 福島で多発する子どもの甲状腺がん 原発事故から14年
2025年3月8日 北海道新聞
・東京電力福島第1原発の事故からまもなく14年。福島県が事故当時18歳以
下の子どもに続ける甲状腺検査で、350人にがんが見つかっている。被ばく
との因果関係の議論が続く中、がんになった若者たちが支援や原因究明を求
めて声を上げている。北海道電力泊原発(後志管内泊村)で過酷事故が起き
れば、道内も被ばくの問題に直面する恐れがある。
・福島県の甲状腺検査 2012年4月1日までに生まれた子ども38万人に実施。
2~5年ごとの超音波検査で5.1ミリ以上の結節などが見つかると2次検査に回
る。放射性ヨウ素は甲状腺に蓄積し、がんのリスクを高めることが分かって
いる。福島の原発事故では、被ばく予防に有効な安定ヨウ素剤は、一部の住
民にしか配布されなかった。
✳️ 福島・甲状腺がん 語りはじめた若者の声をきく NHK
記事公開日:2023年10月13日
東京電力福島第一原発事故のあと、福島県が検査を続けてきた“子どもの甲
状腺がん”。今年7月までに316人が「がん」や「がん疑い」と診断され、8
割が甲状腺を摘出するなどの手術をおこないました。事故から12年がたった
いま、若者たちが自らの経験を語りはじめています。患者や家族はどのよう
な思いや「生きづらさ」を抱えてきたのか、埋もれてきた声にじっくりと耳
を傾けます。
-
1.声をあげはじめた若者たち
-
2.「生きづらさ」を知ってほしい
-
3.それぞれが抱える不安とどう向き合うか
-
4.声をあげにくい「空気」の存在
-
5.周囲の理解で前向きに生きていける
-
6.当事者の孤立をどのように防ぐか
体がだるい。眠い。目がまわる。やる気の低下など学校へ行くのが大変。
(17歳・女性)
手術後の声の変化はすごくつらい。大きな声を出せない。 (20代・女性)
術後から現在まで、精神的に病んでしまうことが定期的にある。 (24歳・
男性)
手術の傷があると女性は心理的に落ち込み、何事にも積極的になれない。
(20代・女性)
再発・転移の心配は尽きない。この先、出産できるのか。あと何年生きられ
るのか、いつも考えてしまう。 (26歳・女性)
手術のため仕事を辞め、就活中。薬を一生飲むので、金銭的・経済的に心配。
(28歳・男性)
✳️ 子ども甲状腺がん裁判㊤ 2025年6月25日
「311子ども甲状腺がん裁判」の第14回口頭弁論(島崎邦彦裁判長)
が2025年6月25日(水)に東京地裁で開かれた。86の傍聴席を目指
して、およそ160名が並び、抽選となった。
原告側の光前幸一弁護士によると、甲状腺がんの原因が原発事故による被
曝かどうか、つまり被曝とり患の関係が唯一の争点となっている。
被曝と甲状腺がんとは関係ないとする専門家5人の意見書を東京電力は出
してきた。疫学の専門家・祖父江友孝氏、東京大学医学部付属病院の中川恵
一氏、明石眞言氏、甲状腺臨床ではトップといわれる杉谷巌氏らだ。
弁護団長の井戸謙一弁護士は「東電は福島でたくさん発見されている甲状
腺がんは潜在がんであると主張しています」。
「東電の主張では、子どもは一定数もともと甲状腺がんを持っており、その
がんは悪さをせずに、場合によっては次第に小さくなる。スクリーニングし
ない限り、一生発見されないし、手術の必要もない」。
しかし、こうした東電の言い分だと300数十名の患者が手術を受けたの
は必要がなかったということになり、このままでは大スキャンダルなので、
東電は杉谷巌医師の意見書を出してきたと井戸弁護士。
※「子ども甲状腺がん裁判㊦」も掲載