【キャメロン監督の海底採掘】
世界で初めてマリアナ海溝チャレンジャー海淵への単独潜航に成功した映画監督で探検家のジェームズ・キャメ
ロン氏が、帰還から数時間後に会見を行い、世界で最も深い海底は月の表面のように荒涼としていたと語ったと
いうニュースに興味があり後日それをブログする予定でいた(「梅咲きパスタを紐解く」)。もっとも、彼は、
『ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密』(ジェームズ・キャメロンのタイタニックのひみつ、原題:
Ghosts of the Abyss)は、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ社とウォールデン・メディア社とによって
2003年に公開されたドキュメンタリー映画を撮影している。原題は『 Ghosts of the Abyss / ゴーストズ・オ
ブ・ジ・アビス 』で、「深海の幽霊(達)」を意味するという。 ディズニー初の3D映画で、監督はジェームズ・
キャメロン。キャメロンは映画『タイタニック』でアカデミー賞でオスカーを受賞した後に、この映画を撮り、
沈没したタイタニック号の残骸に向けて、キャメロンと科学者のグループが潜航し、かつてないほど接近した。
特別に作製されたカメラ(ニックネームはジェイクとエルウッド)でタイタニック号の内部を撮影、またCGI加
工により、当時のタイタニック号がどのような様子だったかを観客に分かりやすく見せている。なぜ、それほど
まで海底にご執心なのかわたしにはわからないが、プロジェクトの一員であるレビン氏はナショナルジオグラフ
ィック ニュースの以前のインタビューで、「海溝探査についてキャメロン氏が行う仕事は、数十年前にジャッ
ク・クストー氏が海洋探査に残した業績に匹敵すると思う」と高く評価しているし、カリフォルニア州サンディ
エゴにあるスクリップス海洋研究所の生物海洋学者リサ・レビン(Lisa Levin)氏は、「DEEPSEA CHALLENGE」
プロジェクトが深海科学に対する一般の関心を呼び起こす力は、キャメロン氏が発見したであろう何よりも重要
だとも言っている。
我が国は資源がないとよく言われる話だが、「資源」というものは「開発」と同様に、「人類の積極的な自然征
服のアプローチ」の別称だと考えている。いや、そのように考えようとしている。 レアアース、レアメタルの
埋蔵・生産量は中国が一番だといわれるが、それは陸上部のことだけの話で、海底や海底の地盤中には、マンガ
ン団塊、マンガンクラスト、海底熱水鉱床などの鉱物資源が開発を待っている状態なのだ。もっとも、これらの
採掘には大電力・エネルギーを必要とし、これまで、軽油を使ったディーゼル発電で賄なわれていた。しかも、
深海底までの送電ロスは大きく、採算が合わないと言う理由が開発計画が遅れてきたといわれている。一方、わ
が国の有人深海調査船、潜行深度6,000メートル、乗員3名、0.7m/秒の速度で、2時間かけて6,500メートル潜
行する「しんかい6000」が活躍している。また、無人探査機として「かいこう」や「うらしま」など5艇があり、
潜行深度は「かいこう」が7,000メートル、これに積み込んだ子機「ランチャー」で11,000メートルを記録。外
国でもアメリカの4,500メートル調査艇「アルピン」などがあるがいずれも調査のみであって、深海鉱物資源の
採掘艇は皆無だ。
海底鉱物資源の採掘に関して「海洋資源エネルギー抽出・生産海洋工場」において風力発電や潮流発電などの流
体エネルギーから得られた電力により、マンガンクラストあるいは海底熱水鉱床中の泥状硫化物を採鉱し港に輸
送する総合工場構想について、特開2007-331681号公報に開示されている。また、採掘した海底鉱物資源の海上
への輸送は、科学技術振興事業団の笹井らが「深海底鉱物資源の揚鉱方法及び揚鉱装置」で、両端開口部で液面
が同じ高さに維持されるU字管の中の海水が循環流動する特性を利用し、深海底から鉱物資源を海面に浮上させ
る方法を特開2003-26907号公報などがで開示されているが、総合的な科学技術工学と人間力を結集すれば、それ
ほど遠くない未来には内陸部とことなり極めて高純度の鉱床を世界に先駆けて日本が採掘している可能性が大き
い。そのことを裏付けるかのように、昨年7月に太平洋の海底でレアアースの巨大鉱床を加藤康浩准教授らが発
見している(推定埋蔵量は陸上部の千倍の1千億トン)。
※「鹿児島湾奥部海底にレアメタル鉱床を確認」
※「熱水鉱床と粘土鉱物」
海底にあるものを採掘するには、より詳しく鉱床の存在と分布実態の調査・測定に関わる技術工学の進展も必要
としている。従来から超音波探査装置で測定しているが、水深が約500m~3000mである深海底の未開発鉱物資源の
一つである海底熱水鉱床(SMS:Seafloor Massive Sulfides)が存在する。このSMSは、金、銀、銅、亜鉛、
鉛、レアメタル等を多数含み、ある程度の大きさを持つ塊状体となって存在する硫化物鉱床を三次元的に調査する
方法として紫外線照射し蛍光線を発生させ鉱物に含有する重金属類を効率よく測定できる方法も発明されている。
上図および写真のように無人ロボットを使い三次元的にその分布を測定することで極めて安全に調査ができるだ
ろう。
また、発見された鉱石を海洋環境の汚染や悪化を抑制しながら安全に採掘する方法の開発も重要なテーマだ。幸
いシームレス鋼は世界一の技術力を誇っているし、U字管法などで連続揚鉱することで簡単に取り出すことも可
能だろう。さて、まとめよう。「資源」とは「高付加価値を生み出す人間力の別称」に他ならないと、ジェーム
ズ・キャメロンはそのようにメッセージを発信しているのではと、わたしには思えるのだが、これは誇大妄想だ
ろうか? ^^; 。