以前「私たちにできること。」(2005/09/21)で紹介した某巨大掲示板の東シナ海ガス田紛争に関するスレッドについてです。
【早く】東シナ海油田問題 統一スレ★14【掘れ】
http://tmp5.2ch.net/test/read.cgi/asia/1129029777/l50
……とすでに次スレに移行しているのですが、このテーマに関しては恐らくこのスレが日本で最も詳細で問題意識にも富んでいると思い、私はほぼ毎日ROMっております。
で、いつものように今日ものぞいてみたら、最近書いた「意地を張るのはやめた、つもり。」(2005/11/11)が話題になっていたので驚きました。ある匿名の方が、私の外交部報道官会見の解釈について異論があるとのこと。それに対する再解釈を試みたのですが、あいにく私のISPが昨日(11月12日)あたりからアクセス規制対象になっていて、どうしても書き込めません。
仕方ないのでここでレスをつけさせて頂きます。まずは匿名氏(コテハンではないので便宜上そう呼ばせて頂きます)の御見解から。長くなりますが引用させて頂きます。
印象としては、日常的に中国観察をなさっている方とお見受けしました。あるいは当ブログを読んで下さっている方なのかも知れません。以下が匿名氏のレスです。読みやすくするため改行を変更したりしておりますが、内容には手を加えていません。オリジナルは上述したスレッドで御確認下さい。
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10/20 「首相に私的参拝ない」(王毅駐日大使)
10/25 「もし大規模なデモが発生しようとも、それは小泉首相自身が行った歴史について反省するという承諾をたびたび反故にし、第2次世界大戦中、中国とアジアの人民におびただしい血を流させたA級戦犯を祭った靖国神社をたびたび参拝したことに対する、中国人民の憤慨を示すものだ」(孔泉報道官)
10/28 「中日関係に困難な局面が現れた責任は中国側はない。日本国内では、いつも右翼勢力が日本の軍国主義が発動した侵略戦争を美化しており、侵略という罪を認めようとしない。彼らの行為は、アジア被害国の人々の感情を著しく傷つけるものであり、中日両国間の3つの政治文書(共同声明、平和条約、共同宣言)の原則にも反している。小泉首相は日本の政府指導者でありながら、第2次世界大戦時のA級戦犯を祭る靖国神社を続けて参拝し、中日関係の政治的な基礎を損なった。」(孔泉報道官)
10/28 「第2次大戦のA級戦犯を祭った靖国神社を、小泉首相が連続して参拝したことにより、中日関係の正常な発展は現在深刻に阻害されている。」(唐国務委員)
11/01 「日本の首相が靖国神社を参拝することは対話の問題ではなく、日本側が自らの承諾を履行し、歴史を真剣に反省し、平和の道を歩むかどうかに関わるものである。これは非常に厳粛な政治問題だと中国側はとらえている」(孔泉報道官)
11/02 「第2次大戦のA級戦犯を祭る靖国神社を繰り返し参拝し、中国の国民の感情と尊厳を傷つけたことにある。」(賈慶林主席)
11/03 「だが遺憾なのは、日本首相がA級戦犯を祭った靖国神社を繰り返し参拝したため、歴史問題が再び突出してきたことだ。」(王毅駐日大使)
11/10 「日中間の問題は、日本の指導者が1人で作り出したものだ。(トラの)『鈴』をはずさなければならないのは、『鈴』を取り付けた人だ」(劉建超・報道官)
多分・・・11/10の「鈴」の事をさして、「靖国が無くなった」という話だと思うけど、個人的には「ちょっと軽率かな?」との印象を受けました。
補足、これらの発言のソースは、人民網、サーチナ、CRIです。(まあ、編集によって反日成分が加算されている可能性が大きいけどね)
これだけでROMに戻るのも、寂しいので・・・
支那の報道を見る限り、今年の9月のネット上の報道指針が出てから前のような、楽しい反日記事はなくなりました。それは、見事に・・・
ここ最近の反日トーンは、その関係であまり見えてきません。
素直に低下したと見るのか、それとも大手メディアが報道しないだけなのか。
御家人氏のブログのように、(不本意ながら)反日を薄めて、ある程度歩み寄る姿勢が出てきたのは、「そうかもしれないな~」とは、考えますが、具体的に、何かアクションをとるか、そのアクションが結実するような物なのか?、これらはまだ闇の中だと推測してます。
支那の資源問題は、かなり深刻で、最近では資源+環境という視点で語られるケースが増えてきています、今の石炭がメインのエネルギー体系に見直しの風が出ているのも事実のようです。ここで、ある程度支那の面子を立ててやれば適当な所で、このガス田問題も妥協してくる可能性もあるのかな??
よーわからんけど(w
では、また、ROMに戻ります。
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以上、匿名氏のレスでした。
解釈の違いだけなので反論しなくてもいいのですが、あえて一言二言。
まず匿名氏は中国側の様々な発言を並べているのですが、私が「外交部報道官会見における『潮目』」と位置付けた11月8日の会見が出てきません。劉建超・報道官によるものです。
「(関係悪化の)責任は中国側にはない。日本側は実際の行動で歴史問題に正しく向き合うという約束を示さなければならない。これ以上中国やその他被害国人民の感情を傷つけてはならない。これが中日関係改善と発展における必要かつ重要な条件だ」
と劉建超まず答えているのですが、これは目新しいものではなく、曽慶紅国家副主席が日本からのゲストに対して似た言い回しの発言を行っています。ただしそれ以前の外交部報道官会見や曽慶紅談話と比べてみると、「靖国」という固有名詞が消えています。「靖国」を暗示してはいるものの、
「靖国参拝を続けるなら関係改善は無理」
という姿勢から軟化した。「靖国」批判をやめることはないけれど、先日の靖国参拝にこだわってハイレベルでの交流を断絶するものではない、というメッセージです。ここが「潮目」たる所以なのです。劉建超は他にも、
「両国の外相がAPECで会談を行うかどうか、それに関する情報は目下のところ私の手元にはない」
と、含みを持たせた発言をしており、
「六カ国協議で日中間の個別協議をやった筈だが、そこで日中外相会談の手筈を整えることも話し合われたか?」
という記者の質問に対しては
「私は個別協議に参加していないし、ここ(定例記者会見の会場)に来るときはまだ話し合いが行われていた。だから具体的に何が討論されたのか、現時点では私にもわかりようがない」
と、劉建超は正面から回答していません。匿名氏はこの日の会見に全く言及していないので、たぶんその存在自体を御存知ではないのだろうと思います。
http://www.gov.cn/xwfb/2005-11/08/content_93802_3.htm
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匿名氏はまた、
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11/10 「日中間の問題は、日本の指導者が1人で作り出したものだ。(トラの)『鈴』をはずさなければならないのは、『鈴』を取り付けた人だ」(劉建超・報道官)
多分・・・11/10の「鈴」の事をさして、「靖国が無くなった」という話だと思うけど、個人的には「ちょっと軽率かな?」との印象を受けました。
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と指摘されていますが、上述した通り、私の言う「潮目」は匿名氏がふれていない11月8日の外交部報道官会見なのです。
この11月10日の「鈴」の話も、要するに「敵」を小泉首相だけに限定している(経済など他方面への悪影響を防ぐため)ことを示唆したもので、この姿勢そのものは靖国参拝以来一貫しており目新しいものではありません。ただし以前とは異なり、定例会見で小泉首相を名指し批判しなくなっています。「小泉首相」という固有名詞は、劉建超の口からは全く出てきません。これも重要なところです(ちなみに「日本の指導者」が具体的にどの役職を指すものかについて、今回の靖国参拝以降、外交部報道官は記者から質問が出たにも関わらず定義づけを避けています)。
http://news.xinhuanet.com/world/2005-11/10/content_3763079_1.htm
この10日の会見では、APECでの日中首脳会談(小泉・胡錦涛)の可能性を問う記者に対して劉建超は、「どの国の首脳と会談するかはいま検討中なので明言できない」とも言っており、一応、日本を排除してはいません。
http://news.xinhuanet.com/world/2005-11/10/content_3763079_2.htm
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中国の外交部報道官記者会見はそういう単語単位にまで注意する読み方をしなければならないもので、まず原文(中国語)で読む必要があります。原文にあたっても、単語ひとつがついたか消えたかがシグナルになるケースも少なくない(今回の例でいうと「靖国」「小泉」など)ので、注意深く読まないとうっかり読み過ごしてしまいます。
このあたりは権力闘争の代理戦争として行われるメディア同士の論文合戦と同じです。実質的に最後の本格的な権力闘争であった1992年のトウ小平南方視察、その前後の『人民日報』と『解放日報』にその具体例がいくつか出ています。当時の両紙の縮刷版(1992年1月及び2月)を取り寄せて調べてみればわかります。それと同時期の『深セン特区報』も参考になるでしょう。
APECでの外相会談が実現するがどうかはまだ断言できませんが、実現しても不思議ではない空気が醸成されつつあることは確かです(さすがに首脳会談までは難しいと思うのですが)。ただ前に書いたように、胡錦涛政権は統制力が弱いので、執行部がその線で合意していても跳ねっ返りが飛び出して来る可能性があります。その点だけ要注意です。
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匿名氏はまた、
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支那の報道を見る限り、今年の9月のネット上の報道指針が出てから前のような、楽しい反日記事はなくなりました。それは、見事に・・・
ここ最近の反日トーンは、その関係であまり見えてきません。
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と指摘されていますが、「反日」にも色々あります。抗戦何たら60周年にちなんだものもあれば、「靖国問題」のような現在の政治的問題についての対日批判もあり、また「日本がまた捕鯨を。残酷きわまる」というような他愛のない記事も「反日」の範疇に入ります。
現時点での印象でいえば、9月を境に「抗戦何たら60周年記念」の反日記事は激減しました。続いて10月17日の小泉首相による靖国神社参拝について対日批判が行われましたが、基本的に抑制されたトーンで、例えば昨年末の李登輝氏訪日に対するほどのパワーもありません。
その「靖国批判」までが最近薄れつつあり、「他愛のない反日」や国連改革や安全保障問題に絡めた「反日」など、つまり「反日」がなお主流ではあっても、内容は目下の日中関係に直接影響を及ぼすような政治的に際どい話題に直接言及することを避けたものが中心になりつつあります。そのことは「意地を張るのはやめた、つもり。」で指摘し、また上述した通りです。
匿名氏の御見解にもありましたが、日中両国が歩み寄りつつあることでどういうアクションが現出するか、これは私にもわかりません。APECで日中外相会談が実現するかどうかを断言できる材料もまだありません。ただ実現しても不思議ではない空気になりつつあることは確かだと思います。現在までの中でアクションめいたものを挙げるとするなら、麻生外相と李肇星外相が電話協議を行った(2005/11/04)ことを指摘しておきます。
最後に、中国の外交部報道官記者会見や要人の重要講話などは単語単位にまで注意する読み方をしなければならないものです。単語ひとつがついたか消えたかがシグナルになるケースも少なくないので、注意深く読まないとうっかり読み過ごしてしまう、ということを改めて強調しておきます。
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【追記】
匿名氏さん(「あれま・・・」さん)、コメントを寄せて頂いたのでレスしましたが、その後で「東シナ海油田問題 統一スレ★14」での御発言を拝見しました。
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なんか、リアクションに困ってしまう。
そんなに、真剣に反論されてしまうと、真剣に困ったぞと(w
単純に「靖国」という単語が消えてしまった、という話だったので
「え?、けっこうあるぞ」と、ソースの提示をしたかっただけなんだよ~。
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……とのことで、これは「見解の相違」ではなく「次元の相違」だと理解した次第です。もちろん優劣とかではなく、事態の捉える上での次元が違うということです。「単純に『靖国』という単語が消えた」のではなく、
「一連の流れの中で『靖国』という単語が消える段階に達した」
というのが私の認識ですので。
反論?した私が過っていたようです。申し訳ありません。どうやら私はお人違いをしてしまったようです。(2005/11/14/02:45)
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そもそもの経緯として1989年の天安門事件直後、日本が他の欧米諸国を出し抜く形を取ったのは否定できないということもある。
少なくとも中国が将来そのように解釈するのはもう確定に近く、仕方ないかもしれない。
http://kawa-kingfisher.cocolog-nifty.com/blog/2005/11/post_9d74.html
先のことを心配しすぎ。
基本的に見解の相違レベル+私の検索範囲の狭さがまねいた事のようです。
これからは、もう少し検索範囲を広くしておきます。
エントリーとは関係なくすみません。
お気づきかもしれませんがまた爆発ですね。2chであがっているのを見て、新華網、人民網と映像・記事が流れていました。大切な吉林省の石油施設が燃えてしまっています。
炭鉱のみならず石油関連の設備まで爆発とは、日本も最近タンクが燃えたりしてましたけど、中国では日本以上に大変かもしれない。
靖国参拝以来、中国側のリアクションには「強く反発-次第に鎮静化-歩み寄りへ」というひとつの意思を感じさせる流れめいたものがあったように思うのです(ときどきチクチクするような動きもありましたけど)が、ここにきてちゃぶ台をひっくり返すというのは今までとは別の流れが表に噴き出てきたという唐突さを感じます。これは日中関係ではなく、中国の内政に属する動きでしょう。もちろん日中関係にも影響するでしょうが、本質は中共上層部の政争。そういう第一印象です。
今後この種の記事がまとまって出てくるようなら、胡錦涛が中国を留守にしている間にアンチ胡錦涛諸派連合による巻き返しが行われたということになるでしょう。これは忙しくなるかも知れません(笑)。
>>「2005-11-13 20:42:09」のUnknownさん
>先のことを心配しすぎ。
そうですね。でも私なんかせいぜい明日明後日で、来週のことすら予想が立てられませんから勉強しないといけませんね。ブログも実生活もです(笑)。
>>あれま・・・さん
反論という訳ではありませんからどうかお気になさらずに。ただチナヲチのオタというのは私に限らず単語ひとつが付いたか付かないかの違いを発見して悦楽を味わうものなのです(笑)。実際に中国では未だにそういう機微で態度表明が行われたりするのでちょっとこだわってみました。
>>1読者さん
情報有り難うございます。この爆発、事故なのか事件なのか気になりますね。最近は事件の方が多いようですが……。犯行声明が出ればいいのですけど(笑)。
しかし、このような外交声明などから微妙な変化を読み取るしかないという国は、現在では中国と北朝鮮くらいですよね。旧ソ連をはじめとした共産圏の国々は、かつて同様だったと思いますが、今更のように時代の流れに取り残された2国(時代の流れに逆らう化石国家)であるとの思いを強くします。
中国は十数年前に比べれば新聞の数が増えたのとネットが普及したので、これでも随分読みやすくなった方です。特にネットには非公式な「評論家」が登場して解説してくれたりします。そういうレスはすぐ削除されちゃいますけど(笑)。以前は全て機関紙でしたから御説の通り、本当に判じ物でした。
私は1989年の天安門事件で1回、1992年のトウ小平の南方視察で1回と、一種の非常事態を観察する機会に恵まれました。前者では学生側と政府側の間で最後まで揺れ動いた機関紙やラジオ局の動きをみることができました。後者では時流が保守から改革へと大転換するなかで、指導部各人の口ぶりが微妙に変化していくのを新聞を通じて実地にみることができました。特に後者のときは香港にいて、政論誌の編集者や某地元紙中国面担当者、また親中紙関係者などの知人に恵まれ、解説者つきのお勉強でした。中国観察をする上でこれがいい財産になっていると思います。
>このような外交声明などから微妙な変化を読み取るしかない
>という国は、現在では中国と北朝鮮くらいですよね。
言われてみれば本当にそうですね。いずれも近隣国ということで鬱になります(笑)。
当たるも八卦当たらぬも八卦みたいになってきましたね。
麻生外相の発言を受けて胡錦涛不在の中共が大騒ぎし、ちゃぶ台をひっくり返してしまったのです。こうなれば少し様子をみないと予測のしようがありません。
当たるも八卦当たらぬも八卦ですか。どうぞ何とでも。これが乱戦の常というものです。
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