速報です。新華社の署名論評が出ました。
内容は標題そのまんま。要するに中共の李登輝氏訪日に対する抗議のトーンが上がった、ということなんですが、注目すべきは、以前は知らず、近年であれば他に例のない激しい表現が使われているということです。
前回の「A級戦犯の息子」にもひっくり返りましたが、こちらの方が激烈です。
とりあえず全文訳しました。御一読下さい。
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短評:「台独」を容認する狙いはどこに(新華社・呉谷豊記者)
2004/12/24/10:55:29(新華網)
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【新華網東京12月24日電】日本政府は中国政府による近日来の厳重な抗議を顧みず、李登輝の来日に「観光」ビザを発給した。日本政府のこの誤った決定は、「台独」勢力に誤ったサインを送ることになり、中日関係に深刻な障害をもたらす。これは、日本政府が「台独」を容認し、中国の平和的統一という大業を目にしたくないことを示すもの、としか言いようがない。これに対し、中国人民は警戒を強めない訳にはいかない。
日本政府は、李登輝が「普通の市民」であり、ビザ発給を拒否する「理由がない」という。周知の通り、李登輝は台湾島内では急進的な「台独」勢力の総代表であり、中台関係とこの地域の安定を破壊する人物である。国際的にも徹頭徹尾のトラブルメーカーだ。日本政府がこの悪名高き政治的人物を普通の市民とする論法は、もとより成り立たないものだ。
日本政府はこれまでずっと、口では一つの中国政策を堅持する、「台湾独立」を支持しないと言いながら、陰では「台独」を容認しており、あろうことか現在、李登輝が来日して中国分裂を目指す活動に従事することを容認した。言うまでもなく、日本政府が李登輝の日本での活動を認めたことは、「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則に背いたものであり、中国の平和的統一という大業に対する挑戦だ。また同時に、中日関係に深刻な損失ををもたらした。
日本の小泉純一郎首相は就任以来、国内世論とアジア各国の強い反対を顧みることなく、4年連続で靖国神社に参拝し、中日関係を「政冷経熱」という不正常な状況に変化させた。中日両国は一衣帯水の隣国同士であり、中国政府はこれまでずっと中日友好の外交方針を貫いてきた。日本の指導者も日中関係の発展は大変重要なことだ、中国の発展は日本に対する脅威ではなくチャンスなのだ、と発言してきた。しかしその一方で中国人民の感情を傷つける行為を絶えず行い、両国の関係発展における障害を生み出し続けた。日本政府がトラブルメーカーである李登輝の訪日を許可することは、必ずや中日関係に新たな面倒をもたらすことだろう。
中日関係を発展させれば「双方いずれにも有益」な共同発展を実現できる。中国経済の急速な発展が日本企業に巨大市場をもたらし、日本経済の回復にも利するものであることは事実が証明しているところだ。中日両国が展開している経済的協力は相互補完というメリットが大きく、それは両国の根本的利益にも合致する。だが日本側による一連の誤った振る舞いは中日関係の政治的基盤を動揺させ、両国の経済協力の面においてもマイナスの影響を及ぼしている。
中日関係の改善には双方の共同しての努力が必要である。日本が絶えず中日関係に面倒をもたらしていることは、必ずや自業自得という結果を招くことだろう。
http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/24/content_2375635.htm
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恫喝的な物言いに腹を立ててはいけません。ポイントはそこではなく、
「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則に背いたもの」
という部分です。以前も含めて、私はチナヲチしている間にこの表現を目にしたことはありません。
例えば昨年のちょうど今頃、森喜朗前首相が台湾を訪問し、李登輝氏らと会ったりしています。このことに対する中国政府の抗議声明(※1)では、
「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう要求する」
であり、「違反した」「背いた」とは言っていません。今年の元旦に小泉首相が靖国神社を参拝したときに中国外交部が出した抗議声明(※2)では、「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書」という文言すら登場しません(※3)。
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これはランク付けがあるんだと思いますが、とりあえず私が目にした範囲で位置付けすると(本当はもっと強い表現がある筈です)、
(一)「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則に背いた
(二)「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書の精神に背いた
(三)「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう要求する
(四)上の文言自体が出てこない。
つまり元旦の小泉首相による靖国参拝よりも、森前首相の訪台を大事だと中共が判断したことになります。
そして、今回はそれを遥かに上回る重大事件とみていることになります。胡錦涛政権の対日政策の変化が俄然現実味を帯びてきたようです。あるいは内部で何か起きている可能性もあるかも知れません。
現時点でこんなにトーンを上げてしまうということは、次回はもっとびっくりさせてくれるネタを用意している、と期待してもいいのでしょうか(笑)。まあ今回は新華社の論評であって政府見解にはあたりません。あるいは、外交部の声明として今回のような内容のものが出るのかも知れませんが、それじゃあつまらないですね。
それにしても、中共がそんなに嫌がるのなら、やはり李登輝氏にはガンガン政治活動をしてもらいたいところです。
だって(一)より激しい措辞を見てみたいじゃないですか(笑)。
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【※1】http://big5.xinhuanet.com/gate/big5/news.xinhuanet.com/newscenter/2003-12/25/content_1248416.htm
【※2】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-01/01/content_1256873.htm
【※3】「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書云々が靖国参拝に対する抗議声明に出てこないのは、首相の靖国参拝がそれらに全く違反していないからです。要は法的根拠(条約や共同声明など)のない抗議ということになります。
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今回の新華社電は重要ですよ。とりあえず保存しておいた方がいいと思います。
寝ます。お休みなさい。
日本政府の公式見解をここまで捻じ曲げる心情はほとんど病気です。そういう人が中国共産党の内外でどのような活動をしているか、またその親玉はだれなのか大変気になります。最終的には党内部の問題であることがどんどん鮮明になってくると思います。李登輝、靖国で今後の共産党の考えが見えてきそうでどきどきします。
外交部声明のような公式見解ではないとはいえ、国営通信社の署名論評ですから、党中央の意思を反映したものであることは間違いないでしょう。その措辞の激しさからみて、李登輝氏訪日許可によって日中関係は近年で最も深刻な段階に入った、という認識が中国側にはあるようです。もちろん李登輝氏だけでなく、中国を脅威と見定める日米戦略対話や米国による現役軍人の台湾派遣、といった事柄も影響しているでしょう。
「日本政府の公式見解をここまで捻じ曲げる心情はほとんど病気です」という感覚、これが健康なものですよね。1読者さんのような感想を日本人が共有して、世論の主流を占めるようになるほど対中認識が深まればいいな、と思うのです。上海のビル群が典型例ですが、それなりに洗練されて見えるため、日本人は中国が北朝鮮同様、一党独裁のとんでもない国家であることをつい忘れがちなようです。
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2004122501000726
察するに、野中氏は野中氏の哲学で、日中関係の改善に向かう予定だったのが、中国からは、もう野中氏は必要ないと判断されたのでしょう。
ここは Unkown でも投稿できるんですね。
友好協会を通じて中国側からの意思伝達があった訳ですね。いかに媚中派とはいえ、いま訪中されても中共は扱いに困りますからねえ。
働く機会をひとつつぶされた格好ですね。可哀想に、これでまたマスコミへの露出が減りますね(笑)。
所詮一人でやっていることですし、本業の余暇にやっていることですから、こうして情報提供して頂くと本当に助かるのです。
台独容認のメリットならいくつでもありそうなのですが・・・。
だいたい統一といってもどういう方法で行うのか? 一国二制度などといっていますが、
香港と違って選挙による代議制と法治の定着している台湾の上に共産党独裁の統治機構を乗せようがないのではないか?
できそうなことと言えば、外交権を取り上げるぐらいでしょう。台湾の外交権を取り上げて中国に何か得るものがあるのか?
税収? もし、台湾から上がる税収を大陸が収奪しようと考えているなら、当然抵抗があるでしょうから、統治コストが上がり
相殺されてしまう気がします。
太平洋への出口? すでに香港を手に入れています。
IT産業? IBMみたいに買えばすむ話でしょう。
マーケット? アメリカの方が遙かに大きい。
中国が、本当に最大版図を自ら統治したいと言うだけで台湾がほしいと考えているなら、
これは、もうただの妄執としか思えません。どうかしてる。そんなことより、やることがあるだろうが!
日中間はともかく、台中間は話し合えば何とかなるのではと考えていましたが、こりゃ無理でしょうね。
いつも書き殴りですが、今日はさらにひどいです。スミマセン。
一党独裁国家の考え方など理解できようがありません。しかも共産党ですし、民度も低いですし。
中国人のあの高すぎるプライド(中華思想)と阿片戦争以来の強すぎるコンプレックス、そしてあの民度。それに一党独裁制が乗っかると、こういう不思議なことも起きるのでしょうかねえ。
彼らが台湾独立に反対するのはチベットやウィグル独立問題に関わるからでしょうが、欧米には言わないのだからみっともない。
これも日本が急に彼らの言うことを聞かなくなってきたので、ここで脅しつけておこうとしているのでしょうね。
李登輝氏来日は本当に楽しみです。ああもう明日(27日)なんですね。台湾のマスコミには空港で一通り取材するだけじゃなくて、歓迎に来た日本人にインタビューするなどして、たくさんの日本人が李登輝氏を応援している、台湾の行く末を気にかけている、ということを台湾の人に伝えてほしいです。
昨日(25日)は胡錦涛の広報紙である『中国青年報』に、
「日本のサムライ集団が先取防衛の道から外れようとしている――世界の安全を脅かす日本の新『防衛計画大綱』」
http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2004-12/25/content_1003523.htm
と題された署名論評が出ました。もうお約束の内容で、自衛隊創設からの歴史と日本政府の姿勢を紹介した後で「軍国主義の陰魂いまだ去らず」とかいう小見出しのあとに標題のような内容を持ってきて終わります。しかし今どき「右翼勢力」なんて言葉を使われるとなんか身体がむず痒くなりますね(笑)。まだそういう色分けしかできないから日本の変化にうろたえてしまうんだと思います。
他には日中友好協会が小泉首相に靖国参拝をやめてほしいとの請願書を出した、というニュースがありました。総じていえば日本に関する記事は一時期より増えていますが、これは旬だから仕方がないとして、内容はトーンが高まっても感情的になっておらず、抑制されている感じです。
いやあ胡錦涛や温家宝のマジギレした顔が見たいですねえ(笑)。李登輝氏の一発芸に期待したいです。氏の日本における動静には目が離せない、とたまには紋切り型で終わってみました。
自衛隊の歴史については池田・ロバートソン会談などを参考にしています。当時の日本の軍事的立場が分かる内容になっています。日本も気づけば世界第三位の軍事力をもつ国になりました。無いのはICBM(核弾頭つき)と原子力潜水艦、そして航空母艦と言った按配です。これらの力を現在まで使用を抑制してきたことは大変な功績と思いますし、世界で一番通用するパスポートといわれる日本のパスポートは、世界の日本の平和主義への信頼がその根底にあると思います。
日米同盟の元、大きな変化があるとは思いますが、その背景に中国北朝鮮による緊張の増幅があることを忘れてはいけないと感じますし、中国の台湾侵攻などは海象さんが指摘しているとおりで採算が全く合わないし、国際的信用の失墜、外資の逃避を招くだけです。日本にとっても台湾と台湾海峡は防衛政策上重要な位置にあります。この点は台湾日本の間では長く議論されていることだと思います。
国営通信社と党中央の機関紙が掲載したので、あとは外交部あたりが何を言うかですね。
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