だから言ったじゃないですか。「反靖国攻勢が始まるような感じはあまりしなかった」って。……いや、別に誇っているのではなくて、この分だと明日は晴れそうだ、とごく当たり前のことを言って、それがごく当たり前にそうなっただけのことです。
安倍晋三・官房長官の靖国参拝が発覚?それで場違いな抗議声明みたいなものが中共政権から出ることはあっても、それ以上は騒ぎ立てないでしょう。もし表立って安倍氏攻撃を始めてしまえば靖国問題についての日本の世論に変化が生じ、同時に自民党総裁選でかえって安倍氏を利することになるでしょうから。
また、ここで過度に騒げば逆に中共内部ひいては中国社会が荒れてしまう。……ということくらいは判っているでしょう。この十数日にわたって騒がなかったことが示しているように、です。
まあ、荒れるのを見てみたい気もしますけど(笑)。そのときは胡錦涛の器量が試されることになるでしょうね。でも中共の「核心」と称されるようになるためには、そのくらいの試練を乗り切れるスキルが必要でしょう。
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『日本経済新聞』が昭和天皇の元側近のメモと称した真偽未だ定からぬものを持ち出したのが7月20日。A級戦犯を合祀したから靖国には行かないと昭和天皇が言ったとか何とか。「だから私はあれ以来参拝していない。それが私の心だ」でしたっけ。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060720AT1G1700819072006.html
でも昭和天皇もいまの天皇も春と秋の例大祭には毎年靖国神社に勅使を派遣しているそうですね。勅使が現存していることには驚きました。故・司馬遼太郎氏の幕末を描いた歴史小説をいくつか思い出してしまいました。やはり衣冠束帯とか、そういう雅びた装束で出かけていくんでしょうか。
http://www.sankei.co.jp/news/060720/sha060.htm
小泉純一郎・首相にもこの話題を軽くスルーされてしまいました。
「自身の靖国参拝への影響について『ありません。それぞれ心の問題ですから。行ってもよし、行かなくてもよし。誰でも自由ですから』と従来通りの見解を示した。首相官邸で記者団に答えた。」
http://www.sankei.co.jp/news/060720/sei099.htm
今回の「日経報道」はまさに「空気読めボケ」の典型ともいえる愚挙だったように思います。タイミング悪過ぎ。8月15日とか9月の総裁選を見据えた時機としては絶好。……なんて見方もあったようですが、私は切り札として出すには遅過ぎだと考えています。
だって中共政権が合いの手を入れて一緒になって騒いでくれないと空振りは必至だ、という類のものじゃないですか、こういうネタは。使うのなら春が終わるまでに使うべきではなかったかと思うのです。
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「日本の指導者が靖国神社参拝をやめるなら首脳会談を行う用意がある」
と日本の代表的媚中派どもを北京に呼び寄せてトボけた「重要談話」を胡錦涛が発表したものの、日本側から無視同然の扱いを受けてしまったのは記憶に新しいところです。
あの学芸会めいたイベントからなし崩し的に中共が日本の準備した土俵に上がる形になってしまった日中外相会談、あえて言うならこの学芸会から外相会談開催合意までの短い時間が「賞味期間」だったと思います。中共の助太刀を期待できた、ということです。
その後は改革についての指導理論をめぐる争いで「科学的発展観」を掲げる「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)が「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)を退け、「反胡連合」は一気に勢いを失ってしまいました。日本側で「それが私の心だ」効果を期待する向きが中共と組むとすれば、反日色がより濃いこの「反胡連合」と結ぶべきでした。
ところが理論闘争で一敗地に塗れたために「反胡連合」はゲリラ戦へと移行。「擁胡同盟」の居座る中央に対し、各地方が面従腹背・慇懃無礼の姿勢でもって従来型改革路線である効率無視の成長率信仰路線(きれいに言い繕うとすればトウ小平の「先富論」)を継続するという挙に出ました。
するとこれが意外に奏功して経済過熱&諸侯経済化懸念が出てきたため、胡錦涛以下はそりゃもう大慌て。「手を組もう」なんて言われても炎上しそうな経済に水をかけるのに必死でそれどころじゃないですし、もともと胡錦涛政権は現実優先の対日融和路線(融和度は当社比w)を志向してもいます。
「空気読めボケ」とは、そういうことです。元々日本側で「それが私の心だ」効果を期待する向きは中共の応援がなければ大したことは何もできないのですから、もう少し中共側の事情に注意を払う必要があったと思います。
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で、そのメモについて中共がどう反応するかと眺めていたのですが、どうもいまひとつノリが悪いのです。初動としては気合不足といった印象で、これからメディアを総動員した反靖国攻勢が始まるような感じはあまりしませんでした。
……と件のメモが報じられた日に私は書きましたが、現時点までの流れをみていると、その初動のノリの悪さを今なお引きずっているようです。「昭和天皇発言」にも大きく反応することなく、その後も抑制された報道に終始しています。
靖国問題の関連記事は少なくないのですが、宣伝攻勢、キャンペーンといった有機的連携や連続技のような流れがなく、散発安打ばかりで実を全く伴っていない。だから勢いが全く感じられないのです。せいぜい『毎日新聞』と『日本経済新聞』の世論調査で靖国参拝反対派が過半数を上回ったことを言い立てたくらいでしょう。
「昭和天皇発言」を殊更に取り上げて騒ぐような記事はほとんどありません。そもそも天皇を持ち上げるのは中共にとって好ましいことではないでしょう。条件が許すなら「昭和天皇こそ戦争責任者」と言いたいところでしょうから。
あとはA級戦犯の遺族が「前相談なしに合祀された」「小泉首相の参拝には反対」などと語ったとか、御祭神の遺族が祀ることをやめろ訴訟を起こすなどという『朝日新聞』や共同通信の報道を引き写したり、やはり参拝反対派の河野太郎・法務副大臣なんて小物のコメントまで持ち出してくる始末。
そういえば小沢一郎・民主党代表の小泉首相批判も記事にしていましたが、この人は端武者ではないにせよ、すでに終わっているといって差し支えない政治家でしょう。……要するに「ショボい花火」というか「散発安打」を中共系メディアは打ち続けているのです。しかもそうしたベタ記事の数々の大半が、独自取材ではなく日本メディアの翻訳版。
なぜかといえば、それがお約束だからです。胡錦涛に騒ぐ気がないのでしょう。「参拝やめたら首脳会談」との条件提示は済ませていますし、実際にそれ以来、首脳会談をやっていない。だから後は小泉退陣まで静かにしていればいいのです。ここで改めて「参拝するな」と騒いで小泉首相に参拝されちゃったら胡錦涛の面子が丸潰れになってしまいます。
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まあ面子はもう春の訪米時に散々潰されてしまっている(笑)からいいとしても、騒ぎ立てることで国民の不満、具体的には反日感情を高めてしまう恐れがあります。その不満なるものが最初は反日気運という形で現れたとしても、いつどういうエネルギーに転化されるかわからないほど中国の社会状況は悪化しています。統治者たる中共は「SAYURI」を上映禁止にしたほどビクついているのです。
だいたい騒いで参拝されたら「反胡連合」に絶好の反撃機を与えてしまうことにもなります。そうでなくても暴走気味の経済に中央が有効な手を打ち出せないでいる状態。過去の中共における権力闘争や失脚劇の多くは経済運営の失敗に端を発しているのです。
……そうしたあれこれを考えれば、騒がないのが賢明かと思いますし、実際に中共系メディアはショボい花火を打ち上げるばかりで本気で騒いではいませんね。駐日大使の王毅が小泉首相の参拝に反対の意を示したようですが、これだって、
「一応、言うことは言っておきました」
という中国国内向けのアリバイづくり。王毅が参拝阻止活動に対していかにヤル気がないかは、一昨年の李登輝・前台湾総統訪日直前に放った、
「トラブルメーカーが戦争メーカーになる」
といった王毅お得意の「脱力系激語」と比べてみれば一目瞭然でしょう。比較でいうなら中共自体も当時のような切羽詰まった姿勢を示してはいません。逆に「八・一五靖国参拝」に対する心の準備を促すような報道が中共系メディアによって流されたりしています。
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そして、頼みのフックだがキングストン弁を開いて自沈してしまったことも中共にとっては痛かったですね。「小泉路線が極端だっただけに次期首相は大胆に逆方向へと舵を切れる」という望みがこれで絶えてしまいました。しかもこの「自沈」で次期首相にはよりによって昨秋、
「小泉以上に小泉」
と新華社に評された安倍氏が就任する可能性がいよいよ高まりました。こうなると下手に騒げば藪蛇になってしまうかも知れません。ポスト小泉での関係改善を中共が考えているなら、ここは隠忍自重するのが得策でしょう。
……あ、隠忍自重というのは中共の立場からの見方であって、実際には中共が靖国問題に口を差し挟むことは明白な内政干渉であり、それ以前にA級戦犯を云々できる資格も根拠もありません。日本側が大人しくしていたから頭に乗ってしまったのです。
そういう意味では日本側にも中共を増長させた責任があります。だいたいテレビのニュースでも新聞でも、
「小泉首相の靖国神社参拝で悪化した日中関係……」
という言い方がいまなお使われているというのはどうしたことでしょう。靖国神社を枕詞にするなら、
「靖国問題に中国側が内政干渉したことで悪化した日中関係」
というのが事実でしょう。靖国問題はあくまでも日本国民のみに是非を決する権利が許されているのですから。付言するなら、中国による内政干渉は日中関係の原点である「日中共同声明」をはじめとする「日中間で取り交わした3つの政治文書」に明白に違反する行為でもあります。
「中国は、私が参拝するなら日中首脳会談を行わないと言っている。こういう考え方は理解できない」
「突き詰めると、中国の嫌がることはしない方がいいということになるように思えてならない」
http://www.asahi.com/politics/update/0803/002.html
……中国や韓国などの反発を意に介さず小泉首相が毎年靖国神社を参拝してきたことで、日本の首相がこうしたかくも真っ当な言葉を公然と口に出来る土壌ができました。きわめて不健康だった日中関係が、小泉政権の構造改革によってその異常さが改善されつつあるのです。中共が最も恐れていた事態になりつつある、といえるかも知れません。
次期首相にはこの構造改革路線をさらに継続・深化させることで、例えば靖国問題に中共が容喙すれば「それは内政干渉だ」と明快にはねつける、正常で健康的な日中関係、麻生外相の言う「対等な二国間関係」を構築してもらいたいものです。
ただし、中国は一党独裁を奉じる特殊な国家ですからときにマトモな付き合い方が成立しなくなるときがあるかも知れません。そのときは中国の横っ面を張り飛ばすなり水をぶっかけるなり、毅然と一蹴する姿勢を示してほしいと思います。
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最後に、これは既報しているのですが改めて。
◆署名論文「靖国神社問題とはいかなるものか」……国際在線。
http://news.sina.com.cn/w/pl/2006-07-31/093010583918.shtml
今回の一連の報道の中で目を引いた数少ない記事のひとつです。「国際在線」は中共の主要メディアに数えていい存在ですから、そこの署名論文となるとそれなりに格のある記事ということになります。ところがその文中において、
「(靖国神社には)東条英機ら14名のA級戦犯、1000名余りのB級・C級戦犯が祀られており……」
とB級戦犯・C級戦犯にもわざわざ数字まで挙げて言及しているのです。さらに中共政権下では「中国侵略を企図して日本が起こしたもの」とされている日清戦争・日露戦争での戦没者が祀られていることにもふれています。
つまり、そういうことなのです。A級戦犯が焦点のようにいわれていますが、A級戦犯が片付けば次はB級戦犯とC級戦犯、そしてその次は日清・日露戦争と中共政権は踏み込んでくるでしょう。
たとえそれが総意でないとしても中共政権の中にはそういう声があり、一党独裁体制であるうえ報道統制が強化されるなか、主要メディアでの署名論文という格式を以てその見解を発表することが許されているのです。
……私の見落としかも知れませんが、日本でこの記事について報道されたのを見かけなかったので、ここで改めて指摘しておくことにします。今回の一連の靖国報道が「お約束のショボい花火大会」である一方で、こういう動きがあることも忘れてはならないと思うのです。
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「反安倍勢力は結集を狙う」など、勝手に盛り上がっていますね。
ご主人様の意向を図りもせずにこんなバカ騒ぎをするのでは、中国もさぞ
困ることでしょう。同情はしませんが。
南鮮はこのニュースに対して、先を読まずに感情論のみで火病を起こし、反日ドーピング TM を増量注射は間違いの無いところです。
全く持って、喜ばしい事この上なし。
さて、どうする胡錦涛、デモ許すか、面子を捨てて黙るか?
本丸の8/15へ向けて楽しみですね。
中共政権が倒れたときに、チベット、東トルキスタン、内モンゴルはともかくとして、漢民族居住地域に複数の国家が誕生する可能性はどれだけあると思われますでしょうか?
今の中国には、北京人、上海人、福建人などのローカルなアイデンティティも存在する一方、中国人というナショナルなアイデンティティも根強く存在してるように思えるのです。
そうなると体制転換後も、連邦制みたいな感じで維持されると個人的には思いますが・・・。
個人的には中国が1つの国として発展してる姿を見たいような気がしますし、複数の中国人国家が誕生するのも見たいように思います。
まあ4月の話じゃ鮮度も悪そうなんで幾らゲテ食いな中国様でも腹下しそうですな。
http://www.asahi.com/special/050410/TKY200608020497.html
>中国側での調査では、日本の政治家による靖国神社参拝について、51%が「どんな条件でも反対」と強い拒否反応を示したものの、30%は「戦犯を外せば参拝してもよい」と答えた。
http://newsflash.nifty.com/news/tp/tp__kyodo_20060804tp009.htm
王毅も8月15日には夏休みという名の逃避行?という噂だがはたして…
安部さんの4月に靖国参拝した出来事と4月に新聞社の社長が中国首脳と会った事実を紙面で1行も報道しない事とドッチが秘密で売国的なのか一目瞭然だねー。
笑いのセンスはあるようです。
>>【韓国】(コラム)靖国神社に神霊はいない~小泉の戦犯に対する哀悼を批判する[08/04]
>>http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1154705978/l50
韓国の新聞に載った記事だそうで、靖国神社の神々は戦争犯罪人なので死んでも謝罪を続けなければならず、小泉首相は戦争被害者にひざまずいてわび続けなければならないそうです。
後、この記事には韓国の巫女さんが靖国神社の女神が今の日本が嫌で神社から家出して韓国にいる、という話も掲載して首相の参拝を非難しています。
シナもなんですが、こういう馬鹿げた記事を書く韓国もお笑い国家ですよ。死者の哀悼というものが分からないらしい。ここだけ中世の気分です。
しかし、中韓の言うことがネタ扱いになる時が来るとはね。
亀田の試合を見ても分かるとおり、もはやマスコミが好き勝手できるような世の中じゃないですから。
ともあれ、久しぶりに夏に日本にいるので明日は「個人的に」参拝してこようと思います。ようやく夏らしくなりましたしね。
ttp://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2006080501006436
「陛下の御心」では飽き足らず、「東条閣下の御心」まで持ち出してきましたよ。
最近は下記のような嫌がらせの書き込みもあっさり通ってしまいました。
http://bbs6.news.163.com/zhongri/620590.html
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