「順徳で村民約1万名が食糧倉庫を包囲」
と、香港紙『明報』電子版の記事が尋常でないタイトルを掲げていたので、「いよいよ『乱』発生か!?」と色めき立ってしまいました。色めき立たせるようなタイトルを許したデスクの勝利です。
いや、実際にタイトル通りの出来事が11月8日、広東省・順徳市の三洲村で発生したのです。ただ食糧不足が深刻でついに農民たちを蹶起させたのではなく、原因は土地収用に絡む不正問題。騒ぎの内容も暴動というよりは一種のデモに近いものでした。
とはいえ、過去にも同じ問題で衝突が発生しており、相当根の深い問題のようです。
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事件は水際立った「突発」さで発生しました。
11月8日午後、広東省順徳市・三洲村に建設された大型食糧倉庫のオープンセレモニーが開催されました。地元順徳市や仏山市の指導部、それに広東省や中央政府の高官に加え、タイ、ドイツ、英国、香港などの外資系企業関係者が参加するという格式ある式典です。
ところが、いざテープカットということになったところで、いつの間に接近していたのか、地元三洲村の村民1万名近くがわらわらと突如出現。あれよあれよという間にその場を包囲してしまいました。
この食糧倉庫、2003年9月にスタートした第一期工事で長さ60m・幅24mの大型倉庫15棟が完成したもので、収容能力は食糧6000トン。さらに直径10.4m・高さ25mの円筒形をした穀物倉庫6棟も完成し、晴れのオープンセレモニーを迎えた訳です。
ところが村民が大挙来襲してこの事態。セレモニーに出席していた主催者及び来賓の御歴々約300名を倉庫に付随した事務所ビルに監禁したのです。このほか障害物を置くなどして付近の道路も封鎖。深夜になっても包囲が解かれることはなく、約4000名の村民が現場に残っており、セレモニー出席者は監禁されたまま一夜を過ごすことになりました。
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事態が動いたのは翌日である11月9日の明け方です。防暴警察(機動隊)約2000名が現場に出現、帰宅していた村民たちもそれを知って続々と駆け付け、再び約1万人が屯集。
防暴警察が防盾を並べて少しずつ間合いを詰めてくるのに対し、村民側は女性や子供を前面に並べて防暴警察が手を出しにくいようにし、その後ろにバイクのヘルメットを着用した男たちが投石の構えをみせて対峙する形になりました。
膠着状態が破られたのは正午(11月9日)ごろ。警官隊が催涙弾数十発を発射して実力行使に出たのに対し、村民も投石で果敢に反撃。しかし白兵戦に移行すると意気軒昂たる村民たちも完全装備の警官隊にはかないません。負傷者を出して追い散らされ、監禁されていたセレモニー出席者がようやく解放されました。
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さて、今回の事件の原因も前述したように土地収用に絡む不正疑惑でした。しかもこの三洲村のケースは以前から揉めており、1990年代から道路拡張や工業団地建設、住宅地建設といった名目で、村内の耕地がどんどん収用され、9000ムー(1ムー=6.7アール)あった耕地は半分が売却されました。
地価高騰の時期でもあり、最近では1ムー当たり10万元が相場だというのに、この十数年間で村民たちが受け取った補償金はわずか6000元(1人当たりか1世帯当たりかは不明)。三洲村当局に対する村民たちの疑惑が深まったのは当然のことでしょう。
このため村民たちはこれまでも順徳市政府、広東省政府さらに北京にまで人をやって陳情活動を続けてきましたが事態は好転せず、当局との対話を求めて村民たちが収用された土地に座り込み、建設工事を妨害するといった挙に出ていました。
これに対しデベロッパーが金で雇った失業者たち「警備員」多数を現場に投入して村民を強制排除しようとしたところ、逆に瞬く間に人数を駆り集めた村民数千名が続々と現場に駆け付けて形勢逆転、「警備員」60名を拘束するという事件も今年6月に起きています。
http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/06/200606182206.shtml
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今回の事件はそうした抗議行動のひとつというよりは、来賓の集まるセレモニーに目をつけ、村民たちが当然出席するであろう地元当局者と直談判をするために動いたものです。
ですから防暴警察の出動に対し投石で抵抗はしたものの、当初の村民たちは武器類を一切持つことなく、約1万という人数の圧力で監禁に成功しています。
その現場となった食糧倉庫も当局が耕地を収用してそれを転売し、建設されたものです。これについても村民たちが当初受けた説明では、
「土地300ムーを収用した上で3.5万元にて売却する」
だったのですが、監禁している当局者から取り上げた契約書によって、
「土地500ムーを13万元余りで売却」
が事実だったと判明。「役人が売却益を横領する一方で村民への補償金額を不当に低くしている」という疑惑はいよいよ深まりました。
監禁現場では村民たちが望んでいた直談判も開かれたのですが、当局側は「すべて規則に則って処理した」の一点張りで、協議は平行線。その途中で防暴警察の出動もあり、物別れのまま直談判が流れてしまいました。
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この直談判における村民側の発言には、
「国はいま金持ちになってアフリカを救済することまでしている。でも順徳の農村はいまアフリカより深刻な状況にあるというのに、統計の数字が何倍増になったということを気にするだけで、我々農民が土地もなく困窮していることは目に入らないでいる」
「共産党は人民のために服務せよとしているのであって、貪官汚吏を養って我々農民を苦しめよとはしていない」
といったものがあり、いずれもその場にいた村民たちの熱い拍手を浴びたそうです。アフリカ支援の件を引き合いに出したり共産党はどうこうという発言が躊躇なく飛び出すあたりに、農民たちが意外にも時事ニュースに通じていること、より一歩進めれば、
「共産党は貪官汚吏を養って我々農民を苦しめることを旨としている」
という見方になりかねない際どさをはらんでいる、と言えるかもしれません。
目下のところ村民たちにとっての「官」は村委員会主任や順徳市当局の誰それ、といった具体的な顔を持った存在ですが、そうした「官」の横暴を許容しているのは何者か、というふうに突き詰めていけば、結局は中国共産党、ということになるからてす。
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ともあれ、三洲村の農民たちは今後も抗議活動を続けていくそうです。今回紹介したケースは全国各地で発生している土地収用絡みの不正疑惑に端を発した官民衝突のひとつに過ぎませんし、直談判目的で非武装の農民が当局者を監禁した、という点から、怒りの鉾先が中共そのものに向く段階までにはまだまだ距離があるようにみえます。
ただこういう状況下に置かれていれば、農民たちが権益と生活を守るために自衛すべく密かに武装化するのも無理はないように思います。
http://hk.news.yahoo.com/061109/12/1w2ys.html
http://hk.news.yahoo.com/061109/60/1w2qq.html
http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2006/11/09/china_riot_guangdong/index.html?simple=1
http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2006/11/09/sanzhou/
http://the-sun.orisun.com/channels/news/20061110/20061110014804_0000.html
http://the-sun.orisun.com/channels/news/20061110/20061110014804_0000_1.html
http://the-sun.orisun.com/channels/news/20061110/20061110014804_0000_2.html
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>>アフリカ支援の件を引き合いに出したり共産党はどうこうという発言が躊躇なく飛び出すあたりに、農民たちが意外にも時事ニュースに通じていること
日本からのO.D.A.のことは、知っているのでしょうかね。
日本は反共中国人と連携できるのか、それとも日本は“中国人”を御すことが無理なのか。
横から口を挟んで失礼します。
アフリカの件は、中共が自らの偉大さ、正当性を宣伝するために報道させているから誰もが知っているのでしょう。(今回の事件はそれを逆手に取られたわけですね)。
日本のODAは、公表したところで中共の宣伝にはまったくなりません。従って、積極的に報道させるわけがありません。
ということで、中国人がいくら知識を増やしたところでその偏りはいかんともしがたいのだと思います。ただ、アフリカの件が墓穴を掘ったように、今後は中共が戦略的な情報統制をしたつもりが、意図せざる結果を招くような事態も増えるのではないでしょうか。
支那共産党の顔を潰すにはこれ以上のタイミングはないでしょう。
農民自身が考えたのでしょうか?
それとも、策士がいるのでしょうか?
興味深いところです。
策士同士が連携して、勢力を作り上げたら……。
べつとしても、電化はTV情報化でしょう、
貧しい奥地の泥の家で上海の栄華をながめ、
人生の悲哀を増感する人もあれば、
爪牙をとぐ人も。
アフリカへの援助を口にした以上、中華農民は
「無知は罪」を一つ背負ってしまったかな。
自国民搾取⇒他国援助。
胡錦祷は
自国民放置⇒他国援助。
http://www.iht.com/articles/ap/2006/11/12/asia/AS_GEN_China_Hospital_Riot.php
農薬を誤飲した孫を連れて行った先の病院で、お金が足らないと言われた、お年寄りの話です。
お金を持って病院に戻ると、可愛い孫はすでに死亡。 腹をたてて、2000人の群衆と病院を襲撃です。
時事に通じていてもタイミングがピッタリなのと
投石のみの抗議(えー、爆薬は?)という辺りに
スタンドプレイっぽさが・・・。
石を後ろ手に隠し持った農民が現場を包囲している映像が、香港のさわやかな朝のお茶の間に流れましたよ。
石を持った手がズームアップされたりして。
映像は「一般視聴者から提供」みたいに書かれてましたが、んなわけないでしょうw
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