サポートセンター調査 災害など緊急時対応課題
佐賀県聴覚障害者サポートセンターは7~8月に県内の公立文化施設21カ所を調査し、すべての施設で聴覚障害者に情報を保障する整備状況が「不十分」と判定した。避難誘導の表示が不足するなど、災害など緊急時への対応が十分ではなかった。サポートセンターは「災害発生を知らせるランプをトイレに設置するなど、できることから目を向けてほしい」と訴える。
障害者に対する差別的取り扱いを禁止し、公的機関には障害者に必要な配慮を法的に義務付ける障害者差別解消法が来年4月に施行される。事前アンケートで同法について「知らない」とした施設が多数を占めたことから、聴覚障害があり、サポートセンターで働く中村稔参事(56)が現地を調べた。
佐賀県立博物館・美術館や佐賀市の大隈記念館、県立名護屋城博物館など、県内の主要な文化施設を調査対象にした。音声ガイドや電光掲示板、動画の字幕など10項目で点検した。
車いす対応や身障者専用トイレの整備は進んできているものの、非常口表示はあっても避難手順を視覚的に表示できていない施設が目立った。館内で放映している動画の字幕説明も2施設にとどまった。聴覚障害者は外見からは分かりにくく、東日本大震災でも一般の人に比べ死亡率が2割ほど高かったといい、災害対応が欠かせない。
展示物の文字表示は多くの施設にあったが、課題も見つかった。文化財保護の観点で照度を落としている施設が多く、文字が小さく高齢の聴覚障害者が見えづらかったり、難解な漢字にルビがなく、分かりづらい展示になったりしていた。
世界文化遺産に登録された三重津海軍所跡に隣接する佐野常民記念館で貸し出している機器はほとんどが音声情報で、他県の聴覚障害者が訪れた際、「何も分からなかった」と落胆した経緯もある。佐賀市に「字幕の整備をしてほしい」と要望した。
中村参事は「聴覚障害者向けにはほとんど対応されておらず、ショックだった」と語る。サポートセンターが入る佐賀市の佐賀商工ビルでは、災害時にカメラのフラッシュのような光で異常を伝える避難標識がある。階段の踊り場には鏡を備え付けて背後の人を足音で察知することが難しい聴覚障害者に視覚的な情報を補完する工夫をしている。
サポートセンターは「エレベーターの画面表示などハード面での整備は多額の費用がかることは理解している。まずはどんなことに当事者が困っているかに目を向け、一緒に改善策を考えてほしい」と呼び掛ける。
=障害者差別解消法=
障害者に対する差別的取り扱いを禁止し、国や自治体などの公的機関には障害者に必要な配慮を法的に義務付ける。企業や社会福祉法人などの民間事業者は努力義務となる。障害特性に応じた具体的対応例として、厚労省は聴覚障害者の場合、手話や文字表示をはじめ目で見て分かる情報を提示する配慮などを示している。
2015年11月07日 佐賀新聞
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