たん吸引や経管栄養
日常的にたん吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な子どもたちの支援強化を狙いに、県は本年度、協議会を発足させるなどして対策に乗り出す。支援の軸となる通所・短期入所施設が不足しているため、県は研修会を開いて新たな施設の参入を促すほか、県庁内に協議会を設けて情報共有を図る。本年度改定される新いばらき障害者プランや県保健医療計画に「医療的ケア児」に関する記述を盛り込み、支援を加速させる方針。
「こんにちは、きょうもお願いします」。午前9時半、医療的ケア児の支援施設の一つである多機能型児童発達支援所「ぽぴい」=水戸市=に子どもを連れた母親らが次々と訪れる。
水戸市の白石るり子さん(50)の長女樹歩さん(18)は2年ほど前から、夏休み期間などを中心に施設を利用している。樹歩さんは運動機能障害と知的障害があり、ほぼ寝たきりの状態。胃に栄養を送る経管栄養のケアを必要とする。るり子さんは「家の中だけで見ないといけないと考えた時期もあったが、外の世界に触れられる場所が増えて、子どももうれしそう」と話す。
現在は別の短期入所施設にも通い、樹歩さんを施設に預けている間、るり子さんは買い物や自宅の掃除をこなす。「家事などに集中できる貴重な時間」というが、施設の数が少ないことから予約が取れないことも多く、「予約合戦になっている」と指摘する。
■受け入れ施設
県内の重症心身障害児を受け入れる通所支援施設は8市町の12施設、医療型短期入所施設は成人向けを合わせても8市町村の9施設にとどまる。県は本年度、医療的ケア児の支援事業に135万円を予算化した。医療機関に委託して、市町村の担当者や福祉事業者などを対象にした研修会を開く。医療的ケア児に対する理解を深め、新規参入につなげるのが狙い。現在、研修内容などについて調整している。
また、県庁内の関係各部署で連携を図るため、協議会を設ける。保育や教育などの各分野を担当する部署と情報を共有することによって、効果的な対策や対応につなげる。県障害福祉課の担当者は「支援の隙間に入りこんでいる人たちを支援の対象とするなど、新たな対策につながるようにしたい」としている。
■最低1カ所
国は2020年度までに、主に重症心身障害児を受け入れる通所施設を各市町村に少なくとも1カ所以上確保する目標を定めている。県は国の方針や、医療的ケア児の保護者からの声を受けて、通所施設などを必要とする県内の重症心身障害児の数などを、市町村を通じて調べている。
県は本年度、来年度から5年間の医療・福祉の指針となる「新いばらき障害者プラン」や「県保健医療計画」を改定する予定で、「医療的ケア児」に関する対策を盛り込み、調査結果を対策に反映させる方針。
2017年8月6日 茨城新聞
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます