ゴエモンのつぶやき

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障害者を教育の場に雇入れることからインクルージョンルージョンに

2008年11月15日 00時27分19秒 | 障害者の自立
 厚生労働省は2006年06月01日現在の障害者雇用状況が「民間企業の障害者の実雇用率は、1.52%」と題して、2006年12月14日に発表した。2005年に成立した「障害者雇用促進法の改正」をうけて、2006年04月01日から精神障害者が実雇用率の算定対象に含まれた効果はどうだろうか。いくつか、気になったことを書いてみる。

■ 民間企業の実雇用率がはじめて1.5%台になった
 2006年ではじめて民間企業の障害者実雇用率が、1.52%となった。このことを厚生労働省は大きく取り上げている。たしかに、民間企業の障害者実雇用率は、1979年の1.12%から4分の1世紀にもわたって1.5%を超えたことはなかった。その意味では、厚生労働省が大きく見出しに取り上げるほど、画期的だった。しかし、現在の法定雇用率は1.8%である。日本では、雇用すべき率が法律で定められているが、一度も達成されたことはない。

 法定雇用率の達成企業の割合(いつの間にか公表される資料で「未達成企業の割合」から変更になっている)は、2005年に比べて1.3%ポイント上がったが、それでも43.4%である。民間企業の半数以上が法定雇用率さえ達成していない現状である。景気が回復したとはいえ、半数の企業が法律に違反している状態は変わっていない

 とくに、1000人以上の規模(大企業といえる)では、法定雇用率に達している割合は、なんと36.9%である。3社に1社の割合しか、法律で求められている障害者雇用を行っていない。企業の社会的責任など言う前に、最低の基準だけでも実現して欲しい。

 また、中小企業、とくに従業員規模が100~299人の規模の企業は、実雇用率は1.27%ときわめて低い。しかも、その内で、現に雇っている障害者がゼロ人である企業の割合は、1万社(未達成企業のうちで61.8%)もある。規模全体では2万4400社にものぼる。重度障害者をダブルカウントしたうえで、重度の身体障害者や知的障害者、精神障害者で短時間雇用の障害者を0.5人と計算している。こうした便法を使っても、それでも障害者ゼロの企業が100~299人で目立つ。

 精神障害者が含まれることによって障害者実雇用率が上がったかというと、それほどでもない。厚生労働省の発表によると、民間企業で雇用されている精神障害者数は1917.5人(精神障害者である短時間労働者1人は0.5人とカウントされる)だそうだ。民間企業で雇用されている障害者数はダブルカウントや身体・知的の重度障害者や精神障害者の短時間労働者0.5人換算を含めて28万3750.5人である。うち、身体障害者は23万8267人、知的障害者は4万3566人、精神障害者は1917.5人という。実雇用率は2005年度が1.49%で2006年度は1.52%となっている。2005年度と同じ基準では1.51%に相当し、精神障害者が含まれたことによる実雇用率効果は、0.1%ポイントとなる。

■ 企業に雇用を促進する法制度的な仕組み
 実雇用率が低い事業主に対しては、厚生労働省が雇用率を達成するように指導している。その流れを厚生労働省資料で追う。各年の06月01日現在での、雇用状況の報告を受ける(障害者雇用促進法第43条第5項)。低い事業主に対して、3年間の雇入れ計画を作成するように公共職業安定所長が命令する(同法第46条第1項)。2005年度の命令提出は456社という。

 計画の2年目に、計画の実施状況が悪い企業に対して雇入れ計画の適正実施を勧告する(同法第46条第6項)。2005年度に勧告した企業は71社という。なお、2006年03月現在で雇入れ計画を実施中の企業数は、1263社もあるという。不足数がとくに多い企業については、当該企業の幹部に対し、厚生労働省本省が直接に指導もしているらしい。ただ、その対象社数はわからない。

 こうした指導をしても障害者の雇用状況が改善しない企業については、企業名の公表(同法第47条)を前提として特別指導を実施する。2005年度では特別指導は24社、社名の公表は2004年度1社、2005年度2社、2006年度も2社となっている。

 雇用を促進させる仕組みは、よくできている。しかし、実績があがっているかどうか、疑問だ。未達成企業は、企業全体の約6割というから、約4万近くにも及ぶ。それだけの企業に指導するには、とても現在の厚生労働省、とくに障害者雇用関係の人員では足りない。そこで、対象を絞ってきた。それでも、たとえば、雇入れ計画を策定した企業のうち、障害者雇用をどれほど実現したのか、データが公表されていない。

■ 雇用率達成企業を2008年度に5割にしたい厚生労働省の指導方針
 たしかに、障害者雇用率は伸びた。しかし、依然として半数以上の企業が法定雇用率を達成していない。そこで、多分2006年度の数値がほぼまとまった段階で、企業への指導を強化する案を作ったのであろう。厚生労働省は2006年11月14日に「障害者の就職、大きな伸び続く」と題した障害者の職業紹介の資料を公表した。その中に、「障害者雇用率達成指導基準の見直し」が入っている(朝日新聞、2006年11月12日記事)。

 指導すべき企業の範囲を拡大するという趣旨である。今回の障害者の雇用状況調査の報告にもつけられている。資料によると、雇入れ計画作成命令を出す企業の範囲を次の3点とするという。第1は、指導対象とする実雇用率を、これまでは1.2%未満かつ不足数5人以上だったが、これから全国平均の実雇用率未満かつ不足数5人以上の企業に拡大する。なお、これは2007年度から実施するという。2006年度の実雇用率は1.52%であったから、雇用率1.51%以下の企業にも拡大される。

 第2は、法定雇用数の障害者が3~4人(企業規模は167~277人となる)であって、雇用障害者0人の企業への指導を強化する。第3は、不足数10人以上の大企業への指導を強化するという。こうした指導をすることで、2008年の障害者雇用状況報告で、障害者雇用率達成企業の割合も5割を超える目標とするという。厚生労働省も障害者雇用に関しては、きわめて控えめである。企業に一挙に法律遵守を求めていない。1990年代末から現政権にいたる政治姿勢を端的に示していると思う。

 企業への指導は厚生労働省任せにはできない。雇われている(あるいは、これから働きたいと希望している)障害者市民の力が必要だろう。労働組合の協力も大切だ(労働組合には無理である。期待をするなという人もいるが)。障害者を取り巻く支援者や家族、学校の教職員や作業所の職員などにも、もっと知恵を求めたらよいと思う。

■ 各都道府県の教育委員会での障害者雇用がきわめて低いまま
 今回の報告には、公的機関ごとの状況がデータででている。法定雇用率2.1%を適用される国の機関では、全体の実雇用率が2.17%と未達成の機関を探すのに苦労する。国の行政機関で唯一未達成であった公正取引委員会(報告時では1.84%)も、2006年12月01日現在では雇用障害者の数は15人で実雇用率は2.16%と注記されている。国の立法機関でもっとも低いのが、衆議院法制局で実雇率は1.39%となっている。仕事内容も規模もほぼ同じ参議院法制局は実雇用率が2.86%である。

 都道府県知事部局も法定雇用率2.1%が適用である。ここでも、全国の実雇用率は2.38%である。唯一未達成なのは新潟県で2.03%である。不足数が4人となっている。厚生労働省は新潟県を指導の対象に加えたほうが、民間企業との均衡を取るためにもよい。3%以上の都県も東京都(3.19%)と神奈川県(3.12%)と2つある。

 ところが、東京でも警視庁は実雇用率が1.13%、東京消防庁はなんと0.47%である。東京都下水道局の4.23%と比べると、治安維持を任務としている部局が、障害者雇用に消極的な姿勢といえる。

 行政機関でありながら法定雇用率を低く設定される恩恵を受けているはずの都道府県教育委員会において、実雇用率はきわめて低い。全国の都道府県平均で1.41%しかない。不足数は3389名に及んでいる。インクルージョンルージョンを実現するためにも、公教育の現場に、障害者を積極的に雇入れ、その実績をもとに、地域や社会に障害者の雇用を求める姿勢がほしい。

 障害者の実雇用率2%を上回っている自治体は、大阪府(2.26%)と京都府(2.13%)だけである。和歌山県(1.93%)と奈良県(1.87%)も高い。近畿地方の自治体の教育委員会は障害者雇用にまともに取り組んでいる。障害者運動や障害児の学校進学が盛んな地域柄を反映している。近畿地方の中では、兵庫県(1.53%)がもっとも低い。地元でも「(兵庫)県は障害者の就業を積極的に支援しているが、おひざ元で障害者雇用が進んでいない実態が浮かび上がっている」と問題になっている(神戸新聞、ひょうご版、2006年12月16日)。民間企業の障害者実雇用率は1.70%で全国平均1.52%よりも高い。それだけに、兵庫県教育部局の消極的姿勢が目立つ。



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