ゴエモンのつぶやき

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「あなたは障害者枠だから、座っているのが仕事」と暴言吐く雇用者

2019年01月25日 17時03分11秒 | 障害者の自立

障害者雇用水増しで国は2月に中途採用試験

 身体障害者雇用促進法の改正で、障害者の雇用について、民間企業が雇用者全体の2.2%、官公庁は2.5%以上にすることが義務化されたのが2018年4月です。ところが、国の省庁や地方自治体の障害者雇用水増し問題が同年の夏ごろに発覚し、18年の10大ニュースとして取り上げるメディアもあるほどの大問題になりました。

 それまで厚生労働省は、雇用率の達成は民間企業では50%であるのに対し、国の雇用率達成は42機関中41機関であると発表していたのですから(2017年12月12日)、これが大嘘(うそ)だったわけです。

 その後に発表された、厚労省の再点検の結果によりますと、国の行政機関だけで障害者雇用数は6867.5人から3407.5人と減っています。

 この不足を一部補うために、まず676人を採用する障害者の国家公務員試験が今年の2月に行われることになっていて、人事院発表の暫定値では13倍の競争率だそうです。私の外来に通院されている視覚障害者の中にも、少なくとも2人が受験生に含まれております。障害者枠の中でも視覚障害者が最も採用されにくいといわれます。彼らの合格を祈るばかりです。

障害者枠採用 仕事がないケース、逆に過剰で疲労やストレスためるケース

 ところで、これは民間企業の話ですが、私の患者の中に、入社試験を突破してせっかく障害者枠で採用されたのに、初めからほとんど仕事が与えられず、「あなたは障害者枠だから、そこに座っていることが仕事なのよ」など暴言を吐かれたという方がいました。雇用者は、どんな仕事を与えればよいのかわからなかったと言い訳したそうです。

 別の方の例では、採用されて本人も最初は張り切り、周囲も理解し、支援してくれました。しかし、何年か過ぎて、仕事にも慣れ、さらには部下ができるようになると新たな問題が出てきました。できる仕事でも量が過剰になれば、障害のある場合にはしばしば持久力に限界があり、できなくなります。それでも頑張っていましたが、年数が経(た)つと上司や周囲も変化し、周囲からの配慮はなくなってきて、疲労とストレスは溜(た)まる一方になりました。

 さらに出てきた問題は、「障害者が上司だなんて」という部下の心理です。これは障害者を自分と平等な社会の一員と理解することができない心理を生み出した、日本の教育文化的な問題なのかもしれません。

 上記の2人の方は結局、ともに退職してしまいました。就労とその継続は、障害者にとってまだまだ厳しい状況なのでしょう。障害者自身は戦力として役立つことを望んでいますが、障害者としての限界もあることまで理解した、成熟した社会にはまだまだ届いていないというべきでしょう。

 今度の障害者のための公務員試験は、どんな試験になるのでしょうか。その人にどういう仕事を与え、どういう形で戦力になってもらおうとしているのか。長期的展望を持った青写真があっての試験であることを望みたいものです。

 障害者雇用が、雇用側にとっても障害者にとっても十分、意味のあるものでなければいけません。雇用率という数字ばかりに注目するのでなく、実態を把握する必要があります。実態を把握し、実のある障害者雇用環境にするために、「障害者雇用および就労研究」を実行する研究教育体制の新設が国レベルで必要だと、私は思います。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

2019年1月24日    読売新聞



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