風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

光陰矢のごとし

2012-07-05 10:17:28 | 日記
       外出から帰ったら、留守中に電話があったという。
      
        「誰から?」と訊くが、
        ジイサン、忘れた、と言う。 

        「どうしてメモしてくれなかったの」
        「メモすることを忘れた」

   腹はたつが、物忘れはお互い様だから、ここでジイサンをせめてもはじまらない。
        
         あんたの仲良しの友だちだったという。
     二、三年前に関東だか関西だったかへ引っ越して、今は遠くにいるという。

        ふうん~、二、三年前ねえ、思いあたらないなあ。
   だいいち関東と関西ではまるで違うでしょう、と言ってみてもこれまたはじまらない。

        痩せて美人だったと、そこだけやけにくわしい。
         よく電話で話してたじゃあないかという。
          思い出せないのかと言われても困る。
            判じものみたいな話である。


    突然、「あ、思いだした。××さんだった!」 とジイサンが声をあげた。

      いやあねえ、××さんが東京へ行ったのは二十年も前ですよ。
         そうかなあ、そんなになるかなあ。

       ついこの間のような気がするとジイサンに言われてみれば、
        たしかにその通り、ついこの間のことのようでもある。

      人生振り返ればまことに何もかもがあっという間の出来事である。

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