外出から帰ったら、留守中に電話があったという。
「誰から?」と訊くが、
ジイサン、忘れた、と言う。
「どうしてメモしてくれなかったの」
「メモすることを忘れた」
腹はたつが、物忘れはお互い様だから、ここでジイサンをせめてもはじまらない。
あんたの仲良しの友だちだったという。
二、三年前に関東だか関西だったかへ引っ越して、今は遠くにいるという。
ふうん~、二、三年前ねえ、思いあたらないなあ。
だいいち関東と関西ではまるで違うでしょう、と言ってみてもこれまたはじまらない。
痩せて美人だったと、そこだけやけにくわしい。
よく電話で話してたじゃあないかという。
思い出せないのかと言われても困る。
判じものみたいな話である。
突然、「あ、思いだした。××さんだった!」 とジイサンが声をあげた。
いやあねえ、××さんが東京へ行ったのは二十年も前ですよ。
そうかなあ、そんなになるかなあ。
ついこの間のような気がするとジイサンに言われてみれば、
たしかにその通り、ついこの間のことのようでもある。
人生振り返ればまことに何もかもがあっという間の出来事である。
「誰から?」と訊くが、
ジイサン、忘れた、と言う。
「どうしてメモしてくれなかったの」
「メモすることを忘れた」
腹はたつが、物忘れはお互い様だから、ここでジイサンをせめてもはじまらない。
あんたの仲良しの友だちだったという。
二、三年前に関東だか関西だったかへ引っ越して、今は遠くにいるという。
ふうん~、二、三年前ねえ、思いあたらないなあ。
だいいち関東と関西ではまるで違うでしょう、と言ってみてもこれまたはじまらない。
痩せて美人だったと、そこだけやけにくわしい。
よく電話で話してたじゃあないかという。
思い出せないのかと言われても困る。
判じものみたいな話である。
突然、「あ、思いだした。××さんだった!」 とジイサンが声をあげた。
いやあねえ、××さんが東京へ行ったのは二十年も前ですよ。
そうかなあ、そんなになるかなあ。
ついこの間のような気がするとジイサンに言われてみれば、
たしかにその通り、ついこの間のことのようでもある。
人生振り返ればまことに何もかもがあっという間の出来事である。