風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

女の年齢

2010-09-21 23:57:17 | 歳月
 女性に年齢を訊くのは失礼とされている。

 他人から見れば、一歳や二歳、違ったところで、どうってことはないが、なぜか、年が近いほどにこだわる。
 まったく同じ年なのに、あら、私の方が五カ月、年下よ……などと言う人がいる。

 これが、超高齢になると、また事情が変わるようだ。

 バス停でよく行き合わせる高齢の女性がいた。
こういう元気のいい年寄りはへんに社交的である。
 自分のほうから、バス、まだ来ませんね、などと話しかけてくる。

 「私、九十一歳になるんですよ」
 「ほう」
 始めてのときは正直、驚いた。

 ペタンコ靴でなくパンプスを履いている。
オールドファッションながらお洒落もしている。
 お元気そうですねと言うと満足気に微笑んだ。

 度々出会うようになった。
いつも 「九十一歳なんですよ」と話しかけてくる。
 もう驚かないが、驚いた顔をしてあげる。

 そのうち、バス停の近くまで行って、見かけると、あ、いるいる、とこちらが逃げ腰になる。

 九十二になり三になり、五になって、まだお元気だった。
今年になって、お見かけしないので、さすがに外出が難しくなったかと思っていた。
 それが当たり前だよねと、どこかほっとしていた。

 昨日、デパートの食料品売り場で、紙袋一杯の荷物を抱えて、相変わらずパンプスで歩いている彼女を見かけた。

 おっ、とのけ反りそうになった。

 お幾つになりましたか? と訊いてあげたかったが、混雑していたのでやめた。



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1 コメント

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不思議ですね (やまだスズメ)
2010-09-22 23:34:11
女性も男性もある一定以上になると、高年齢自慢になるようですね。

それまでは仰るように数ヶ月遅く生まれたのでも、
下だと言い立てていた人が、どんな心境の変化がおきるのでしょうね。
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