昔、風子ばあさんがまだ娘だったころ、
ミシンは大事な嫁入り道具のひとつだった。
若い娘はみんな毎月500円づつの積み立てをして、
嫁入り時に満額になるように備えた。
風子ばあさんは心がけが悪くて、
ミシンを持たずに結婚した。
亭主になったうちのじいさんは、
あげな物は邪魔だから、要らんと言ってくれた。
不器用だから、何かを縫ってみたいとも思わなかった。
子供が幼稚園に行くようになっても、
今のように手作りのバザーなどということはなかったし、
ミシンがなくて不自由だと思ったことはなかった。
子供が小学校に上がると、
学期のはじめに雑巾が要ったが、
雑巾くらい手で縫えばそれで事足りた。
ところがである、
ごく最近、もう四十歳になる息子が言った。
あの雑巾は、下手だったね、
学校へ持っていくと、友だちから、
お前が縫ったのか?とからかわれたもんだよ。
アリャア、である。
「でなんと言ったの?」
「うん、僕が縫ったんだよって、自慢してた」
ああ、恥ずかしい!
何十年も知らなんだ。すまなんだ、
申し訳ない……。
不出来な母を許してほしい。
数々の後悔で、
風子は息子に頭が上がらないばあさんなのである。
ミシンは大事な嫁入り道具のひとつだった。
若い娘はみんな毎月500円づつの積み立てをして、
嫁入り時に満額になるように備えた。
風子ばあさんは心がけが悪くて、
ミシンを持たずに結婚した。
亭主になったうちのじいさんは、
あげな物は邪魔だから、要らんと言ってくれた。
不器用だから、何かを縫ってみたいとも思わなかった。
子供が幼稚園に行くようになっても、
今のように手作りのバザーなどということはなかったし、
ミシンがなくて不自由だと思ったことはなかった。
子供が小学校に上がると、
学期のはじめに雑巾が要ったが、
雑巾くらい手で縫えばそれで事足りた。
ところがである、
ごく最近、もう四十歳になる息子が言った。
あの雑巾は、下手だったね、
学校へ持っていくと、友だちから、
お前が縫ったのか?とからかわれたもんだよ。
アリャア、である。
「でなんと言ったの?」
「うん、僕が縫ったんだよって、自慢してた」
ああ、恥ずかしい!
何十年も知らなんだ。すまなんだ、
申し訳ない……。
不出来な母を許してほしい。
数々の後悔で、
風子は息子に頭が上がらないばあさんなのである。
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